いつまでも、御塩倶楽部

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考古学・歴史学

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 トレースとは、実測図をトレーシングペーパーという半透明な紙に写す作業です。

実測図は、方眼紙やケント紙という紙に書かれます。

また実測をするために使われた補助線や書きこみがそのまま残っています。

だから清書が必要になります。

この実測図から「発掘調査報告書」に載せる必要な部分だけを写します。

 道具は、「ロットリング」というドイツ製の製図用ペンか丸ペンを使います。

ロットリングは高価なので、ぼくは数本しか持っていません。

手の油分がトレーシングペーパーに付くとインクの乗りが悪くなるので、トレースをするときは手袋をします。

貧乏くさく見えますが、指先を切った軍手をよく使いました。

 トレースをしていると、手がふるえることがあります。

線もゆがみます。

トレーシングペーパーをずっと気合いを入れて見つめていると涙も出てきます。

下からライトを当てるトレース台という道具もありますが、最終的には「集中力」がものを言います。

個人の性格が見える作業です。

最近はパソコンでトレースをすることも多いと後輩が教えてくれました。

ぼくは、デジタルトレースをしたことがないので、なんとも言えません。

 拓本(たくほん)とは、遺物に紙(画仙紙)を押しつけてタンポで墨を打ち付ける作業です。

出ている部分に黒く墨が付き、へこんでいる部分は白くなります。

10円に紙を当てて鉛筆でこすってうつす遊びと同じ原理です。

縄文土器の縄文(縄の模様)などの細かい模様や瓦や古銭などのように立体感を出したいものを拓本にします。

趣味で石碑の文字などの拓本をとる方もいます。

 拓本は、まず紙を土器に当てることから始まります。

石碑のように平らな面に紙を当てることは比較的簡単ですが、土器は元来容器なので破片にも必ずカーブがあります。

適当な大きさに紙を切ったり、切り込みを入れたりあの手この手で工夫をします。

紙を当てたら、固く絞った濡れぞうきんを紙に押し当てて湿らせていきます。

この時、空気を抜きながら、密着させていきます。

墨を打つ時の紙の湿り具合が拓本にとって重要で、このタイミングがとても大切です。

紙の湿り具合を確認する時に、唇を近づけて確認することもあります。

墨を打った拓本は、しばらくサンデーやマガジンのような漫画にはさんで乾燥させます。

ついつい乾燥用の漫画を読んでしまって、拓本を中断することもあります。

 実測とは、土器や石器などの遺物を実物大(1/1)で図面にする作業です。

この図面を見て、どんな土器なのかわかるように書かなければいけません。

書き方の主なものに、正面から見た形(正面図)、横から見た形(側面図)、ある部分で切ったときの形(断面図)などがあります。

土器の模様、土器の形を整えた時の指の跡も書き込みます。

石器の場合は、打ち割った面をすべて書きこみます。

打ち割る方向も書き込みます。

実測した図面を「実測図」と呼びます。

このように実測図にはたくさんの情報がつめこまれています。

 実測は、スケッチではありません。

いろいろな製図道具を使って正確に計りながら書いていきます。

特に、土器の口の部分は、土器の時代を決定するポイントなので丁寧かつ慎重に書かれます。

さらに、粘土に砂がおおいとか、どの部分で粘土を足しているかなど、それぞれの遺物の特徴を記入しておきます。

最後に書いた人の名前を実測図に書いて完成です。

実測のやり直しを言われる時は、この名前を見て呼ばれます。

修行の世界。

 土器はほとんどの場合、割れて出てきます。

この破片をくっつける作業を接合(せつごう)と言います。

パズルだと必ず完成しますが、遺跡から出た土器は完成する方がめずらしいようです。

また、土器だけでなく石器でも接合をします。

 接合の前にまず、まとまって出土した土器の破片を集め、色・厚さ・焼き具合・模様・形などにより分けます。

ここからは、パズルのように破片をあちらこちらと合わせてみて「ピタッ」とはまる所が割れた所です。

うまい人がやるのを見ていると、まるで手の中を土器が踊っているようです。

割れた所は接着剤で付けます。

この業界では、黄色いチューブの「セメダイン」を使っています。

接合は、一日やっても一つできるかどうかという日もあります。

精神力が必要です。

 手当たりしだいに試していてはダメです。

土器は容器なので、必ず「口」と「底」があります。

この部分は他の破片に比べて特徴があるので、この破片から探します。

口の部分が少しでも完成すると、土器全体の大きさもわかるので、土器のイメージもつかめて、接合もしやすくなります。

しかし、最後は根気と気合いで勝負します。

どうしても足りない所は石膏などで補って完成させます。

 接合は「展示」のためだけにしているわけではありません。

石器で考えてみましょう。

ある遺跡から出た石器とある遺跡から出た石器が接合したとします。

石器は一つの石から割って作るので、接合する石器同士が同じ遺跡から出たなら、その遺跡で石器が作られています。

しかし、別々の遺跡から出た石器が接合できたとすると、石器を作った場所と使っていた場所とが別々ということになります。

こうやって、当時の社会(生産と流通)を調べることができます。

実は、奥が深い作業です。

 洗った土器は、自然乾燥させます。

乾いたら土器に字を書きます。これを「注記(ちゅうき)」とか「マーキング」と言います。

みなさんは、どうして字を書くのか不思議に思うかもしれません。

 どんな字を書くのか、から考えてみるとわかりやすいでしょう。


「奥田城」の例(架空の例です)

Okj 1トレ 20060926

okj      Okuda−jyou(遺跡名)の「o」・「k」・「j」

1トレ     第1トレンチ(出土場所)

20060926   発掘された日(2006年9月26日)



 このように、どの遺跡のどの場所から出たのかわかるようにしてあります。

展示したときに見苦しい、と思うかもしれません。

しかし、歴史を調べるには、「見た目にはきれいでもどこから出土したのかわからない」よりも「見苦しくてもどこから出土したのかわかる」ほうが価値があります。

 ポスターカラーをつけて筆で書いた後に、ニスを塗る方法が一般的です。

最近は機械で印刷する方法もあります。

機械の仕組みは、インクジェットプリンタと同じです。

小さな字もきれいに印字できますが、土器の表面によっては字がつぶれてしまいます。

この機械を利用する現場は、リースで使っていると思います。

リース代はかかりますが、注記する土器が多い現場ですと人件費を抑えることができます。

印字してから、最後にニスを塗ります。

注記は油性のペンで書けば楽だと思うかもしれませんが、もし書いた字がじゃまになった場合、ポスターカラーとニスで書いた方が消しやすいからです。

そうならないように土器を調べるときにじゃまならない所に小さい字で書くのがポイントです。

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