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2019年08月14日13時30分
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minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

 金の現物相場は8月に入り、米大統領が対中追加関税発動を発表したことに加え、中国を為替操作国に認定したことで貿易戦争の激化懸念から急伸した。1500ドルの節目を突破すると、リスク回避の動きも支援要因となって上値を伸ばし、2013年4月以来の高値1533.62ドルを付けた。

 7月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが決定されたが、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は予防的な利下げとし、利下げサイクルへの転換を否定した。しかし、貿易戦争激化に対する懸念から一部の中央銀行が予想以上の利下げを決定。世界的な金融緩和に傾いた。米国が実際に9月1日に中国製品に対する追加関税を発動すると、見通しはさらに悪化するとみられ、米FRBは年末にかけて追加利下げを実施する可能性が高まる。

 英国では与党・保守党の党首選で欧州連合(EU)離脱強硬派のボリス・ジョンソン氏が勝利した。同氏は首相に就任し、議会演説でEUを10月31日に離脱すると述べた。合意なき離脱に対する懸念が高まっており、金融市場の混乱につながると、金に逃避買いが入るとみられる。

 また、アルゼンチンやイタリアで政局リスクが高まった。アルゼンチンでは10月の大統領選挙の予備選挙が実施され、野党候補のフェルナンデス元首相が現職マクリ大統領を予想外の得票差で上回った。イタリアではイタリア極右「同盟」が内閣不信任案を提出したが、議会の各党責任者の協議がまとまらず、討論開催日で合意できなかった。

 さらに香港では「逃亡犯条例」改正に対する大規模なデモが続くなか、香港国際空港が一時閉鎖されることになった。リスク回避の動きが広がると、金は予想外の高値を付ける可能性も出てくる。

●米中の貿易戦争激化で次の動きも警戒

 7月末に上海で米中の通商協議が再開されたが進展は見られず、9月に米国で協議を再開することで合意した。進展が見られなかったことで、トランプ米大統領は3000億ドルの中国製品に対する10%の追加関税を9月1日に発動すると発表した。今回の追加関税が発動すると、中国からの輸入品ほぼすべてに制裁関税が課されることになる。

 追加関税発動の発表に対し、中国人民銀行は1ドル=7人民元を超える人民元の下落を容認し、中国商務省は米国の農産品の輸入を停止したことを明らかにした。米国は中国人民銀行の人民元下落容認に対して為替操作国として認定、農産品輸入停止に対しては華為技術(ファーウェイ)との取引を行わないとした。米中首脳会談では、ファーウェイに対する規制を緩和し、米企業に製品売却の再開を許可するとしていた。

 米大統領は9日、米国は中国との通商協議を継続しているが、当面の合意はないとの見方を示しており、9月の中国製品への追加関税発動は避けられそうもない。ただ、米中の電話協議が行われたのち、米通商代表部(USTR)はノートパソコンや携帯電話など一部製品への発動を12月15日まで延期すると発表した。電話協議は今後も続けられるとされ、歩み寄りが見られるかどうかを確認したい。

 また、米中の次の動きも警戒される。米国は中国を為替操作国に認定しており、中国と協議を実施するか、国際通貨基金(IMF)に働きかけることになる。しかし、解決できなければ米大統領は制裁措置を課すことになる。中国の報復措置としては、米国債売却レアアース利用などが懸念されている。一方、中国人民銀行は人民元の基準値を市場よりも元高に設定し、市場では人民元下落を抑制するシグナルとみられている。しかし、人民元下落に変わりはなく、追加関税を相殺する7.2〜7.3人民元まで元安が進むかどうかも今後の焦点になるとみられる。

●ゴールドマン・サックスは金の6ヵ月予想を1600ドルに引き上げ

 米中の貿易戦争激化による先行き懸念を受けてニュージーランドやインドが予想以上の利下げを決定した。ニュージーランド準備銀行は、政策金利のオフィシャルキャッシュレート(OCR)を0.50%引き下げ、過去最低の1.00%とした。インド準備銀行は主要政策金利のレポレートを0.35%引き下げ、5.40%とした。また、欧州中央銀行(ECB)は経済報告で、製造業などでユーロ圏の成長見通しが悪化したと指摘しており、景気刺激策が実施される見込みである。

 米10年債利回りは2016年10月以来となる1.61%まで低下し、米FRBの追加利下げ観測が強い。CMEのフェドウォッチによると、13日の米短期金利先物市場で12月のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準の確率は1.25〜1.50%が33.3%(前月15.9%)、1.50〜1.75%が49.3%(同37.3%)、1.75〜2.00%が15.8%(同34.5%)となった。現在の2.00〜2.25%から2〜3回の利下げが見込まれている。

 ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーは米FRBが9月と10月に利下げするとの見通しを示した。米中の貿易戦争激化で景気見通しが悪化したことが背景にある。また、ゴールドマン・サックスは2020年の米大統領選まで米中の通商協議が合意することはないとの見方を示し、金価格の3ヵ月予想を1575ドル(前回1450ドル)、6ヵ月予想を1600ドル(同1475ドル)に引き上げた。

●金ETF残高は引き続き増加

 金の内部要因では、米中の貿易戦争激化や米FRBの追加利下げ観測を受けて逃避買いが入り、金ETF(上場投信)残高が引き続き増加した。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は8月12日時点で847.77トンとなり、1ヵ月前の800.54トンから47.23トン増加した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは8月に入り引き続き拡大し、2016年9月以来の高水準となった。8月6日時点で29万2545枚となり、1ヵ月前の25万8946枚から拡大した。買い玉の増加が目立ち、利食い売り主導の調整局面も警戒されるが、先行き懸念に変わりがなければ大幅な買い越しが続くとみられる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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