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東証の売買高が激減して久しい。しかしこの株式市場の売買高激減は日本だけでなく全世界で起こっている現象である。
そういう中で、ペリー・キャピタルという大手ヘッジファンドがアジア市場からの撤退を決めた。おそらく、多くのヘッジファンドがこれに追随してアジアからの撤退を進める可能性がある。
ヘッジファンドといえば、空売りや市場操作で巨額の利益を得ているという印象があるが、実は全世界の株式市場(=資本市場)の流動化を支えている、ある意味政府とは別の意味で景気の背景にある資本を市場から各企業へ注入する役割を担っている。
ここへきて、そのヘッジファンドが規模を縮小せざるを得ないということは、株式市場を通じた資金の起業への流し込みという血液がどんどん減少していくということであろう。
リーマンショック後の各種の金融規制が自由な市場からがんじがらめの硬直したマーケットを作り出している。
しかし、一方では金融がしたい放題した結果もリーマン以降の信用崩壊による全世界的な景気後退と債務危機をもたらしているのも事実である。
規制しなければ、インフルエンザウイルスのような猛威をふるい金融市場を破壊するし、規制を強めれば逆に流れなければならないものまで滞り始めている。
やはり資本主義経済そのものの弁証法的矛盾なのであろうか?
先のEU首脳会議の結論も、各国の財政政策への極度の介入であり、方向としては資本主義の自由な概念とは反対に向かっている。それも崩壊寸前の資本主義を救うために・・・
以下、日経の記事であるが、今後のマーケットの縮小感が漂う内容となっている。
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規制で枯渇する市場の流動性経済金融部 川崎健 ペリー・キャピタルという米ニューヨークに本拠を置く大手ヘッジファンドの名前を覚えているだろうか。
2007年、NECと投資先である旧NECエレクトロニクス(現ルネサスエレクトロニクス)の間の支配・被支配関係がはらむ問題点を指摘し、日本市場の慣行である「親子上場」の矛盾を鋭く批判したあのファンドである。ちょうど2カ月前、同ファンドはファンドに資金を預ける投資家に送付した手紙の中で、日本を含むアジア株の運用拠点だった香港オフィスを閉鎖し、アジア株への投資から基本的に手を引くことを明らかにした。
ゴールドマン・サックス出身で1988年に同ファンドを立ち上げたリチャード・ペリー氏は、米ウォール街を代表するヘッジファンド運用者の1人。ピークからは目減りしたとはいえ今でも80億ドル(約6200億円)の運用資産を抱える「勝ち組ファンド」のペリーがアジアからの撤退を決めたことは、現在の世界のヘッジファンドが直面している苦境の大きさを浮き彫りにする。
大手ヘッジファンドがアジア撤退を決めたのはペリーが初めての事例とみられるが、ある外資系証券の株式セールスマンは「ペリーに追随して香港やシンガポールから撤退する動きが出てもおかしくない」とみる。過去数年の米欧ヘッジファンドの1つのトレンドは日本を素通りしてアジアに向かう「ジャパン・パッシング」だったが、さらに事態は悪化して「アジア・パッシング」の動きすら出始めているというのだ。
この結果、今マーケットで起きているのは急激な流動性の低下だ。
まずは足元の日本。東京証券取引所第1部の1日あたり売買代金(立会外取引を含む)は11月に平均で1兆717億円と04年8月以来の低水準。ピークだった07年2月(3兆5452億円)と比べるとわずか3割の水準まで落ち込んでしまっている。
今回のマーケットの流動性の低下の特徴は、日本だけではなく世界主要国市場でほぼ同時に起きているという点だ。
国際取引所連盟のデータベースで開示されている直近10月の数値を見ると、上海証券取引所の1日あたり売買代金は昨年の年間平均に比べると44%減少している。ロンドン証券取引所も同12%減、ドイツ取引所も同8%減と落ち込んだ。国際取引所連盟に加入する世界主要51取引所の10月の株式売買代金総額はピークだった08年1月に比べるとほぼ半分の水準だ。売買の低迷は日本だけではないのだ。
流動性低下の主因が、欧州債務危機を境に世界の投資家がリスク回避の姿勢を高めていることにあるのは確か。しかし、それだけでここまで急速な流動性低下を説明しきれるのだろうか。
東京証券取引所の斉藤惇社長は金融規制の強化が足元の流動性低下の大きな理由とみている。大手銀行に自己資本の上積みを求める「バーゼル3」や米銀に高リスク取引を禁止する「ボルカー・ルール」といった世界の金融監督当局が強化を進めている一連の規制のことだ。
例えば昨年夏に米国で初めて提唱されたボルカー・ルールは、それから1年余りが経過して米金融当局が実際の施行に向けて具体的な法案をちょうどまとめたタイミングだ。ここでは銀行が自らの資金で手掛ける自己勘定取引はもとより、銀行によるヘッジファンドへの融資も制限している。このため自らのファンド資金に銀行からの外部融資を加えて取引金額を膨らませるヘッジファンドは、銀行規制の強化によって資金を取りづらくなってきているというのだ。
もちろんバーゼル3もボルカー・ルールも08年のリーマン・ショックの再来を防ぐという意味では政策の目指す目的は正しいのだろう。しかし東証の斉藤社長はこう疑問を呈する。「マーケットの流動性の急速な縮小が、不況に向かっている世界経済を再活性化させるのだろうか。知らず知らずのうちに資本市場の流動性を薄めることは、産業資本を提供したり適正な値段で売買するというマーケットの機能を曲げていないだろうか」
分かりやすい例を挙げると、流動性の枯渇は、企業にリスクマネーを提供するという株式市場の機能低下に直結する。日本企業のエクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)金額は2011年は先週8日時点で223億ドルにとどまり、2010年の年間実績(582億ドル)に比べ6割減少した(トムソン・ロイター調べ)。今年2番目の規模になるはずだった日興アセットマネジメントが市況低迷を理由に今週15日に予定していた新規株式公開(IPO)を見送ったのは記憶に新しい。
「白河の清きに魚の住みかねて」とまでは言うつもりはないが、斉藤社長が言うように、当局の規制強化の流れが「知らず知らずのうちに」市場の活力をそいでいるというのは1つの真実だろう。株式市場の流動性は、いわば資本主義経済を前へと駆動させていくために欠かせないガソリン。規制強化の一辺倒ではなく、来年こそは市場活性化の政策も聞いてみたいものだ。
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