渡辺茂樹のいたちものがかり

ニホンイタチをこよなく愛するアスワット顧問/動物学者・渡辺茂樹のブログです!

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   初めにまず9月9日(日)の「中・小型食肉類ランチミーティング」のことを記す。ASWATのポスター発表と共に、其処で喋ることが私の本大会参加の主目的だった。テーマは「保全」であり…小型種ではニホンイタチ(のRDBランクのこと)と、中型種ではニホンアナグマ(の鹿児島県における大量虐殺)のことが語り合われた。問題提起者はニホンイタチが私で、ニホンアナグマは金子弥生(東京農工大学)である。

   "語り合い"といっても、発言者は限られていた。問題提起者以外で「論」を述べたのは、佐々木浩(筑紫女学園大学)と塚田英晴(麻布大学)ぐらいである。私が槍玉にあげた環境省からは酒向貴子が参加していたが、"論"と呼びうる程のことは語らなかった。そこそこの数が参加していた若手(20〜30代?)は、ほぼ無言であった。ひとつには、冒頭(のニホンイタチのRDBのこと)で佐々木と金子が激しく「やりあった」ことがある。若手は、それに「飲まれてしまった」のだろう。私の誘いで急遽参加した小林秀司(岡山理科大学)は、「はははは、いやあ、ビックリいたしました」との感想を(後日に)語った。中堅の年齢で「新世界ザルの新種の発見」という実績もある小林は、本来「学会でのやりあい」にビックリするほどウブではない筈だ。でも「事情をよく知らない」ことと、ランチミーティングという名称から「和やか」を連想した故にそう感じたのだろう。

   で、以下に"事情"を記す。ニホンイタチのRDB(レッドデータブック)ランクは、国際機関IUCNと日本環境省とでずれがある。それが問題の発端だ。IUCNでは最近NT(準絶滅危惧)に格上げになったが、日本ではその下のランクのままなのである。そして環境省に意見を具申する日本哺乳類学会RDB委員会…とりわけ会長の石井信夫(東京女子大学)は、IUCNの格上げに対して不快感を示しているようだ。佐々木の発言から、そのことが窺えた。

   この件で発言したのは私と佐々木と、そして金子の3人だけだった。それではミーティングの体を成してないゆえ心外だったが、まあ仕方ない。佐々木は石井の論を代弁する形で、「IUCNはニホンイタチを再び格下げすべし」と述べた。私はそれと真逆で、「環境省もニホンイタチを(IUCNに合わせて)NTに格上げすべし」という論である。金子は私の論に賛同しつつも、「IUCNと環境省とで判断が違っても仕方ない」というスタンスである。ならば佐々木は、反の論を私にぶつけるべきだろう。だが彼は何故かそれを回避し、金子を標的とした。それで話がおかしくなってしまったのである。

    で、この場で改めて石井の主張に反論する。佐々木は石井の論を代弁しているだけで、彼自身の本音を語ってないと思うからだ。その石井の論を一言で言えば、「ニホンイタチの現状はヤバくない。山にはいっぱいいるから」である。この論は、暗に「平野部では減少傾向にある」ことを認めることになるだろう。そして「 山にはいる」とはいえ、それは「限られた範囲で、その範囲は狭まりつつある」と私は思うのだ。この私の主張は"印象"のようなものであり、確たるデータは無い。でも「いや、狭まってない」とするのは"悪魔の証明"であり、それを実践するのは難しい。「利は我にあり」である。

   雑駁な調査だが…私は罠を用いてのラインセンサス調査で、ニホンイタチの密度を約1頭/kmと見積もった。だがその調査地は、私が「ニホンイタチが多そうだ」と判断して選んだ環境だ。そのような環境が「この10年間というもの、減っている」というのが、私の見立てである。「少なそうな環境」ではセンサスをしていないので、情報不足の感は否めない。だが"安全原則"により「やばいのでは?」と見立ててNT指定し、そのお墨付きを得て調査する。その結果が「やばくない」であればNT指定を解除する。その手続きを踏んでも、罰は当たるまい。

   そもそもRDB指定というのは種を保全するための"手段"であって、それ自体が"目的"ではないのである。石井はそのことを勘違いしているのではないか?。あるいは石井においては「動物のこと」はどうでもよく、「己の見栄」が多くを占めているのかもしれない。で、私は、司馬遼太郎の「坂の上の雲」における児玉源太郎の台詞を想起する。旅順の戦場で愚昧な少佐参謀に言い放った、「国家は貴官を大学校に学ばせた。貴官の栄達のために学ばせたのではない」…という台詞をである。

   ちなみに私の調査は専ら西日本におけるものである。東日本の状況は知らない。最近関東平野で糞採集調査が(あちこちで)行われていて、まあそこそこの数が採取されているようだ。だが罠捕獲調査は殆ど行われておらず、糞から密度を推定する試みは為されていないのである。そして糞がそこそこ採れる場所は、「多そうな環境を選んだもの」ではあるまいか?。広域的に粗密を調べての後でなければ、「関東平野では安泰」とは言い得まい。"分布の集中"現象の忘却は、動物生態の調査者がしばしば陥る穽である。

   それともう一つ、ニホンイタチの雌が「極めて異様な動物」である事象がある。体重平均が雄の約25%というのは、陸棲哺乳類としては世界最大だ。そして罠捕獲率と行動圏サイズは、いずれも雄の約10%である。罠で滅多に捕れなくとも、実際の個体数も同程度に少ないとはむろん言い得ない。だが「 雄は安泰でも雌はやばい」のことは有り得るだろう。ちなみに前出の密度1頭/kmは、雄限定の切り捨て数字だ。雌の密度は、約0.1頭/kmである。

   石井信夫が斯様な事実を知っているか否かは定かでないが…その脳中には、「論よりも感情」が多くを占めているように思えなくもない。ひとつの仮説だが、石井は私に対して含むところがあるのではないか?。私が嫌いな故、ニホンイタチも嫌うのではないか?。私は本来、このような"自意識過剰的"発想をする人間じゃない。そして、私と石井との接点は極めて少ない。けれども40年程前の「ある出来事」に、思い当たる節があるのだ。石川県の名人猟師若村進氏(故人)が絡む件で、そのことで私は「石井に嫌われた」可能性がある。私の方は「馬鹿な奴だ」と思っただけで、そのことを忘れていた。でも粘着質(であると思われる)石井は、今なおそのことを根に持っているのではないか?。だとしたら、私は声を大にして言いたい。「私を嫌ってもよいから、ニホンイタチを嫌いにならないで」…と、である。むろんこれは、前田敦子の言「私を嫌ってもよいから、AKB48を嫌いにならないで」のパクリだ。

   あるいはこの仮説はやはり私の自意識過剰で、石井は(私とは関係なく)「単にニホンイタチが嫌いなだけ」かもしれない。だとしたらそれは何故なのか?。彼自身の研究キャリアにイタチは関係しないから、その理由がわかりにくい。それで私は、もうひとつの仮説を設定する。元凶は、鳥類学者の樋口広芳(東京大学元教授)ではあるまいか?。樋口がニホンイタチを嫌っていることは確実だ。私は、本ブログの第3話「ウグイスとニホンイタチ、どちらが大事か?」でそのことを暴露した。その樋口と石井は、東大農学部農業生物学研究室の同門なのである。つるんでいてもおかしくない。

   この仮説の詳細は別稿にて記す。此処では…あの「赤トンボ殺人事件」に、東大(農生研)の陰湿な体質が関係することを指摘するのみに留める。

   ニホンアナグマの件では、"ビックリ"の事態には至らなかった。ニホンイタチの件では発言しなかった塚田英晴が「ともかく被害実態を調べる必要あり」と述べ、出席者全員がそれに同意した。ちなみに私は、「農業被害のことはかなり怪しい」と思っている。針小棒大的に(他種の行いの濡衣も含めて)言いたてているのではないか?。真の目的はジビエ…即ち、食肉利用による"金儲け"ではないか?。この仮説は本ブログの第43話「鹿児島県におけるニホンアナグマ捕殺のこと」で述べたので、お読み頂ければ幸いである。関連事は第46話と第66話、ならびに第108話でも論じている。

   以下は話題を転じて、ポスター発表のことを記す。コアタイム(昼の1時間に発表者がポスターの前に立って応対)に、私は3人の発表者と会話した。いずれも女子である。

   まずは、鈴木千尋(帯広畜産大学)の「CTを用いたニホンオオカミの頭蓋の定量的分析」。佐々木基樹(帯広畜産大学)、遠藤秀紀(国立科博)他7名の共同研究だが、アイデアを出したのは指導教官の佐々木と思われる。

   そのアイデアは秀逸だ。頭骨の形態比較をする場合、普通その外部のsizeとshapeが指標となる。内部構造は、壊さずとも測れる脳容積止まりだ。私は以前、太田恭子(当時名古屋大学大学院生)と共同でニホンイタチとシベリアイタチの頭骨形態を比較したことがあるのだが…その時もそうだった。だが鈴木(等)は、頭骨を壊さないと調べられない前頭洞容積に着目したのである。私も太田も、そのようなことは思いつきもしなかった。秀逸ならざるであり…つまり、我々は"凡庸"だったのだ。

  ちなみに前頭洞とは、前頭葉のことではない。副鼻腔の一つであり、人間では顔面中央(鼻の基部)の奥にある。所謂蓄膿は、この部分が炎症を起こすのだ。

   CTスキャナーを用いての鈴木の分析結果では、前頭洞容積は「ニホンオオカミが極端に小さい」とのことである。対して秋田犬は値が最大で、大陸産のハイイロオオカミがそれに次ぐ。なかなか面白い結果だ。

   個体差の有無を検討する必要があるし、機能的意味を考える必要もあるだろう。後者については、比較の対象を広げるとよいのではないか。イヌ科の他種はどうだろう?。あるいは、「ニホンイタチとシベリアイタチ(ならびに各種の雌と雄)で差はあるか?」と思う。ネコ科やジャコウネコ科と比較するのも面白い。Carnivora以外の哺乳類ではどうか?。哺乳類の枠を飛び出すのもよいだろう。

   「イタチ君  胴長短足  我が友よ  付き合い長く  心未だ見ず」…以前短歌に詠んだこの気分は、今も変わらない。でも以前より「少しは読める」になれたのは、私がいろいろな動物に関心を向けるようになってからだ。バン、カイツブリ、ヤマビル、そしてセミ類…の生態を(ささやかながらも)知ることで視野が広がり、そのことで"イタチを見る目"が少し変わったことを自覚する。

   次は、高山夏鈴(東京農業大学)の「シカ防護柵が各哺乳類に与える影響」。田村典子(森林総研:リスの研究者)、山崎晃司(東京農業大学:クマの研究者)が名を連ねる。柵の前にビデオカメラを設置し、「中型哺乳類とイノシシの移動も柵で妨げられる」ことが明らかになった。イノシシの場合、樹脂ネットは破壊する行動が認められたという。そして今後の対応として、「中型哺乳類御用達の通路」を(柵の下に)設けることが提案された。 イノシシについては"頑丈な柵を用いるしかない"という。それは高価だが、"安物買いは銭失い"ということですね。

   そしてもうひとつは、小嶋愛香(東京農業大学)の「ムササビの糞DNA解析の手法確立」。共同研究者は和久大介(東京農業大学)と、清水海渡(神奈川県公園協会)である。ムササビの糞は"正露丸"の愛称があり、他種が排泄した糞と紛らわしくない。「なのに何故?」と思ったが、DNAで種を判別するということではないようだ。個体識別が目的で…それは未だ成功していないようだが、「遺伝集団の判別は出来る」とのことである。

   小嶋には「ムササビのRDBランクは如何?」と聞いてみた。NT指定にはなっておらず…将来も(現状にさしたる変化が無ければ)その必要が無いだろうというのが、彼女の見解である。う〜ん、しかしそれはどうだろう?。遺伝集団が峻別される程に個体群が分断されているならば、"安全原則"からしてNT指定しても良いのではないか?。むろん書類上で「ヤバいです」と宣言するだけでは意味が無い。それに乗っ取って、「対策を講じる」ことが必要だ。だがそのことを此の場で主張しても仕方ないかと思い、小嶋をそれ以上追及することはしなかった。

   2日と半日に渡って大会に参加しての総合的感想は、「女子が増えたな」ということだ。とりわけ20代では、女子の方が多いのではないか。それは大変に結構なことである。平均的な(サンプルは多くない)印象では、「最近の日本の若者は女子の方が優秀」と思う。あるいは"真摯"とも言いうる。思想家松田道雄は晩年に、「私は女性にしか期待しない」という著書を(岩波新書から)出した。自身も晩年と自覚する私は、いま似た気分を持つのだ…という話、以前にもしたかな?。

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