渡辺茂樹のいたちものがかり

ニホンイタチをこよなく愛するアスワット顧問/動物学者・渡辺茂樹のブログです!

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カワウソのみせ


イメージ 1   京都の寺町通りに カワウソ喫茶が出来た。住所は京都市中京区式部町259ー1の舟木ビル2Fで、三条と四条の中間あたりである。少し前までは"フクロウのみせ"があったルームで、それが店じまいして半年ほど後にオープンした。従業員は全て女性だったが、オーナー(不在)は男性らしい。客は私が入室した時は女性一人のみだったが、やがて10人程に増えた。私以外は全て女性で、異国びともいた。あ、入店料は1時間1500円である。その額はまあ妥当かな。でも…「これ、私の3食分だな」と、思ってしまった。

   在籍のカワウソは全てコツメカワウソAonyx  cinereaだ。カワウソ類の中では比較的小型のこの種は、アジア東南部に広く分布する。国別では…中国(大陸東南部と海南島)、ベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、マレーシア、インドネシア(スマトラとボルネオとジャワ)、ミャンマー、バングラデュ、ブータン、ネパール、そしてインド(ネパール国境とアッサム地方とデカン高原西縁)である。台湾とフィリピンにはいない。RDB(レッドデータブック)ランクはVUである。

    この店にいる個体は全6頭で…内訳は成雄2、成雌2、そして幼雌2だ。幼雌2が双子である他は、血縁無しという。いまペットショップでコツメカワウソは大人気で、「早い者勝ち」とのことだ。そのルーツが少しく気になる。値段のことは、教えてくれなかった。「お客さんに売ることはありますか?」の質問には言葉を濁した。"フクロウのみせ"では即売する雰囲気だったが、少なくともそれはしてないようである。

   成獣の齢は聞きそびれたが、「これ以上は大きくならない」とのことである。体重は成雄が5〜6kgで、成雌は4kg前後だという。幼雌の体重は400g程で、いま生後1ヶ月半。店に来たのは半月前で、体重はその時に比べて倍増したという。それでもルックスは"如何にもこども"だ(写真1)。まずもって、"頭でっかち"である。そして、眼が(顔全体の面積に比して)ちっこい。鼻先が尖りが少ないこともある。 頭と鼻先のことは多くの哺乳類(の幼と成の相違)に共通すると思うのだが、眼の(相対的な)大きさはどうだろう?。とりあえず、ニホンイタチとシベリアイタチには共通する。イヌとネコはどうだろう?(わからん)。ヒトでは違うな。ニホンザルの幼獣も、眼がちっこくないように思う。

   餌はキャットフードで統一しているという。ドックフードを使わないのは、「カワウソはイヌよりネコに近いから」と、従業員は説明した。え?、そうだったけかな?…上科のレベルでは、イタチ科(カワウソを含む)はイヌに近かったのではないか?。ただ、昨今のDNA分類学では違うかもしれない。そもそも、分類学的類縁性と栄養要求性は必ずしも一致しないと思うのだが…このことはそれ以上追求しなかった。

   幼獣に与えるミルクも、やはりネコ用だという。生後1ヶ月半だとそろそろ離乳食を交えた方が良いのではと思うのだが、よくは分からない。イタチでどうであるかは、知らない。イヌやネコではどうだろう?。ヒトは?…と疑問が広がって、改めて己の無知を痛感する。

   「どれくらい生きるものですか?」と、従業員に尋ねた。10年程と聞いているとのことだった。野生での寿命は分かっていない筈だから、聞くだけヤボというものである。印象的だったのは、「病気になっても、獣医が診てくれない」ということ。え?、そうなのか?。野生動物の研究室がある日獣医大や麻布大でも、そうなのだろうか(?)。ただ近畿の大学は、獣医学が弱体だな。京産大の新設要請は、安倍晋三に蹴られてしまった。いっそ、加計獣医(岡山理科大学獣医学部)はどうだろう?。「世界最先端」を自称するならば、カワウソの病を治せてよい筈である。イメージ 2

   幼雌2頭は透明プラスチック箱に入れてあり、客には「触らないで」という注文がつけられている。成雄2頭はガラス越しの別室で、客との触れ合いはやはり出来ない(写真2)。人指を噛むことがあるからだという。成雌1頭は良く慣れていて、胴輪が付けられている。そしてその端を従業員が持ち、客との"触れ合い"をさせている(写真3)。「触ってもよいですよ」と言われたが、私は断った。野生哺乳類には(ペット化されている個体でも)みだりに触れないのが、その研究者の基本的スタンスと思うからだ。

イメージ 3   従業員はその成雌のおでこを撫で、「こうすると喜ぶのですよ」と言う。だが私は、「そうだろうか?」と思った。喜ぶ"ふり"をして、人間を喜ばせているのではなかろうか。この"読心"にはさほどの自信は無いが、「この娘(こ)は、我々が思う以上に人間の心を読んでいる」と思えた。決して触れずに"眺めているだけ"の私には、寄って来ない。寄りかけてチラリと私の顔を見上げたが、すぐに離脱した。触れて喜ぶ女性客の足元にはまとわりつき、あげくはスカートの中に入ろうとする。嗚呼羨ましい(冗談です)。従業員は「こうするのが好きなのですよ」と言うのだが、私にはそうは思えなかった。客が「そうされるのが好き」なことを承知していて、サービス精神を発揮しているのだ。別室の"噛むこともある"成雄はサービスが苦手で、マイペースなのだろう。あ、ただ、成雌の方も、それなりにマイペースのように思える。サービスの仕方がある意味"自分勝手"なのだ。このことは、フェレットにも共通する。イヌやネコのサービスは(比較して)自己犠牲的である。

イメージ 4   もう1頭の成雌もよく慣れているとのことだが、彼女は別の役割が与えられていた。水槽付きの別室で、"泳ぎ"を見せていた(写真4)。いま、上手に泳げるのはこの雌だけだという。泳法は体を上下に波打たせるもので、つまりバタフライだ。狭い水槽内を(一方向のみ)何度か繰り返し泳ぎ、しばし休息する。この行動も「 客が好むから」だろう。ただ客が視線を向けてなくても泳ぐので、やはり"それなりにマイペース"だ。

   睡眠は10時間とのことで、かなり長い。野生状態ではどうだろう?(わからん)。成獣4頭は一塊になって(毛布の中で)寝るそうだが、これは「野生状態では違う」ような気がする。飼育下では(やむなく?)親和性が大になる。そのことで"弊害が出る"ように思える。従業員の話では、コツメカワウソは飼育下で繁殖させるのが難しいという。それは、雌雄の親和性が過剰に高まる結果ではないか?。日常的に(過剰に)仲が良い雌雄間では、性欲が湧かないのだ。それはニホンザルの社会であることであり…人間社会でも、思い当たる人が多いのじゃないかと思う。

   肛門嚢は無いか、有っても小さいようである。飼育フェレットは出生直後に肛門嚢を切除するが、コツメカワウソではその必要は無いらしい。そして体全体の体臭も薄い。おそらくこの動物は匂いによるコミュニケーションをあまり行わない。そのぶん音声コミュニケーションが発達していると思われ、実によく"鳴く"のである。鳴声は(少なくとも)"チュンチュン"と"ギャアギャア"の2パターンがあるが、従業員は「5パターンは聞き分けられます」とのことである。"流石"だが…音波検出器を備えれば、我々もドリトル先生になれるかもしれない。なお佐々木浩(筑紫女学園大学)によれば、欧米ではコツメカワウソの音声コミュニケーションの論文がかなり出ているという。でも落胆することはあるまい。飼育の仕方によって、会話の内容はかなり変わるのではないか?。欧米の研究者は動物園と野外でしか調査してなくて、カワウソ喫茶は念頭外ではないかと思うのである。カワウソ喫茶における会話は…宮沢賢治の「オッペルと象」におけるトークのようなものでは?、と想像する。

   なおコツメカワウソは、口を殆ど開けずに発声することが出来る。その鼻声のボリュームはかなり大きく、そしてその時に鼻翼は殆ど振動しない。「器用なことをする」と思った。

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