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ニホンイタチをこよなく愛するアスワット顧問/動物学者・渡辺茂樹のブログです!

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動物学者石井信夫



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   ニホンイタチを環境省でも(IUCN同様に)NT指定すべきという私の論について、石井信夫(1952ー)は強固な反対論者であるらしい。私が(40年前に)一度会っただけのこの男は東大農学部の出で、現在は東京女子大学の教授だ。

   古に私が石井と会った場所は、石川県の小松市だ。私が当時師事していた名人猟師の若村進氏(故人)より、「東京からこれこれこういう男が来るのだが、どうしたものか?」と相談されたのである。全国的には無名の若村氏を石井がなぜ知ったかというと、それは私の先輩である保全生物学者:花井正光(1944ー)のつてだと思う。

   石井が若村氏に何を依頼するつもりだったか、明確には覚えていない。ただ多分、「小松で捕ったニホンイタチを能登に運んで放して、元の場所に戻るか否かを調べる」…であったような気がする。「そんなことして何の意味がある?」と私は思い、「ま、いいけど、ならば自分で捕れよな」(若村氏を煩わせることは無いだろ!)とも思った。それで私は駅前のホテルで石井に会い、彼の「心得違い」をやんわりと窘めた。若村氏が石井とどういう会話をしたかは知らないが、たぶん(調査協力依頼を)断ったのじゃないかと思う。そして以後、石井は二度と小松に現れなかった(と思う)。

  以来私は、石井信夫なる者がこの世に存在することを失念していた。最近、「あ、そういえば、そういう男がいたな」と思い出し…ネットで検索したら、ドーンとヒットした。自称「希少種保存、外来種管理、哺乳類の生態が専門」とのことである。へえ、そうなんだ。トンジョでの授業は…前期が「応用生態学」、「自然科学講究」、「環境と社会」、「生物と環境」で、後期は「生物学概論」、「応用生態学」、「進化生物学」、「自然科学講究」、「進化生物学入門」で、前期と後期の違いが不鮮明である。

  学位論文は「小哺乳類3種の個体群動態と社会構造」で…由井正敏ほか「林業と野生鳥獣との共存に向けて:森林性鳥獣の生息環境保護管理」、阿部永ほか「日本の哺乳類」等の共著本がある。2009年に出た大著"The  Wild  Mammals  of  Japan"でも分担執筆していて…彼の担当はDymecodon  pilirostris(ヒメヒミズ)、Urotrichus  talpoides(ヒミズ)、そして外来種のErinaceus  amurensis(アムールハリネズミ)だ。つまり石井が詳しいのはSoricomorpha(食虫目)であって、Mustelidae(食肉目イタチ科)の調査歴は無いと思う。

  なのにRDB(レッド・データ・ブック)の赤本では…石井はMustela(イタチ属)3種と、Martes(テン属)1種をRDB記載している。シベリアイタチの地域個体群ツシマイタチ(石井はチョウセンイタチと記)、オコジョの亜種ホンドオコジョ、イイズナの亜種ニホンイイズナ、そしてニホンテンの亜種ツシマテンだ。石井が決めたRDBランクは…ツシマイタチとホンドオコジョとツシマテンがNTで、ニホンイイズナのみはLP(絶滅の恐れがある地域個体群)だ。なお他には…オコジョの亜種エゾオコジョを阿部永、クロテン(ユーラシア共通種)の亜種エゾクロテンを村上隆広が執筆を担当し、いずれもNT扱いである。ちなみにシベリアイタチとオコジョとイイズナはユーラシア共通種で、ニホンテンのみが日本固有種だ。

   石井がMustelidae(イタチ科)の4種をRDB記載した理由を記す。まずツシマイタチのこと。それは広域分布種シベリアイタチの唯一の「在来」個体群であり、また個体数減少傾向が認められることがNT指定の理由だ。ならばNTよりもLPとするのが妥当ではないか?。ただツシマイタチのミトコンドリアDNAは、西日本の都市部に分布するシベリアイタチと異なる。増田隆一(北海道大学)により明らかになったこの興味ある事実に拠れば、ツシマイタチを(固有遺伝集団として)NT記載してもよいだろう。けれどこの興味ある事実に、石井は着目していない。

   残りの3種のこと。ホンドオコジョはエゾオコジョとshapeが異なることに、石井は注目している。ニホンイイズナは核型がエゾイイズナと異なることに注目し、そしてツシマテンはcolorが(「本土」の)ニホンテンとかなり異なることを強調する。ただ「本土」のニホンテンも、キテンとスステンはcolorが別種ほどに異なる。けれどもDNAの顕著な差は無い。そのことはツシマテンも同様である。

  ツシマテンは、ツシマイタチと違って個体数減少傾向が顕著でないようだ。ならばNTに相当しないのではあるまいか?。ただし島嶼個体群であるので、LP(絶滅の恐れのある地域個体群)にすることはあり得る。そしてツシマテンをLP指定するならば、スステンもそうすべきだろう。このcolorの分布は、西南日本の比較的狭い地域に限られるからだ。

  話を転じてニホンイタチのこと。まずは「そもそも日本国環境省はNTをどのように定義しているか」を記す。それは、「現時点で絶滅の恐れは無いが、生息条件の悪化によって絶滅危惧になりうる」だ。ならばこの定義は、ニホンイタチに適用しうるだろう。少なくとも西日本では(私の知る限り)、近年平野部でその生活痕跡が減少しているのだ。そして山地(とりわけ里山)では尾根に少なく、谷にはまあそこそこ有る。だが最近、「良好な谷」が減りつつあるのである。

    私は、ニホンイタチの繁殖巣と其処での(雌のみの)育児行動を見たことがある稀な日本人だ。だが前世紀末に、その環境は破壊された。新たな繁殖巣は、見い出し得ていない。そのことも、私が「ニホンイタチはやばい」と思うことの根拠である。

   ちなみにニホンイタチのDNAのこと。やはり増田隆一の調査で判明したことだが、四国ならびに九州のニホンイタチのミトコンドリアDNAは、本州のニホンイタチのそれと僅かに異なる。増田はそのことを、古瀬戸内海の隔離によるものと解釈する。もし西日本の環境破壊が東日本よりも顕著ならば(そうとも言えないようにも思うが)…とりあえず、"シコクキュウシュウニホンイタチ"のみをNT指定してはどうか?。私らしからぬ生温い提案だが、なんとかも方便で(とりあえず)そう思う。

   話を戻す。最近私は、特定外来生物法についての関心が大である。この法律は2004年に制定されて2005年に施行されたが、石井信夫は制定を推進したメンバーの一人だ(他に石井実・太田英利・山極寿一など)。ナチスの人種差別法(ニュルンベルク法)真っ青のこの法に関わった者が一方で保全を語ることに、私は危機感を覚える。その言動は、ダブルスタンダードとしか思えないからだ。

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イメージ 1   本ブログの第109話「ミヤコカナヘビとニホンイタチ」にて私は、哺乳類科学の最新号に出た論文の非科学性を弾劾した。その後に私は、「この論文の錯誤の原点は長谷川雅美にある」と気づいた。ちなみに長谷川は現在東邦大学の教授だが、偉大な鳥学者:長谷川博(同大学名誉教授)とは赤の他人だ。そして博が京大系(理学部動物学教室川那部研出自)であるのに対して、雅美は東大系である。自身は東大出ではないが、樋口広芳(東大農学部名誉教授)の強い影響下にあった人だ。東邦大学に勤められたのは、そのコネだろう。

  本稿では長谷川雅美が「群集生態学の現在」(山本智子ほか編:京都大学学術出版会、2001)で担当した一つの章を紹介し、そして批評する。京大は(東大と違って)同門の者だけで固まらないのが伝統であり、そのスタンスは本書でも変わっていないのだ。その章のタイトルは、「食物連鎖の構造と移入種の影響:島嶼生態系」である。

  長谷川(以下雅美のみを指す)は、本来は"生態系生態学者"ではなかった。伊豆諸島の固有種:オカダトカゲの"種生態"を、三宅島で調査・研究していた人である。そして、ニホンイタチに移入によってオカダトカゲの個体群は壊滅的打撃を受けた(と長谷川は主張する)。ならば「今後はニホンイタチの種生態を調査する」と発想しても良さそうだが、彼はそうしなかった。そして、生態系生態学者に転向した(この時は)。その間の事情を、以下のように記している。

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   筆者が、島嶼生態系に対する移入種の影響を扱うようになったのは、三宅島のオカダトカゲが移入されたホンドイタチによって壊滅的打撃を受け、研究対象を失ったのがきっかけである。たまたまイタチの導入前から三宅島のオカダトカゲの生活史や餌資源を研究していたため、オカダトカゲそのものを研究することができなくなった後も、イタチの罪状を世間に突きつけたいという一心で三宅島に通ってきた。今回提示した島嶼生態系の観測方法は、イタチの影響評価を試行錯誤するなかで整理したものである。
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   イタチの「罪状」ですか。科学者が使う語じゃねえな。そもそも長谷川が用いている和名"ホンドイタチ"は、哺乳類学会では(2001年の段階で)死語になっている。"ニホンイタチ"が正式和名だ。なのに敢えて死語を用いることに、長谷川の本種に対する"敵意"が読み取れる。

  ま、それはさておき(誹謗中傷的言い方は望むところでない)…本書における長谷川の述は、マッカーサーの"島の生物の平衡理論"の解説から始まる。出典はMacArtur&Wilson(1967)で、1971年に日本語訳が出ている。平衡(なんてものが実在するか否か私は疑問に思うが)の状態での種数を"平衡種数"と称し…「平衡種数に変化がなくとも、島の生物相を構成する種は常に変化しており、それゆえ動的な平衡状態にある」と考える。そして、「平衡種数Sは島の面積Sの関数で、SはAの二乗とCの積と経験的に表せる。ここで、CとZはともに定数で、後者は面積に対する種数を両対数で直線回帰した時の傾きになる。CとZの値は生物のグループと地域によって異なる」…と理論展開する。「種の供給源に近くて大きな島では移入率が高く絶滅率が低くなるので平衡種数は高くなり、遠くて小さな島は移入率が低く、絶滅率が高いので平衡種数が低く押さえられる」という述もある。高尚のように見えて案外凡庸なこの論が三宅島のニホンイタチと何の関係があるかというと、あんまり関係無いと思う。それでも、斯様な"虚仮威し"が延々10ページに渡って続く。"本論"はその後の10ページで、そのタイトルは「伊豆諸島における移入種の影響」だ。文節は「まえがき」と「肉食性哺乳類の移入とその影響」と「捕食圧の違いに応じた行動と生活史の変化」と「おわりに」の4つのパーツから成り、"イタチの罪状"云々は最終パーツで述べられている。

   さて、伊豆諸島の"生態系"のことだが、長谷川は"食物連鎖の頂点に立つ動物は何か"によって3つのパターンに分類する。ニホンイタチが頂点の大島(此処の個体群のみは在来)、ヘビ類が頂点の新島と式根島と神津島、鳥類(猛禽)が頂点の三宅島と青ヶ島。ただし三宅島では(1982年に)ニホンイタチが入り、様相が変わる。ちなみにニホンイタチが頂点の大島では、ヘビも猛禽も少ないという。そしてヘビが頂点の新島等では猛禽が少なく、青ヶ島では猛禽が高密度だという。ならば、三宅島の生態系は今後は大島に似た状態で安定する…それだけのことではあるまいか?。ちなみにオカダトカゲは三宅島のみの固有種ではない。大島、利島、御蔵島、神津島、式根島、青ヶ島にも分布する。

   三宅島にニホンイタチが導入されたのは「ネズミ防除のため」だが、他にも同じことが行われた島がある。うち青ヶ島は(三宅島と同様に)"ヘビがいない島"で、八丈島と利島は"ヘビがいる島"だという。そして…在来のニホンイタチがいる大島と、"ニホンイタチはいないがヘビが高密度に棲息する"神津島と新島では、"ネズミの農業被害は少ない"とのことだ。ならば三宅島では、「ニホンイタチの導入により、ネズミ防除の効果が上がった」のではないか?。地元住民にすれば、「オカダトカゲの保全よりもその方が重要」だろう。なのにニホンイタチを一方的に敵視するのは、"罰当たり"のように思える。

   ところでニホンイタチは、"雌は罠で捕えにくい"動物だ。三宅島等に移入されたニホンイタチの雌は何頭ほどで、どのようにして捕えたか?。私が大いなる関心を有するこの疑問に、長谷川は全く関心が無いようである。

   以下暫くは、三宅島(のみ)の話だ。ニホンイタチが導入された1982年以降、オカダトカゲの目撃頻度(頭/hour)は激減したという。それまでは値が100(頭/hour)を下回ることはなかったのだが、1985年には3(頭/hour)、1987年には0.5(頭/hour)に激減し、1992〜1995年はいずれもゼロであったとのことだ。対してニホンイタチの目撃頻度は移入年の1982年はゼロだったが、1985年には0.7(頭/day)、1982年には1(頭/day)の値を示す。1993年には0.15(頭/day)に減少するが、1995年には再び1(頭/day)に戻る。そして1998年には0.3(頭/day)に減り、以後は不明だ。

  ニホンイタチの糞中にオカダトカゲが含まれる割合(出現頻度)も調べられた。1984年は65%(サンプル数54)と高率だが、1987年は5%(サンプル数24)、1993年には2%(サンプル数47)と急減している。ちなみに宮古島の「ニホンイタチの糞72個中に2個(がミヤコカナヘビ含有)」は、3%弱である。

   この値をどう読むかだが…そもそも、"目撃頻度"という個体数推定法は問題がある。長谷川が調査にどれくらいの時間を費やしたかが示されていないのも、よろしくない。ただ、ニホンイタチの目撃頻度が1(頭/day)であるのは(それがもし連日ならば)、高率だ。0.3(頭/day)であってもである。けれどその状態がずっと続くというのは、考えにくい。

   そして、オカダトカゲの(ニホンイタチ導入以前の)100以上(頭/hour)という値も異様な高率である。この島は、ニホンイタチが入る前は「トカゲのパラダイス」だったのだろう。それが、それ以後は"本土並になった"ということだけではないか?。ニホンイタチも"低めで安定した"のではないかと思う。

   ちなみに私は、長谷川とは全く面識が無い。対して、"2000年の噴火の後のイタチの食性の変化"を調査した上杉哲雄(元東大樋口研院生)は旧知の人である。彼は長谷川が調査を止めた1995年以降の状況について、「オカダトカゲは、多くはないがいる」と言っていた。そして彼は、ニホンイタチの罠捕獲調査をやりたがっていた。前者は「オカダトカゲもニホンイタチも低密度で安定し、新たな生態系が成立した」ことを意味するのだろう。そして後者は、上杉が「長谷川のニホンイタチの密度推定法を信用していない」ことの顕れだと思う。だがいずれも、「ニホンイタチを敵視し、"駆除"したがっている」樋口広芳の意向にそぐわない。だから彼は、"研究室を追われた"のである(たぶん)。

   樋口は鳥学者だ。そして彼が"大好き"なアカコッコ(地上営巣するツグミ科の鳥)は、ニホンイタチ導入後に半分に減少した。その値は、オカダトカゲの目撃頻度の)減少率よりも遥かに少ないのである。ちなみに利島のニホンイタチ導入は1920年と古いが、オカダトカゲは少なくないようだ。あるいは三宅島も、いずれはそうなるかもしれない。

   つまりマッカーサー流に言えば…三宅島の生態系は、ニホンイタチ移入後に「平衡定数が高くなった」のだ。移入のニホンイタチが定着し、絶滅した種は無い(と思われる)からだ。だからマッカーサーを引用して"ニホンイタチを弾劾"しようとした長谷川は、自縄自縛に陥ったのである。本人もそれに気づいたようで、屁理屈を組み立てる。以下がそれだ。「イタチの移入は、島の食物連鎖の最上位に捕食者を付け加え、連鎖の数が増えたことを意味する。しかし、移入直後こそ、土壌動物ーオカダトカゲーイタチという3段階の連鎖が成立したものの、10年後にはオカダトカゲがほとんど絶滅し、連鎖の数はもとの2段にもどってしまった。そればかりか、かつてオカダトカゲが多かった頃には普通に生息していた猛禽類のサシバがほとんど見られなくなってしまった。…(中略)…両者にはオカダトカゲという共通の餌資源をめぐる競争が起きたといえるだろう。すると、サシバがイタチに競争排除されたことになる」。

   この人の頭の中には、"悠久な時間の流れ"という概念が無いようだ。そもそも、"オカダトカゲは絶滅していない"のである。競争排除云々については、"データの裏付けが無い"。斯様な論理の組み立てを、「牽強付会」という。

   京大女子(現在は鹿児島大学教授)の山本智子は、長谷川と違って論理的思考が出来る(筈の)人である。その彼女が何故このようなお粗末論考を受理したのか、理解に苦しむ。あるいは、真面目に読まなかったのかもしれない。

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カワウソのみせ


イメージ 1   京都の寺町通りに カワウソ喫茶が出来た。住所は京都市中京区式部町259ー1の舟木ビル2Fで、三条と四条の中間あたりである。少し前までは"フクロウのみせ"があったルームで、それが店じまいして半年ほど後にオープンした。従業員は全て女性だったが、オーナー(不在)は男性らしい。客は私が入室した時は女性一人のみだったが、やがて10人程に増えた。私以外は全て女性で、異国びともいた。あ、入店料は1時間1500円である。その額はまあ妥当かな。でも…「これ、私の3食分だな」と、思ってしまった。

   在籍のカワウソは全てコツメカワウソAonyx  cinereaだ。カワウソ類の中では比較的小型のこの種は、アジア東南部に広く分布する。国別では…中国(大陸東南部と海南島)、ベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、マレーシア、インドネシア(スマトラとボルネオとジャワ)、ミャンマー、バングラデュ、ブータン、ネパール、そしてインド(ネパール国境とアッサム地方とデカン高原西縁)である。台湾とフィリピンにはいない。RDB(レッドデータブック)ランクはVUである。

    この店にいる個体は全6頭で…内訳は成雄2、成雌2、そして幼雌2だ。幼雌2が双子である他は、血縁無しという。いまペットショップでコツメカワウソは大人気で、「早い者勝ち」とのことだ。そのルーツが少しく気になる。値段のことは、教えてくれなかった。「お客さんに売ることはありますか?」の質問には言葉を濁した。"フクロウのみせ"では即売する雰囲気だったが、少なくともそれはしてないようである。

   成獣の齢は聞きそびれたが、「これ以上は大きくならない」とのことである。体重は成雄が5〜6kgで、成雌は4kg前後だという。幼雌の体重は400g程で、いま生後1ヶ月半。店に来たのは半月前で、体重はその時に比べて倍増したという。それでもルックスは"如何にもこども"だ(写真1)。まずもって、"頭でっかち"である。そして、眼が(顔全体の面積に比して)ちっこい。鼻先が尖りが少ないこともある。 頭と鼻先のことは多くの哺乳類(の幼と成の相違)に共通すると思うのだが、眼の(相対的な)大きさはどうだろう?。とりあえず、ニホンイタチとシベリアイタチには共通する。イヌとネコはどうだろう?(わからん)。ヒトでは違うな。ニホンザルの幼獣も、眼がちっこくないように思う。

   餌はキャットフードで統一しているという。ドックフードを使わないのは、「カワウソはイヌよりネコに近いから」と、従業員は説明した。え?、そうだったけかな?…上科のレベルでは、イタチ科(カワウソを含む)はイヌに近かったのではないか?。ただ、昨今のDNA分類学では違うかもしれない。そもそも、分類学的類縁性と栄養要求性は必ずしも一致しないと思うのだが…このことはそれ以上追求しなかった。

   幼獣に与えるミルクも、やはりネコ用だという。生後1ヶ月半だとそろそろ離乳食を交えた方が良いのではと思うのだが、よくは分からない。イタチでどうであるかは、知らない。イヌやネコではどうだろう?。ヒトは?…と疑問が広がって、改めて己の無知を痛感する。

   「どれくらい生きるものですか?」と、従業員に尋ねた。10年程と聞いているとのことだった。野生での寿命は分かっていない筈だから、聞くだけヤボというものである。印象的だったのは、「病気になっても、獣医が診てくれない」ということ。え?、そうなのか?。野生動物の研究室がある日獣医大や麻布大でも、そうなのだろうか(?)。ただ近畿の大学は、獣医学が弱体だな。京産大の新設要請は、安倍晋三に蹴られてしまった。いっそ、加計獣医(岡山理科大学獣医学部)はどうだろう?。「世界最先端」を自称するならば、カワウソの病を治せてよい筈である。イメージ 2

   幼雌2頭は透明プラスチック箱に入れてあり、客には「触らないで」という注文がつけられている。成雄2頭はガラス越しの別室で、客との触れ合いはやはり出来ない(写真2)。人指を噛むことがあるからだという。成雌1頭は良く慣れていて、胴輪が付けられている。そしてその端を従業員が持ち、客との"触れ合い"をさせている(写真3)。「触ってもよいですよ」と言われたが、私は断った。野生哺乳類には(ペット化されている個体でも)みだりに触れないのが、その研究者の基本的スタンスと思うからだ。

イメージ 3   従業員はその成雌のおでこを撫で、「こうすると喜ぶのですよ」と言う。だが私は、「そうだろうか?」と思った。喜ぶ"ふり"をして、人間を喜ばせているのではなかろうか。この"読心"にはさほどの自信は無いが、「この娘(こ)は、我々が思う以上に人間の心を読んでいる」と思えた。決して触れずに"眺めているだけ"の私には、寄って来ない。寄りかけてチラリと私の顔を見上げたが、すぐに離脱した。触れて喜ぶ女性客の足元にはまとわりつき、あげくはスカートの中に入ろうとする。嗚呼羨ましい(冗談です)。従業員は「こうするのが好きなのですよ」と言うのだが、私にはそうは思えなかった。客が「そうされるのが好き」なことを承知していて、サービス精神を発揮しているのだ。別室の"噛むこともある"成雄はサービスが苦手で、マイペースなのだろう。あ、ただ、成雌の方も、それなりにマイペースのように思える。サービスの仕方がある意味"自分勝手"なのだ。このことは、フェレットにも共通する。イヌやネコのサービスは(比較して)自己犠牲的である。

イメージ 4   もう1頭の成雌もよく慣れているとのことだが、彼女は別の役割が与えられていた。水槽付きの別室で、"泳ぎ"を見せていた(写真4)。いま、上手に泳げるのはこの雌だけだという。泳法は体を上下に波打たせるもので、つまりバタフライだ。狭い水槽内を(一方向のみ)何度か繰り返し泳ぎ、しばし休息する。この行動も「 客が好むから」だろう。ただ客が視線を向けてなくても泳ぐので、やはり"それなりにマイペース"だ。

   睡眠は10時間とのことで、かなり長い。野生状態ではどうだろう?(わからん)。成獣4頭は一塊になって(毛布の中で)寝るそうだが、これは「野生状態では違う」ような気がする。飼育下では(やむなく?)親和性が大になる。そのことで"弊害が出る"ように思える。従業員の話では、コツメカワウソは飼育下で繁殖させるのが難しいという。それは、雌雄の親和性が過剰に高まる結果ではないか?。日常的に(過剰に)仲が良い雌雄間では、性欲が湧かないのだ。それはニホンザルの社会であることであり…人間社会でも、思い当たる人が多いのじゃないかと思う。

   肛門嚢は無いか、有っても小さいようである。飼育フェレットは出生直後に肛門嚢を切除するが、コツメカワウソではその必要は無いらしい。そして体全体の体臭も薄い。おそらくこの動物は匂いによるコミュニケーションをあまり行わない。そのぶん音声コミュニケーションが発達していると思われ、実によく"鳴く"のである。鳴声は(少なくとも)"チュンチュン"と"ギャアギャア"の2パターンがあるが、従業員は「5パターンは聞き分けられます」とのことである。"流石"だが…音波検出器を備えれば、我々もドリトル先生になれるかもしれない。なお佐々木浩(筑紫女学園大学)によれば、欧米ではコツメカワウソの音声コミュニケーションの論文がかなり出ているという。でも落胆することはあるまい。飼育の仕方によって、会話の内容はかなり変わるのではないか?。欧米の研究者は動物園と野外でしか調査してなくて、カワウソ喫茶は念頭外ではないかと思うのである。カワウソ喫茶における会話は…宮沢賢治の「オッペルと象」におけるトークのようなものでは?、と想像する。

   なおコツメカワウソは、口を殆ど開けずに発声することが出来る。その鼻声のボリュームはかなり大きく、そしてその時に鼻翼は殆ど振動しない。「器用なことをする」と思った。

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   初めにまず9月9日(日)の「中・小型食肉類ランチミーティング」のことを記す。ASWATのポスター発表と共に、其処で喋ることが私の本大会参加の主目的だった。テーマは「保全」であり…小型種ではニホンイタチ(のRDBランクのこと)と、中型種ではニホンアナグマ(の鹿児島県における大量虐殺)のことが語り合われた。問題提起者はニホンイタチが私で、ニホンアナグマは金子弥生(東京農工大学)である。

   "語り合い"といっても、発言者は限られていた。問題提起者以外で「論」を述べたのは、佐々木浩(筑紫女学園大学)と塚田英晴(麻布大学)ぐらいである。私が槍玉にあげた環境省からは酒向貴子が参加していたが、"論"と呼びうる程のことは語らなかった。そこそこの数が参加していた若手(20〜30代?)は、ほぼ無言であった。ひとつには、冒頭(のニホンイタチのRDBのこと)で佐々木と金子が激しく「やりあった」ことがある。若手は、それに「飲まれてしまった」のだろう。私の誘いで急遽参加した小林秀司(岡山理科大学)は、「はははは、いやあ、ビックリいたしました」との感想を(後日に)語った。中堅の年齢で「新世界ザルの新種の発見」という実績もある小林は、本来「学会でのやりあい」にビックリするほどウブではない筈だ。でも「事情をよく知らない」ことと、ランチミーティングという名称から「和やか」を連想した故にそう感じたのだろう。

   で、以下に"事情"を記す。ニホンイタチのRDB(レッドデータブック)ランクは、国際機関IUCNと日本環境省とでずれがある。それが問題の発端だ。IUCNでは最近NT(準絶滅危惧)に格上げになったが、日本ではその下のランクのままなのである。そして環境省に意見を具申する日本哺乳類学会RDB委員会…とりわけ会長の石井信夫(東京女子大学)は、IUCNの格上げに対して不快感を示しているようだ。佐々木の発言から、そのことが窺えた。

   この件で発言したのは私と佐々木と、そして金子の3人だけだった。それではミーティングの体を成してないゆえ心外だったが、まあ仕方ない。佐々木は石井の論を代弁する形で、「IUCNはニホンイタチを再び格下げすべし」と述べた。私はそれと真逆で、「環境省もニホンイタチを(IUCNに合わせて)NTに格上げすべし」という論である。金子は私の論に賛同しつつも、「IUCNと環境省とで判断が違っても仕方ない」というスタンスである。ならば佐々木は、反の論を私にぶつけるべきだろう。だが彼は何故かそれを回避し、金子を標的とした。それで話がおかしくなってしまったのである。

    で、この場で改めて石井の主張に反論する。佐々木は石井の論を代弁しているだけで、彼自身の本音を語ってないと思うからだ。その石井の論を一言で言えば、「ニホンイタチの現状はヤバくない。山にはいっぱいいるから」である。この論は、暗に「平野部では減少傾向にある」ことを認めることになるだろう。そして「 山にはいる」とはいえ、それは「限られた範囲で、その範囲は狭まりつつある」と私は思うのだ。この私の主張は"印象"のようなものであり、確たるデータは無い。でも「いや、狭まってない」とするのは"悪魔の証明"であり、それを実践するのは難しい。「利は我にあり」である。

   雑駁な調査だが…私は罠を用いてのラインセンサス調査で、ニホンイタチの密度を約1頭/kmと見積もった。だがその調査地は、私が「ニホンイタチが多そうだ」と判断して選んだ環境だ。そのような環境が「この10年間というもの、減っている」というのが、私の見立てである。「少なそうな環境」ではセンサスをしていないので、情報不足の感は否めない。だが"安全原則"により「やばいのでは?」と見立ててNT指定し、そのお墨付きを得て調査する。その結果が「やばくない」であればNT指定を解除する。その手続きを踏んでも、罰は当たるまい。

   そもそもRDB指定というのは種を保全するための"手段"であって、それ自体が"目的"ではないのである。石井はそのことを勘違いしているのではないか?。あるいは石井においては「動物のこと」はどうでもよく、「己の見栄」が多くを占めているのかもしれない。で、私は、司馬遼太郎の「坂の上の雲」における児玉源太郎の台詞を想起する。旅順の戦場で愚昧な少佐参謀に言い放った、「国家は貴官を大学校に学ばせた。貴官の栄達のために学ばせたのではない」…という台詞をである。

   ちなみに私の調査は専ら西日本におけるものである。東日本の状況は知らない。最近関東平野で糞採集調査が(あちこちで)行われていて、まあそこそこの数が採取されているようだ。だが罠捕獲調査は殆ど行われておらず、糞から密度を推定する試みは為されていないのである。そして糞がそこそこ採れる場所は、「多そうな環境を選んだもの」ではあるまいか?。広域的に粗密を調べての後でなければ、「関東平野では安泰」とは言い得まい。"分布の集中"現象の忘却は、動物生態の調査者がしばしば陥る穽である。

   それともう一つ、ニホンイタチの雌が「極めて異様な動物」である事象がある。体重平均が雄の約25%というのは、陸棲哺乳類としては世界最大だ。そして罠捕獲率と行動圏サイズは、いずれも雄の約10%である。罠で滅多に捕れなくとも、実際の個体数も同程度に少ないとはむろん言い得ない。だが「 雄は安泰でも雌はやばい」のことは有り得るだろう。ちなみに前出の密度1頭/kmは、雄限定の切り捨て数字だ。雌の密度は、約0.1頭/kmである。

   石井信夫が斯様な事実を知っているか否かは定かでないが…その脳中には、「論よりも感情」が多くを占めているように思えなくもない。ひとつの仮説だが、石井は私に対して含むところがあるのではないか?。私が嫌いな故、ニホンイタチも嫌うのではないか?。私は本来、このような"自意識過剰的"発想をする人間じゃない。そして、私と石井との接点は極めて少ない。けれども40年程前の「ある出来事」に、思い当たる節があるのだ。石川県の名人猟師若村進氏(故人)が絡む件で、そのことで私は「石井に嫌われた」可能性がある。私の方は「馬鹿な奴だ」と思っただけで、そのことを忘れていた。でも粘着質(であると思われる)石井は、今なおそのことを根に持っているのではないか?。だとしたら、私は声を大にして言いたい。「私を嫌ってもよいから、ニホンイタチを嫌いにならないで」…と、である。むろんこれは、前田敦子の言「私を嫌ってもよいから、AKB48を嫌いにならないで」のパクリだ。

   あるいはこの仮説はやはり私の自意識過剰で、石井は(私とは関係なく)「単にニホンイタチが嫌いなだけ」かもしれない。だとしたらそれは何故なのか?。彼自身の研究キャリアにイタチは関係しないから、その理由がわかりにくい。それで私は、もうひとつの仮説を設定する。元凶は、鳥類学者の樋口広芳(東京大学元教授)ではあるまいか?。樋口がニホンイタチを嫌っていることは確実だ。私は、本ブログの第3話「ウグイスとニホンイタチ、どちらが大事か?」でそのことを暴露した。その樋口と石井は、東大農学部農業生物学研究室の同門なのである。つるんでいてもおかしくない。

   この仮説の詳細は別稿にて記す。此処では…あの「赤トンボ殺人事件」に、東大(農生研)の陰湿な体質が関係することを指摘するのみに留める。

   ニホンアナグマの件では、"ビックリ"の事態には至らなかった。ニホンイタチの件では発言しなかった塚田英晴が「ともかく被害実態を調べる必要あり」と述べ、出席者全員がそれに同意した。ちなみに私は、「農業被害のことはかなり怪しい」と思っている。針小棒大的に(他種の行いの濡衣も含めて)言いたてているのではないか?。真の目的はジビエ…即ち、食肉利用による"金儲け"ではないか?。この仮説は本ブログの第43話「鹿児島県におけるニホンアナグマ捕殺のこと」で述べたので、お読み頂ければ幸いである。関連事は第46話と第66話、ならびに第108話でも論じている。

   以下は話題を転じて、ポスター発表のことを記す。コアタイム(昼の1時間に発表者がポスターの前に立って応対)に、私は3人の発表者と会話した。いずれも女子である。

   まずは、鈴木千尋(帯広畜産大学)の「CTを用いたニホンオオカミの頭蓋の定量的分析」。佐々木基樹(帯広畜産大学)、遠藤秀紀(国立科博)他7名の共同研究だが、アイデアを出したのは指導教官の佐々木と思われる。

   そのアイデアは秀逸だ。頭骨の形態比較をする場合、普通その外部のsizeとshapeが指標となる。内部構造は、壊さずとも測れる脳容積止まりだ。私は以前、太田恭子(当時名古屋大学大学院生)と共同でニホンイタチとシベリアイタチの頭骨形態を比較したことがあるのだが…その時もそうだった。だが鈴木(等)は、頭骨を壊さないと調べられない前頭洞容積に着目したのである。私も太田も、そのようなことは思いつきもしなかった。秀逸ならざるであり…つまり、我々は"凡庸"だったのだ。

  ちなみに前頭洞とは、前頭葉のことではない。副鼻腔の一つであり、人間では顔面中央(鼻の基部)の奥にある。所謂蓄膿は、この部分が炎症を起こすのだ。

   CTスキャナーを用いての鈴木の分析結果では、前頭洞容積は「ニホンオオカミが極端に小さい」とのことである。対して秋田犬は値が最大で、大陸産のハイイロオオカミがそれに次ぐ。なかなか面白い結果だ。

   個体差の有無を検討する必要があるし、機能的意味を考える必要もあるだろう。後者については、比較の対象を広げるとよいのではないか。イヌ科の他種はどうだろう?。あるいは、「ニホンイタチとシベリアイタチ(ならびに各種の雌と雄)で差はあるか?」と思う。ネコ科やジャコウネコ科と比較するのも面白い。Carnivora以外の哺乳類ではどうか?。哺乳類の枠を飛び出すのもよいだろう。

   「イタチ君  胴長短足  我が友よ  付き合い長く  心未だ見ず」…以前短歌に詠んだこの気分は、今も変わらない。でも以前より「少しは読める」になれたのは、私がいろいろな動物に関心を向けるようになってからだ。バン、カイツブリ、ヤマビル、そしてセミ類…の生態を(ささやかながらも)知ることで視野が広がり、そのことで"イタチを見る目"が少し変わったことを自覚する。

   次は、高山夏鈴(東京農業大学)の「シカ防護柵が各哺乳類に与える影響」。田村典子(森林総研:リスの研究者)、山崎晃司(東京農業大学:クマの研究者)が名を連ねる。柵の前にビデオカメラを設置し、「中型哺乳類とイノシシの移動も柵で妨げられる」ことが明らかになった。イノシシの場合、樹脂ネットは破壊する行動が認められたという。そして今後の対応として、「中型哺乳類御用達の通路」を(柵の下に)設けることが提案された。 イノシシについては"頑丈な柵を用いるしかない"という。それは高価だが、"安物買いは銭失い"ということですね。

   そしてもうひとつは、小嶋愛香(東京農業大学)の「ムササビの糞DNA解析の手法確立」。共同研究者は和久大介(東京農業大学)と、清水海渡(神奈川県公園協会)である。ムササビの糞は"正露丸"の愛称があり、他種が排泄した糞と紛らわしくない。「なのに何故?」と思ったが、DNAで種を判別するということではないようだ。個体識別が目的で…それは未だ成功していないようだが、「遺伝集団の判別は出来る」とのことである。

   小嶋には「ムササビのRDBランクは如何?」と聞いてみた。NT指定にはなっておらず…将来も(現状にさしたる変化が無ければ)その必要が無いだろうというのが、彼女の見解である。う〜ん、しかしそれはどうだろう?。遺伝集団が峻別される程に個体群が分断されているならば、"安全原則"からしてNT指定しても良いのではないか?。むろん書類上で「ヤバいです」と宣言するだけでは意味が無い。それに乗っ取って、「対策を講じる」ことが必要だ。だがそのことを此の場で主張しても仕方ないかと思い、小嶋をそれ以上追及することはしなかった。

   2日と半日に渡って大会に参加しての総合的感想は、「女子が増えたな」ということだ。とりわけ20代では、女子の方が多いのではないか。それは大変に結構なことである。平均的な(サンプルは多くない)印象では、「最近の日本の若者は女子の方が優秀」と思う。あるいは"真摯"とも言いうる。思想家松田道雄は晩年に、「私は女性にしか期待しない」という著書を(岩波新書から)出した。自身も晩年と自覚する私は、いま似た気分を持つのだ…という話、以前にもしたかな?。

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   今年の会場は、信州大学農学部(長野県伊那)だ。標高773mの高地に在る。期間は9月7日(金)から10日(月)まで。私は7日の正午前に到着し、9日の17時過ぎに帰路に就いた。

   ASWAT(私と福永健司)の出し物はポスター発表で、タイトルはシベリアイタチの育児行動について」(英題"Parenting  behaviour  of  Siberian  weasel")だ。ペアレントとはいうものの、実際は「雄は育児に関与しない」というのが結論である。ニホンイタチがそうであることは、既に(例数は少ないが)確認されている。シベリアイタチもそうと思われたが、不確かだった。それを(やはり例数は少ないが)確認した次第である。そのほか日周期活動パターンや運び入れる餌の種類、雌雄が出会ったときの行動などを解明した。例数が少ないのが弱点だが、それはおいおい克服したいと考えている。

   ポスター発表の会場には興味ある展示がいくつか有った。だがその紹介は別稿回しとする。まずは、7日 の14ー17時に催された自由集会「食肉目における哺乳類学と研究最前線」について。本企画は当初6人の講演が予定されていたが、北海道地震のダメージでうち3人が参加出来なかった。以下に、残り3人の講演内容を紹介する。

   まずは、鈴木聡(神奈川県立生命の星地球博物館)の「ニホンイタチとシベリアイタチの形態的多様性」。その内容は、私が以前に行っていたこととかなり重なる。新知見は「シベリアイタチの方が、ニホンイタチよりも変異性が大」か。「前者の方が後者より広域的にサンプルを集めたのにもかかわらず」というのは、興味深い。ただ、「サンプルサイズ(各種の個体数) に問題あり」と思えた。ニホンイタチにおける逆ベルクマン傾向(山イタチは里イタチよりも小)が考慮されていないのも、気になった。遺伝的変異と成長変異が区別されていないのも問題であり…そして最大のネックは、「雄しか調べられていない」ことである。ニホンイタチの雌は捕獲しにくい(ロードキルも滅多に手に入らない)のだが…斯様な困難を克服しない限り、「片手落ち」の感が免れ得ない。

    ならば「雌が謎の動物である」ニホンイタチはとりあえず神棚に上げ、シベリアイタチとの比較は同属別種(オコジヨ、イイズナ、ヨーロッパケナガイタチ等)で行ってはどうか?。あるいは同科別属のテン、アナグマ、カワウソ…更には同目別科のジャコウネコ類(ハクビシン、マングース、スリカータ等)と比較するのも良い。そのように視野を広げて調査し考察するのは、「決して無駄ではない」と思うのだ。斯様な博物学的スタンスは、鈴木(ならびに私)の母校たる京大理学部動物学教室の伝統である。私と彼とはかなり年齢が違い、最近は伝統がかなり失われているように思うけれども…出来たらそのことを心して欲しい。まして鈴木は、「博物館」の職員なのだから。

   次は、服部薫(北海道区水産研究所)の「ラッコと海洋生態系」。「ラッコの保全は地元ウニ漁民には迷惑」のことは(知ってはいるが)、改めて悩ましく思った。で、「ウニなんて贅沢品を食べることを、日本人は止めた方が良い」と発言したが、演者はスルーした。ま、そうだろうな(苦笑)。

    それと、「三陸海岸にはラッコは棲めない」ことを(そうだろうなとは思っていたが)改めて確認した。沖を流れるのが寒流ではないので、コンブが育たない。コンブはウニの主要な餌なので、ラッコに(間接的に)「食」を提供する。またラッコはコンブに体を巻きつけて休むので、「住」をも提供するのである。ただ…古(19世紀)にはラッコは陸上で休息していたと、アーネスト・シートンが記している。ならば陸上でサンクチュアリ的にラッコの休息場を作り、「住」を与えることは可能だろう。そしてウニの代替餌たる(三陸海岸で棲める)貝類を増殖させれば、「食」も克服出来るかもしれない。実践はさておき、思考実験として行ってみても面白いのじゃないかと思う。ただ実践は、しないのが無難だな。

   そして、金子弥生(東京農工大学)の「アナグマの匂い物質と社会行動」。飼育下での行動観察だが、なかなか面白い。昔、山本伊津子(元京大日高研所属)がタヌキで行ったことに似ているが、実験の組み立てがそれより遥かに緻密である。成果は未だ十分ではないようだが、今後に期待しよう。

   ちなみに私も山本と同じ頃、イタチで飼育下行動観察を企画したことがある。だが、断念した。野生のイタチは(ニホンもシベリアも)飼育が難しい。「個体維持」は何とか出来るが…種族維持、即ち飼育下で繁殖を行わせることは至難だ。つまり、日常的にストレスがかかっているのである。自称テレパスの私は、イタチの心も「ある程度は」読める。故に行動実験は、「余程工夫しない限り無理」と判断した。対してアナグマは、さほどストレスがかかっていないようだ。繁殖も、多少工夫すれば可能だろう。

    匂い物質の成分について。いくつか指摘されたものはいずれも鎖式脂肪酸であり、芳香族化合物(ベンゼン環をもつもの)はリストアップされていない。ベンゼン環は、哺乳類の固有の酵素のはたらきでは普通出来ない。そもそも「地球上で出来たのではなくて、宇宙空間で生じた」という(かなり怪しげな)仮説もあるくらいだ。それはさておき、ベンゼン環の多くはバクテリアの働きで出来る。アナグマの「親族の親和性」が「接触によるバクテリアの交換」(そのことで匂いが似る)で生じるという仮説があるようで、ならば「芳香族化合物が大きな意味を持つ」可能性はあるように思う。

   北海道組3人が地震のため参加出来なかったことで、急遽斉藤昌幸(山形大学)の講演が追加された。「都市におけるタヌキの食性と行動圏」の話である。食性については「糞には人工物が少なく、ミミズが多くを占める」ことが意外で、面白かった。関西の都市のシベリアイタチはそれとは異なり、ミミズは殆ど食べてないように思う。ただミミズは消化が良いので、ビノキュラーで剛毛の有無を確認しないとそうとは断定出来ない。ビノキュラーは高価だが、買わざるを得ないな。

   行動圏のデータには、不満がある。タヌキは基本的に雌雄ベアで行動する(哺乳類にしてはかなり珍しい)動物である。なのに、雌雄同時追跡が行われていないのだ。今後はぜひ、そのことにチャレンジして欲しい。そしてタヌキも「不倫する」…か否かを、確かめて貰いたい。

   引き続き7日の17時半〜19時半の自由集会に参加した。テーマは「都市における食肉目研究:生息地としての河川と道路の光と闇」である。5人が講演したが、以下には3人のトークのみを紹介する。

   まずは、塚田英晴(麻布大学)の「タヌキの交通事故個体を用いた食性の長期的変化から見えてくること」。塚田はこの場で…道路は(ロードキルの発生により)「個体群にダメージを与える」ことが"闇"であり、生じたロードキルで「サンプルが得られる」ことが"光"であるとの見解を示した。そしてロードキルで得られた(主にタヌキの)胃内容物も、やはり人工物が少ないことを報告した。

   次は平田彩花(東京農工大学)の「都立野川公園におけるホンドタヌキ」。タヌキが生きたカラスを咥えて去る場面が撮影され、そのことで「タヌキはスカベンジングのみならず、捕食も行う」という見解が述べられた。捕食とスカベンジングはしばしば混同される故、この指摘は重要だ。ただ此のケースに限っては、やや「?」である。そのカラスは、瀕死状態だったのではないか?。だとすれば、「限りなくスカベンジングに近い捕食」となる。

   「水辺のタヌキの行動」は面白かった。水深のある止水にはあまり関心を示さず、浅い流水には顔をつけるような行動を示したという。前者について平田は、「タヌキは水が苦手で、水深のある池では採食が出来ないからでは」という見解を示した。なるほど。後者の意味は示されなかったので、私は「水を飲むためでは?」と提言した。平田の解答は、「その可能性はあるが、画面でははっきりそうと確認出来なかった」であった。

   そして、金子弥生の「多摩川における長期調査からわかったこと」。初めにまず、キツネの営巣・繁殖が(最近に)確認されたことが報告された。結構なことである。対してニホンイタチは、減っているようだ。この20年来、多摩川(の中流域)は森林化が進んでいる。よってニホンイタチの主食であったアカネズミが減少し、その代替餌をニホンイタチは(十分には)見つけられていないらしい。つまり…「里山が減っても奥山が有るので、ニホンイタチの個体群は安泰」という環境省の論は、破綻に瀕しているのだ。この件は、次稿の後編にて改めて論じる。

  翌日の8日から、一般口頭発表が始まる。この日は私は、大河原陽子(琉球大学)の「胃内容物を用いたツシマテンの季節的な食性の量的評価」のみを傍聴した。

   口頭発表というやつは講演10分・質疑応答5分のみだから、中身が薄くなる。それとメモをし損なったので、「季節変化」の詳細を此処で紹介することが出来ない。ただ私は、季節変化よりも年次変化の方に興味をそそられた。「近年はネズミをあまり食べていない」ということにである。シベリアイタチ(対馬でのみ在来種)と「食いわけ」をしているかというと、そうでもなさそうだ。対馬では、シベリアイタチが激減している(らしい)からである。要はネズミ(多分アカネズミ)が減っているからだろうというのが、大河原の論である。シカが増えてその食害で下草が減り、ネズミの棲息環境が劣化したのではないかとのことだ。なるほど。ただ…ならばネズミのセンサスを、多少とも行うべきではなかろうか?。

   翌日(の午前)にも、口頭発表を聴いた。以下の3つをだ。

   まずは、辻大和(京都大学霊長類研究所)の「ニホンテンの食性の地理的変異とそれをもたらす環境要因」。その内容は、「広域における食性の比較」という意味でユニークなものである。そういうことって、案外やられていないのだ。イタチ(とりわけニホンイタチ)でも、そのようなことを行う必要がある。私は「最近、イタチ(たぶんニホン)の糞中にネズミの毛があまり入ってない」と思うのだけれども、それには地域差があるかもしれない。考察は、慎重に行う必要がある。

   次は、塚田英晴の「糞中のミミズ剛毛サイズから科同定ができるか?〜中型食肉目における採食量の量的評価の可能性」だ。これは面白かった。そして、自身のイタチの生態調査に「使いうる」と思った。糞内容分析調査では、「質」はわかっても「量」は判定しずらい。だがミミズは剛毛を除いてほぼ完全消化だから、採食量推定がし易いのである。むろん仮定に仮定を積み重ねてのことだが。

   最後は、佐々木浩(筑紫女学園大学)の「長崎県は対馬におけるカワウソの生息状況」だ。糞DNAを用いての調査結果は、「なるほど」であった。だがその結果を受けての「韓国からのユーラシアカワウソ導入を勧めたい」の案は、「?」である。私は外来種の生存権に対して寛容だが、それは「入ってしまったものは仕方ない」という立場からだ。新たに意図的に入れるのは、極力控えるべきと思う。もし行うにしても…事前に日本のイタチ科研究者とじっくり話合い、その了解を得る必要があるだろう。カワウソ研究者のみの独断専行は危険だ。

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