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高級クラブ

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「高級クラブ」といっても、あの語尾を上げて言う、露出度の高い男女が夜を徹して楽しむ場所ではなく、イギリス上流階級の紳士淑女が交流を深めるために集う、社交場、コミュニティークラブのことである。もちろんメンバー制度で、入会するためにも、うん百万(もっとかもしれない)、年会費は表示されないらしいが、どちらにせよ、ただお金があるだけではだめで、地位やら、肩書やら(Sir やらLadyのこと)土地やら、血筋やら、コネクションやらさまざまなものが必要らしい。だいたい爵位と一緒に会員権が代々受け継がれるらしいが、クラブによって、いろいろなキャラクターがあるらしく、シャーロックホームズのお兄さんが入っていたという、上流の社交嫌いの男性のみが通う、クラブ内では発言禁止というポリシーのクラブというのが笑い話ではないくらい、例えば、コニャックをひたすら飲み続けるクラブとかいうのもあるらしく、そういう、何ともイギリスらしいポッシュ(上流階級の人々のことを指すが、ちょっと馬鹿げている・・というニュアンスも含む俗語)な人たち用のクラブが、イギリスにはかなりたくさんあるらしい。

で、その高級クラブの一つである、ダンヒルがスポンサーのクラブに、秋の狩猟料理を楽しもう(!)イベント内の音楽を頼まれて、演奏をしに行ってきた。まあそのクラブがどうだったかは、もともと期待はしていなかったけれど、もしかしてもしかして私のヴァイオリンを気に入ってくれる素敵なイギリス人紳士に会えるかも?と、だいたい今までの経験でほぼ皆無だとわかっているけど、0.000001%ぐらい残っている乙女心が、またしても無残に敗れ去り、一応、ヴァイオリンコンサートと銘打ってあるし、プログラムもあるのに、これほど演奏を無視され続けたことがあっただろうか!という最後には笑ってしまう(ピアニストと一緒に変顔をして弾いてみようかと言ってたのだけれど、こんなところで日本人とルーマニア人の恥をさらしても・・ということでしぶしぶ断念したのだけれど)あっぱれな無視っぷりで、なるほど、これがイギリス人のポッシュっぷりってやつか!と妙に納得した。・・のはさておき、素晴らしかったのは控室に使わせてもらった、メンバー専用のホテルルームで、これがヴィクトリア調、プライドと偏見のジェーン・オースティンの世界に迷い込んだようなゴージャスさで、大のオースティン好きとしては、最高にテンションが上がってしまったのだ。

ルーマニア人のピアニストも大のコスチューム好きで、二人でひとしきり、
オースティンごっこ(お辞儀やら、ちょっと気取ってお茶をのむしぐさとか)を
した後、すべての調度品をチェック、滞在者用に名前入りで作られているヴィンテージのトランプとかチェスとか、ともかく引出しはすべてあけ、棚もあけて、
また、暖炉と鏡の前で、ハリーポッターごっこもし、で本当はベッドに寝てみたかったのだけど、さすがにそれは大人の理性としてだめだよね・・ということになり、バスルームにおかれた、それはそれはふかふかなバスマットに寝ころび(寝ころんでも地面を感じないほど!)、今までで一番ゴージャスな待ち時間を過ごした。

驚いたことに、全部で3回あったステージの間に、私たちが散らかしたすべてのものが、元通りきれいに戻されていたことで、おお!ミラクル!ウィキッド!と私たちはただびっくりして笑っていただけだけど、ものすごく丁寧で、うやうやしいボーイたちや、雑誌の表紙のようにとびきりチャーミングな笑顔のアシスタントのお姉さんたちは、きっと、これだから下々の者は・・と思っていたに違いない。

そして、またまたスマートにも優雅にもなれない私は、控室から、ステージに降りていく間、なんと、そのちょっと主人公気分と、そして、そのクラブのしきたりなのか、必ず通り過ぎる時、そして、話しかけた後、ウィンクをする男のボーイたちとマネージャーの、そのウィンクがあまりにも素早いのに興味津々のあまり、素晴らしいシェープと装飾だが、とてつもなくせまい階段を見事に踏み外し、1階分すべりおち、すねをしたたかに打ったのだ。幸い楽器はピアニストが持っていたので、何も問題はなかったのだが、その時の、ボーイのなんともいえない表情と、氷を持ってきてくれたときの、同情に満ちた視線が、いまだにしくしくと痛む青あざとともに、忘れられず、なんとも切ない、高級クラブデビューとなった。

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