遠藤@犬猫馬好き普通の獣医師の診療日記&訓練手帳

グリーンピース動物病院院長です。過去の診療記録はリストをご参照下さい。最近の記事の内容は私生活です。

全体表示

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

06/26 便秘?は結局膵炎

前回便秘という主訴で来院のあった黒猫ちゃんですが。23日に再来院されました。
 
私が処方したお薬を使用すると、その後3日に1回下痢便を排出するようになって、6月18日頃からは飲水と排尿はあるも、食欲も元気さも低下してしまったとのことです。
 
飼い主様に断りを入れて、血液検査を再び実施しました。
 
目立つ数値としては、総ビリルビンが3.1mg/dlと黄疸が生じています。
 
GPTは112U/L GOTは74U/L ALPは377U/Lと肝臓系の数値はすべて軽度ながら上昇していますが、よくよく確認すると、前回の初診の時と比べるとGPTの数値が下がっているのとALPが少し上昇しているくらいで、総ビリルビンの上昇は目立ちますが、肝臓自体は最初から悪かったわけです。
 
他に、毎年ワクチンを接種しているのにも関わらず、風邪症状を呈しているということでしたので、何らかの基礎疾患の存在を疑いました。
 
猫の場合、猫白血病ウィルス、猫免疫不全ウィルス、猫コロナウィルスという3つのウィルスのどれかが体内に侵入していてキャリヤーになっていると、免疫不全の症状が出ることがあります。
 
それと、微妙な消化器症状能に能く判らない肝酵素上昇と言えば、疑うべきはやはり膵炎でしょう。
 
3種のウィルスの感染について調べるのと同時に、東京のアイデックスラボラトリーズに猫膵特異的リパーゼの外注検査を実施しました。
 
猫白血病ウィルスと猫免疫不全ウィルスの二つは、院内でキットを使用して陰性と判明。 猫コロナウィルスはこの原稿を書いている現在マルピーライフテックにて検査中ということで、返事はまだ来ていません。
 
猫膵特異的リパーゼについては、土曜日に採血して当日宅急便で東京に検体を送ったところ、24日日曜日の夕方には返答のFAXがありまして。
 
正常値は3.6μg/Lというところ、11.5μg/Lという高値が得られました。
 
一応獣医内科の高名な先生のセミナーでは、この膵特異的リパーゼが高値であれば9割以上の確率で膵炎であり、正常値以内であれば9割以上の確率で膵炎ではないということですから。 この子は膵炎と言い切って差し支えないと思います。
 
その結果を飼い主様にお電話でお伝えしたところ、電話口では治療について相当ためらっている感じでありましたが。
 
昨日、家族と話し合った結果、治療をお願いすることにしたと言われて、お連れ下さいました。
 
膵炎の治療の場合、脚の静脈にカテーテルを留置して適切な輸液剤を持続点滴するのと、抗菌剤、嘔吐止め、鎮痛剤、強肝剤などのお薬を輸液ラインを使って、あるいは皮下注射で、投薬するのです。
 
そして、特に猫の場合ですが。膵臓に負担の少ない低脂肪食をなるべく早くから食べさせることが必要とされているそうです。
 
10数年以前には、膵炎と言えば絶食というのが相場でしたが、特に猫は数日の絶食で肝リピドーシスという致命的な肝障害が生じる可能性があるので、絶食は禁忌だということです。
 
しかし、膵炎の治療で、これを使えばたちどころに治癒するというような、魔法の薬はまだ存在していないようです。
 
黒猫ちゃん、昨日から地道に治療をやっております。
 
食べるについては、膵炎に使えるとされているヒルズの猫i/dという処方食の缶詰めを、注射器で吸えるように少しの水と共にミルサーで滑らかに砕いて、ある程度強制的に与えるようにしています。
 
これから、どんな風な展開になるのか?正直勝算があるわけでは無いですが。 これからしばらくの間、膵炎との闘いに頑張りたいと思います。
 
イメージ 1

開く コメント(0)

06/26 犬の停留精巣去勢

犬の場合、避妊去勢手術を早期に実施した子は、手術をしないで過ごした子と比較すると、女の子も男の子もそれぞれ病気が減って、結果として平均で1年半くらい寿命が延びるという統計があるということですが。
 
停留精巣の場合、普通に陰嚢に降りて来ている精巣よりも事は深刻で、普通の子の清掃よりも率にして10倍の腫瘍化の可能性があり、なおかつ腫瘍化した物の約10数%は転移しやすい種類であるという話しです。
 
また、過去に実例で見たのが、両側停留精巣の子でしたが、異常なまでの性欲と性的フラストレーションの持ち主で、その行動のしつこさに辟易したものであります。
 
そもそも精巣が陰嚢に下りているということの意味は、精巣が正常に働くためには、他の細胞と違ってかなり低い温度環境が必要なために、皮膚に襞があって温度で伸び縮みするラジエーター機能のある陰嚢の中でこそ正しく機能することが出来るということです。
 
おそらく、停留精巣は、精子を造る機能が失われているだけでなく、症例によっては異常なまでのホルモン産生を行なってしまうのではないか?と思います。
 
なお、停留精巣は遺伝様式ははっきりとはしていないものの、遺伝性であるということです。
 
そんなわけで、私は犬の停留精巣を見つけた時には、精巣を引き下ろして陰嚢底部に縫い付けるような姑息な手術をすることなく、さっさと去勢手術を勧めて、病気の要因を減らすと同時に、その子が異常な性的フラストレーションで苦しむことが無いように持って行くように心掛けています。
 
今回の子は、もうすぐ生後6ヶ月令になるミニチュアブルテリアでした。
 
今までの生活の中で、結構やんちゃな面も見えて来ているみたいで、飼い主様は停留精巣であってもなくても去勢手術は実施する予定であったようです。
 
精巣が停留していた場所は、ペニスの前の方の皮下の部分でした。
 
イメージ 1
 
画像にある矢印は、正常に下りた右側の精巣を指しています。
 
停留精巣が、腹腔内にある場合には、開腹手術になりますので、結構大変なのですが。腹壁皮下にある場合には、傷が一つ増えるだけで済みます。
 
この子の問題点としては、術前検査として行なった胸部エックス線検査で、身体の大きさの割りに気管の径が小さいという、いわゆる気管の低形成ということがあります。
 
気管の低形成は、ブルドッグとかフレンチブルドッグのような単吻犬種に頻繁に観察される形成異常でして、これが見られる子には麻酔のトラブルが生じやすい傾向があるようです。
 
今回の手術では、麻酔の経過とか術後の経過とかは全く異常は生じませんでした。
 
イメージ 2
この画像は手術を始める段階の術野の状態です。
 
イメージ 3
 
右側の精巣は陰嚢の前の方の皮膚を切開して出していますが。 左側の精巣は、ペニスの左横の停留部位を切開して出しています。
 
イメージ 4
 
結果として、傷は二つになります。 普通の去勢手術であれば、向かって右側の傷は不要であります。
 
イメージ 5
 
手術の後、回復室で休んでいるブルテリ君です。 術後は数時間でお返しして、翌日経過を確認して、 抜糸は普通の経過であれば術後9日で行ないます。
 
以上、皮下に停留するタイプの停留精巣の手術でした。
 

開く コメント(0)

06/18 症例いろいろ

このところ、いろいろと症例が来たりして、貧乏暇無しなのですが。本当にその言葉通り診療費の額はなかなか伸びませんで。
 
昔のように、簡単至極で収入の多い膿皮症のような症例は少なくなってしまって、手間がかかるけれどもという症例が増えているような気がします。結局トータルの来院件数は減ってしまっていますね。
 
泣き言を言っていても仕方が無いので、頑張るのですが。とりあえずこの1週間の間にあったいろいろを述べてみたいと思います。
 
まず、排便困難を主訴とする16才の去勢済み日本猫ちゃんです。
 
イメージ 1
 
今まで動物病院を2件経由して、こちらに来院したようなことらしいです。
 
前の動物病院ではラキソベロンという人間で使う便秘の水薬を処方されていたようです。
 
過去には、麻酔をかけて獣医師が肛門から指を挿入して摘便を行なったりしたこともあったようですが。今回も11日間排便が見られないとのことでした。
 
しかし、私が腹部を触診してみるのですが。猫ちゃんが太っていることもあるのでしょうが、腹腔内に大きな便があるわけではなく、むしろ糞便を触るのが難しいような感じです。
 
飼い主様に了解していただいて、腹部エックス線検査を行ないましたが、お腹の中のウンチの量とかは、とても11日間も排便無しで貯留しているようには見えません。
 
イメージ 2
 
猫ちゃんは、、少な目ながらも一応食べていて、嘔吐とかも見られないということでした。
 
因みに、犬の症例の写真ではありますが、巨大結腸症という便秘の症例の写真を参考までに掲載しておきます。本当に便が出なくなってしまえばこんな感じになると思いますし。それ以前に嘔吐と食欲不振が生じると思います。
 
イメージ 3
 
さらに血液検査を実施して、軽度の肝障害の存在を確認しました。
 
ラクツロースという便を柔らかくして排便しやすくする水薬と、胃腸の動きを調整して動いてなければ動かして、動き過ぎていれば少し動きを抑制する錠剤、それに肝細胞保護剤の3剤を2週間分処方させていただきました。
 
途中で症状悪化とか見られるようであれば、連絡していただくようお伝えしておりますが。今のところ連絡は無いようです。
 
しかし、本当に排便がなされていないのでしょうか?正直よく判りませんでした。
 
次の来院の時に経過を確認して行きたいと考えています。
 
次は、この春のフィラリア予防の検査の時に、フィラリア関連健康診断セット検査ということで、詳しいセットの検査を受けられた6才のアメリカンコッカースパニエルの男の子です。
 
血液生化学検査でアルカリフォスファターゼが高値だったので、この値に多尿多飲多食という症状が伴っているようであれば、副腎の疾患を疑うべきであると、検査結果にコメントを書いて送付させていただいたところ。
 
今回ひどい外耳炎になったのを機会に来院されて言われることには、まさしく多尿多飲多食がぴったり当てはまるということでした。
 
外耳炎については、細菌培養と薬剤感受性試験を実施して、感染している細菌に効果を確認したお薬を処方することにして。
 
アルカリフォスファターゼの高値については、ACTH刺激試験という副腎の機能的サイズを測定する血液検査を実施しました。
 
ついでに、腹部エコー検査で副腎のサイズも確認しましたが。やはり大きいということが判明しています。副腎のサイズと形を見るに、絶対とは言えませんが、とりあえず副腎癌ではなさそうです。
 
イメージ 4
 
次郎君、このポットベリーは如何にもという感じですね。検査の結果は明日にでも判明することと思います。
 
しかし、この春からいきなり副腎皮質機能亢進症疑いの症例が異常に増えて来ています。今までの私が、それらを見落として来ていたのか?それとも本当に増えたのか?
 
超音波断層撮影装置も昨年秋から東芝のエクサリオという昨年までの最上級機種にバージョンアップしたことでもありますし。これからお腹を診る時には副腎もルーティンに描出するように心掛けることにします。
 
副腎の検査に関連して、先週までに続いていた小型犬たちの副腎皮質機能亢進症の症例は全部下垂体性という結果が得られまして、トリロスタンというお薬で順次治療を開始しています。今のところ重大な副作用とかの話しはありませんで、順調に治療出来ていると思われます。
 
次は、野生鳥獣ですが。
 
一昨日、若い女性が来院されて、ツバメが彼女の運転する車に衝突してしまったということでありました。
 
小さなボール紙の箱に入っていたツバメちゃんを診ると。頭が後ろにのけぞるような、如何にも頭を強打した神経症状という感じの姿勢を取ろう取ろうとします。
 
呼吸は何とかしていますが、意識は有るのか?無いのか?怪しい感じです。
 
口の端の方がまだ少し黄色味を帯びているところをみると、巣立ちして飛べるようになったばかりの雛鳥と思われます。
 
この子には、デキサメサゾンというステロイドホルモンを大目に内服させてみます。ショックからの回復と、脳内の出血や浮腫で脳圧が上昇していると思われますので、それに対する治療です。次いで、2次感染防止用の抗菌剤とすぐに低血糖性のショックで逝ってしまわないようにするための20%グルコースの内服を行ないます。
 
イメージ 5
 
少し状態を診ていて、何とかお薬の投与が出来て、呼吸状態にも悪い変化が観察されないことから、昨年から大切に飼育しているジャンボワームという鳥の餌用の虫を小さく切断して給餌することにしました。
 
イメージ 6
 
今日で2日が経過しましたが、何とか意識は戻って、すぐに倒れるのは倒れるのですが、姿勢の異常も少しは改善しているように見受けられますので、ステロイドホルモンは今朝で中止しています。
 
何とか飛べるように回復して野生復帰を果たさせてやりたいところですが。どうなることでしょうか?
 
最後に、神戸市からの来院で、推定年齢7才の雑種犬の女の子です。
 
昨日の来院でしたが、その2日前に近所の人が目撃したのが、犬を置き去りにして逃げて行くように立ち去った人がいたということでした。
 
保護された人の言では、一応警察と動物愛護センターには連絡するが、飼い主が現れるということは期待出来ないので、自分が飼育するということでした。
 
ワンちゃんの状態は、ひどく痩せていて被毛の状態もボロボロです。捨てられる前に、必要な健康管理をされていない、つまり不作為というタイプの虐待を受けていた可能性を感じました。
 
イメージ 7
 
健康診断ひと通りをご希望されましたので、フィラリアの抗体検査、全血球計数、血液生化学検査一式の血液検査を行なってみましたところ、フィラリアに感染していることが判明しました。
 
イメージ 8
 
心音呼吸音の聴診を行ないましたが、異常は感じません。
 
胸部エックス線検査を実施してみると、腹背像で心臓が逆D型に肥大していることが判明しました。
 
フィラリア感染によるダメージは、それなりにあるようです。
 
それ以外には、軽い貧血と軽度の肝障害、白血球数、特に好中球の増加がありました。
 
一応、抗菌剤と強肝剤を処方し、フィラリアに関しては現在無症状ですので、しばらく経過を見ていて、状態が回復して来たらフィラリア予防をやろうということにして、蚤ダニ対策のフロントラインプラスを背中の皮膚に滴下して、帰っていただきました。
 
この子を捨てた人間はとんでもない人です。いつか何処かで何らかの報いを受けることと思います。
 
でも、良い人に保護されて最後は幸運なワンちゃんだと思いました。まさに「万事塞翁が馬」という奴ですね。
 
ではでは、今日もダラダラと長い日記にお付き合いいただきまして、有り難うございました。

開く コメント(1)

来月15才になるオーストラリアンシェパードの女の子の話しですが。
 
昨年11月ですから、もう7ヶ月前に左の頬というか、眼の下の部分が腫れて来たということで来院されまして。
 
こんな場合には、かなりの症例が根尖膿瘍とか歯根膜炎という歯周病のきつい奴で、抗菌剤の投薬には1時的には反応して腫れが治まることが多いですから。鼻や上顎の部分の腫瘍の疑いの話しも一応はした上で。
抗菌剤を2種類ブレンドして1週間処方して。
 
1週間後非常に調子良いとのことで、もう1週間処方して。
 
半年が経過してました。
 
その間ずっと調子良かったらしいのですが。5月の初めにまた腫れて来たとのことで再来院されました。
 
腫瘍であれば、最初の処方で腫れが引くことは考え難いですから。前回と同じ処方をしてみたところ。
 
この度は、腫れが引くのに少し時間がかかったとのことでしたが、それでも一応は治まったそうです。
 
しかし、6月8日に、また同じところが腫れて来て、今度の腫れ方は半端ではないとのことで、とうとう飼い主様は麻酔下での歯周病処置を希望されました。
 
イメージ 1
 
今までは、年齢の事もあって、なるべく投薬でしのげるのであれば、麻酔はかけたくないというご希望だったのです。
 
一応術前検査は、全血球計数、血液生化学検査、胸部エックス線検査、コンピュータ解析装置付き心電図検査と入念にやりました。
 
年齢の割りには、良い成績でした。
 
実際に、その日の午後に麻酔をかけて口の中を調べてみると。
 
思わず息を呑みました。
 
根尖膿瘍を患っているはずの上顎第4前臼歯が存在していません。
 
その部分に異様な腫瘍性と思われる組織の増生が生じていて、後臼歯まで埋没しているような状態です。
 
イメージ 2
 
増生した組織を削り取って、レーザーで一部焼いて。傷んでいた後臼歯は抜歯しました。口の中の他の歯も一応綺麗に歯石は除去して置きました。
 
採取した組織は病理検査に出しました。
 
昨日病理の結果が返って来て。扁平上皮癌という結果でした。口の中の腫瘍で最も性質の悪いのが悪性黒色腫であるならば、扁平上皮癌はその次くらいに悪いものだと思います。
 
イメージ 3
 
腫瘍は、既に上顎の骨とか鼻腔とかに浸潤しているのは明らかですから、手のつけようがないというのが正直なところです。
 
最初に根尖膿瘍を起こしていたであろう左上顎第4前臼歯が無くなっていたのは、腫瘍組織が増生する過程で歯の根っこに入り込んで歯を押し出してしまったということだったと思います。
 
また、最初に抗菌剤が劇的に利いたということは、その時点での病気の本体は、根尖膿瘍であって。腫瘍はどの時点で増生を始めたのかは不明でありますが、5月初めの腫れの時点でも一旦は引いたのですから、歯周病はやはりひどい状態で、腫瘍性疾患をマスキングしてしまっていたということなのでしょう。
 
腫瘍に抗菌剤が効くことは、普通は無いことであります。
 
飼い主様に病理検査結果の写しをお渡しして、先はそう長くはないでしょうけれども、生きている間はなるべく楽に生きられるように対症療法をしっかりやるべきことをお伝えしました。
 
飼い主様も、わんこが既に相当高齢であることもあって、納得の表情でした。
 
しかし、扁平上皮癌も悪性黒色腫も怖ろしいですが、あなどるなかれ歯周病であります。
 
普段から口腔衛生に留意していれば、もしかして腫瘍性の変化に気付くことが出来たのかも知れません。
 
ただ、この子の場合、普段から口を触られたり口を覗かれたりするのを異常なくらいに嫌がるところがありましたので、こういう経過を取ったのも仕方が無かったと言えば仕方が無かったのであります。
 
対策は、子犬の頃から口の中を触るようにして、飼い主も飼い犬も口の中の手入れ、歯の手入れに慣れておくことでしょうね。
 
 

開く コメント(4)

イメージ 1
 
健康に関する意識の中で、獣医療の現場で説明に困るというか、飼い主の皆様の意識の変革に苦労する事柄として、牡でも牝でも犬については避妊去勢手術をやらないよりもやった方が病気が少なくなるのと精神的にもストレス少なく穏やかに生活でき、結果として健康で長生きするということがあります。
 
人間の医療の場合では、病気でもないのに身体にメスを入れるということが基本的に良くないことであるという概念が一般的に常識とされているようですが。
 
獣医療の分野では、犬の場合には、全くの自然の状態よりもいろいろと手をかけた方が健康で長生きするという統計結果が出ているようです。
 
避妊去勢手術に関する統計では、何にもしないで一生を過ごした犬と、避妊去勢手術を若犬の間に受けた犬とでは、平均寿命に約1年半の差が生じて、手術を受けた犬の方が病気が少なく長生きするということなのです。
 
先日来院して来た高齢雑種犬のポポちゃんは、2週間前には見当たらなかった大きな乳腺の腫瘤が気になるということでした。
 
この子は、2年前に初診でしたが、フィラリアが感染していたりして、痩せて体調思わしくなさそうでした。
 
その後、フィラリア予防をきちんとやって、今年の予防開始前の検査ではフィラリアの抗体はあるか?無きか?というくらいに低下していたのですが。
 
この度、急速に大きくなりつつある乳腺の腫瘤が発見されて大変なのであります。
 
飼い主様には、乳腺の腫瘤の治療に関する一般的な原則を説明させていただき、とりあえずいったん帰宅して、家族で手術をするのかどうか、話し合って納得のいく結論を出してから対応しましょうとお伝えしました。
 
帰宅後、当日の内に手術を受けさせたいという電話がありましたので、血液検査は全血球計数、血液生化学検査15項目、血液凝固系検査を行ない、胸部エックス線検査とコンピュータ解析装置付き心電図検査も行なって、その3日後に手術を実施しました。
 
下の画像は、麻酔導入後に毛刈りを行なったところの腫瘤と乳腺の様子です。
 
実際には、第3乳房に出来た大きな腫瘤以外に、一番後ろの第5乳房にも小さな腫瘤が数個出来ていました。
 
イメージ 2
 
術野の消毒、術者と助手の手洗い、滅菌した帽子マスク術衣手袋の装着などなど済ませて、麻酔導入開始から約40分かかって、やっと手術を開始することが出来ます。
 
このいろいろな過程は、現場でそれを見ている人でなければ理解出来ないかも知れませんが。飼い主様方には見えない部分です。
 
私は、そのようなところこそ手抜きをせずに丁寧な手術を行なうことを信条としてやっております。
 
イメージ 3
 
手術そのものは、切皮から縫合完了まで約1時間45分で終わります。
 
右側乳腺の全摘出と、卵巣子宮全摘出がその内容であります。卵巣子宮全摘出は、乳腺の腫瘍は女性ホルモンの影響を受けてどんどん大きくなるという性質を持っていることが多いですから、転移や再発の時に腫瘍が大きくなるスピードを遅くするという効果を期待してのことであります。
 
イメージ 4
 
術後、覆い布を取り除くと、こんな感じです。徹底的に切除しています。
 
ワンちゃんの場合には、人間の女性のように乳腺の温存療法とかは考えない方が、命を救うという観点から良いとされています。
 
切除した乳腺とその腫瘤は病理検査に送りました。
 
術後は、数時間犬舎にて休んでもらい、お返しは当日中になります。
 
イメージ 5
 
今回は、痛み止めとして術中にモルヒネを使用しましたが。
 
術後2日目に来院された時に、手術翌日には傷をかなりきにしていたということでしたから、次回同じような手術の際には、術後にフェンタニルパッチという長時間作用型の麻薬性鎮痛剤を使用するようにした方が良いのかも知れません。
 
でも、いろいろ使用するとまた経費がかさんで、それを飼い主様に請求するのが辛いところであります。
 
とりあえずポポちゃん。無事に手術が済んで良かったです。
 
病理検査も良性でありますように。
 
そもそも、犬を自然な状態で飼育して、5才とか6才以上生きさせること自体が有り得ないことであります。
 
自然の犬には、ワクチン接種もフィラリア予防もしてもらえないということですから、こんな乳腺腫瘍が出来たりする前にフィラリアに感染して、走れなくなって、獲物を獲ることも出来なくなって死んでしまうわけですから。
 
自然環境で野性的な生活をしている犬たちには若い元気な個体しか存在していないわけです。それをもって、自然の犬は元気で健康だから自然が一番ということは、飼い犬と自然の犬との在り様の違いを完全に無視した暴論でありましょう。
 
まあ、所詮犬を飼うのは飼い主のエゴでありますから、そのエゴを貫徹するのは結構なのですが、犬たちの幸せのことにも、少しは想いを致してやりたいところであります。
 
ただ、避妊去勢の話しの最後ですが、私は、自分の犬を繁殖させることにより生き物としての使命を全うさせたいという飼い主様には、避妊去勢手術をお勧めしてません。
 
しかし、犬の繁殖は、ええ加減に済ませようと思えば全然楽なものですが、出来た子犬の健康と幸せを真剣に考えて取り組もうと思えば、これまた大変な仕事ですね。
 
 

開く コメント(0)


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事