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今日は大安
鋸の焼入れをした
なんといっても鋸製作工程のうちで、最も難しい所。
鋸鍛冶のこの一週間ほどのご機嫌の悪さときたらなかった。
いつも焼入れの前には緊張するのだが、こんなに緊張していたためしがない。
まあ4代目だった私の父も年中こうだったので驚くわけではないが。
この間の実験とは異なり、本当に真剣勝負。
この仕事だけは私が手伝う。
雨戸をすべて閉め、カーテンも引いて薄暗くする。
炭を熾す。
炭に近い所の炎の色はきれいな青・一酸化炭素が燃えている。
上の方にいくとオレンジ色の炎に変わる。
掻き起すとぱちぱちと線香花火のように火花があがる・鉄が燃えている。
ふいごの音がまるで呼吸しているかのように聞こえる。走り回った後の呼吸のようにせわしい。
よく熾った炭の中に鋸を入れて加熱する。
満遍なくあかむよう、何度もくり返し位置を変える。
ふいごの音がいっそう早くなるとその時は近い。
充分にあかんだ所で引き出し、菜種油に一気に漬ける。油の燃える炎がぱっと上がる。
私が挟みで受け取って平らな台の上に載せ、板で押さえて上に鉄の重りを載せる。
どうしてもねじれてしまうのでなるべく平らになるようにするためだ。
その日に焼入れする鋸の数だけ上に重ねていくので、その度にいったん重りをはずし、油から出したらすぐ重りを載せておかなければならない、このタイミングが結構難しい。
私は常に鍛冶屋の手元だけを見ている。
ブログを始めてからものの見方が少し変わり、今日初めて焼入れしているときの鍛冶屋の顔をみた。
取材や撮影で今まで多くの方が写真を撮ったり、ビデオに収めたりしていったのだが、あれはすべて本当の仕事をしている映像ではない、所詮はデモンストレーション。いかにももっともな顔をしているが、半分は演技。
本当の顔を見るのは私だけ、そしてそれを写真に撮る余裕は無いのだ。その顔は目の真剣さだけが違っていた。
そういうわけで今日は画像なし。
焼入れは思った以上に成功したようで、すっかりご機嫌が良くなった。
そのうちまた取材が入った時に、私も写真が撮れると思う。
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ホントに真剣勝負なんですね。炎の色や熱気が文章から伝わってきました。
2005/6/26(日) 午前 8:05
真剣勝負の緊張感が伝わってきます。思わず、息をつめて読んでしまいました。
2005/6/26(日) 午前 11:40
ひな様熱かったです。この日は大丈夫ですがジーパンを穿いた足に一面1度の火傷をした時も(2人とも)ありました。 さる母様皆様お元気になられました?色々大変だったけど子供が元気なのが一番ですよね。
2005/6/26(日) 午後 1:55
こんにちは。本当の瞬間、ですね。その空間に入り込まなければ絶対に見ることのできない、そして同じ空間を共有するいわさんの目にだけ焼きつけられるものがあるということに、感動しました。
2005/6/26(日) 午後 5:29
写真に撮られている顔は目に余裕が感じられる(いかにも自信がありそうに見える)この時にはまったく余裕が無い。何処まで腕が上がっても完璧という所は無い。それどころか常に失敗と紙一重なのが現実。目標は何時でも雲の彼方よりなお遠い。
2005/6/26(日) 午後 8:17
焼き入れ成功おめでとうございます。ほっと一服されてくださいね。
2005/6/27(月) 午前 11:00
この、一発勝負ってところが、茶道にも通じ、というか、日本の文化に相通ずる気迫というか伝統かもしれませんね。無事の焼入れ、おめでとうございます♪
2005/6/27(月) 午後 4:39 [ 白洲 ]
焼入れの後、焼き戻しの工程があり、今はやきばならしと言って金槌で鋸を平らにする工程に入っています。この後削って薄くし・・・と続きます。町内会の寄り合いやら何やら色々やる事があり、ホント貧乏暇なしです。
2005/6/28(火) 午前 1:41
一瞬の油断も許されない張りつめた空気が、文章からひしひしと伝わってきました。この作業の前後でご主人のご機嫌が大きく変わるというのも、少し分かる気がします。
2005/6/28(火) 午前 1:47
焼き入れするには、コンロやガストーチ?などの火力では弱くてできないのでしょうか?炭の火力とどのくらい違うのでしょうか?知りたいです。
2007/9/14(金) 午後 9:13 [ nice ]
全体を750から800度に赤めなければならないのでとても小さなものでない限りコンロなどでは無理だそうです。
2007/9/17(月) 午後 5:19