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最近,OECDから「小泉政権で格差は縮小した」と受け取られかねない調査結果が出されたので,事実関係を整理したい。 21日,OECDは所得分配の国際比較調査をまとめ,報告書『格差は拡大しているか:OECD諸国における所得分配と貧困』を公表した。日本に関する資料(http://www.oecd.org/dataoecd/45/58/41527388.pdf )の冒頭には,「日本の所得格差と貧困は、長期にわたる拡大傾向に反して、過去5年間で縮小に転じた。」と書かれ,ジニ係数,相対的貧困率ともに2000年から2000年代中盤(mid-2000s)にかけて低下していることを示す図が掲載されている。ちょうど小泉政権期に重なるので,額面通りに受け止めると,小泉政権で格差は縮小したことになる。 じつは,2000年代中盤というのは,2003年のことである。この調査での日本のデータは,『国民生活基礎調査』の個票を国立社会保障・人口問題研究所で再集計して,OECDに提供している。厚生労働省による『国民生活基礎調査』の報告書には,わが国の全世帯の年間所得金額のジニ係数が計算されている。所得の定義が違うので,直接の比較はできないが,参考までに2000年から2006年までの推移を見ると,以下の図のようになる。 2003年だけ,顕著にジニ係数が低下している。2000年と2003年だけを見れば,ジニ係数は低下しているが,全体を見れば,横ばいか若干の上昇。2003年が何らかの特殊要因で低くなっている,と考えるのが自然だろう。OECDでの調査にも,2003年の特殊要因が反映された可能性がある。その場合,格差縮小を傾向と解釈はできない。 なぜ,OECD調査で2003年のデータが使われたのか。『国民生活基礎調査』は毎年6,7月におこなわれるが,3年に1回,標本数の多い大規模調査がおこなわれる。調査前年1年間の所得を調査するので,例えば,2007年の大規模調査で2006年の所得が調べられる。OECD調査は細かい集計が必要なので,標本数の多い年のデータを使用するのが適当だ。今回の報告書は公表までにかなり時間がかかっており,日本がOECDの調査に回答する時点では2006年の所得データが利用できなかったので,2003年のデータが使われている。 格差問題は国民の関心も高いだけに,今後に2つの分析が必要だ。第1に,2006年のデータを用いて,今回のOECD調査と同じ集計をおこなうこと。この方が,2000年代前半の動向を適切にとらえられる。第2に,2003年のデータをくわしく解析して,なぜこの年だけジニ係数が低下したのかを解明すること。 |
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