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財政再建は長い時間を要する作業である。中期の目標を立てて,それを実現させていくコミットメントが非常に重要になる。小泉政権発足時から,そうした目標の設定と実現を積み重ね,現在に至っているのが財政再建路線である。いま世界的な金融危機に直面しているが,この路線は転換も凍結もする必要はない。
第1の理由。現在の財政再建路線は弾力条項を備えており,景気後退局面にも対応できるものである。橋本政権時の財政再建は弾力条項を欠いたため,景気後退で行き詰まったが,現在の路線はその教訓を踏まえ,路線を継続させながら,財政再建と景気対策が両立するようにあらかじめ考えられている。かりに財政出動する場合にも「路線に含まれている弾力条項を適用するもので,路線は堅持されている」と宣言すればよい。路線の転換ないし凍結では,歳出増加圧力に抗し切れずに,無意味に財政が膨張する。
第2の理由。世界的な経済危機だが,日本経済は相対的に安定しており,危機的状況にはない。どの予測でも,来年度以降の成長率の低下幅は欧米諸国よりも日本が小さい。ここで欧米並みに財政出動すると過剰な需要が生じて,民間の活動を代替するだけになり,資源が有効に使われない。かりにGDPが20%も低下するような大恐慌に見舞われれば,さすがに財政再建路線は頓挫するが,現状を冷静に評価すれば,通常の景気後退局面の範囲で対応を考えるべきである。
以上のような適切な対応をとることを政府に期待したい...と結ぼうと思ったが,考えてみると麻生政権には無理だ。
第1の理由。コミットメントとは,昔に言ったことをきちんと実行することである。重要政策についての発言が朝令暮改となっている首相では,過去の約束を守ると言っても何の説得力もない。
第2の理由。路線の遂行には,長期的視野をもちながら,細部を取り仕切る司令塔となる人物が必要だ。首相は,細部を司令塔にまかせ,要所を締めればよい。しかし,現政権は司令塔を欠いている。
よって...処置なし...
(参考文献)
「1990年代の財政運営の教訓」
http://www.e.u-tokyo.ac.jp/~iwamoto/Docs/2001/1990NendainoZaiseiUneinoKyokun.pdf
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