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上の図は,1885年から2009年までの1人当たり実質GDPを示したものである。暦年データの自然対数をとり,1885年を0に基準化している。 名目GDPの長期系列の作成方法については,「1945年のGDP」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/30230844.html )で説明した。実質GDPは, 1885-1940年 長期経済統計(1934-1936年価格) 1940-1955年 溝口・野島系列(1955年価格) 1955-1970年 68SNA(1965年価格) 1970-1980年 68SNA(1990年価格) 1980-1990年 93SNA(2000年価格) 1990年- 93SNA(連鎖方式) の6種類の系列を直後の系列と重なる時点で一致するように,比例的に調整して接続していった。各系列の出所については,「1945年のGDP」で説明してある。 実質GDPの長期系列を作成する場合に注意しなければいけないのは,価格の基準年を固定したまま,長期間のラスパイレス方式の数量指数を用いると,成長率に上方バイアスがかかることである。例えば,現在のパソコンの計算機能は,かつては数億円もした大型計算機をしのぐものだが,その当時の価格で今の実質GDPを計算すると,各家庭に数億円の消費財が転がっているような経済成長が実現したことになってしまう。バイアスを避けるためには,連鎖方式による系列を用いるか,同じ価格基準年の期間が短くなるように基準年固定方式の系列を細かく区切ってつなげていくかしないといけない。 長期経済統計と溝口・野島系列では,残念ながら1つの価格基準年による系列しかないので,そのまま用いる。68SNAと93SNAが2つの系列に分かれるのは,以下のようにややこしい事情による。 68SNAでは,生産接近法については,価格基準年を細分化した実質系列(経済活動別の国内総生産)が,『長期遡及主要系列 国民経済計算報告−平成2年基準(昭和30年〜平成10年)』(財務省印刷局,2001年)に収録されている。 しかし,支出接近法では,同様に細分化された実質系列(国民総生産(支出側))が提供されていない。ただし,もともと1965年価格の1955-1970年の系列を1970年で新しい系列と接続して,1つの価格基準年についての一貫した系列を作成している。すると今度は,生産接近法については,このような接続をした系列が提供されていない。そこで,生産接近法でも支出接近法でも同じ手順で実質系列が得られるように,1955-1970年は,『長期遡及推計 国民経済計算報告(昭和30年〜昭和44年)』(大蔵省印刷局,1988年)にある1965年価格表示の系列を用い,1970-1980年は68SNAの最終推計値となる1998年度確報での1990年価格表示の系列を用いる。 93SNAでは,支出接近法については,1980年以降の連鎖方式の実質系列がそろっているが,生産接近法の方は今のところ,1990年以降しか連鎖方式の系列がない。そのため,やはり生産接近法と支出接近法から同じ手順で実質系列が得られるように,1990年以前は,2000年基準価格系列を用いている。なお,溝口・野島系列は生産接近法の推計値であるが,今回使用している支出接近法の系列でもこれを代用している。 93SNAの2008年までは,少し古いが2008年1−3月期2次速報値である。これは,2009,2010年をOECDのEconomic Outlook 85(2009年6月)の予測値からとっているため,その前提となる統計に合わせたからである。 GDPの長期的推移を見る場合は,通常は1人当たりGDPに注目する。 分母となる人口は,「年央人口」(7月1日現在人口)である。日本では国勢調査の調査日が10月1日なので,10月1日現在人口を使うことが多いが,ここでは国際標準に合わせてある。日本の人口統計から年央人口を作成するのは一手間かかるので,別記事で解説したい。[2009年10月4日追記:「年央人口」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/30843986.html )で解説している。] このデータがカバーする期間では,「日本」の範囲が違ってくるが,通常の長期統計では地理的範囲を固定して,現在の日本の領土を対象にしたデータとする。そのため,戦前の統計には旧植民地は含まれない。戦後の統計では,返還されるまでの沖縄が公式統計に含まれないので,その調整が問題になる。厳密には奄美・小笠原諸島等にも同じ問題が生じるが,沖縄以外は数量的影響が微小なので,調整されないのが通例である。公式統計の68SNAでは,1971年までは沖縄県が含まれていない。溝口・野島系列は,建前は沖縄県を含むべきデータであるが,実際の資料の制約から沖縄県は除外されている。そこで,ここでは1945年から1971年のGDPには沖縄県が含まれていないとして,同期間の人口も沖縄県を含んでいない。 1人当たりGDPの大きな傾向を見ると,第二次世界大戦前はほぼ線形トレンドに当てはめることができる。第二次世界大戦の終戦時の経済の落ち込みは,非常に大きなものであった。現在の「百年に一度」の経済危機の比ではない。 戦後の復興から高度成長を経て,1人当たりGDPは戦前のトレンドの延長線を上回る水準に到達したが,1970年頃と1990年頃に線形トレンドが2回屈折したような形をもつ。 長期のトレンドを当てはめにくいのが,研究者の悩みである。 |
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