岩本康志のブログ

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年央人口

 2009年の人口は? ときかれたら,年央人口(mid-year population,7月1日現在人口)で答えるのが,国際標準である。ところが,日本では国勢調査が10月1日現在で調査されているので,10月1日現在人口が用いられることが多い。年度データを扱う場合には,ちょうど年度の中間になるので,10月1日現在人口を使うのがむしろ適切だが,暦年データについては,わずかな違いであるとはいえ年央人口を使うのが専門的には正しい方法である。
 公式統計をもとに1872年から2105年までの日本の年央人口を作成した結果が下の図である。10月1日現在人口で描くのとほとんど変わらないが,作成には結構,手間がかかる。
イメージ 1

 まず,年央人口の長期系列を作成する視点から,日本の人口統計をまとめてみよう。
 最初の国勢調査がおこなわれた1920年以降の推計人口には,以下の3つの種類の系列があり,総務省統計局の『人口推計』のホームページからダウンロード可能である。
(1)毎月1日現在推計人口
「全国 男女計の推計人口」(1952年3月〜1967年12月)
「全国 男女別の推計人口」(1968年1月〜1977年8月)
「全国 年齢(5歳階級),男女別の推計人口」(1977年9月〜)
(2)毎年10月1日現在推計人口
「全国 年齢(各歳),男女別推計人口」(1951年〜)
「都道府県 年齢(5歳階級),男女別推計人口」(1970年〜)
(3)国勢調査結果による補間補正人口
「全国 毎年10月1日現在,男女別推計人口」(1920年〜1940年,1947年〜)
「全国 毎月1日現在,男女計推計人口」(1950年10月〜1965年9月)
「全国 毎月1日現在,男女別推計人口」(1965年10月〜)
「都道府県 毎年10月1日現在,男女計推計人口」(1920年〜)
(国勢調査結果による補間補正人口とは,『人口推計』を補正して,国勢調査時期に国勢調査人口と一致するようにしたものである)

 毎月1日現在・都道府県別・男女別・年齢別の国勢調査結果による補間補正人口のデータがずっとそろっていれば何も迷うことはないが,上のような統計の現状から,必要なデータの種類に応じて系列を選択していかないといけない。
 いまは,7月1日現在の総人口をとればいいので,1951年以降(現在は2008年まで)は『人口推計』の7月1日現在人口,それ以前は,10月1日現在人口(1945年は11月1日現在)を線形補間して,7月1日人口を推計する。2005年までは国勢調査結果による補間補正人口である。また,1945年の人口は沖縄県を含まないので,線形補間で1945年の人口を求める際には1944年の人口から沖縄県を除外して,1945〜1971年は沖縄を含まない人口にしておく。沖縄の人口の復元は後述する。
 線形補間とは,近接する2期間の値を直線でつないで,その時点の値を求める方法である。10月1日現在人口を用いて線形補間で7月1日現在人口を求める場合,前年10月1日(9か月前)現在人口の12分の3と当年10月1日現在(3か月前)人口の12分の9の和となる。
 国勢調査以前は,1872〜1920年の推計人口が『明治5年以降我国の人口』(内閣統計局,1930年)で推計され,その後に補正されたデータが,『日本統計年鑑』に掲載されている。1872年は太陰暦1月末日現在(太陽暦で1872年3月8日現在),それ以外は太陽暦1月1日現在である。これは戸籍に基づく推計人口であって,現代の人口統計の概念には合致しないことから,研究者による補正も試みられたが,目覚しい改善にはならず,結局もとの推計人口がそのまま使われている。ここでも『日本統計年鑑』のデータを線形補間して,年央人口を作成する(計算の簡便化のため,1872年のデータは3月1日現在とみなした。1920年は,1月1日現在人口と,国勢調査以降の推計人口の10月1日現在人口を用いて線形補間した)。
 なお,『日本統計年鑑』での国勢調査以降の推計人口は,国勢調査年だけ占領時の沖縄県の人口を含んでいるので,そのまま時系列データとして使うと問題があることに注意されたい。

 以上の人口には海外に駐留する軍人・軍属と占領時の沖縄の人口が含まれていないが,これを加える作業をする。長期統計では「日本」の地理的範囲を固定して考えるので,占領時の沖縄の人口を含むべきである。また,1人当たりGDPの計算の際には,海外の軍人・軍属を含んだ人口を用いた方が適切である。
 当初の人口統計では,海外の軍人・軍属を含んでいたが,『人口推計資料1953-2 大正9年〜昭和25年わが国年次別人口の推計』(総理府統計局)でそれを除外する作業がおこなわれた。この資料の第10表に,1935年以降の毎年の海外の軍人・軍属の推計人口が掲載されている。Web上にはなさそうなので,ここに掲載しておく(単位は千人,日付の記載のない年は10月1日現在)。

1935 220
1936 273
1937 776
1938 962
1939 1,076
1940 1,172
1941 1,858
1942 2,315
1943 2,358
1944 2,383(2月22日)
1944 2,878
1945 3,505(8月15日)
1945 3,404(11月1日)

 以上のデータを線形補間して,1936〜1945年の年央人口を求める(1944年の2月22日現在人口は,3月1日現在とみなした)。1935年は10月1日現在人口をそのまま用いた。1946年は,まだ全員が帰還していないものとして,Maddison (1995)にならい,1945年の年央人口の2分の1と置く。
 「1人当たりGDPの長期的推移」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/30832608.html )で用いた人口データは,以上の手続きで求められた(2009,2010年は後述)。

 1945年から1971年までの沖縄県の年央人口は,1945〜1949年は沖縄群島政府による沖縄群島推計人口,1950〜1971年は琉球政府による推計人口を線形補間して求めるが,くわしくは以下のようになる。
 1950年と1952年以降は琉球政府による推計人口が『沖縄県統計年鑑』に掲載されているので,これを線形補間して,1951〜1971年の年央人口を求める。
 1945〜1950年は沖縄群島政府による沖縄群島推計人口(12月31日現在)が『沖縄群島要覧』に掲載されているので,基本的にはこれを用いる。その結果,この期間には宮古・八重山群島の人口は含まれない。Web上では,沖縄県の「統計トピックス」2008年6月号(http://www.pref.okinawa.jp/toukeika/so/topics/topics_357_1.xls )で紹介されている(表の表現が不正確なので,数字を利用する際には注意されたい)。現在の『沖縄県統計年鑑』には1946〜1950年の計数が掲載されているが,この計数が掲載された当初の年鑑には1945年も含めて掲載されていた。
 沖縄戦のただなかの1945年7月の人口推計に正確さを期待するのは無理である。利用可能な資料の範囲内で,前後の年との不連続性を小さくする作業をするものと考えるべきだろう。1944年人口調査による2月22日現在人口と,1945年12月31日現在人口の線形補間で求めるのは不適当であると思われ,代替的な手法もないので,1945年の年央人口は12月31日現在人口をそのまま用いた。1946〜1950年は沖縄群島推計人口の線形補間で求める。1951年は,1949年12月31日現在の沖縄群島推計人口と1950年12月1日現在の沖縄推計人口の線形補間で求める。後者のみ宮古・八重山群島が含まれるので不正確な方法であるが,日本の総人口への影響はほぼ無視できる。

 将来については,国立社会保障・人口問題研究所が2006年12月に発表した『将来推計人口』が,2105年までの10月1日現在人口の推計をおこなっている。2009〜2105年は,出生中位・死亡中位推計を線形補間して年央人口を求める。

 わずか200年ほどの間に,日本の人口は激しい変動を見せる。これまでの人口成長は,工業化に呼応したものであり,経済学による理論化も進展してきている。これからの人口減少も説明できる「統一理論」は可能なのか。大きな課題である。

(参考)
「人口推計」(総務省統計局)
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/index.htm
統計表一覧(政府統計の総合窓口)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000000090001

「日本の長期統計系列 第2章 人口・世帯 解説」(総務省統計局)
http://www.stat.go.jp/data/chouki/02exp.htm

「沖縄県統計年鑑」(沖縄県)
http://www.pref.okinawa.jp/toukeika/yearbook/yearbook_index.html

「統計トピックス」(沖縄県)
http://www.pref.okinawa.jp/toukeika/so/topics/so_topics.html

[2009年10月5日追記:
「日本統計年鑑」(総務省統計局)
http://www.stat.go.jp/data/nenkan/index.htm

(参考文献)
Angus Maddison (1995), Monitaring the World Economy: 1820-1992, Paris: OECD Development Centre.(邦訳『世界経済の成長史1820-1992年』,東洋経済新報社,2000年)
Appendix A: Population in 56 Sample Countries, 1820-1992 (Text)
http://www.ggdc.net/maddison/Monitoring_the_world/1994_Monitoring_the_World/b)App.A,text.pdf

(関係する過去記事)
「1人当たりGDPの長期的推移」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/30832608.html

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