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マニフェスト選挙で選ばれた政権はマニフェストを実行する義務を負う。選挙公約は破るためのものという従来の「常識」が捨てられ,新しいルールが定着するかどうかが,民主党政権で試されている。
一例をとろう。前原国土交通相は就任後ただちに,マニフェストに書いているからといって八ツ場ダム中止を明言した。前原大臣の発言は唐突であり,よく議論してから決めるべきだという批判があるが,マニフェスト選挙のあり方から見れば,選挙で民主党のマニフェストが選ばれたことで,政治的な決着はついている。
そういうと,国民はマニフェストに白紙委任したわけではない,国会軽視だ,と反発する国会議員がいる。しかし,国会議員に白紙委任するのは,国民の権利をもっと損ねる。国民による政策の選択権を高まるために,マニフェストで国会議員を縛るのだ。そのために,次回の政策選択選挙では,政権党はどれだけマニフェストを実現させたかで評価を下されなければならない。
国会で与党が過半数を占めている以上,マニフェストに書かれていると何でも実現するのか,と不安あるいは不満に思う人がいる。しかし,ほぼそうなる。問題は,マニフェストのでき方だ。マニフェストがいいかげんなものだったり,国民の関知しないところで決まったりすると,不安や不満が生じる。与野党のマニフェストができあがるまでの過程に,国民が十分な関心をもって議論が積み重ねられることが,今回の選挙でも必要だった。
民主党のマニフェストは,実務面での詰めが十分でない。現在の政治風土では野党の政策について野党と役所が突っ込んだ議論ができないことがそうさせたのだが,今後に改善が必要な課題である。マニフェストを実現させるしか道がない政権党が,政権獲得後に官僚と未知との遭遇をするのは,いいことではない。
おかしなマニフェストで政権につくと,進むも地獄,退くも地獄となる。マニフェストに沿って,おかしな政策を実行すれば,つぎの政策選択選挙で敗北する。マニフェストに沿わなければ,それを理由につぎの政権選択選挙で敗北する。
十分に叩かれ,練り上げられたマニフェストで競い合ってもらい,それをもとに国民は政権党を縛る。このルールを確立するための道のりが始まったところである。
民主党のマニフェストの出来は如何。これが,まもなくまとまる来年度予算の概算要求を評価する視点となる。
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