岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます

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Kindle DXを使ってみる

 iPadの発表に触発されて電子書籍の議論が盛んになっているが,学者の商売道具である学術論文は,すでに電子出版ベースで動いている。
 研究者でない方に向けて,少しご紹介する。
 学術雑誌の出版社は,学術論文にdoiと呼ばれる恒久的IDをつけて,Webからアクセスできるようにしている(日本以外では,と付け加えないといけないのが悲しいのだが)。たとえば,私の最近の論文(齊藤誠先生・小原美紀先生との共著)は,「10.1016/j.jjie.2009.12.009」というdoiがつけられている(と,ちゃっかり自己宣伝)。URL名「http://dx.doi.org/10.1016/j.jjie.2009.12.009 」を使えば,論文のページにたどりつく。大学の図書館が雑誌を購読している場合は,大学内のPCからここにアクセスして,論文をPDFファイルでダウンロードできる。
 学者は大量の論文を使うので,ソフトウェアの力を借りて論文を管理すると便利である。論文を管理するソフト(私が使用しているのは「EndNote」)は,書誌情報と論文ファイルを取り込んで,個人用のデータベースにしてくれる。また,オンライン検索エンジンとのインターフェイスが規格化されているので,ソフトから著者名や論文名をもとに文献を検索することもできる。
 音楽でいえば,出版社のサイトがiTunes Storeで,文献管理ソフトがiTunesに相当する。ただし,サイトとソフトは複数あって相互に利用可能である。つまり,iTunesでもSonicStageでも,iTunes Storeとmoraの両方が利用できるような関係になっている。
 論文をダウンロードするまでの操作はiTunesよりややこしいが,昔は図書館から雑誌を借り出してコピーをとっていたのだから,私はありがたがって使っている(そういう苦労を知らない若い世代は違う感じ方をするかもしれないが)。

 さて,ダウンロードした論文をどう読むのか。私は紙に印刷して読んでいた。PCの作業ですでに相当眼が疲れているので,さらにディスプレイを凝視して論文を読むのは無理だ。しかし,読み終わった論文は捨ててしまうことになる。保管は,PC内にPDFファイルがあることで,すでにできているからだ。若干地球にやさしくない仕事のやり方を気にして,電子書籍リーダーの導入を検討していたが,Kindle 2やSony Readerの画面では小さすぎる,
 結局,iPadの発表を待って比較した結果,Kindle DXを買った。理由は,上に書いたことからわかるように,Kindle DXが反射型表示の電子ペーパーなので活字を読みやすいこと。タッチ操作できない,ページめくりが遅い,白くない,などの欠点は承知だが,液晶ディスプレイのバックライトからの光を浴びて長時間活字を読む気にはならない(iPad支持者の眼はすでにバックライトに対応するように進化しているのかもしれないが)。
 Kindle DXをPCにUSB接続すると,EndNoteから論文のPDFファイルをKindle DXに書き出すことができる(OSのファイル操作でも可能)。これで,紙に印刷すると大部になる文献や資料も,Kindle DXで手軽に持ち運んで読むことができる。
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(上の写真は,Kindle DXに論文を表示させたところ)

 まだKindle DXの使用歴は浅いが,その使用感について。
 Kindle DXでPDFを読むのは,決して万全ではない。まだまだ進歩してほしい。
 9.7インチの画面では,全画面表示では活字が小さくなって,読めなくなるものが多い。画面の幅とページの幅を合わせる仕様なので,横長画面(下の写真参照)にすると活字が大きくなるが,PDF1ページを3画面で表示することになる。もう少し小さく表示してくれれば,1ページを2画面表示するようになって,操作のステップがひとつ減るので,もっと使いやすくなる。画面が大きくなるといいのだが,別の解決策としては,iPadやKindle DXで読むことを見越して,最初から小さなページでPDFファイルを作ってもらうことも考えられる。
イメージ 2

 ページめくりが遅いので,順に読んでいく読み方以外は使いにくい。論文を読むときは,前に戻って確かめたり,飛ばし読みしたりということがあるので,そういうときは使いにくい。このため,すべての論文をKindle DXで読むというわけにはいかない。
 それでも,論文を読む手段が増えて,役立つ場面も多そうで,適切な使い分けを見つけるのが,今の課題。ここにiPadが入る余地はないので,デバイスとしてiPadとKindleのどちらが有利かという話題にはあまり関心がない。電子ペーパーに劇的な進歩が欲しい,というのが現在の私の希望である。

(注1) 私のところでは論文をすべて電子化して保管しているかのような印象を与えるかもしれないが,過去の蓄積があるので,紙ベースで保管されている論文の方が多い。進行中の仕事の書類も紙ベースで置いているので,研究室は紙で溢れかえっている。
(注2) このままだと本の読み方はひどくおかしいことになるが,どうしたものか。
 組版→PDF→印刷→製本→裁断→スキャン→PDF→Kindle

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