岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます

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 高橋洋一氏が参戦してきた(「日銀に軽んじられた菅財務相 でもインフレ目標悪くない」(http://www.j-cast.com/2010/02/25060919.html )かと思ったら,高橋氏の昔話から入って,おっとりした印象の記事だった。
 貨幣ファイナンスの政策,といわゆる「バーナンキの背理法」について,モデル分析を提示してくれるかな,と内心期待していたので,第一声は「モデルは?」。残念ながら,期待は空振り。

 高橋氏のいう通り,インフレーション・ターゲッティングは,「中央銀行のコミュニケーション手段」。学界の共通理解だ。コミュニケーション手段だけ入れてデフレが収まるか,と考えれば明らかだと思うが,どういう政策をとるかが大切だ。「インフレ目標」に引っ張られると,見失われやすいポイント。

 時間整合性の問題についての高橋氏の見解は,「時間整合性をあまり硬直的に考えると、先の先を読んで長い目でみた最適解を探すにつれて金縛りにあったように進めなくなるし、長い目でみた最適解は現実にはなかなかわからないから、現状よりマシになるなら試みる価値ありだ」そうだ。ちょっと意味をとりづらいが,よく使われるようになった「フォワード・ルッキング」な面をあまり重視していない,ということだろうか。
 なお,経済学者の問いの方の「はじめはちょっと無理して金融緩和せざるを得ないがそれが長い目でみて最適になるのか」であるが,そういう質問はない。流動性の罠でのデフレ・バイアスなら「あとでちょっと無理して金融緩和せざるを得ないがそれがそのときに最適になるのか」で,金利が正の領域にあるときのインフレ・バイアスなら「はじめはちょっと無理して金融緩和するがそれが長い目でみて最適になるのか」である。
 その前の素朴で本質的な質問と合わせて,問答が噛み合っていないが,それもおっとりした印象を与えることになっている。

 高橋氏は,「インフレ目標を経済学から考えると、どうしても不安だというなら、行政学から考えたらいい」とのこと。経済学者は経済学で考えるので,ここでおしまい。目標値などの具体的な制度設計には経済学が必要,と言おうと思ったら,途中でさよなら,された感じ。

(注1)
 ここで考えている問題を,「時間整合性」と呼ぶか「時間非整合性」と呼ぶかは,好みの問題。私は1文字節約するため,前者を使うことが多い。
 内容をしっかり把握することが大事で,クルーグマン教授の提言(将来に余計に金融緩和をする政策)は時間整合的でない,ということ。
 時間整合的とは,ベルマンの原理を満たす,ということ。


(関係する過去記事)
「インフレ目標」をめぐるネット議論の陥穽
http://www.j-cast.com/2010/02/25060919.html


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