岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます

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 問題編と解決編を分ける趣向を試みたが,2つが分かれるのは結局読みにくいようなので,問題編を再掲する。

(問題編)
 ねじれ国会ではこれまで野党が審議を引き延ばしてきたが,会期末に向けて与党が審議を引き延ばす可能性がある。
 通常国会の会期は6月15日まで。会期末までに参議院で結論の出ない政府提出法案は,(a)継続審議とするか,(b)廃案とするかの選択がある。

(a) 継続審議になった場合は,次期国会では参議院先議の扱いになり,否決されればそこで廃案となり,衆議院での再可決はない。その場合,一事不再議の原則により,同じ法案を衆議院に出し直すことはできない。次期国会で採決されないままでも,衆議院がみなし否決で再可決することはできない。「60日ルール」は同一会期に衆議院で先に可決された法案に適用されるからである。
(b) 廃案になった場合は,次期国会であらためて衆議院に提出することができる。

 このため,参議院では,与党が政府提出法案の廃案を,野党が継続審議を望むという,不思議な事態が生じる。
 現在,衆議院を通過していない政府提出法案が多くある。大幅な会期延長がない限り,これらが衆議院を通過して参議院へ送られてしまうと,上にのべた事態に直面する。衆議院で会期末を迎え,継続審議になれば,次期国会では衆議院先議の扱いになる。そのため,与党が政府提出法案の審議を衆議院で(!)引き延ばして,参議院へ法案を送ることを避ける行動をとることが考えられる。
 与えられたルールのもとでの与野党(ここではとくに与党)の行動が不条理に見えるのは,制度が不条理だからである。どこかを変えるべきであるが,それはどこか。私は,会期制をやめるべきと考える。

(解決編)
 衆議院に先に提出された政府提出法案の会期末の扱いについて,衆議院を通過して参議院にあるものは与党が廃案を,野党が継続審議を望む。衆議院にあるものは与党が審議を遅らせて,衆議院での継続審議を望む。この現象の原因は,(1)国会が完全ねじれではなく,不完全ねじれにあること,(2)「会期制」(会期不継続の原則),のいずれかにある。
 かりに与党が衆議院で再可決することができないという完全ねじれ状態になっていれば,参議院で政府案を可決してもらうしかなく,それも早い方がいい。したがって,会期末に参議院にある法案を廃案にして次期国会で一からやり直すよりは,継続審議を望む。また,参議院へ送ることを遅らせる利益もない。
 かりに「会期制」(会期不継続の原則)をとらず,法案審議のプロセスが今期と次期で切れ目なくつながっていれば,問題は生じない。法案が参議院で会期をまたいでも,引き続き衆議院先議の扱いとなれば,与党が衆議院通過を遅らせる理由がなくなる。

「一事不再議」は不条理の本質ではない。かりに一事不再議の原則が存在しなくても,与党が会期末に政府法案の廃案を望むことに変化はない。一事不再議の原則がなければ,継続審議にした場合に次期国会で参議院で否決されても再度出し直すことができるが,野党が法案の成立を阻止したいならば,参議院で採決せずに廃案をねらうので,与党にとって事態が改善したことにはならない。
 なお,これまでのねじれ国会での議論で,一事不再議の我田引水的解釈が横行して,混乱を招いている。現行憲法と国会法に明文規定はないが,ここでは,大日本帝国憲法にあった明文規定「両議院ノ一ニ於テ否決シタル法律案ハ同会期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス」に対応するように,否決されて廃案になった法案は同じ会期に提出できない,という狭い解釈で用いている。これを一院が議決しただけで,二院制のもとで決着のついていない法案に適用する議論がされ,わけがわからなくなっている。歳入関連法案をめぐる3月末の攻防でも一事不再議の議論が持ち出されたが,これはまだ法案審議中のことなので,「なぜ民主党は対案を可決しなかったか」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/7825399.html )では,一事不再議は一切関係ないものと扱った。

 制度改革で,上のような事態を避けるにはどうすればよいか。衆議院で与党が3分の2以上の議席をもつかどうかは選挙の結果として決まることである。現行憲法のもとでは,不完全ねじれが生じない制度は無理である。よって,会期制の廃止が結論である。

(注1)
 審議中の法案について,一院だけの議決をもとに一事不再議の原則をもちだして,わけがわからなくなった議論の事例
(1) 新テロ特措法案で,参議院で民主党の対案が先に可決されれば,衆議院を通過した政府案が参議院に送られてきても,参議院はすでに対案を可決しているので審議できない。憲法第59条第4項「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる」とあるが,参議院は審議できないから法案は受け取れないので,「60日ルール」の適用はない。
(2) 歳入関連法案で,参議院で民主党の対案が可決され,衆議院に送られてきても,衆議院はすでに政府案を可決しているので,対案は審議できない。歳入関連法案は日切れとなり,大混乱が生じる。

(注2)
 憲法を改正して不完全ねじれ現象をなくそうとする場合は,衆議院優越事項をなくして完全ねじれ状態だけ起こるようにするか,衆議院優越を強化して完全ねじれ状態も不完全ねじれ状態も実質的に生じないようにするか,という正反対の方向への改革がある。その選択のためには,どういう統治機構にするか,という理念を明確にしておく必要がある。

(関係する過去記事)
「ねじれ国会+会期制+一事不再議=不条理」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/8000251.html

「ねじれ国会の攻防戦」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/7769509.html


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