本当は「もはやデフレではない」と言いたかったところかもしれない。そのかわりに危機感を伝えたかったのかもしれない。1月18日の大田経済財政相の経済演説での「もはや日本は『経済は一流』と呼ばれるような状況ではな(い)」という一節が波紋を広げている。
「1人当たりGDP 日本は18位に後退」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/1027049.html )で指摘したように,購買力平価で評価すれば,日本のGDPは「もはや」ではなく,かつて一流であったことはない。虚像を追いかけてもしかたがない。現状が実力に近いのである。
また国民の視点に立つのが福田政権の路線ならば,消費水準を見るべきである。上図は,購買力平価で評価した1人当たり現実個人消費(民間最終消費支出と政府の個別消費支出の和,OECD平均=100)を示したものであり,ピークの1996年でもOECD平均を下回っているのである。
GDPよりも消費の指数水準が低いのは,投資がGDPに占める割合が大きいため。その割に成長率が高くないのは,投資が効率的でない用途に使われている可能性が示唆される。非効率な投資の可能性は,故アルバート・安藤氏,林文夫東大教授,齊藤誠一橋大教授の研究によって,最近注目されている話題である。
(注)
図のデータの出所は,SourceOECD。おそらくNational Accounts of OECD Countries, Vol. I: Main Aggregates 2008 Editionに収録の時系列と同じになると思うが,2008年版の印刷物は2月13日刊行のようなので,確認できていない。
OECD全体は,1993年以前のデータが利用可能でない,チェコ,ハンガリー,ポーランド,スロバキアをのぞいた26か国でデータを集計している。
(参考)
第169回国会における大田大臣の経済演説
http://www5.cao.go.jp/keizai1/2008/0118keizaienzetsu.pdf
Ando, Albert (2002), “Missing Household Saving and Valuation of Corporations,” Journal of the Japanese and International Economies, Vol. 16, No. 2, June, pp. 147-176.
Ando, Albert, Dimitris Christelis, and Tsutomu Miyagawa (2003), “Inefficiency of Corporate Investment and Distortion of Savings Behavior in Japan,” in Magnus Blomstrom et al. eds., Structural Impediments to Growth in Japan, Chicago: University of Chicago Press, pp. 155-190.
Hayashi, Fumio (2006), “The Over-Investment Hypothesis,” in Lawrence R. Klein, ed., Long-Run Growth and Short-Run Stabilization: Essays in Memory of Albert Ando, Edward Elgar.
齊藤誠(2008),「家計消費と設備投資の代替性について:最近の日本経済の資本蓄積を踏まえて」,『現代経済学の潮流 2008』,東洋経済新報社,近刊,
|