岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます

諸事雑感

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鳩山政権の勝負所

 27日の読売新聞朝刊に,鳩山首相の所信表明演説を受けた私のコメントが掲載されています。
 しがらみに絡み取られて動かなかったことを政権交代を機に動かしてほしいという期待と同時に,経験不足と自信過剰で足元をすくわれないかという不安もあって,政権の全体については簡単な評価はできません。懸念の方は抑えて,期待を表に出したコメントとなったのは,つぎのような理由からです。

 鳩山政権は高い支持率を維持している。よく見れば,不慣れな政権運営によるごたごたはいろいろ出ているし,マニフェストの実行にもほころびが出ているところがある。首相もスキャンダルを抱えている。自公政権で同じことをすれば,大きな批判が出て政権運営は大変だっただろう。選挙で政権交代した事実が,国民に政権の動きを見守らせるように働いていると考えられる。
 米国では政権発足後の百日間は政権とのハネムーン期間と呼ばれるが,政権交代で誕生した鳩山政権にも同様の現象があてはまるかもしれない。この百日間はちょうど予算編成の時期にあたっている。ハネムーンが終わって,期待が現実に着地するときには,予算政府案が政権の評価材料になる。予算編成が,その後の政権運営を左右する勝負所である。仕事で評価することになるのは,政権にとっても国民にとっても絶好のタイミングだといえる。
 私も,どのような予算が組まれるのかを見守り,それをもとに政権の評価をするつもりである。

(参考)
「第173回国会における鳩山内閣総理大臣所信表明演説」(2009年10月26日)
http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200910/26syosin.html

マニフェスト選挙

 マニフェスト選挙で選ばれた政権はマニフェストを実行する義務を負う。選挙公約は破るためのものという従来の「常識」が捨てられ,新しいルールが定着するかどうかが,民主党政権で試されている。

 一例をとろう。前原国土交通相は就任後ただちに,マニフェストに書いているからといって八ツ場ダム中止を明言した。前原大臣の発言は唐突であり,よく議論してから決めるべきだという批判があるが,マニフェスト選挙のあり方から見れば,選挙で民主党のマニフェストが選ばれたことで,政治的な決着はついている。
 そういうと,国民はマニフェストに白紙委任したわけではない,国会軽視だ,と反発する国会議員がいる。しかし,国会議員に白紙委任するのは,国民の権利をもっと損ねる。国民による政策の選択権を高まるために,マニフェストで国会議員を縛るのだ。そのために,次回の政策選択選挙では,政権党はどれだけマニフェストを実現させたかで評価を下されなければならない。
 国会で与党が過半数を占めている以上,マニフェストに書かれていると何でも実現するのか,と不安あるいは不満に思う人がいる。しかし,ほぼそうなる。問題は,マニフェストのでき方だ。マニフェストがいいかげんなものだったり,国民の関知しないところで決まったりすると,不安や不満が生じる。与野党のマニフェストができあがるまでの過程に,国民が十分な関心をもって議論が積み重ねられることが,今回の選挙でも必要だった。
 民主党のマニフェストは,実務面での詰めが十分でない。現在の政治風土では野党の政策について野党と役所が突っ込んだ議論ができないことがそうさせたのだが,今後に改善が必要な課題である。マニフェストを実現させるしか道がない政権党が,政権獲得後に官僚と未知との遭遇をするのは,いいことではない。

 おかしなマニフェストで政権につくと,進むも地獄,退くも地獄となる。マニフェストに沿って,おかしな政策を実行すれば,つぎの政策選択選挙で敗北する。マニフェストに沿わなければ,それを理由につぎの政権選択選挙で敗北する。
 十分に叩かれ,練り上げられたマニフェストで競い合ってもらい,それをもとに国民は政権党を縛る。このルールを確立するための道のりが始まったところである。

 民主党のマニフェストの出来は如何。これが,まもなくまとまる来年度予算の概算要求を評価する視点となる。

首相選択選挙

 日本の首相は長らく,自民党総裁選あるいは自民党内の話し合いで決められてきた。国民が首相を選べないことへの不満から,大統領制や首相公選制の導入がこれまで提言されたりした。1994年の政治改革は,二大政党制による政権選択選挙を定着させて,多数党党首を選ぶことで実質的に首相選択選挙とすることで,この不満への回答とする意図も含んでいる。
 選挙による政権交代はこれで戦後3回目となるが,片山首相は首班指名選挙で他党が「憲政の常道」により投票することで誕生し,細川首相は連立政権がまとまることで誕生した。今回は,衆院選で民主党が過半数を得た瞬間に,鳩山代表が首相になることが確定した。
 「民主党への政権交代」に比較して,「衆院選による鳩山首相の指名」という出来事の注目度は低いように思われる。8月30日の開票速報番組では,いつものように各党党首に各局がインタビューしていたが,首相選択選挙には向いていない形式である。新しい首相に選ばれた第一声が,イヤホンをつけてテレビ番組のキャスターと一問一答というのは,違和感を覚えた。
 戦前の内閣総理大臣の地位が限定されていたことを考えると,大げさにいえば,鳩山首相は,日本の歴史上はじめて,国民の選挙によって選ばれた指導者なのである。もちろん正式には国会で首相が指名されるので,そういう見方も可能だということであるが,国民が選挙で指導者を選んだ,という実感をもたせるような盛り上げ方もありえただろう。昨年の米大統領選のように,8月30日に過半数が確定した時点で,大観衆の前で新首相となる鳩山代表が勝利演説をするという演出はどうだろうか。
 そういう演出は,首相の政権基盤を固めるために有効な手段となる。衆院選で首相を選ぶことが国民の常識となれば,選挙を経ない首相の交代には激しい世論の抵抗が巻き起こるだろう。総合調整機能が弱いことが日本の政治過程の問題であり,「なぜ財政赤字が発生するか」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/30491529.html )で触れたように,財政赤字の発生要因としても注目されている。その解決策のひとつとして強いリーダーシップをもった指導者をつくることが必要である。
 しかし,総選挙開票後から日本は鳩山代表を事実上の首相として動き出したにもかかわらず,鳩山氏は国会で指名されるまでそうした立場で振舞うことを避けて,首相選択選挙を演出する流れには与しなかったように見える。
 首相選択選挙の考え方が定着するかどうかは,気が早いが,つぎの衆院選の課題となるだろう。衆院選で首相を選択できることを国民が実感すれば,その権利を手放したいとは思わないだろうから,いずれその考え方は定着すると思われる。しかし,そのためには,すぐれた候補者が選択肢にならないといけない。与野党の党首の選び方から,しっかり見ていかないといけない。首相選択選挙の準決勝となる自民党総裁選は,世間の注目度が低いまま,まもなく投開票を迎える。

(関係する過去記事)
「なぜ財政赤字が発生するか」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/30491529.html

「【政権選択選挙】党首の選び方」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/27853344.html

 衆院選に向けた記事をすでにいくつか書いてきたが,選挙戦に入って変な形で使われては困るので,ブログの方針を説明しておきたい。
(1:マニフェスト重視)経済学的な視点からマニフェストを評価する。
(2:不偏不党)特定の政党に肩入れしない。価値観の問題は有権者の選択にゆだねる。おもに技術的な問題点に関心を向ける。

 片方の政党の政策の長所だけをほめ,片方の短所だけを攻撃するなどして,特定の政党に肩入れするようなことはしない。選挙での論戦が経済学的にどう評価されるかを説明して,有権者の選択の参考にしていただくことを主要な目的とする。経済学的におかしな議論がまかり通って有権者の選択を誤らせる事態になるのは困るので,批判的な評価が多くなると思うが,そこだけ切り取って○○党寄りというレッテルを貼られては困る。単なる批判だけではなく,できれば改善の方向も指摘したい。

 マニフェストの評価の視点は,与党と野党でかなり違う。与党は実績の評価が大きな比重を占める。まず,前回の政権選択選挙の公約がどれだけ果たされたのか,が問われる。これを問わないとマニフェストは言いっ放しになって,マニフェスト選挙の意味がなくなってしまう。前回の衆院選は,郵政民営化一本を問う異例の選挙だった。結果,郵政は民営化されたが,現在の自民党は逆方向に動いているように見え,公約の実行については非常に低い評価をせざるを得ない。
 与党のマニフェストは,政府の実績の延長線上にあって,手堅いものになるのが普通である。政府が当面進める政策は6月に策定された「基本方針2009」に記されていると考えられるので,これが重要な評価対象になる。
 野党のマニフェストは,与党のそれよりも野心的なものになってしかるべきである。今回の選挙の最大の関心事は,民主党のマニフェストは実行可能なものなのか,であろう。実現不可能なマニフェストを掲げて,風に乗って選挙に勝っても,苦しむのは民主党であり,迷惑なのは国民だ。与党の実績はすでに体験済みだが,野党の提案は実現されていないので,情報が多く提供される必要がある。このブログでも民主党の政策をとりあげる機会の方が多くなるだろう。

 民主党代表選が16日におこなわれる。半年以内に行われる衆院選は首相を選ぶ選挙になり,民主党代表選は首相選抜レースの準決勝に相当する。決勝戦の政権選択選挙後のことを考えると,どういう手続きで準決勝をするかが非常に大事になる。

 民主党規約第11条第4項は,
「代表の選出は、所属国会議員、県連を通して本部に登録された党員(地方自治体議員を含む)およびサポーター、その他代表選挙規則にもとづき、役員会の議を経て常任幹事会の承認にもとづき定める有権者による選挙によって行う。代表選出のための選挙は、代表の任期が終了する年の9月に行うことを通例とする。」
と定めるが,今回の選挙は,第11条第7項
「任期途中で代表が欠けた場合には、代表選挙規則にもとづく選挙によらず、両院議員総会において代表を選出することができる。この場合、新たに選出された代表の任期は、欠けた代表の残任期間とする。」
に基づき,衆参国会議員の投票で選出される。規則は「できる」と書かれているので,党員・サポーターも含めた選挙が本来のルール,衆参国会議員による選挙は例外ルールである。

 政権選択選挙の趣旨からいって,この準決勝は本来のルール(第11条第4項)で実施される方がよい。それが民主党のためになる。第7項による選挙で選ばれた党首が,衆院選の結果で首相になると,政権基盤に潜在的な問題を抱え込むことが理論的に示唆される。
 現在,民主党の国会議員は衆議院112名,参議院109名である(横路衆院副議長・江田参院議長含む)。民主党が衆議院で過半数(241議席)を得て,政権をとった場合,130名以上の新議員(つまり,今回の代表選に関与していない議員)が誕生する。代表が求心力を保っている限りは,この事実はさほど問題にならないだろう。
 しかし,首相の求心力が陰ってきたときは,与党国会議員の3分の1超が「自分たちが選んだ代表ではない」との思いで行動する可能性を内包する。首相は党内融和に腐心するようになり,リーダーシップを発揮することが難しくなる。

 さらに反発力が強くなって,与党議員と首相との間に距離ができてきても,党首=首相の交代は容易ではない。自民党で首相をたらい回しにするなら下野して政権を渡せと,これまで民主党は主張してきたので,今度は民主党が首相のたらい回しをするのは筋が通らないからである。
 与党が首相に不満をもったまま膠着状態になると,解散せよ,という声が高まり,支持率は低下する。首相を政権選択選挙で選ぶことを経験すると,国民はそれを当然の権利だと思うようになってくるだろう。
 つまり,政権選択選挙では,政党と党首は一蓮托生である。政党が政権選択選挙に向かう党首を選ぶときは,「自分たちが選んだ」という覚悟でまとまれるような手続きをとらなければいけない。選ばれた代表に投票しなかった人も,決定プロセスに参加していることでもって,その結果を受け入れるのである。
 政権選択選挙の目的は,強い首相を作ることである。首相がリーダーシップを発揮するには,主権者である国民が選んだ,という事実が非常に大きな意味をもつ。強い首相の候補者として弱い党首を作るのは,ちぐはぐな動きだ。

 なお,政治家個人の要因が大きいので,党員を含めた選挙で選ばれた党首が自らの失敗で行き詰ることもあるし,国会議員のみの選挙で選ばれた党首が巧みな運営で求心力を保つことも起こり得る。以上の議論は,そうした人的要因は捨象して,現状の制度と環境から理論的に予想される姿を示唆したものである。
 また,与党と野党は立場が違うので,民主党が野党に留まる場合には,上の議論は当てはまらないだろう。この場合に,どういう帰結が生じるかはよくわからない。

(参考)
民主党規約
http://www.dpj.or.jp/governance/policy/index.html

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