岩本康志のブログ

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諸事雑感

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 今日は昭和の日。
 以前に子どもの教科書を見て気づいたことですが,学年別漢字配当表によると,「昭」,「和」,「平」は小学3年生で,「成」は4年生で習うことになっています。
 つまり,3年生は「昭和」は読めるが,「平成」は読めません。「昭」は,日常生活では昭和に関係すること以外にはまず使いません。つまり,小学生の漢字の学習では「昭和」を「平成」より優先させているわけです。今は「平成」の方が使用頻度が高いと思うのですが,なぜこうなっているのかは,不勉強でその理由を知りません。なぜでしょう。

15歳未満の脳死の扱い

 現行の臓器移植法の一番の課題は,15歳未満の脳死後の臓器提供がされないことである。
 現行制度は,脳死後の臓器移植を本人の自己決定に沿うものとすることで,脳死をめぐる意見の違いを乗り越えた。臓器提供の意思表示をした者からの提供に限られるため,判断能力がないと見なされる15歳未満からの臓器提供の道が閉ざされる。
 これまで自己決定の問題は真剣に議論されたが,まずは自己決定する人を念頭に置くので,自己決定しない人や判断能力がないとされる子どもについての議論が手薄になりがちである。しかしいまは,自己決定の議論を足場にして,自己決定できない・しない人の扱いについて考えを深めることが必要とされている。
 前のブログ記事「脳死後の臓器提供を増やす方法」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/25772545.html )では,臓器提供の意思表示制度を,特別に行動を起こさない状態(デフォルト)をどう選択するかの政策問題として扱い,デフォルトの選び方で政策の帰結が変わってしまうことを指摘している。つまり,意思表示しないことを,臓器提供する意思とみなすか,しない意思とみなすかの違いで,臓器の提供に大きな違いがでるのである。
 今後は渡航移植が難しくなり,移植手術を必要とする子どもがますます助かりにくくなると予想されることから,できるだけ早期に国会で結論を得ることが必要だ。前の記事を書いた動機もそこにあったのだが,子どもの扱いは表に出てこなかったので,この記事で補足したい。前の記事を未読の方は,そちらを先に読んでいただきたい。

 脳死について賛否両論があるなかで,短時間で合意するためには,問題となるところに議論をしぼるのが,通常は得策である。現行法から最小限の修正で15歳未満の臓器提供への道を開くとすれば,15歳未満の脳死者については家族の同意によって臓器提供できるようにすることが考えられる。
 しかし,そこだけを変更すると,15歳の前後で扱いが大きく変わってしまう。つまり,15歳未満で脳死になると,家族は臓器提供の可否の判断を求められるが,15歳以上で脳死になると,本人の意思表示がない段階で臓器提供しないと結論が出る。
 しかし,14歳には難しいから判断させないという状態と,15歳の誕生日を迎えて,臓器提供カードを入手して意思表示することをしないでいる状態に,どれほど本人の内面的な違いがあるだろうか。
 いや,大人になっても,問題がわからない,忙しくてよく考えていない,面倒くさい,といった理由で自己決定しない状態と,あまり違いがないとも考えられる。したがって,本人の意思表示なしで,家族の同意で臓器提供できるとするならば,15歳未満だけではなく,すべての年齢で同じ扱いにしないと,制度の断絶が顕になる。
 現行制度の論理構成では15歳未満の臓器提供がないことが必然的に導かれることの裏返しとして,15歳未満の扱いをひっくり返すなら,全部をひっくり返さないといけないのである。

 すべての年齢で本人の意思表示がない場合,家族の同意があれば臓器提供される制度というのは,これまで国会で議論されてきた3案のうちのA案に近い。
 A案は脳死を人の死とする立場と一般には理解されている。「脳死=死」をデフォルトとして,そこから離脱するオプションを認める場合には,自己決定した人はそれぞれの意思に沿って扱われ,そうでない人が脳死した場合には,家族の同意があれば臓器提供される。
「脳死=死」を原則とすることが脳死反対論者の同意を得ることを難しくしているが,じつは本当の争点はそこにはない。現行法の考え方に近い「臓器提供する場合のみ脳死を死とする」ことをデフォルトとし,そこから離脱するオプション(脳死を死としない)を認めるとした場合も,臓器移植に限ると帰結は同じである(臓器移植以外での脳死者の扱いには違いが出る)。このデフォルトは現行法とは微妙に違っているのだが,一見したぐらいではわからないくらいの差なので,これに対する反発は,「脳死=死」に対する反発よりも小さいことが期待できる。もし臓器移植に限って早く合意を得ることが大事で,「脳死=死」を原則としないことで脳死反対論者の合意が得られるなら,今はその道を探ってもいいのではないか,というのが私の考えである。

 この案について,脳死後の臓器移植に反対する立場からの批判について考えてみよう。
 まず,「臓器提供すると意思表示していないのに,臓器が提供されてしまうなんて恐ろしい」という批判がある。そう発言する人は大真面目のようだが,これは有効な批判になっていない。この批判には,同じ理屈を使って「現行制度では,臓器提供しないと意思表示していないのに,臓器が提供されないなんて恐ろしい」と言い返すことができるからである。両者の主張に優劣はなく,何をデフォルトとするかは別の論理から決めるべき問題である。どちらの帰結が社会全体の利益をより高めるかの価値判断が重要になる。
 また,医療従事者が,意思表示していない人をわざと脳死に誘導して,臓器提供させる危険がある,という批判がある。そもそも全員に共通する「生きたい」という意思が尊重されないことになるので,これを防ぐことは必要だ。日本の移植医療の歴史が和田移植の悲劇を背負っていることから,医療従事者への不信感はとくに強いのかもしれない。が,医療従事者が患者の利益を損なう行動をとる危険は医療一般に生じる可能性があり,臓器移植固有の問題ではない。患者の権利保護や監視体制の整備等,医療行為一般でとられる対応策を適用するべきであろう。提供臓器数の大幅な低下という費用を払わなければいけない理由はないだろう。

(関係する過去記事)
脳死後の臓器提供を増やす方法
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/25772545.html

 臓器移植法に基づく最初の脳死移植から10年が経過したが,提供数はわずかに81例。臓器提供意思表示カードの保有率は低く,臓器の提供は移植の需要にはるかに満たない。
 日本には15歳未満の臓器提供の枠組みがなく,移植を希望する子供はこれまで海外で手術を受けるしか手段がなかった。現状の意思表示の仕方は,法律的に遺言の一種とみなされ,15歳未満には遺言能力がないためである。しかし,どこの国でも提供臓器は貴重であり,外国人が割り込むことは当然に反発を買う。国際保健機関(WHO)は,この5月に臓器移植を国内で完結させる指針を採択する予定だ。今後は渡航移植がきわめて厳しくなり,国内での対策が切実に必要とされる。
 ジョンソン教授とゴールドスタイン教授が2003年に『サイエンス』誌に発表した論文に,欧州11か国で臓器提供に同意した国民の比率のデータがある。
 デンマーク 4.25%
 オランダ 27.5%
 英国 17.17%
 ドイツ 12%
 オーストリア 99.8%
 ベルギー 98%
 フランス 99.91%
 ハンガリー 99.97%
 ポーランド 99.5%
 ポルトガル 99.64%
 スウェーデン 85.9%
はじめの4か国と後半の7か国の同意率には,とてつもない差がある。何がこの差を作り出したのか。2つのグループでは,臓器提供の意思表示の仕方が違っているのである。
 日本の制度だと,カードを持つことで臓器を提供する意思を表示し,カードを持っていなければ,臓器提供しない意思表示になる。これは,積極的に行動を起こさない状態(デフォルト)を「臓器提供しない」意思表示とみなすものであり,同意率が低い国のグループが同様な制度をとる。一方で,同意率の高い国のグループでは,臓器提供しないことを何らかの手段で意思表示するようにして,意思表示がない場合(デフォルト)は「臓器提供する」意思を表示しているとみなしている。
 上の観察は,デフォルトが「臓器提供しない」ならば臓器提供しない意思を選択するが,デフォルトが「臓器提供する」ならば臓器提供する意思を選択する傾向があることを示唆している。つまり,人間はデフォルトを選択しやすい傾向にあるというのである。もちろん,デフォルトが「臓器提供する」制度をもつ国に臓器提供をする意思をもつ国民が多いという可能性もないわけではないが,これだけ顕著な差が生じていると,その解釈には無理がある。両氏の研究や他の研究において意思表示の方法以外の要因が与える影響が検討されているが,2つのグループの同意率のこれほどの違いは説明できないと考えられている。

 皆が明確な意思をもっていれば,デフォルトが何であっても表示される意思に違いがないはずであるが,これに反して,さまざまな局面でデフォルトが選択されやすくなることが,心理学の研究を通して明らかにされてきた。サンステイン教授とターラー教授の提唱する,自由主義的温情主義(libertarian paternalism)の考え方は,この知見を利用して,制度・政策のデフォルトの設定を通して,個人の行動に影響を与えようとするものである。二人が昨年に出版した「Nudge」は非常に重要な図書であり,さまざまな政策に対する自由主義的温情主義の適用が語られている。
 この考え方を適用すると,日本がデフォルトを変えて,「提供しないカード」を持たないことで臓器提供の意思表示とみなす制度に変更すれば,同意率が上昇して,日本での提供臓器が増えることが予想される。
 この考え方にはいろいろな角度からの批判もあるだろう。
 まず,死生観の観点から,そもそも脳死者の臓器移植に反対する意見がある。しかし,脳死を認めなくない人は,「提供しないカード」を持つことによって,少なくとも自分については,自分の意思を貫ける。脳死を受容している人が提供の意思表示をすることに寛容であれば,つまり臓器提供意思表示カード制度そのものに反対でなければ,デフォルトを変えることに批判はないはずだ。脳死に反対する立場からの批判に対しては,他者の意思に対しての寛容さを求めることで,自由主義的温情主義は自由主義(libertarianism)の側面をもつ。
 人々がデフォルトを選択しやすい理由としては,要するにその選択について十分に考え抜いていないことがあげられる。そのような場合,よく考えないことで生じる間違いの悪影響をできるだけ小さくすることが,デフォルトの設定の目安となる。臓器提供することをデフォルトとした場合に困る人には,脳死の是非についてよく考えておらず,いざ脳死になる段階で実は自分は脳死を死と認めたくなかったことに気がついたものの,脳死を死として扱われてしまう人がいる。現在の制度ではこの人たちの利益は守られるかもしれないが,代わりに損なわれるのは,移植を必要としながら臓器提供の機会にめぐり合えずに命を落とす患者とその家族の利益である。異なる個人の利益のどちらをとるかは価値観の問題である。この記事では価値観は入れずに論点を整理するように心がけているが,この部分だけ私の価値観をはさむ。国民の負託を受け国会で意思決定する政治家には,後者の患者と家族の利益を重視してほしい,と私は思う。

 また,政府が恣意的に国民の選択を左右するような事態に見えることに抵抗感が生じかもしれない。これは,温情主義に対する自由主義からの批判である。しかし,デフォルトから離脱する選択肢が与えられているので,自由主義の考え方は尊重されている。自由主義の立場から批判することができないのである。
 むしろ,自由主義が深刻な問題を抱え込む。制度・政策には自ずとデフォルトの状態が存在する。デフォルトの状態が個人の選択に影響を与えるとなると,決定をすべて個人に委ねるという自由主義的政策というのは厳密には成立しないのである。従来の考え方のように,自由主義と温情主義とは対立するものではない。
 サンステイン教授は,オバマ大統領のシカゴ大学時代の同僚であり,ブレーンの1人でもある。近く,政府の規制政策を統括する情報規制問題室(OIRA)のトップ(その権限からregulation czarとの呼び名がある)としてホワイトハウス入りする予定である。米国の規制政策がどう変化していくのか。世界中の,法と経済学,行動経済学の研究者が熱く注目している。

(注)
 libertarianismの訳語には自由至上主義が通常あてられるが,個人的には,古典的な自由主義の意味として自由主義と訳したいと思っている。

(参考文献)
Eric Johnson and Daniel Goldstein (2003), “Do Defaults Save Lives?” Science, Vol. 302, November 23, pp. 1338-1339.
Richard H. Thaler and Cass R. Sunstein (2008), Nudge: Improving Decisions about Health, Wealth, and Happiness, New Haven: Yale University Press.
(2009年7月4日追記:邦訳『実践 行動経済学』(日経BP社)が刊行された。)

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Geithner No Plan

 7日の米国テレビ局NBCのバラエティ番組「Saturday Night Live」で,銀行危機に対する政府の無策が風刺された。マンキュー・ハーバード大学教授のブログ記事で紹介されていたが,残念ながら米国以外からはNBC.comの動画が見られない。
 BriteThorn.comがSNLの政治風刺スキットを抜粋してYouTubeにアップロードしているなかに,そのさわりがおさめられている(最初の1分間だけで十分です)。


 ウィル・フォルト扮するガイトナー財務長官が銀行危機対策を発表する場面。大真面目な顔で曰く,「私は,財務省が4200億ドルの資金を用意することを提案しました。この資金は,銀行危機を解決する名案を考えた人に与えられます」。
 わかりやすく,かつ強いインパクトで,問題の核心をついている。経済学者には及びもつかない,風刺コメディにしかできない仕事だ。テレビの力によって,ガイトナーの名前を知らないような,政治経済に関心の薄い米国の家庭にも届いている。

(余談。このブログ記事全部が余談のようなものだが)
 上の動画の終わりで触れられているが,SNLをはじめとするNBCの動画の視聴が米国内に限られるのを何とかしたいと思っている人は内外に多いようだ。
 同じスキットを提供しているHulu.comでは,外国から視聴できる運動への協力を求めている。ご興味がある方はここで表示される「For more information on Hulu’s international availability, click here」のところをクリックしてください。
 私はSNLの全部を見たいとは思わないが,ティナ・フェイがサラ・ペイリン知事に扮して発した迷言「I can see Russia from my house」のような有名なものは,米国だけの視聴にとどめておくのはもったいないような気がする。

 Webで動画を埋め込んでいるのをよく見かけるが,自分でも試してみたかったので,14日のG7後の中川昭一財務大臣(当時)の記者会見の映像を題材にしてみる。

 これが世界に配信されたのは,日本人として恥ずかしいことだ。とくに気になったのは,レイチェル・マドウがどう伝えたのか,である。
「The Rachel Maddow Show」は,2008年8月から米国のニュース専門放送局MSNBCで始まった番組だが,すぐに裏番組「Larry King Live」をしのぐほどの人気を得た。公表同性愛者として最初のローズ奨学生,最初のプライムタイムの報道番組アンカーとなったマドウは,報道番組としての高い知性をもちながら,突っ込みどころでは一気にバラエティ番組の雰囲気に変貌,しかし低俗には堕ちない展開を見せる。思想的にはリベラルで,ゲストと激しくやりあうこともあり,共和党議員はめったに番組に出演しない。

 残念ながら,Yahoo!ブログでは動画の埋め込みができないようである。動画(2月16日放送)へのリンクは
Madam Secretary’s Excellent Adventure
http://www.msnbc.msn.com/id/22425001/vp/29228228
である。
 筆記録は,
http://www.msnbc.msn.com/id/29236871/
にある。
 政治家の失態には笑いをとりながら厳しいつっこみを入れるのが常なので,どうなるかと思ったら,しっかりやってくれました。2月16日放送の最初のコーナー。まずクリントン国務長官のコートの裏地の話題から入る独特の視点だが,それに続いて中川前大臣の記者会見の映像が,字幕なしで流れる。マドウは,日本語はわからないが,こいつは酔っ払い,とばっさり。こんな国にヒラリー・クリントンは行ったのよ,と日本人から見れば噴飯もののコメントがさらに続く。コーナーのタイトル「女性長官の大冒険」が画面下部にずっと表示されているが,話題ごとに意味を変えて相乗効果を発揮する。日本人から見れば,とにかくひどい扱いである。
 この辺りまではバラエティ番組の雰囲気だが,その後にNBCの著名記者であるアンドレア・ミッチェル外交担当主任(グリーンスパン前連邦準備制度理事会議長の奥さん)による国務長官訪日の分析があるので,報道番組としても侮れない。

(参考)
The Rachel Maddow Show
http://rachel.msnbc.com

(2009年2月19日追記)
1)「マダム・セクレタリー」のマダムを当初,おばさまと訳しましたが,女性に変えました。

2)最初のローズ奨学生とアンカーは,「米国で」と限定した方が正確でした。世界で最初かどうかは確認していません。

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