岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます

身辺雑記

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身辺雑記です
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 14日(水)は,厚生労働省の「社会保障給付費の整理に関する検討会」の第1回会合に出席しました。委員の互選により,座長を務めることになりました。
 6月にまとまった「社会保障・税一体改革成案」(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/kentohonbu/pdf/230630kettei.pdf )には「社会保障給付に要する公費負担の費用は、消費税収(国・地方)を主要な財源として確保する」と書かれていますが,この社会保障給付の範囲はどこまでなのか,という(そもそも最初に確認しておくべきような)議論が成案をまとめる過程でありました。従来から,国立社会保障・人口問題研究所が国際労働機関(ILO)の基準に基づき作成している「社会保障給付費」の概念に基づき将来の費用が推計されてきたのですが,総務省は
「国の事業及び国庫補助負担事業を中心とした『社会保障給付費』という狭い概念で議論するのではなく、『地方単独事業』を含めた社会保障サービスの全体像を国民に提示して、その財源問題を議論すべきである」(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/kentohonbu/kettei2/siryou2.pdf
と主張しました。その結果,成案では,
「社会保障給付にかかる現行の費用推計については、そのベースとなる統計が基本的に地方単独事業を含んでおらず、今後、その全体状況の把握を進め、地方単独事業を含めた社会保障給付の全体像及び費用推計を総合的に整理する」
ことが宿題になりました。この宿題をこなすのが「社会保障給付費の整理に関する検討会」の使命です。

 社会保障給付費の範囲には地方単独事業や地方の一般財源による事業を含めないと規定されているわけではなく,データがとれないために範囲内と考えられるものも含まれていない,というのが現状の姿です。統計作成の観点からは,データが把握できる体制が整えばこうしたものは会保障給付費に計上されるべきです。同時に,これまで社会保障給付費の範囲であるか否かが検討されていなかった地方の事業については,その判断をする作業が必要となるでしょう。
 検討会は「社会保障給付費の集計範囲等について,学術的・統計実務的な観点から検討を行う」こととされています。消費税の国と地方の配分につながる話ですが,国と地方の財政的利害に左右されずに検討を進めるという使命が与えられています。
 座長が検討会の議論に予断を与えるような発言はできませんので,ここでは以上の周知の事実を伝えるにとどめます。

 「『中期プログラム』の二部門アプローチ」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/20527190.html )でのべたように,政策を研究する立場での私の考えは,一体改革成案での「消費税収の社会保障財源化」には反対です。しかし,政府のなかに設けられた検討会は一体改革成案の是非をあらためて論じる場ではなく,それを土台にした議論をする場です。ここの折り合いのつけ方ですが,社会保障給付の概念整理と給付の財源とはまったく別の議論として切り分けることができ,そうすることは検討会にとっても私個人にとっても望ましいことだと考えています。

(参考)
「社会保障・税一体改革成案」(政府・与党社会保障改革検討本部決定,2011年6月30日)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/kentohonbu/pdf/230630kettei.pdf

「社会保障に係る費用の将来推計について」(社会保障改革に関する集中検討会議,2011年6月2日)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/syutyukento/dai10/siryou1-1.pdf

「地方単独事業について」(総務大臣提出資料,成案決定会合,2011年6月13日)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/kentohonbu/kettei2/siryou2.pdf

(関係する過去記事)
「中期プログラム」の二部門アプローチ
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/20527190.html

二部門アプローチのもう一つの部門
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/20648690.html

 ブログで紹介することを失念して時機を逸した話題になって恐縮ですが,9月2日(金)に福井県県民ホールで開催された「ジェロントロジー研究成果報告会および共同研究協定調印式」に出席しました。
 福井県と東京大学高齢社会総合研究機構とのジェロントロジー(老年学)共同研究は福井県をフィールドに健康長寿の要因を解明しようとするプロジェクトであり,2年前に2年間の協定が結ばれました。私はこのなかで,国民健康保険・介護保険のレセプトデータを用いた研究を進めています。
 今回の報告会では,「福井県民の健康度,医療・介護サービス消費の実態」と題した研究成果を鈴木亘教授(学習院大学)と共同で報告するとともに,パネル・ディスカッション「福井型の高齢者医療・介護モデルについて」にパネリストとして参加しました。
 台風が接近中だったにもかかわらず,ありがたいことに会場はほぼ満席となりました。報告会の後には,西川一誠福井県知事にご来場いただき,福井県と東大の共同研究協定を更新する調印式がおこなわれました。新しい協定によって,共同研究は2014年度末まで進められる予定です。

大臣対応

 今日の授業は特別仕様で,与謝野馨大臣をお迎えした。
 内外の著名な政策担当者が東京大学公共政策大学院で講演される際には,関係する授業と重ねて「公共政策セミナー」と題して開催することが多く,授業担当教員がセミナーの準備をする。与謝野大臣の講演は,私の担当となった。セミナーの概要は後日,公共政策大学院のサイトで公開している(http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/seminar/index.htm )が,学生を対象にした催しであることから,学外には事前の案内はしていない。今回は,社会保障と税の一体改革案がまとまった直後ということもあって,カメラ5台を含む多数の報道陣も入る盛況だった。
 今回のセミナーの内容は報道におかませして,ここでは現場担当者としての裏話をちょっとだけ。真面目なところと真面目でないところが交じっているので,気楽に読み流してください。

 準備はだいぶ前から始まった。事前の調整で大臣のスケジュールは押さえたものの,政治情勢が不透明になってきて,中止もあり得るという状況で準備を進めた。無事に開催できて何よりだった。
 大臣が国会に呼ばれれば,もちろん国会が優先。今日は参議院の予算委員会と重なったため,直前に複数のシナリオを準備。大臣が来ない,前半だけ出席,後半だけ出席,のシナリオも用意するなど,裏方は大変。
 ついでだから,「想定外」の事態の対応も私は勝手にいろいろと妄想。会場の爆破予告,大地震,隕石またはギャオスの落下,等。

 昨日の衆議院の予算委員会は全閣僚出席。今日の参議院の予算委員会は質問者が要求する大臣が出席。国会日程が1日後ろにずれていたらアウトだった。
 前日に,質問者が出席を要求する大臣が決まってくる。セミナー前日夕刻には大臣は出席できそうということだったが,当日の朝でも事態は動いていて,はじめは若干の遅刻という連絡だった。結局,国会日程との衝突がなくなり,大臣にはフルに出席していただくことができた。

 要人の来訪では,セキュリティにも気を配る。大臣の動線は事前にチェック。大臣にはSPがつき,地元の警察署からも警察官が派遣される。今日は何事もなく日程が終了し安堵。

 田辺国昭公共政策大学院長が大臣を会場玄関で出迎える。先に大臣を応接室に通して後から入ると,大臣が辞任する事態になりかねないので,この対応が無難か。サッカーボールを蹴りますか,と当方の事前打ち合わせで質問したが,あっさり無視された。
 私も田辺院長と一緒に玄関で出迎える予定だったが,直前のSPとの打ち合わせで変更。SPの体格が良くて,玄関からの一行全員がエレベータに乗れないことが判明したため。

 私は先週,舌を噛んでしまった口内炎で舌を動かすと痛くて,ろれつが回らなかった。だいぶ回復したが,若干痛みが残っているなか,冷や汗ものの議事進行。
 そんなところがテレビに映ったら恥ずかしいので,かぶりものをしてもいいかな,と事前打ち合わせでささやいたが,あっさり無視された。

 セミナーの終わりに,公共政策大学院から講演者に記念品を贈呈するのが恒例。講演の模様を撮影した写真を漆の額に収めたもので,海外の講演者にはとくに喜ばれている。

 公共政策大学院は予算基盤が脆弱なため,万事が綱渡り操業である。スタッフ1名で今回のようなセミナーの諸々の準備を担当するため,てんてこ舞いになる。こちらの体制が整わないために,講演の希望を残念ながらお断りすることも多々ある。人的・物的資源が充実していれば,こうした機会を増やすことができるのに,というのが悩みである。

 資金獲得の努力は日々していますが,どこかの大金持ちがどんと寄付していただければいいな,という虫の良い話は教員同士の会話でよく出ます。
 東京大学公共政策大学院への寄付については,下記のページに説明があります。
「公共政策大学院へのご支援のお願い」
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/contribution/index.htm

(参考)
「与謝野馨(社会保障・税一体改革担当大臣)による第64回公共政策セミナーが開催されました」(東京大学公共政策大学院・2011年7月7日)
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/news/2011/07/news20110707.htm

 6月6日の日本経済新聞朝刊の経済教室欄に拙稿「政府債務拡大 どこまで」が掲載されました。
 拙稿で引用したReinhart and Sbrancia (2011)は,積みあがった政府債務を減少させる道として,経済成長,財政再建,債務再編,突然の高インフレ,金融抑圧の5つを指摘しています。債務再編やインフレを避け,とるべき道は経済成長と財政再建の組み合わせだと私は考えていますが,避けるべき道で何が起こるのかを正しく把握することも大切です。
 なお,記事をお読みになられた方は冒頭と末尾からお気づきかと思いますが,地震研究を少し意識しています。草稿には「米国を震源とした世界的な金融危機」というくだりもあったのですが,納まりが悪かったので削除しました。
 日本経済新聞・電子版にも掲載されています。

 記事で紹介した文献は以下の通りです(登場順)。

カーメン・M・ラインハート,ケネス・S・ロゴフ(2011),『国家は破綻する』,日経BP社

Carmen M. Reinhart and Kenneth S. Rogoff (2011), “A Decade of Debt,” mimeo.

Carmen M. Reinhart and M. Belen Sbrancia (2011), “The Liquidation of Government Debt,” mimeo.

Thomas Sargent and Neil Wallace (1981), “Some Unpleasant Monetarist Arithmetic,” Federal Reserve Bank of Minneapolis Quarterly Review, Vol. 9, Fall, pp. 1-17.

Troy Davig, Eric M. Leeper, and Todd B. Walker (2010), ‘Unfunded Liabilities’ and Uncertain Fiscal Financing,” Journal of Monetary Economics, Vol. 57, No. 5, July, pp. 600-619.

Troy Davig, Eric M. Leeper, and Todd B. Walker (2011), Inflation and the Fiscal Limit, European Economic Review, Vol. 55, No. 1, January, pp. 31-47.

Mathias Trabandt and Harald Uhlig (2010), “How Far are We from the Slippery Slope? The Laffer Curve Revisited,” mimeo.

Troy Davig and Eric M. Leeper (2011), “Temporary Unstable Government Debt and Inflation,” mimeo.

Huixin Bi, Eric M. Leeper and Campbell Leith (2011), “Stabilization versus Sustainability: Macroeconomic Policy Tradeoffs,” mimeo.


 拙稿の後半では,リーパー教授が精力的に進めている研究を多く紹介しましたが,リーパー教授は自身の研究を「物価水準の財政理論」に基づくものだとのべています。しかし,私は拙稿「日銀は国債引き受けをすべきか」(http://www.iwamoto.e.u-tokyo.ac.jp/Docs/2000/NihonGinkohaKokusaiHikiukewoSubekika.PDF ),岩本(2004)で物価水準の財政理論には否定的な立場をとっているので,この点を整理しておきます。
 まず,上記の拙稿執筆当時と比較して,物価水準の財政理論と従来の議論の対立点が狭められてきました。今回の拙稿で対象とした中央銀行が金利を固定する状態は,従来の「物価水準の貨幣理論」と矛盾するものではなく,貨幣が物価水準を決定しています(McCallum and Nelson, 2005)。そのため,ここには対立点はありません。
 物価水準の財政理論で中央銀行が国債価格を維持するというのは仮定であって,現実は違う展開になるかもしれません。中央銀行が国債価格維持を図らなければ債務再編に向かいますが,かりに買い支えを図っても価格維持に失敗すればやはり債務再編に向かいます。

(参考文献)
Bennett McCallum and Edward Nelson (2005), “Monetary and Fiscal Theories of the Price Level: The Irreconcilable Differences,” Oxford Review of Economic Policy, Vol. 21, No. 4, Winter, pp. 565-583.

岩本康志(2004),「『デフレの罠』脱却のための金融財政政策のシナリオ」,『金融研究』,第23巻3号,10月,1-47頁
http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kinyu/2004/kk23-3-1.pdf

 2月10日の日本経済新聞朝刊の経済教室欄に拙稿「社会保険の最終負担 誰に」が掲載されました。
 社会保険料の事業主負担は事業主が負担する,という「常識的な」一般の理解に対して,最終的には労働者が負担することになると経済学者は考えていることを解説しました。この話題は,以前に「社会保険料の事業主負担の帰着」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/9586731.html )で取り上げました。
 実証研究では事業主負担の賃金への影響を高い精度でとらえることが難しいのですが,様々な工夫によって,ほぼすべてが労働者の負担になるという見方になっています。日本での実証研究は結果が割れているように見えますが,日本で賃金の反応が違うのではなく,影響をはっきり識別できるような事例が与えられていないものと考えられます。
 日本経済新聞・電子版にも掲載されています。

 記事で紹介した文献は以下の通りです。

Gruber, Jonathan (1994), “The Incidence of Mandated Maternity Benefits,” American Economic Review, Vol. 84, No.3, June, pp. 621-641.

Gruber, Jonathan, and Alan B. Krueger (1991), “The Incidence of Mandated Employer-Provided Insurance: Lessons from Worker’s Compensation Insurance,” in David Bradford ed., Tax Policy and the Economy Vol.5, Cambridge, MA: MIT Press.

岩本康志・濱秋純哉(2006),「社会保険の帰着分析:経済学的考察」,『季刊社会保障研究』,第42巻第3号,12月,204-218頁

Komamura, Kohei, and Atsuhiro Yamada (2004), “Who Bears the Burden of Social Insurance ? Evidence from Japanese Health and Long-term Care Insurance Data,” Journal of the Japanese and International Economies, Vol. 18, No. 4, December, pp. 565-581.

酒井正・風神佐知子(2007),「介護保険制度の帰着分析」,『医療と社会』,第16巻第3号,1月,285-300頁

Summers, Lawrence H. (1989), “Some Simple Economics of Mandated Benefits,” American Economic Association Papers and Proceedings, Vol. 79, No. 2, May, pp.177-183.

Tachibanaki, Toshiaki, and Yukiko Yokoyama (2008), “The Estimation of the Incidence of Employer Contributions to Social Security in Japan,” Japanese Economic Review, Vol. 59, No. 1, pp. 75-83

 この他にわが国の研究として,
Naomi Miyazato and Seiristu Ogura, “Emprical Analysis of the Incidence of Employer’s Contributions for Heath Care and Long Term Care Insurance in Japan.”
がありますが,未刊行で評価が定まってないので,紹介は控えました。

(関係する過去記事)
社会保険料の事業主負担の帰着
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/9586731.html

「社会保険料の帰着分析」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/21173527.html


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