岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます

身辺雑記

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 福井唯嗣京都産業大学准教授との共著論文「医療・介護保険財政モデル(2009年9月版)について」を,私のWebサイトで公開しました(http://www.e.u-tokyo.ac.jp/~iwamoto/HLIModel/Manual2009-09.pdf )。今月下旬に淡路島で開催される現代経済政策研究会議で報告する予定です。
 前回版(2008年4月版)を用いた分析は,このブログでも紹介しました(「『二重の負担』があるから積立方式に移行できないわけではない」,http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/15015540.html )。今回版での主要な変更点は4つあります。

(1)医療・介護費用の2008年度の実績値が公表されたことから,シミュレーションの起点を前回版の2007年度から2008年度に移行した。
(2)2007年12月に公表された新しい労働力人口推計を織り込んだ。
(3)2008年10月に公表された社会保障国民会議の医療・介護費用のシミュレーションの経済前提を取り入れた。
(4)国民健康保険と全国健康保険協会管掌健康保険の加入者数を推計することで,これらの制度への公費負担を考慮に入れた。

 懸案だった国保と協会けんぽ加入者の将来推計を今回版に導入することができ,両制度への公費負担を考慮に入れることで,より現実に近づけることができました。
 国民会議のシミュレーションを再現することにもだいぶ時間をかけましたが,長期的視点からの政策議論は,政権が変わって国民会議報告もろともどこかへ飛んでしまった状態です。「生もの」を扱うのは大変です。
 前回版を用いた「医療・介護保険制度の課題と展望」(津谷典子・樋口美雄編『人口減少と日本経済:労働・年金・社会保障制度の行方』,日本経済新聞出版社より近刊に収録)に沿った分析をおこない,定性的に同じ結果を確認しています。今回の論文の目的はモデルの解説にありますが,より深く政策的な議論をする論文を別途,準備中です。

(参考)
医療・介護保険財政モデル・ホームぺージ
http://www.e.u-tokyo.ac.jp/~iwamoto/HLIModel/index.html

(関係する過去記事)
「日本学術会議シンポジウム」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/17660362.html

「『二重の負担』があるから積立方式に移行できないわけではない」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/15015540.html

 10月11日は,小西秀男ボストン・カレッジ教授が日本経済学会・中原賞を受賞したお祝いの会に出席しました。小西先生は,大学と大学院での私の3年後輩にあたり,共著論文を書いたことがあります。

 話は変わりますが,数学者の世界に「エルデシュ数」というのがあります。これは,ハンガリー出身の数学者ポール・エルデシュが生涯に多数の共著論文を書いたことから,共著論文を介して多数の数学者がつながっていることを示すお遊びのようなものです。エルデシュ自身を0,エルデシュと共著論文のある者を1,その者と共著論文のある者を2,という風に番号をつけていきます。異分野の学者の共著論文があると,数学以外の研究者にも広がりますが,小西先生と共著論文を書いた経済学者がエルデシュとの共著論文をもつことから,小西先生はエルデシュ数2という,非常に若い番号をもっています。このため,私のエルデシュ数は3になり,日本人経済学者としては意外に早くエルデシュにつながっています。

 論文をたどっていくと,以下のようになります。

Paul Erdös, Peter Fishburn, and Zoltan Füred (1991), “Midpoints of Diagonals of Convex $n$-Gons,” SIAM Journal of Discrete Mathematics, Vol. 4, No. 3, August, pp. 329-341.
http://dx.doi.org/10.1137/0404030

Hideo Konishi and Peter Fishburn (1996), “Quasi-linear Utility in a Discrete Choice Model,” Economics Letters, Vol. 51, No. 2, May, pp. 197-200
http://dx.doi.org/10.1016/0165-1765(95)00794-6

Yasushi Iwamoto and Hideo Konishi (1991), “Distributional Considerations of Producers' Profit in a Commodity Tax Design Problem,” Economics Letters, Vol. 35, No. 4, April, pp. 423-428.
http://dx.doi.org/10.1016/0165-1765(91)90013-B

(参考)
小西秀男氏のホームページ
http://www2.bc.edu/~konishih/

The Erdös Number Project
http://www.oakland.edu/enp/

 10月11日は,専修大学で開催された日本経済学会2009年度秋季大会で,宮崎毅先生(明海大学)の報告の討論者を努めました。
 宮崎先生の報告は,「課税所得の弾力性」(elasticity of taxable income)を推計したものです。課税所得の弾力性とは,税率を上げたときに,どれだけ課税対象の所得が減少するかを示す尺度です。
 このような研究の重要な政策への応用に,望ましい最高所得税率の決定があります。最適所得税理論におけるDiamond (1998),Saez (2001)の研究では,いくつかの条件のもとで,望ましい最高税率は,

1/(1+パレート指数×課税所得の弾力性)

と表されます。
 濱秋・岩本(2008)は,『国民生活基礎調査』の個票データを使って,パレート指数を2.5と推定しました。わが国の個票データによる課税所得の弾力性の推定は,宮崎先生の報告がはじめてとなり,0.18が妥当な推計値だとしています。すると,望ましい最高税率は69%となります。課税所得の弾力性については,もう少し研究を蓄積して確からしい範囲を固める作業が必要ですので,この数値をそのまま強く主張することには慎重であるべきです。ただし,Saez, Slemrod and Giertz (2009)が多数の国の実証研究を展望して,妥当な弾力性の範囲を0.12から0.4としていますので,0.18はその範囲内にあります。このことから,望ましい最高税率は現行の50%を超える可能性はかなり高いといえそうです。

(参考)
「研究進む「最適」所得税制」(岩本康志)
http://www.e.u-tokyo.ac.jp/~iwamoto/Docs/2007/KenkyuSusumuSaitekiShotokuZeisei.html

(参考文献)
Diamond, Peter A. (1998), “Optimal Income Taxation: An Example with a U-Shaped Pattern of Optimal Marginal Tax Rates,” American Economic Review, Vol. 88, No. 1, March, pp. 83-95.

岩本康志・濱秋純哉 (2008),「租税・社会保障制度による再分配の構造の評価」,『季刊社会保障研究』,第44巻第3号,12月,266-277頁。

Saez, Emmanuel (2001), “Using Elasticities to Derive Optimal Income Tax Rates,” Review of Economic Studies, Vol. 68, No. 1, January, pp. 205-229.

Saez, Emmanuel, Joel B. Slemrod and Seth H. Giertz (2009), “The Elasticity of Taxable Income with Respect to Marginal Tax Rates: A Critical Review,” NBER Working Paper No. 15012.[2009日10月12日:誤記を修正しました]
http://www.nber.org/papers/w15012

(関係する過去記事)
「租税・社会保障制度による再分配の構造の評価」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/19540190.html

[2009年10月12日追記]
「財政政策のマーフィー式採点法(その3,公的資金の限界費用)」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/24460518.html

 ご紹介が遅れましたが,拙稿「行動経済学は政策をどう変えるのか」が収録された,池田新介・市村英彦・伊藤秀史編『現代経済学の潮流2009』が東洋経済新報社より刊行されました。

「はしがき」では,拙稿が以下のように紹介されています。
「第2章「行動経済学は政策をどう変えるのか」は,岩本康志(東京大学)による石川賞受賞講演に基づいている。合理的な個人を前提とする伝統的な厚生経済学では,顕示選好理論と最大幸福原理に基づいて社会の状態を個人の選択データから規範的に判断することができると想定されてきたが,個人が効用最大化とは違う行動をとるとすれば,どのような基準で経済状態を評価すればよいのだろうか。Journal of Public Economicsの特別号などでもさかんに議論されている行動経済学の視点が政策に与える影響を,岩本氏はまず嗜癖と喫煙規制を例にとって検討する。そして,行動経済学で着目されている行動の誤りはただちに温情主義的政策を正当化するわけではなく,その前に超えるべき5つのハードルがあることを指摘している。それらは,(1)行動の誤りは証明されるのか,(2)正しい厚生判断の基準は特定できるのか,(3)政策を処方できるのか,(4)個人の非合理的な選択が社会に与える影響は明確か,(5)政策で厚生改善できるのか,である。この点を理解した上で行動経済学を政策に適用していく議論は,政策を大きく進化させる可能性を秘めている。また,後発医薬品の使用促進や臓器移植の意思表示方法などの実例を挙げながら,行動経済学者の提案する柔軟な温情主義(soft paternalism)が,伝統的な経済学における温情主義的政策の議論を進化させることに期待を寄せる。この章は行動経済学の知見を政策に結びつける努力に関して現在ある文献の,格好の入門となろう。」

(関係する過去記事)
「行動経済学は政策をどう変えるのか」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/26088440.html

日本経済学会・石川賞講演
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/17112834.html

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 ずいぶんと遅れたご報告になりますが,7月28日(火)にアジア開発銀行研究所(ADBI)主催の「Conference on Global Financial Crisis: Macroeconomic Policy Issues」で,二神孝一阪大教授の論文の討論者を務めました。

 活動報告もブログの役目にしていますが,ここまで遅れると間抜けな記事になりますね。

(参考)
「Conference on Global Financial Crisis: Macroeconomic Policy Issues」
http://www.adbi.org/event/2889.global.financial.crisis.macroeconomic.policy/?sectionID=27


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