岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます

財政

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財政,予算の話題です
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 民主党の道路政策(暫定税率廃止・高速道路無料化)の考え方は,同党サイトの「道路特定財源制度」ページ(http://www.dpj.or.jp/special/douro_tokutei/index.html )にある「道路特定財源制度の改革について」(http://www.dpj.or.jp/special/douro_tokutei/pdf/20080202seido_kaikaku.pdf ,同党税制調査会,2008年2月)で本文A4・9ページにわたり,くわしく説明されている。
 現在,自動車とその燃料については,消費税以外に約6.9兆円(2009年度予算)の税が課せられている(上記文書に合わせ自動車関係諸税と呼ぶことにする)。上記文書の「2.自動車関係諸税の将来の方向性」は,
「間接税については個別の物品・サービス等がもたらす社会的有用性や社会的コストに着眼した「グッド減税・バッド課税」の考え方に基づいた課税体系に改めるべきであると考えている」
という原則に沿ってあるべき姿を示しているが,自動車とその燃料に高税率をかける根拠に道路の建設・維持にかかる費用は含まれていない。これは,上の文章の後に,
「揮発油税を始めとする道路特定財源制度は,いずれも道路整備を目的として課税している。従って,現在特定財源制度となっている6種類の税目を一般財源化するのであれば理論的に突き詰めれば,いずれも課税の根拠を失うことになり,税そのものを廃止することとなる」
と書かれていることからわかる。

「道路特定財源の経済分析」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/3034232.html )でのべたように,道路特定財源制度は正しく運用されれば,一定の条件のもとで効率的な道路整備を実現できる制度である。一定の条件とは道路整備・維持の平均費用が一定であることと,地球温暖化の外部費用がないという条件である。
 しかし実際には地球温暖化の外部費用が存在するので,道路の平均費用以上の燃料課税を課すべきであり,燃料課税収入をすべて道路に回すと道路投資が過剰になる。道路特定財源の一般財源化が議論された時期に私が適切だと考えた解決策は,自動車関係諸税を一般財源化して「自動車関係諸税収入>道路費用」となることを許し,事業評価を厳格におこない道路整備を適正な水準にすることである。前者の一般財源化は実行されたが,厳正な事業評価の実現には残念ながらほど遠いのが現状である。
 民主党は予算の無駄を正すことを日頃強調するので,私の考えのように事業評価を厳格化して問題を解決するのかと思っていたら,民主党は,道路利用者が道路整備費用を負担するという考え方を制度から排除する道を選んだ。つまり,利用者負担の考え方が道路事業の膨張を産んだから,道路利用者は道路整備費用を負担すべきではないという原則に変えるべきだと考えているようである。
 道路事業が膨張した原因は,道路を求める利益集団の圧力にある。なぜ,そこを正す道筋を選ばなかったのか。これを正すことは容易ではないという判断だろうか。そうだとしても,民主党の選択した道には,2つの危険がある。
 第1に,利益集団の圧力を正さないと,今度は道路利用者以外の負担で過大な道路事業が続くことになる。暫定税率が廃止され,高速道路が無料化された場合,かりに国の直轄事業を半減しても,地方の事業量が維持されると

 自動車関係諸税収入<道路費用

になるのは間違いない。道路利用者以外が道路費用を負担することに理解が得られるだろうか。道路事業の大幅な縮小が実現できなかった場合は,道路利用者に高めの負担をさせて道路事業を膨張させてきた自民党道路族よりも,道路利用者の負担を下げて広く一般国民の負担で道路事業を膨張させようとする民主党道路族の方がたちが悪いようにみえる。
 第2に,税の原則が社会的費用を正しくとらえていないので,そこから導かれた税体系は歪んだ姿になる。民主党の考える地球温暖化対策税はピグー税の概念に基づくものと考えられるが,本来のピグー税は,道路の建設・維持に要する費用と温暖化費用を積み上げたものになる。前者の費用を課さず,後者の費用のみを課すのでは適切なピグー税にはならず,道路と燃料の過剰利用になる。
 私は,温室効果ガスの国内排出量の目標が与えられたわが国の現状では,環境税は,ピグー税ではなく,ボーモル・オーツ税の考え方に即したものが適当だと考えている。燃料課税を軽減して,国内排出量を増やすのは,わが国の目標に反する。暫定税率を含めた水準で環境税への転換を図るのが正しい道筋である。
 現行水準以上で燃料課税が維持されるならば,高速道路無料化はあり得る政策である。最近開通した路線や建設中の路線の多くは料金収入で事業費を回収することが困難であり,そもそも有料道路として整備すべきものではない。東名・名神高速道路等のドル箱路線は,建設当時の制度であればとうの昔に無料開放されている。つまり,高速道路事業は本来の使命をほぼ終えているのである。一般道路事業を大幅に縮小し,そこに高速道路の債務返済を充て込む形であれば,財政的にも実現可能である。

結論
ガソリン値下げ 反対
高速道路無料化 容認

(注)
 2009年度予算で計算すると,民主党案のように暫定税率と自動車取得税が廃止されると,自動車関係諸税収入は2.7兆円の減収で,4.2兆円になる。一般道路の事業費は,
 国の直轄事業 1兆7753億円
 補助事業 6240億円
 地方単独事業 1兆9900億円
である。この他に,道路に使途を限定していない地域活力基盤創造交付金9400億円の大部分が道路事業に使われる。さらに首都高速・阪神高速以外の高速道路が無料化された場合,2.1兆円の料金収入の代替財源が必要になる。

(参考)
「道路国定財源制度の改革について」(民主党税制調査会,2008年2月)
http://www.dpj.or.jp/special/douro_tokutei/pdf/20080202seido_kaikaku.pdf

「平成21年度道路関係予算のポイント」(国土交通省道路局・都市・地域整備局,2009年1月)
http://www.mlit.go.jp/common/000031044.pdf

「高速道路建設の是非」(岩本康志,2003年3月)
http://www.e.u-tokyo.ac.jp/~iwamoto/Docs/2003/KosokuDoroKensetsunoZehi.html

(関係する過去記事)
道路特定財源の経済分析
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/3034232.html

ガソリン税率の水準はいくらであるべきか
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/5176620.html

 民主党マニフェストでは,子ども手当創設と同時に配偶者控除が廃止され,専業主婦で子どものいない世帯は負担増になるとされる。選挙用バラマキが目的ならバラマキになっていないので問題ではある。しかし,子育て支援を目的とした政策なら,子どものいない世帯から子どものいる世帯に所得移転がおこなわれるのは当然である。

 配偶者控除と扶養控除の廃止は,それ自体が税制改革としてどういう意味があるかを考えないといけない。
 配偶者控除については,女性の働き方に対する影響が焦点になる。働き方を大きく,夫の扶養を外れるフルタイム,夫の扶養家族となるパートタイムと無職の3種類に分け,さらに既婚か単身かで区別して,どういう控除を受けているかを考えると,以下のようになる。
  フルタイム・既婚 基礎控除
  フルタイム・単身 基礎控除
  パート・既婚 基礎控除,配偶者控除
  パート・単身 基礎控除
  無職・既婚 配偶者控除
パートで夫の扶養家族となっている場合には,夫の所得から配偶者控除を受けた上で,自分の所得から基礎控除を受けることができる(所得が少ない場合には部分的な適用になる。また,より高い所得では配偶者特別控除の適用があるが,議論の要点に集中するため,ここでは議論の対象外とする)。なお,無職で単身の場合は,生活基盤がどうなるかの方が問題なので,ここでの比較からは除外しておくことにする。
 配偶者控除が廃止されると,
  フルタイム・既婚 基礎控除
  フルタイム・単身 基礎控除
  パート・既婚 基礎控除
  パート・単身 基礎控除
  無職・既婚 
となる。
 両者を比較すると,現行制度では,皆が何らかの控除を受けられるが,パートの主婦は基礎控除と配偶者控除の両方の恩恵に浴することがわかる。一方,配偶者控除を廃止すると,専業主婦が何の控除も受けられないことになる。
 どの働き方でも同じ控除が受けられれば,公平な税制であり,かつ働き方の選択を左右しない中立的な税制である。残念ながら,完全にそのような形にすることはできない。現行制度では,パートの主婦が優遇される。また,フルタイムで働くと配偶者控除がなくなるため,既婚女性がフルタイムで働くことを税制が妨げることになっている。
 配偶者控除が廃止されると,何も控除のない専業主婦が「冷遇」されているように見えるが,そう単純ではない。まず,専業主婦がパートに働きに出ると基礎控除が受けられるようになるが,これは現行制度と同じである。したがって,無職かパートかの選択で無職が冷遇されるようになるわけではない。一方で,パートとフルタイムのどちらも基礎控除が受けられるので,パートを優遇している現行制度から働き方の選択には中立的な制度に変化する。
 専業主婦のみが何も控除を受けられなくなることが不公平とは,かならずしもいえない。経済学では,市場で取引されるサービスだけでなく,家庭内で生産されるサービスも経済活動と考えている。専業主婦は家庭内で家事労働によるサービスを生産している。かりに家事労働のサービスを家政婦が提供して所得を得れば,この所得は課税対象になるが,主婦による家事労働には課税されない。こうして「内助の功に報いる」形となっており,この非課税措置のために基礎控除が受けられないという解釈ができる。現行制度は,それに加えて夫の所得から配偶者控除を受けることで,内助の功に一層報いる形になっているが,それが過度になっているというのが改革案の判断だと解釈できるだろう。

 現行制度は,国民は基礎控除,配偶者控除あるいは扶養控除のいずれかの形で所得税と住民税の控除を受けられるという考え方をもつ。配偶者控除と扶養控除を廃止するのは,働く者だけに控除を与えようとするものである。扶養が必要な階層に対する経済的支援は,おもに社会保障制度で対応することになる。具体的には,高齢者や障害者には公的年金,未成年には児童手当なり子ども手当である。税制での所得控除ではなく社会保障給付とするのは,所得控除では低所得者の恩恵が薄く,高所得者ほど恩恵が厚いのに対して,社会保障給付は所得にかかわらず一律の支援となるからである。
 配偶者控除を廃止して,扶養控除を残してしまうと不都合が生じる。サザエさんは夫のマスオさんの配偶者では控除が受けられないので,父親の波平さんの扶養家族になる方がいい。フネさんは逆に,義理の息子のマスオさんの扶養家族になると税金が安くなる。ただし年金の方で第3号被保険者[2009年7月21日追記:「第2号」としていた誤記を修正しました]になれないと,国民年金の保険料を払うことになるので,家族の実態に合わない扶養状況を会社に届けることは思いとどまることになるが,年金によって税制の歪みを止めるというのは,ちぐはぐな制度である。
 配偶者控除を廃止するなら,扶養控除も廃止するのが整合的な姿である。
 扶養控除を廃止して子ども手当の支給を中学生までとすると,高校生をもつ家庭には負担増になる。そこで高校生を対象にした特別の扶養控除を設けるよりは,子ども手当の支給対象を就業しない未成年に拡大する方が,低所得者にも確実に支援が届くので望ましい制度だといえる(中学校卒業後に働き出した若者に対しては,子ども手当よりも税制による経済支援の方が望ましいだろう)。

 配偶者控除と扶養控除の廃止は,単なる子ども手当支給のための財源確保策ではなく,重要な税制改革である。女性の働き方と扶養を必要とする階層への影響を踏まえた,しっかりした議論がされることを望みたい。

(関係する過去記事)
【政権選択選挙】民主党の「子ども手当」案
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/29860238.html

 読売新聞が23日に民主党マニフェストの財源について報じているが,内容は本当だろうか。不可思議な点がある。

民主「20兆円捻出」公約、無駄削減で9兆・埋蔵金も活用
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090623-OYT1T00055.htm

「『税金の無駄遣いの根絶』など歳出削減で9・1兆円、埋蔵金の活用や租税特別措置見直しなど歳入増で11・4兆円の計20・5兆円を捻出(ねんしゅつ)するとしている。」
 記事の中の数字は,昨年に解散に備えて準備していたマニフェストの内容だ。これは2008年度当初予算ベースの数字なので,当然に09年度予算の数字に直すともに,内容を見直しして出してこないとおかしいはずだが,どうなっているのか。
 1年前の記事が間違って報道された,というのなら合点がいくのだが。

「削減困難な予算は〈1〉借金返済88兆円〈2〉年金・医療などの保険給付47兆円〈3〉財政融資資金へ繰り入れなど10兆円の計145兆円に過ぎず、残る67兆円のうち9・1兆円は削減可能とした。」
 この問題点については,「【政権選択選挙】民主党マニフェストの財源」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/28842144.html )でも議論した。
 保険給付47兆円に入らない社会保障費には,国民健康保険,介護保険,生活保護への国庫負担,社会保険庁が徴収した協会けんぽの保険料を全国健康保険協会に渡す分などが含まれる。この内容をそのままマニフェストにすれば,対立する相手から「民主党は医療,介護,生活保護の国庫負担を削り,教会けんぽの保険料をピンハネするつもりだ」と攻撃されることになるが,その覚悟で選挙するつもりなのか。にわかには信じられない。
 報道する側も表面だけをなぞらずに,「民主党が削減可能とした予算のなかには,医療・介護保険への国庫負担,協会けんぽの保険料,生活保護費の国庫負担が含まれる」のような解説をつけるか,民主党の意図をきちんと取材して報道してくれれば,読者に親切だっただろう。

(関係する過去記事)
「【政権選択選挙】民主党マニフェストの財源」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/28842144.html

「民主党は財政再建の財源を明らかにすべき」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/2079917.html

 民主党のマニフェストの焦点は,新規施策のための財源をどう確保するか,にある。
 民主党サイトによれば(http://www.dpj.or.jp/news/?num=16186 ),9日に開かれた21世紀臨調主催の討論会「民主党のマニフェストを問う」で,直嶋民主党政調会長は「一般会計と特別会計合わせて207兆円の予算のうち、見直しが可能なものが70兆円であるとして、この14%から15%を削減することは、民間企業なら低い目標ではないか」と発言している。

 207兆円という数字は,予算が国会に提出される際に作成される資料「平成21年度予算及び財政投融資計画の説明」(http://www.mof.go.jp/seifuan21/setumei/h21y_g.pdf )の付表10にある。この表には,主要経費別に分類した歳出も掲載されている。
 207兆円のなかには削減が困難なものもある。その筆頭格は,国債費79兆円である。借金の返済を見直すというのは,国家財政の破綻処理と同じことになるので,これを見直すと大変なことになる。
 その他の削減困難なものを除いた後に70兆円が見直し対象になる考え方については,8日の朝日新聞GLOBE記事「民主党は頼れるか?」のなかの一節が参考になる(http://globe.asahi.com/feature/090608/03_1.html )。

「これまで政府が示してきた資料では、一般会計と特別会計を合算した約212兆円の歳出のうち、借金の返済に充てる国債費、社会保障関係費、地方交付税などの費目が8割を占める。いずれも義務的な色合いが濃く、削減は難しいように見える。
 だが、歳出の「性格」に応じて整理された区分表と照らし合わせると、官僚の天下り団体への補助金など、削減しやすい項目が紛れ込んでいることが分かる。これを足し上げると、見直しの対象になる額は約25兆円増え、67兆にもなるという。」

 民主党内部の事情は知らないので,この記事から私が想像した内容は以下のようになる。まず,数字は1年前のものになる。「平成20年度予算及び財政投融資計画の説明」(http://www.mof.go.jp/seifuan20/setumei/h20y_g.pdf 」の付表10によれば,08年度当初予算での一般会計と特別会計の歳出合計は213兆円である。ここから,
 国債費 88兆円
 地方交付税等 17兆円
 社会保障関係費 67兆円
を引くと,41兆円になる。記事にあった,25兆円増えて67兆円になる数字に近い。
 区分表というのは,予算成立時にWebでも利用可能になる資料である(http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/h20/sy200401c1.pdf )。予算の項目にはコード番号がつけられているが,その下2桁は目番号と呼ばれ,支出の性格による分類番号になっている。補助金には目番号16がつけられる。一般の人がコード番号を見る機会はあまりないが,予算に添付される予算参照書のなかの歳入歳出予定額科目別表で見ることができる(財務省のサイトでも公開されている)。
 想像するに,民主党は,地方交付税等・社会保障関係費のなかで目番号16がついたものを見直し対象に加えたように見える。区分表の説明を読めばわかるが,目番号16がつくのは,天下り団体への補助金だけではない。
 地方交付税等の方は,もろに
 地方交付税交付金(31021-305-16) 15.4兆円
 地方特例交付金(32021-305-16) 0.5兆円
 地方譲与税譲与金(33021-305-16) 0.7兆円
と,いずれも16がつく。そういうことなら,最初から地方交付税は平均15%削減の見直し対象に入ると説明した方がわかりやすい。地方の歳出も見直して,結果として地方交付税が減るというのならわかるが,上の記事のように,単に天下り団体への補助金と同じだから削減するという風に解釈されると,地方の反発を買いはしまいか。

 社会保障関係費のなかにも天下り団体への補助金が紛れ込んでいるのは事実だ。しかし,目番号16がついていても,そういう性質のものでなく,金額の大きいものがある。年金特別会計健康勘定には,前期高齢者納付金・後期高齢者支援金・退職者給付拠出金・老人保健拠出金(いずれも04081-305-16)の合計で1.2兆円,保険料等交付金(04081-305-16)で4兆円というのがある。この勘定の収入である政管健保(2008年10月から協会けんぽ)の保険料のうち,前者は高齢者の医療給付に回る分,後者は全国健康保険協会を経て加入者の医療給付に回る分である。これらは実質的には保険給付費(目番号21がつく)である。まさか協会けんぽの保険料を15%ピンハネして高速道路を無料化する財源に回すわけにはいかないだろうから,これらは目番号16がついていても,最初から見直し対象から除外しておく方がわかりやすいだろう。
 協会けんぽ関係の5兆円を記事のなかの25兆円から除外すると,社会保障関係費のなかの見直し対象は3兆円を下回るだろう。どういうものが除外されるかの判断は人によって別れるだろうが,精査すれば見直し対象はもっと小さくなるだろう(なお,記事のなかの25兆円の積算根拠がわからないので,もし私の想像と違っていたら,社会保障関係費のなかの妥当な見直し対象は別の数字になるかもしれない)。

 また,削減しても新規施策の財源にならないものがある。一番大きいのが,財政投融資のなかの融資に使われる,財政融資資金へ繰入(95199-006-22)10兆円である。財政投融資に問題があればこれを削減するのは結構なことだが,これは融資なので,後で利子がついて返済されてくる資金である。融資をやめると後の収入もなくなるので,融資をやめて新規施策の財源が産まれるわけではない。銀行が間接経費を減らせば収支はよくなるが,融資を減らしても収支がよくならないと同じ理屈である。金融活動を無理に財政の枠にはめているので,予算では融資が支出に計上されるが,民間銀行の会計だと融資は費用にはならない。
 他にも各種の貸付金が歳出に計上されているが,返済が前提にされている資金については,財投の融資と同じことがいえる。一方,出資金は,返還されることがまず期待されていない。そのため,融資とは違って,これを削減すれば財源は産まれる。

 まとめよう。2008年度当初予算の213兆円のうちで,新規施策の財源のための見直し対象は67兆円ではなく,
 国債費 88兆円
 財政融資資金へ繰入 10兆円
 社会保障関係費 64兆円(見直し対象3兆円をのぞく)
を除いた51兆円が妥当な推計値の上限である。ここから10兆円の財源を捻出するには,地方交付税等も「聖域」としないで,平均して約20%の削減が必要だ。かりに地方交付税等を「聖域」とするならば,見直し対象は34兆円に縮小する。
 財政は確かに複雑でわかりにくいが,削減しやすい項目を25兆円も隠しておけるほど不透明ではない。
 民主党が,しがらみのない立場から無駄を削るというのは結構な話だが,無駄を削るだけでは10兆円の財源は出てこない。予算の優先順位を変えるために必要な事業も削る,という戦略的な取り組みが必要になるだろう。そして,予算の組替えの現実性を高めるには,見直し対象の考え方を理にかなったものにして,財源の目標値を下げることが必要だろう。
 衆院選マニフェストでは,歳出削減の具体策を明確に示して,高速道路を無料化するために,国民は何をあきらめなければいけないかを理解できるようにして欲しい。

(参考)
「政権を担い子ども手当など最優先で実施 直嶋政調会長が21世紀臨調主催の会合で」
http://www.dpj.or.jp/news/?num=16186

「民主党は頼れるか?」(朝日新聞GLOBE)
http://globe.asahi.com/feature/090608/index.html

(関係する過去記事)
「民主党は財政再建の財源を明らかにすべき」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/2079917.html

「埋蔵金」に続き,「政府紙幣」,「無利子国債」が注目されている。これらを検討する国会議員連盟も発足するようだ。きちんと政策を勉強していただくことは歓迎だが,財源の心配をせず景気対策ができる話だと思って飛びつく人が出てきては困る。
 経済学で「ただ飯はない(There is no free lunch)」という言葉がある。租税・公債発行以外の財源調達方法にも,何らかの形の負担が存在する。埋蔵金は資産を取り崩すので,純債務を増やす点で国債発行と同等である。政府紙幣は,インフレで名目資産が目減りする形で国民の負担になる。無利子国債で現在の国債の利払いを節約しても,将来の相続税収入が減少する形で帳消しになる(制度設計の仕方では税収減の方が大きくなる)。無から有は生じないことを肝に銘じて,「ただ飯を食べたい議員連盟」にならないことを望む。
 財政支出の裏側にある負担を認識した上で,政府紙幣や無利子国債の政策としての効果と,財政支出そのものの価値を考えることが必要だ。政策効果で見ると,政府紙幣は,国債を政府紙幣に置き換える働きをする。無利子国債は,死蔵された現金(紙幣)を国債に置き換えることが期待されているようである。両者の働きは正反対なのだが,それを同時に検討することで何をしたいのだろうか。


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