岩本康志のブログ

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一体改革

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歳出歳入一体改革と中期的財政運営の話題です
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一体改革の蟻の一穴

 2007年度から2011年度の間に11.4〜14.3兆円の国・地方の歳出を削減する歳出歳入一体改革の計画のなかでもっとも困難なのが,社会保障費の削減である。国の一般会計予算では毎年2200億円を削減することとしており,2008年度予算では診療報酬・薬価改訂で660億円を削減,政管健保の国庫負担を1000億円削減する等の算段をしている。診療報酬・薬価改訂はこの4月から実施されたが,政管健保の国庫負担の削減は法改正が必要で,2月8日に「平成二十年度における政府等が管掌する健康保険の事業に係る国庫補助額の特例及び健康保険組合等による支援の特例措置等に関する法律案」が国会に提出された。この法律は7月1日施行を予定しているが,衆議院ではまだ審議に入っていない。洞爺湖サミット開幕が7月7日に控え,会期延長は小幅と観測されており,会期中の成立が難しい状況にあるといえよう。
 財政健全化のためには,歳出削減は恒久的なものでなくてはならない。しかし,国庫負担の削減分を肩代わりする組合健保の反発で,法案は2008年度限りの措置とされた。2009年度以降のことは,附則に「保険者の費用負担の在り方について速やかに検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講じるものとする」と盛り込まれており,未確定である。また,国庫負担を被用者保険が肩代わりするのは,社会保障基金をのぞいた国・地方の歳出(一体改革の対象)は減少するが,社会保障基金を含めた一般政府ベースでは歳出削減になっていない。この1000億円を一体改革の歳出削減にカウントするのは,もともと無理を重ねている。
 その上,法案が成立しないと現行制度による国庫負担が継続するので,2008年度の歳出削減計画のうちの1000億円が達成されないことになる。その際は,2009年度以降の3年間のノルマに,この1000億円を追加する必要があるが,今年度達成が難しかったものが,来年度以降うまくできるのかどうか。また,各論反対のなかを全体のコミットメントをてこに歳出削減を進めているところで,計画の一部が壊れることは他の分野にも波及する可能性がある。
 こうした意味で,一体改革の命運にも影響を与える事態であるといえる。何気なくスルーするのか,一体改革自体をどうするのかまで戻った骨太の議論をするのか。今年の骨太方針を決定する時期には,法案の運命も判明していると思われるが,どういう展開になるのか注目される。

(参考)
「平成二十年度における政府等が管掌する健康保険の事業に係る国庫補助額の特例及び健康保険組合等による支援の特例措置等に関する法律案」の要綱・案文等は下記のURLにある。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/169.html

(関係する過去記事)
「2008年度予算のシーリング」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/178786.html

 民主党は7日の予算調査会で,「予算機能転換法案」の要綱を決定した。消費税を増税せず,2011年度の国の一般会計の基礎的財政収支の黒字化を目指すらしい。
 12月18日の記事「民主党マニフェストと一体改革」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/417843.html )で,昨年の参院選マニフェストの15.3兆円の財源の他に基礎的財政収支黒字化の財源を確保するべきとのべた。今回の法案で財政再建へのコミットメントが示されるようだが,問題はその手段である。道路財源の暫定税率を廃止すると2008年予算ベースで2.6兆円の減収になる。これに5.2兆円ある国の一般会計の基礎的財政収支の赤字を解消するとなると,あらたに7.8兆円の財源が必要である。参院選マニフェストの内容がそのままかどうかわからないが,かりにそのまま維持されると,合計で23.1兆円の財源が必要になる。これを消費税増税なしで捻出するつもりならば,具体的にどうするのかを示すべきだ。

「基礎収支、国単独で11年度黒字化=消費増税せず歳出削減−民主財政改革法案要綱」(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080207-00000117-jij-pol

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 1月17日の経済財政諮問会議に提出された,新しい「進路と戦略」の参考試算で,新しい将来見通しが示されている。「国債発行は減額に,しかし...(2008年度予算)」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/456527.html )では,国の一般会計の基礎的財政収支を2008年度予算まで示した。上図は,参考試算をもとに,これを2011年度まで延長した。昨年の参考試算の見通しも参考のために示している。
 昨年の見通しと比較すると,2008年度は若干の収支改善となっている。しかし,2009年度以降は今回の見通しの計数が悪化して,2011年度でも対GDP比1%の赤字が残り,2008年度より悪化する見通しである。
 すでに指摘したように,歳出・歳入一体改革で国の一般会計の基礎的財政収支は改善しないことが,あらためて裏付けられている。

 つぎは,「OECDによる日本の財政収支に関する評価」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/244447.html )で宿題となっていた件。
 Economic Outlook第82号(2007年12月)の,社会保障基金を除いた一般政府の財政収支(付表27)は,
 2006年 -2.5%
 2007年 -2.8%
 2008年 -3.2%
 2009年 -3.2%
と予測されている。『国民経済計算』の2006年度確報と「進路と戦略2007」参考試算での国と地方の財政収支は,
 2006年度 -3.2%
 2007年度 -2.6%
 2008年度 -2.4%
 2009年度 -2.7%
となっている。暦年と年度の違いは調整できていないので,比較には注意を要する。2007年から2009年にかけて収支の改善が見られないことは共通しているが,水準がかなり違い,動きも異なるようである。

(参考)
「日本経済の進路と戦略−開かれた国、全員参加の成長、環境との共生−」(2008年1月17日,経済財政諮問会議)
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0117/item3.pdf

 国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指しているにもかかわらず,公表されている予算関係の資料は基礎的財政収支の情報に乏しい。
 地方に目を転じると,地方財政計画の基礎的財政収支は,「公債費+公営企業繰出金のうちの企業債償還費普通会計負担分−地方債」で計算されるが,総務省が18日に発表した地方財政対策では企業債償還費が明らかではないため,現時点では公表資料から基礎的財政収支が計算できない。
 地方財政計画の基礎的財政収支は黒字基調であり,財政再建の主たる指標は借入金残高の推移であるという言い訳があるかもしれないが,この段階でも基礎的財政収支は重要な補助的指標である。資料の改善が望まれる。なお,借入金残高の2008年度末の見込みは197兆円程度となり,2007年度末見込み(当初)の199兆円から改善している。
 国の一般会計と地方財政計画は交付税及び譲与税配布金特別会計を通してつながっている。地財対策の資料から,交付税特会の基礎的財政収支の概算を,地方交付税の入口ベースと出口ベースの差で計算してみると,
  2007年度 交付税(入口)14.6兆円 交付税(出口)15.2兆円 基礎的財政赤字0.6兆円
  2008年度 交付税(入口)15.1兆円 交付税(出口)15.4兆円 基礎的財政赤字0.3兆円
となる(2007年度補正予算で計数に変更がなく,当初・補正後予算とも同じになる)。若干の改善ではあるが,法定されていた2007年度5869億円,2008年度6456億円の借入金返済を先送りしたことで,収支改善は進んでいない。国の一般会計と地方財政計画のしわよせを受けた形だ。交付税特会を含めた3者の収支に注意していく必要がある。

参考
「平成20年度地方財政対策のポイント」
http://www.soumu.go.jp/iken/pdf/chizai_20_point.pdf
「平成20年度地方財政対策の概要」
http://www.soumu.go.jp/iken/pdf/chizai_20_gaiyou.pdf

 21日の各紙社説は,2008年度予算(財務省原案)をとりあげている。
 「やりくりはもう限界に来た」(読売)
 「財政再建の先行きが心配だ」(毎日)
 「財政改革の道筋がかすむ福田予算」(日経)
 「これで財政再建できるか」(産経)
 国債発行額はわずかに減額したものの基礎的財政収支が前年度予算より悪化し,財政再建が進まないことを懸念して,おおむね批判的な論調である。
 以前の記事「財政再建は一休みします」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/138599.html )で指摘した通り,歳出歳入一体改革に沿った歳出削減では,国と地方を合わせた基礎的財政収支は非常にゆっくりとしか改善しない。また,「国債発行は減額に,しかし...」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/326995.html )で指摘した通り,国の一般会計の財政収支はほとんど改善しないのである。その意味で来年度予算は一体改革に沿った結果なのだが,財政再建=財政収支改善を期待していたメディアの認識との間にギャップがあったということだろう。
 一体改革の歳出削減は5年間の総額を決めているが,各年への配分は決まっていない。2009年度以降も歳出削減をしなければいけないわけだから,基礎的財政収支を改善するために,次年度以降に予定される歳出削減を2008年度に前倒しすることはできなかったのだろうか。この問いにきちんと答えられなければ,今後の歳出削減の実現可能性も危うくなるのだが。

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