
【写真左から1〜3枚目:駅ホームの名物・立ち食い「狭山そば」も遂に閉店/4〜6枚目:大変貌した所沢市街地。駅前通はチェーン店ばかりとなり、かつての旧市街も、古く趣のある酒屋、団子屋、商店が並ぶ面影は一掃されてしまった。驚愕の限り。/7〜10枚目:その中で生き残る個人商店。頑張ってほしいです/11〜13枚目:そんな店の一つ、うなぎ屋で一席/14枚目:古い民家の脇が超高層ビル。まるで絵本「小さいおうち」のような光景も】※写真の一部はS君提供です。深謝。
教員です。
昨年末(といっても数日前ですが)、私にとって馴染みの深い所沢市街を、同じく所沢に縁のある大学院生・S君と探訪しようということになりました。
きっかけは、長年親しんできた駅ホームにある立ち食い「狭山そば」が、駅の改良工事で閉店することになり、今のうちに「連れそば」しておこう、と盛り上がったことでした。
今一つの目的は、旧市街探訪です。実は、かつて市役所のあった所沢旧市街は、団子屋さん、呉服屋さん、酒屋さん、うなぎ屋さんなど、実に風情のある古い店が並ぶ情緒溢れる街だったのですが、そこに「これでもか」という位に高層マンションが立ち並んでしまったのです。話に聞くだけでその変貌が分かったので、歩く気にもならなかったその街でしたが、ついでにその変化を確認してみようというわけです。
S君も所沢は馴染み深い街とのことで、不思議な組み合わせの小ツアーとなりました。
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まずは、ホームにある「狭山そば」で、美味いそばをすすります。
何といってもこの店は、関東流のしょっぱいつゆに、天ぷらと多めのネギをひたひたと浸して、そばと一緒に流し込むのが最高です(S君はうどん派のようですが)。
最近の、洗練された一部立ち食いそばとは無縁の「無骨な」味といえましょうか。
ここは、電車を待つ多くの客が合間にそばを流し込む姿が見られ、非常に繁盛していたので、まさか閉店はないと思っていました。しかし、駅改良工事後も「再開未定」とのこと。
嗚呼!北海道の稚内駅といい、なぜこの国は、こういう素晴らしい風情を無くすことに努力を注いでしまうのでしょうか。
この店の想い出を同じように語るS君と、最後の所沢「狭山そば」をじっくり味わいますが、長年のつきあいが断ち切られるのを思うと、何とも哀しい気持ちになります・・。
食後、北風吹く所沢の街をぶらつきます。しかし、駅前通りのオールチェーン店状態には唖然。かつて所沢駅前は、田舎のちょっとした街の風情で、駅前通りにも個人経営の食堂などが並んでいましたが、今はどこでもある店ばかりになってしまいました。もちろん、全店舗調査したわけではないですが、ざっと歩いても、「所沢でしか食べられないもの」を出す「所沢にしかない店」など、ほとんどないのではないでしょうか。
もちろん、これは所沢に限った傾向ではないのですが、それもここはちょっと極端ではないかという感じです。
非常に寒い中でしたが、これでは入る気の起こる店があるはずもなく、さらに旧市街まで歩くことにしました。
するとさらに呆然!電車から見えるマンション群で覚悟はしていましたが、約20年ぶりの市街は、「変貌」などという言葉では言い表せない状態でした。
馴染みの店は、ほぼ全て綺麗さっぱり喪失し、高層マンションとチェーン店に置き換わって【全く別の街】になってしまっていました。
高層マンションをつくるのはともかくとして、高さもてんでんバラバラのマンションが、何の計画性もなく全く無秩序に立ち並び、旧市街の風情が完全に消滅した有様は、行政が「街のことは何も考えてません」と大声で宣言しているようなものです。
これは紛れもなく、建築物の高さ規制緩和など、大手デベロッパーとゼネコンを有利にした新自由主義的諸制度の後押しがその中心にあることは否定できません。
所沢市の近くには、蔵などを保存し、古くうつくしい町並みを保全していることで有名な川越市があります。
しかし、所沢旧市街だって、1980年代末くらいまでは、古い蔵や店なども多く残されており、川越ほどではないにしても、結構情緒溢れる街だったのです。
それを考えると、土地所有形態等で大きな差があったとはいえ、川越市の「街並み保存」と所沢の「再開発」との激しい落差をどう考えたらいいのか・・いやそもそも、この国の都市計画は一体全体どうなっているのか、考え込まざるを得ませんでした。
もちろん再開発を全て否定するわけではないし、住んでいる方々には申し訳ないけれど、これはあまりにあんまりな光景なのではないか、僅かでもゾーンニングするなどして、かつての情緒ある町並みが保存できなかったのか、と思わざるを得ませんでした。
何しろ高層マンションだらけなので、我々は激しいビル風に晒され、あまりの寒さに「どこでもいいから店に入ろう」と探していると、個人経営の雰囲気の良い「うなぎ屋さん」を発見!
そこに飛び込み、やっと「昔の所沢」の雰囲気の中で2人とも人心地つき、さらに、美味しいお酒とうなぎを堪能できたのは何よりでした。
それにしてもこの問題は、単に「都市計画」という専門的な領域に固有の問題なのではなく、日本の「開発」行為全般に共通する状況なのではないか・・やや飛躍かもしれませんが、そう思わざるを得ないのです。
年末から新年にあたり、色々と考えさせられました。
日大食品ビジネス学科:地域経済論研究室/高橋 巌
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