
【写真左から1、13枚目:農協等発電所で使われている水車と同型の製品の展示/2〜4枚目:イームル工業が開発した水中タービン発電。建屋不要で小水力発電の新たな可能性を開く商品/5枚目:自家用マイクロ発電用のスクリュー/6〜12枚目:横浜市水道局の水力発電】
(http://blogs.yahoo.co.jp/iwashizemi/53169399.html からつづき)
4.農協等小水力発電を支える地域企業・イームル工業(株)−中国地方に小水力発電が集中立地した背景−
中国地方でこうした小水力発電が定着し、今なお存続している背景には、これまで全国で73か所の小水力発電を手がけた、小水力発電機器製造業者・イームル工業(株)(1947年創業、資本金5千万円、従業員103名、年商約30億円)と、創業者の元社長・織田史郎氏の存在があります。
先日の調査の際には、同社の本社でお話を聞き、工場を見学することもできました。この時のメモをもとにその概要を記します。
同社は、中国地方の規模の大きな水力発電所のメンテナンス、施設更新などを受注しながら、農協等の運営する小水力発電の支援を長らく行ってきました。
そもそも 同社の小水力発電事業への参画は、織田氏が敗戦直後から小水力発電による農村振興と食料増産が戦後復興の道である、と確信し多方面に働きかけたことにあり、促進法制定も織田氏の活動の成果です。織田氏は、全国の山間地域を回って小水力発電の適地を探索しましたが、中国電力以外は、小水力発電のように地域事業者に発電を委ねることに抵抗があり、同社の社史によれば、「(織田氏のように)電力会社と交渉する力のある人が他地方にはいなかったから、測量調査はしたけれども、実現するまでには至らなかった」とされ、伸び悩みました。水力発電自体、1960年代に火力発電に主役の座を奪われていきますが、中国地方の各発電所が、今日まで事業継続してきた背景には、同社の長期的な技術支援が大きかったことは疑いがありません。
改めて興味深い事例であり、今後調査研究を深めなくてはと思いました。
5.都市部の小水力発電所/横浜市水道局・川井発電所
小水力発電所は、一定の水流と落差さえあれば、農村部だけでなく都市部でも発電が設置・運営が可能です。これには、ビル内の落差をいかした発電(NHK放送センタービル)などが知られていますが、水道の浄水場においても豊富な水を利用した発電が行われています。
横浜市水道局川井発電所においては、横方向の水流を活用した「横軸円筒プロペラ」方式の水車により発電を行っています。稼働は2011年2月で、出力270kw、予想発電量1,150,000kwh(一般家庭消費換算335世帯)の規模となっています。この方式は、機械稼働の騒音が発生するため、住宅地では密閉型施設が必要になります。現在は売電せず、浄水場内の自家消費(約3割に相当)に充当しているが、将来的にはグリーン電力などでの売電も検討したいとしています。
浄水場の場合は、従属水利権(内部の水利用)が発生しますが、通常よりも簡易ですが、所定の手続きが必要になる。建設資金は約3億3千万円で、うち約1/3を補助金により賄っています。
横浜市水道局ではほかに、港北配水池に民設民営の小水力発電施設があるほか(出力300kw)、青山浄水場(出力50kw)でも小水力発電所を建設中で、ここでは売電を行う予定です。横浜市内の浄水場ではこの3か所が概ね適地ではないかとしており、当初排水を利用した発電も計画しましたが、効率の面で断念したとしています。
このように、小水力発電は、農山村・都市を問わず、電力の「地産地消」を行いうるという可能性を秘めた存在であり、脱原発を進める上でも支援策を強化すべき発電方式といえます。
(http://blogs.yahoo.co.jp/iwashizemi/53171754.html につづく)
※なお、本ブログのレポートは、調査研究成果の一部を要約して報告しています。
詳しくは、高橋巌(2012a)「原発事故と食料・資源・エネルギー問題に果たす協同組合の意義」『協同組合研究』31巻1号,pp.31-37、同(2012b)「再生可能エネルギーにおける農山村の役割−脱原発・オルタナティブとしてのエネルギー地域自給に着目して−」『日本大学学部連携研究推進シンポジウム:21世紀における新たなエネルギーシステムの構築に向けた総合的研究報告資料』(http://blogs.yahoo.co.jp/iwashizemi/53171764.htmlに掲載)、の両論文、及びこれを要約・加筆修正した、同(2012c)「協同組合セクターと再生可能エネルギー−エネルギー分散・地域自給としての小水力発電に着目して−」『協同組合研究誌 にじ』(JC総研:近刊印刷中)、をご一読ください。
日大食品ビジネス学科:地域経済論研究室/高橋 巌
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