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どうも教員です。(※以下のコメントは、あくまで教員個人の資格でのものです)
先週の12月8日(土)13:30〜17:00、東大農学部において、2007年度・第2回日本フードシステム学会関東支部研究会が開催されました。
テーマは、今話題のテーマ:「バイオ燃料の光と影」というもので、座長を鈴木宣弘氏(東京大学大学院)にお願いし、報告はそれぞれ「アメリカ・中国のバイオ燃料事情」【阮 蔚 氏(農林中金総合研究所)、「ブラジル・タイのバイオ燃料事情」【加藤信夫 氏(農畜産業振興機構)】、「バイオ燃料が食糧需給等に及ぼす影響」【小泉達治 氏(農林水産政策研究所)】のタイトル・報告者で実施しました。
教員は、関東支部の責任者として、ほかの先生方と手分けして、セッティングと総合司会を担当しました。
当日のスケジュール:
http://wwwsoc.nii.ac.jp/fsraj/Kantou_shibu/kantou2007-2.htm
細かい内容は、いずれ、学会のHP(http://wwwsoc.nii.ac.jp/fsraj/200508-NEW-KANTOUTHEME.htm)に更新の上、概略を掲載する予定ですのでそれをご覧いただくとして、当日の感想を一言で言うと、
「大変なことになっている」
という実態の認識に尽きます。
驚愕するとともに、早々に手を打たないと大変なことになると感じました。
バイオ燃料は、トウモロコシ・サトウキビ等の農産物をエタノールなど燃料用原料として使用するものですが、その場合当然問題となるのが、飼料を含む食料需要との競合です。
世界的にも、豪州の大干ばつや中国等の食料需要増等に加えて、近年のこのバイオ燃料需要の急増によって、穀物・食料需給は一層逼迫基調に向かっています。
これに加え、原油価格の高騰もあって、国内の食品問題だけでも、菓子類が軒並み値上げ、飲用牛乳の消費減であれほど過剰が問題となっていた酪農(牛乳・乳製品)も、年明けには30年ぶりの末端小売価格の値上げに踏み切るなど、私たちの【目の前に見える問題】となって表れてきています。
ブラジル等では、この燃料需要などの環境変化によって農産物作付が大きく変わってきているほか、近年の油脂需要の急増で、大豆の純輸出国から既に純輸入国になった中国が、その大豆をブラジルから求めるようになっていることから、燃料用作物向けとともに大豆の農地開発が、アマゾンの熱帯雨林を大規模伐採をすることによって続けられています。
このアマゾンの大規模伐採=農地開発は、地球規模での破局的な環境破壊を招きかねないものなのですが、現在ブラジル国内でこれらを抑止する有効な手段は、多くの地域で講じられておらず、懸念の声が広がっています。
もちろん、ブラジルや中国といった限られた国の政治経済で、こうした国際的・重層的問題を解決できるはずはありません。グローバル化された市場原理に主導された、私たちの食・農・環境・エネルギーをとりまくシステムに、その根本的な問題があるからです。
環境に優しいとされるバイオ燃料が、その製造過程(サトウキビ焼却など)で大量のCO2を排出しているという事実、栽培される作物が「食料」でないこともあり、GM(遺伝子組み換え作物)栽培面積が急増しており、GMフリーの作物が減少しているという事実、さらにその問題を科学的に検証できないという重大な懸念、また(GM栽培を中心とする)バイオ燃料向け作物に伴う種子・技術の多国籍企業の独占などの問題、等々考えるべきことは山積しているにも関わらず、実態は急激なスピードで動いているようです。
当日の報告は、バイオ燃料の最新動向について、これ以上の適任者はないという座長・報告者によるものであり、バイオ燃料の様々な問題を浮き彫りにする内容でした。問題の所在と課題を、極めてクリアにしてくれるものであったといえます。
報告の中では、食料と直接競合しない原料の開発・試験も行われていることから、将来は必ずしも悲観的ではないと思われる反面、現行のあまりに急速なシステム転換や、開発・試験の期間などを考えると、早期の対策が不可欠であると痛感しました。
私は、このことに責任をもって論じられるだけの勉強は、まだ十分しておりませんが、すでに日本の食・農は、こうした世界的かつ多角的な問題がバックグラウンドにあることを十分認識した上で、考えなくてはいけないということだけは、強調しておきたいと思います。
貴重なご報告をいただいた方々、研究会の設営にご協力いただいた方々、ご来場頂いた方々に、この場を借りて厚く御礼申しあげます。
日大食品経済学科:地域経済論研究室/高橋 巌
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