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【写真上から1枚目:会場の様子。立錐の余地無し。入場できない者多数!/2枚目:中野氏の報告/3枚目:労組の連合が、原則も根拠も検討もなくTPP推進を打ち出す中、首都圏青年ユニオンが登壇しTPPの問題に言及】
ブログトップでもご案内していた、標記「TPPでは生きられない」集会の模様です。
私は、仕事や所用を抜け出しての一部の参加でしたが、京都大学・中野剛志氏の特別報告は感銘深
く聴くことができました。
会場の明治大学の教室は、立錐の余地もない超満員で、入りきれず諦めて帰る人も多数いたようで
す。
折しもこの日さいたま市では、TPP推進のため(としか思えない)政府主催の「開国フォーラム」
が開かれていたそうですが、それに対抗するかたちになりました(山梨県では、宇沢先生らの国民会
議のフォーラムも開催されるようです)。
中野氏の講演は、極めてロジカルでメモリアルなものでした。その中心的な部分だけですが、以下に
その趣旨を箇条書きしておきます(文責:管理者)。
※主催者のHP:http://www.geocities.jp/yaoyahyakusho/muramachi/home.html
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1.TPPは、農業者も非農業者も関係ない【我々1人ひとりの問題】である。
2.TPPの被害は、【農業分野だけでも農業者だけでもなく、全国民・全地域】に及ぶものである。
3.TPPは自由貿易主義と規制緩和をさらに徹底させようとするものであるが、結果的には、安い労
働力と安い製品が海外からなだれ込んで、低賃金労働者の増大、デフレと失業が拡大することにな
る。しかし問題はそれだけではない。
4.そもそも「タクシー規制緩和」で「誰も幸せにならなかった」ように、自由貿易と規制緩和で経済
危機が脱却できることにはならない。なぜか。従来は、国家が自国の企業を守り、企業の成果が国民
に波及して、国民は経済成長の成果を享受できた。しかし「グローバリズム」は必然的に、そうした
枠組みを破壊してしまった。現在はもはや「企業が国を選ぶ」実態にある。
5.そもそも輸出企業は、自らの立場を有利にするため、デフレは歓迎なのである。しかも現代の企
業は、国境を越え自由に活動し、より有利な企業者活動をする場にどんどん移転していく。したが
って、TPPで輸出企業が輸出を伸ばし利益を得ても、その成果が国内の雇用などに波及することは
最初から期待できない。
5.「TPPで輸出を増やしてデフレを脱却できる」わけがない理由はここにある。
6.韓国が競争力をつけ、FTA等で輸出を拡大しようということに日本企業は焦って、TPPを推進
しようとしているが、それでは韓国の競争力は何によってもたらされたのかといえば、基本はウオン
安によるものである。それに、韓国も経済成長は実現しても、失業など国民の生活が改善されていな
いし、格差もどんどん拡大している。国民は「誰も幸せになっていない」。
7.オバマは、TPPで一言も「新しい経済ルールをつくるためにTPPに参加する」などと言ってい
ないし、「自国の雇用と輸出を増やすためだけ」にTPPを位置づけている。オバマも自分の立場が
危ないし、アメリカ自体が人のことなどに構っている余裕はない。今、ここでポイントを稼がないと
後がない。TPP参加国の中でアメリカが競争力を持つのは、軍事・航空などであるが、TPPで
「政府調達」の問題が取り上げられているのはこのためである。この分野でアメリカの製品・技術を
導入しろ、と参加国に迫る算段なのである。
8.そして、農産物である。しかしアメリカ農業は地下水枯渇などで疲弊している。輸出余力が強化で
きないにもかかわらず、アメリカ(輸出国)の農産物がないと食糧需要が充足できないような市場構
造にしておけば、貿易上も外交上も有利になるから、TPPをその場に利用しようとしているに過ぎ
ない。
9.世に言われる「日本はTPPに参加しないと世界に取り残される」「早く参加して日本に有利なル
ールづくりを」などという想定が、全く根拠がない理由がここにある。「一旦入って不利なら抜けれ
ばいい」などという者も多いが、普天間一つ解決できずアメリカに追従する外交を展開する日本政
府が、TPPに一旦入って「やっぱり抜けます」などといえるはずがない。オバマは、TPPをテコ
にし、故郷のハワイで開かれるAPECに錦を飾ろうとしている。そんな中で、一旦入った日本が反
対(離脱)できるわけがない。
10.グローバリズム市場の中で競走する企業に、「競走するな」といっても無理だ。その企業はマスコ
ミに金を出し、だからマスコミは、企業に有利なように世論を誘導する。そして各国も、自国の国民
を守るために最大限戦略を構築する(日本だけが例外だが)。では、こうした中で、国民の利益を誰
が守るのか。官僚と政治家のはずだ。しかし、政治家は票を握られているし、官僚は「民に任せろ」
という世論の中で、何もできなくなってしまった。「国民のためにならないことには、身体を張って
反対する官僚」はいなくなってしまった。国民の側の「安易な官僚叩き」も、今日の事態を招いた一
因ではないのか。
11.【1人ひとりの問題】というのはそういうことだ。今まで、官をたたけばいい、とか、自分の業界
とは関係ない、などと言って、みんながグローバル化する問題から目を背け、本当の解決のために何
をすべきかを考えず、【全てを人のせいにしてきた】のではないのか。TPPは「その結果」なのだ
ということを、自覚すべきだ。
12.TPPのように、国が推進し、財界・マスコミに労組まで賛成しているようなことが、国民の反対
でひっくり返った歴史は戦後日本に存在しない。絶望的な状況だ。しかし、諦めずに、みんなが「1
人ひとりの問題」であることを自覚し、新聞に投書し続けるなど、地道なことをやりつづけて、世論
に訴え変えていくしかない。
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あくまで私の聴いた範囲でのまとめなので、ニュアンスが微妙に違っているかもしれませんが、趣
旨は大きくズレていないと思います。
中野氏は、私より遙かに年下と思うのですが、極めて論理的な、しかも迫力ある講演であり、同意
しかねる部分がなくはないにしても、多くの聴衆が引き込まれるように聞き入っているのが印象的で
した。
中野氏が言っていた「自分の問題なんだ」「この問題に右(右翼)も左(左翼)もない、みんなの
問題なんだ」ということには、強く共感した次第です。
上記要約を、各方面でご活用いただければ幸いです(出所は明示してください)。
私も中野氏に感心しているだけではなく、自分の持ち場で頑張りたいと思います。
日大食品ビジネス学科:地域経済論研究室/高橋 巌
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