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2011年3月25日、本学部では例年より簡略化したかたちで「学位授与式」を開催し、学科でも
ささやかな授与の場を設けました。
多くの大学で卒業式が見送られる中、計画停電の影響も懸念されたことから例年よりも大幅に
縮小した内容で、例年のパーティも中止される中での催しでしたが、何とか無事に卒業生を送り
出すことができました。
4年担任であった私としても、やや大げさですが、厳しい中で仕事をやりきった安堵感に包ま
れています。
詳細はいずれ掲載しますが、学科授与式の最後に、4年担任代表として、私から「卒業生を送
る言葉」を、述べました。
その要旨をここに掲載します。ご一読いただければ幸いです。
日大食品ビジネス学科:地域経済論研究室/高橋 巌
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卒業生を送る言葉
2011.3.25
4年担任 高橋 巌
まず皆さんの中で、もしくは皆さんの身近の方で、今回の地震で何らかの被害を受
けた方々がいらっしゃる方もいると思います。心からお見舞いを申し上げます。
ついこの間、1年の新入生歓迎会や運動会の選手選びをしたような気がしています。
本当に早いものです。正直、まだ実感が湧きません。
担任をともにした竹下先生がイタリアにいてこの場にいらっしゃらないのは残念で
すが、私から一言だけ申し上げます。
皆さん方は、未曾有の厳しい就職戦線を経て、最後に、未曾有の天災と原発事故と
いう未曾有の人災に直面されたわけです。戦時状態に匹敵する震災の被害と依然厳し
い情況が続く原発事故という中にあり、これほど厳しい学年、厳しい卒業もなかった
のではないかと思います。
こうした中で、変則的な卒業式を迎えることになった皆さんには、担任として、た
だただ、十分な中で送り出せないというお詫びの言葉を申し上げるのみです。
今の情況が落ち着いたとしても、皆さんの行く手は、決して楽観できるものではな
いかもしれません。理不尽なこともあるでしょうし、悩みも続くかもしれません。皆
さんはそんな中を旅立っていくことになります。
しかし歴史を振り返ってみると、このような過酷な時代は過去にも多くあり、むし
ろそうした時代の方が長かったのではないでしょうか。そんな中でも学生たちは、卒
業後、それぞれ懸命に、ひたすら生き抜いてきたのです。
そうした中でのキーワードは3つあります。
一つは「相互扶助」「助けあい」です。
この地震で被災された人たちが各地で助け合う姿は、世界中のメディアの賞賛を得
ました。この国の人々は、長年にわたり、利己主義や弱肉強食ではなくそうした心持
ちで生きてきたのです。助けあいながら、その上で切磋琢磨し、それぞれが「自分で
あるため」に成長していくことが大事だと思います。その意味では、大学時代の友人・
仲間は、損得勘定のない得難い存在です。卒業しても大事にしてください。
二つは、問題意識を持ち、自分の頭で考え続けることです。
常日頃から、皆さんには「大学生は“生徒”ではない“学生”だ」と言い続けてき
ました。学生とは、自分で考え自分で学ぶ人のこと。他人や利害に振り回されるので
はなく、自分で正しい道を判断していくこと。それこそが勉強であり、それは大学を
卒業したから終わることではなく、むしろこれからがスタートだともいえます。
たとえば、今日のこの悲惨な事態を招いた原発の問題にしても、授業でもやりまし
たが、全くの人災です。しかし、人々がしっかり考えていれば、ここまでの事態には
ならなかった。我々も含めて、みんなが自分の大事なことを人任せにしていた、お上
のやることは間違いないなどとみんなが思っていたからです。これから厳しい時代を
乗り切るには、それではいけない。こうしたしっかりした態度が不可欠です。
三つは、自分の希望・夢を忘れず捨てないでほしいということです。
お渡ししたペーパーには、私が尊敬する作家の宮澤賢治、黒人解放運動の途上で倒
れたマルチン・ルーサー・キング、そして授業でも紹介したミヒャエル・エンデの言
葉が記されています。いずれも困難な中で、理想と夢を失わず生き続けた人たちです。
是非読んでもらいたい。
人々が助けあい、自分の持ち場でしっかり考え、そして夢を忘れないこと。これが
宮澤賢治の言う「諸君よ 更にあらたな正しい時代をつく」る力であり、キング牧師
が描いた人間愛に基づく壮大な、不可能と思われた大きな夢を実現する力であり、エ
ンデのいう「人間の作り出したシステムは正しい方に変えられる」という認識の根源
なのだと思います。
私の母校の教師、無着成恭の言葉で締めくくります。
いつも力を合わせて行こう。
かげでこそこそしないで行こう。
いいことを進んで実行しよう。
働くことがいちばんすきになろう。
なんでも、なぜ?と考える人になろう。
いつでも、もっといい方法がないか、探そう。
皆さん、ともに生き抜きましょう。そしてまた笑顔でまた会いましょう。お元気で!
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【配付資料】
2011年春、旅立つ君たちへ
2011年3月25日
4年担任 高橋 巌
地震・津波という未曾有の天災と、原発事故という未曾有の人災という困難の中で、
皆さんを送るにあたり、以下の言葉を贈る。
夢と希望を捨てず、ともに生きよう。生き抜こう。
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生徒諸君に寄せる
宮澤 賢治
生徒諸君
諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか
それは一つの送られた光線であり
決せられた南の風である
諸君はこの時代に強いられて率いられて
奴隷のやうに忍従することを欲するか
今日の歴史や地史の資料からのみ論ずるならば
われらの祖先ないしはわれらに至るまで
すべての信仰や徳性は
ただ誤解から生じたとさへ見へ
しかも科学はいまだに暗く
われらに自殺と自棄のみをしか保証せぬ
むしろ諸君よ
更にあらたな正しい時代をつくれ
諸君よ
紺いろの地平線が膨らみ高まるときに
諸君はその中に没することを欲するか
じつに諸君はこの地平線に於ける
あらゆる形の山嶽でなければならぬ
宇宙は絶えずわれらによって変化する
誰が誰よりどうだとか
誰の仕事がどうしたとか
そんなことを言っているひまがあるか
新たな詩人よ
雲から光から嵐から
透明なエネルギーを得て
人と地球によるべき形を暗示せよ
新しい時代のコペルニクスよ
余りに重苦しい重力の法則から
この銀河系統を解き放て
衝動のようにさえ行われる
すべての農業労働を
冷たく透明な解析によって
その藍色の影といっしょに
舞踏の範囲にまで高めよ
新たな時代のマルクスよ
これらの盲目な衝動から来る動く世界を
素晴らしく美しい構成に変えよ
新しい時代のダーウインよ
更に新しい東洋風静観のチャレンジャーに載って
銀河系空間の外にも至り
透明に深く正しい地史と
増訂された生物学をわれらに示せ
おおよその統計によれば
諸君のなかには少くとも千人の天才がなければならぬ
素質ある諸君はただこれらを刻み出すべきである
潮や風・・・
あらゆる自然の力を用い盡すことから一歩進んで
諸君は新たな自然を形成するのに努めねばならぬ
ああ諸君はいま
この颯爽たる諸君の未来圏から吹いて来る
透明な風を感じないのか
宮澤賢治「生徒諸君に寄せる」より(現代漢字修正)
『学生諸君!』光文社、2006年、pp.10〜14
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私には夢がある。いつの日か、この国が立ち上がり、わが国の
信条の次の言葉の真の意味を貫くようになるだろう。
『私たちはこれらの真理を自明のことと考える。すなわち、全
ての人間は平等に造られている』。
私には夢がある。いつの日か、ジョージア州の赤土の丘の上で、
かつての奴隷の子孫たちと、かつての奴隷主の子孫たちとが、共
に兄弟愛のテーブルに着くことができるようになるだろう。
私には夢がある。いつの日か、このミシシッピ州も、 このよ
うな不正義の暑さにうだっており、このような抑圧の暑さにうだ
っているこの地域でさえも、いつの日か自由と正義のオアシスに
変えられることであろう。
私には夢がある。いつの日か私の幼い四人の子どもたちが、彼
らの肌の色によって評価されるのではなく、彼らの人格の深さに
よって評価される国に住めるようになることであろう。
(キング牧師1963.8.28.『ワシントン大行進』の際のスピーチから)
http://kobemasschoir.org/special/kings.html
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私が作家としてできることは、子孫たちが同じ誤ちをおかさな
いように、考えたり新たな観念を生み出すことなのです。(多く
の人々が)そうすれば、この社会は否応なく変わるでしょう。
世界は必ずしも滅亡するわけではありません。しかし、人類は
(このままでは)長期にわたる報復を受けるかもしれません。
人々はお金は(社会は)変えられないと考えていますが、そう
ではありません。
お金は(社会は)変えられます。人間がつくったのですから。
(ミヒャエル・エンデ『エンデの遺言』NHK、「地域金融論」資料)
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いつも力を合わせて行こう。
かげでこそこそしないで行こう。
いいことを進んで実行しよう。
働くことがいちばんすきになろう。
なんでも、なぜ?と考える人になろう。
いつでも、もっといい方法がないか、探そう。
(無着成恭)
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