児童文学と音楽の散歩道

8月13日 新ブログに移行しました。これからもよろしくお願いします。

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虫歯と音楽

歯が痛い。

どうにも我慢ができなくなって、歯医者さんに行きました。
しばらく前に治療した奥歯の「被せ」が取れてしまい、ちょっと気にはなっていたのです。でも、痛みも無く特に支障もなかったから、そのうち行かないと…と思いながらずるずると引き延ばしていました。
そして、来るべきときが来ました。被せの取れたところに食べ物が引っかかってどうにも具合が悪いと思い始めたところに、いやな痛みが始まったのです。
覚悟を決めました。

「被せが取れたのは一番奥の一本。問題はその手前です。歯そのものが一部分折れて、なくなっています。ちょっと写真を撮らせてくださいね…」行きつけの歯医者さんが、いつもの笑顔で話します。
「うーん、状態は良くありませんね。一番奥はボロボロで、そのまま被せるのは危険です。手前はもう、神経が死にかけていて、歯茎の奥のほうまで黒く腐りかけてます。しっかり膿を出さないとだめですね」

それから約90分、麻酔をかけながらの治療が続きました。何をやっているのか、自分では見えないのですが、患部の奥のほうまで不可思議な道具をつかって膿をつつき出している様子です。痛みは無いものの、歯に器具が当たって、何かを引き抜いていくような振動がネコパパに伝わってきます。他の患者の治療も挟みながら、汗だくで治療を続ける先生…大変だったことでしょう。
なんとかその日の治療は終わり、あとは抗生剤を飲みながら消毒に通うことになりました。処置の終了までには当分かかりそうです。
もっと早くいけばよかった!と、何回目かの反省です。でも、今度ばかりは加齢による身体劣化を痛感しました。本気でケアすることにしましょう。

■モーツァルトと歯痛

こんな日は、音楽を聴くのも億劫なんですが、気になることがありました。
歯医者さんで流れていたBGMです。なんだかモーツァルトが多い。ネットを見ると、確かに、モーツァルトを推奨する歯医者系サイトの記事がいくつもあります。ゆらぎの高周波がいいのだそうです。どうも眉唾…でも…こんなのもある。モーツァルト自身、歯痛に悩んでいた、と。
根拠はモーツァルトの手紙、ですか。そうなると信憑性はありそうですね。

モーツァルトは死の前年から、彼は頭痛や歯痛に悩まされ始めたようです。当時の彼は、フリー作曲家としての人気が急落、そこで宮廷副楽長の地位を狙うも失敗、妻の療養と称する温泉滞在費も嵩み、厳しい経済状態だったらしい。
その当時のモーツァルトの手紙です。宛先はフリーメーソンの同志で、富裕な織物商だったヨハン・ブフベルク

ウィーン、1790年4月8日
あす金曜日に、ハーディク伯爵が、シュタードラー五重奏曲(クラリネット五重奏曲)と、私があなたのために書いたトリオ(弦楽三重奏のためのディヴェルティメント)を聴かせてもらいたいということです。 勝手ながら、それにあなたをご招待いたします。…私自身お目にかかり、じかにお話したいのですが、頭全体がリューマチ性の痛みですっかり縛られたようです。そのための私の苦境もいっそう身にしみて感じられます。差し迫っています。できましたらお助けください。
ウィーン、1790年5月初め
残念ですが、じかにお話するために外出できません。
なにせ歯の痛みと頭痛がいまだにひどく、特にまだ強い病変を感じます。…いまはあなたに率直に打ち明けました。どうぞあなたに出来るだけのことで結構です。あなたの真の友情の気持ちが許すかぎりのことを尽くしてくださるよう、心からお願いいたします。
―『モーツアルト書簡全集6』(海老沢 敏訳.白水社刊)より

借金の無心状でした。
プフベルクはどうやら好人物だったらしく、死の直前までモーツァルトに援助を続け、死後も返済を請求しなかったようです(のちに妻コンスタンツェが全額返済)。
ちょうどこの時期、モーツァルトが書いていた曲は「弦楽四重奏曲第22番変ロ長調 K.589」「第23番ヘ長調 K.590」。プロシャ王に献呈した、彼の最後の弦楽四重奏曲です。
アルバン・ベルク四重奏団の若き日の演奏で聴いてみました。独テルデックCD。

イメージ 1

チェロを得意としたプロシャ王を意識して、第一ヴァイオリンとチェロが主要旋律を掛け合いで演奏します。それだけに、渋く内面的な趣があり、そこに晩年の作品に共通する諦観が、澄んだ響きの中に溶け込んでいく。
歯痛、頭痛をこらえながら書いた曲としてはあまりにピュアです。確かに聴く側の痛みは和らぎますね。



シューマンの「歯の痛み」

歯痛そのものを題材にした曲も発見しました。
ロベルト・シューマンの「歯の痛み」です。
これはイギリスの詩人ロバート・バーンズの詞に曲をつけた混声合唱曲です。バーンズはあの「蛍の光」の作詞者でもあります。訳詞が見つからないのですが、どうやら「歯痛は地獄の苦しみ」と、のたうちまわって痛がる様子を歌っているらしい。ところが、曲はなぜか明朗でロマンティックな曲想です。
これは痛みを紛らわそうとするカラ元気でしょうか。
シューマン、わざわざこんな詞に曲をつけるくらいですから、自分も歯痛で苦しんだ経験があるのでしょうね。いかにも神経症で有名な作曲家らしいと思います。



■ビル・エヴァンスの前歯

ジャズで虫歯といえば、ピアニストのビル・エヴァンス…だそうです。ネコパパは知りませんでした。

wiki参照。
エヴァンスの薬物乱用は1950年代後半から重篤化。ヘロインに体を蝕まれ、金銭的にも余裕はなく、一時的な断薬には成功しても、結局晩年まで薬物との縁は切れなかった。レコードジャケットなどでは、堅く口を結んだ肖像写真が多く使われていた。歯を見せなかったのは、喫煙と麻薬の影響でひどい虫歯になっていたのが一因で、兄ハリーとの音楽に関する1960年代の対談フィルム動画などでは、対話するエヴァンスの前歯がボロボロの状態であるのが伺える…

イメージ 2

確かに、インテリ青年然とした風貌のポートレートは、みんな口をしっかり結ぶか、くわえ煙草でしたね。
そういうことでしたか。
問題の動画も、視聴しました。YOUTUBEにあります。真摯に音楽論を語るエヴァンスですが、前歯がほんとうに痛々しいことになっています。ついそこに目が行くので、リンクはやめときます…
と、いうことで…しめくくりはエヴァンス・トリオの「枯歯」
いや、「枯葉」をどうぞ。

皆様、歯痛が気になったら、すぐに歯医者さんに行きましょうね。





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年を取ると歯茎が下がってきて「被せ」と歯茎の境目から虫歯になり易いですね。
私のかかりつけの歯医者さんはいつも「総入れ歯になりたくなければ、歯茎をマッサージするように歯磨きをしなさい・・・」と治療後に虫歯より痛い虫歯予防のご指導(お説教)が延々とあります。
歯の治療用のタービンの音色は終われば「ホット」としますけれどBGMでのピアノやヴァイオリは歯にシミますね。モーッアルトの時代、虫歯の治療は如何していたのでしょう?

2017/9/12(火) 午後 9:10 [ チャラン ]

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> チャランさん
こんな記述を見つけましたよ。

歯科医に訊きました。
Q:昔から「歯痛・虫歯」で人類は悩んできましが、どう治療したのですか?
A:歯を抜くしかありませんでした。
Q:入れ歯にしたのですか。
A:王様の虫歯は、抜歯したあと、奴隷の歯を抜いて、差し歯にし、細い針金で両隣の歯にくくり付けて固定しました。庶民の虫歯も同様で、抜歯したあと、石を削ったり、他の哺乳類の歯を整形して、差し歯にしました。
昔は、歯医者は、「フーテンの寅さん」のような香具師(やし)に起源があり、抜歯と、削った差し歯の専門家でした。
「総入れ歯」は、日本の技術が、世界に抜きん出ていました。「柳生但馬の守」の木製の総入れ歯が残っています。

…とのことです。現代の歯医者さんは、まず「抜かずに活かす」ことを第一に考えますから、その分、歯を大事にしない患者には厳しいのでしょう。心したいです。

2017/9/12(火) 午後 10:16 [ yositaka ]

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歯痛や頭痛をこらえながら作曲したモーツァルトとか、シューマンの「歯の痛み」とか、全然知りませんでした。マラン・マレの「膀胱結石手術の図」を連想しました

2017/9/12(火) 午後 11:37 [ Loree ]

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> Loreeさん
医学の発達していなかった時代、彼らのようなクリエイターはストレス原因の病にも苦しんだことでしょう。モーツァルトの体調不調を訴える手紙は1790年前半に目立つているようですが、彼の人生はあと1年、ずっと痛みをこらえて晩年の傑作を作曲したといいますか、痛みを紛らわすために一層作曲に集中したといいますか、痛みと創造のコラボといってもいいかもしれません。

2017/9/13(水) 午前 8:58 [ yositaka ]

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歯の痛みを覚えて歯医者さんに行くと、概ねその1本だけでなく、何本か虫歯を見つけられてしまいます。
そして延々と治療を続け、ときには(麻酔注射を含め)痛い思いをさせられて、あげく高額治療費を請求されます…(涙)
何度も同じ目にあって、近頃は、やっとせっせと歯茎までの歯磨きをするようになりましたが、これもいつまで続くやら…
シューマンの曲やビル・エヴァンスの話は、初めて知りました。

2017/9/13(水) 午後 0:09 gustav_xxx_2003

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> gustavさん
しばらくぶりに行くと、虫歯があちこちに見つかってガッカリしますね。今回もそうで、当分通うことになりそうです。そのあとも定期的に掃除に通いたいと思っています。自分でケアするといってもモノグサで続ける自信がありません。
ビル・エヴァンですが、晩年のジャケットには歯並びのいいものがあります。きっとある時点で総入れ歯にしたのでしょう。

2017/9/13(水) 午後 3:40 [ yositaka ]


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