恥ずかしながら、必要に迫られてショートショートを書いてみました。御批評お願いします。
「よくやった、エヌ君。完成じゃ」
エス博士は助手のエヌとともに、長年取り組んだ研究の完成を喜び合った。これで世界は一変するはずである。
「完成したからには、これを使ってもらわなければ意味がない。さっそくエー国の大統領と連絡を取ろう」エス博士は電話に手を伸ばし、大統領官邸に電話をかけた。電話が大統領につながると博士は言った。
「大統領閣下、ついに完成しました。これで我が国の爆弾はさらに強力になりますぞ。さっそくご採用いただきたいと思います」
「ああ、そうか、それではさっそく爆弾の改造に入ることにしよう。これでアール国より優位に立てるというわけだな」
大統領はそう言うと、うれしそうに笑って電話を切った。エス博士も笑って、助手のエヌに振り返ると、エー国の原子爆弾の改造の手順を指示しはじめた。
「すべて聞かせていただきましたよ」
博士がエヌに指示をするのに夢中になっていると、背後から声が聞こえた。
「手を上げて、そのままの姿勢で。この技術はぜひ我が国にもほしい。博士。助手を派遣してはいただけませんか。エー国には内緒で」
相手は表情のない声でこのように言った。どうやら銃を持っているらしい。
「しかし、この技術は我がエー国のために開発したものだ。他国に渡すわけにはいかん」
「博士、おとなしく渡した方が身のためですぞ。でなければ・・・・・・」男は、語気を強めた。
「・・・・・・分かった。助手を派遣しよう」博士は答えた。
「物わかりのいい博士ですな。では、助手を連れて行きます。このことはどうかご内密に。人の命に関わることですので」
博士は助手が連れて行かれるに任せた。それからすぐに電話に手を伸ばしたが、電話線は切られていた。
「思った通り、アール国のスパイのようじゃ。エヌは無事に帰って来るかな……」
その後、エス博士はエー国の原子爆弾をすべて改造するのに奔走した。そして、すべての爆弾の改造が済んだ頃、アール国の外交姿勢が急に高圧的なり、エー国との摩擦が起きるようになった。排他的経済水域への侵入、経済制裁、領空侵犯。エー国とアール国の戦争は避けられない情勢となった。すべての交通手段が閉じられようとしていた時、助手のエヌが帰国した。エヌは言った。
「博士、もう戦争は避けられそうにはありません。博士の言う通り、アール国の爆弾を改造してきましたが、本当に大丈夫なんですか?」
「こうなった上は結果を見守るしかない。」
エス博士は腕を組んだ。その日のニュースで両国が交戦状態になったとの報道があった。エス博士の研究所の電話が鳴った。受話器を取ると、大統領からであった。
「エス博士、いよいよ全面核戦争が避けられない情勢となった。しかし、我が国は本当にアール国に対して優勢を保てるのかね」
「大統領閣下、その点は大丈夫でございます」
「……博士!」
助手のエヌが口を挟むのを手で静止して、博士は続けた。
「どうか発射ボタンを押すのをためらわれませんよう」
その直後、発射ボタンは押され、ほぼ同時にアール国からも報復のミサイルが打ち上げられた。もはや両国の、いや、人類の滅亡は避けられない情勢となった。人類滅亡まで後数分……。博士は目を閉じた。もはや世界は無音である。やがて、エー国の上空でミサイルが炸裂し……、巨大な爆発音をとどろかせた。
「……成功じゃ!」
博士は叫び、研究所を飛び出した。表にはそれはそれは美しい花火が次々に轟音をとどろかせていた。
「この日のために何十年も研究を続けてきたのだ。え、どんな研究だって?」
博士は助手のエヌを振り返って答えた。
「原子爆弾を花火に変える研究じゃよ。まず、物質の核分裂反応を研究してな……」
(おしまい)
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