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そして11年の時を刻んだ・・・・。 平成20年10月10日 天地の故郷「白浜」の海岸にたたずむ親子・・・・。 娘の肩を抱き、妻の腰を抱く天地。 大海原に落ちる夕陽に揺らぐ3人がいる。 あの、運命を変えた日々から11年が経った。 言いようのない感動と歓喜に包まれた素晴らしい出会いの数々・・・・。 少年達とのソフトボールの練習と試合。 応援してくれた父兄との絆・・・。 そして、公園の仲間達との生活・・・・。 天地達ヒーローズは、初戦の勢いを保ったまま勝ち続け、念願の市長杯に進出した。 しかし、市長杯では参加チームとの差は歴然で、初戦で力尽き、敗退した。 負けたにもかかわらず、その感動の瞬間は天地の瞼に焼きつき、あの歓喜の声と少年達の笑顔、 公園の仲間達、応援団そして天地の会社の社員の震える叫びは天地の脳裏に奥深く、刻まれていた。 天地は○○商事から任された会社を店頭公開の準備に入れるまでの成果を上げ、退職した。 その時点ではまだ600万円の借金が残っていた。 しかし、時を急ぐ天地はフルコミッションの仕事で一日も早く借金を返す為の決断をした。 天地はあの生活の中で、確実に生まれ変わっていた。 一日も早く借金を返し終わり、今度は人のお役にたてる仕事、金儲けだけではなく、生かされて来たことへの恩返し、辛く、苦しく、そして悲しくて切ない思いで生きている人達のお役に立てる生き方をしようと・・・・。 天地は借金も返しながら、カウンセラーとコンサルタントの資格をとり、平成10年からキャリアカウンセラーとして 就職支援に励む。・・・・。そして営業・企業研修の講師として、日夜、奮闘した。 過ぎ去った日々を、一つ一つ丁寧に思い出す。 流れる涙と思い出し笑いを繰り返しながら、夕日を眺めていた。 天地は再度、会社を興すことを決意した。そして、その熱い思いを故郷の海で家族と確認していた。 病弱で運動もできなく、いじめられっこの小学生時代。 その天地を命と引き換えに勇気を与えてくれた「福次」の墓参りを兼ねて・・・・。 生きる事の喜び、生かされている事への感謝、頬に触れる風や時と共に移り変わる景色。 全てが感動!全てのものに命が・・・・。天地は自分の非力さを承知で目的を達成する為に再び事業を起こす。 一人でも多くの雇用を。 一人でも心から笑える人生を送れるように。 家族、仲間、取引先、お客様を通じて、この素晴らしい世界を共有する為に・・・・・。 天地は腰を落とし、娘の目を見ながら話す。 「マユ!パパはこれから又、忙しくなる。でもパパはマユとママを大切にしている。愛している。 い〜っぱい好きや!これからもみんなで頑張るんや。いいな!」 「うん!マユちゃんも頑張るよ!」 天地は娘を抱きしめながら、妻の顔を見た。 妻は「これから」を覚悟したように落ちる夕陽に背中を預けつぶやいた・・・・。 「ママとマユちゃんは・・パパと・・パパと頑張るだけやから・・・・一番楽しいことやから・・・・!ねっ!マユちゃん。」 妻の瞳は輝き、その頬を伝った涙はゆっくりと大海原に落ちた。 「パパ! 早くやろうよ。早く!・・・例のやつ。一番好きな言葉!」 天地と妻そして娘は大海原の向こうに落ちる夕日に向かって叫んだ!! 「せ〜の〜!」 「ヨッシャー!行くぞー!」 Fin 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 あとがき この記事は2008年12月から2009年10月までに一度UPしたものです。 それを想う所がありまして、加筆、訂正をしまして再度書かせて頂きました。 書き始めた頃、何の構想もなく、ただ想いをほとしばらせる事で、必死で書いてきました。 拙い文章で、面白くない記事をお付き合い頂いた方々に改めてお礼を申し上げます。 家族、友、そして生あるもの全ての絆。 社会の底辺でもがき、苦しみ、切ない想いで生きる人々、そんな環境に身を置き、そこで見た人間の本質と素晴らしさを伝え、今を!明日を生き抜く為の一助となれば・・・・との思いでしたが、お伝えできたでしょうか・・・・。 この、「天地の生きるとは」は、これで終わります。 しかし、このブログを通じ、皆様と知り合えた事、私の誇りとしてこれからも頑張って参ります。 これからもみなさんとのお付き合いを大切に、色んな記事を書かせて頂きたいと思います。 今日は東北の大震災から一年目になります。まだまだ頑張らねば!(^^) 本当に・・・・・・・・「ありがとうございました。」 平成24年3月11日 天地 |
新・天地の「生きるとは」
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「プレイボール!!」 ヒーローズは後攻の為、メンバーはグラウンドに散った。 一回表。淀川ボーイズの攻撃は始まった。 昨年度も大阪市長杯に行った強豪の攻撃である。 その打撃は凄まじく、ホームラン、二塁打、ヒットで「アッ」と言う間に6点を取られる。 少年ソフトボールは7回まで。5回を終わった時点で10点差があれば、コールド負けである。 やんちゃでいつも強気な亮介が顔を拭う。半べそ状態である。 後、4点を取られ5回が終了すれば、ヒーローズの夢は、初勝利は消える。 1回表、ヒーローズは相手の凡打やミスに救われ、ツーアウトまでこぎつけた。 あと一人で攻撃に移れる・・・・・。ランナーは1塁。 次のバッターは4番の主砲である。 初球から狙って来た。打球は鋭い勢いでサードを守る「安田」の前に飛んだ。 安田は天地の教えどおり、前に突っ込んだ。本田がバックアップにまわる。 その打球はイレギュラーバウンドし、安田の右目を直撃した。安田はグラウンドに突っ伏し、倒れこんだ。 観客もベンチも息を飲む。 そのサードからこぼれた球をショートの本田が素早く拾い、セカンドでアウトにした。 「スリーアウト!チェンジ!」 しかし、安田は起き上がれない。メンバー、天地は安田のもとに駆け寄った。 メンバーや主審、天地が駆け寄ったその時!安田はゆっくりと顔を上げた。そして・・・・。 「当たっちゃった!。へへ〜ッ!。大丈夫!今度は僕らの攻撃やね。」 泥で汚れた顔は饅頭をつけたように腫れていた。 相手のピッチャーは「ウインドミル投法」で体感速度90キロを超える球である。 ヒーローズの「バント戦法」は球にかすりもしない。それどころか腰を引く有様であった。 その後、一進一退で4回表の淀川ボーイズの攻撃が始まった。 一番目のバッターがキャッチャーフライを打ち上げた。 谷口は片足を引きずりながら、バックネットに突進する。頭からボールに突っ込み捕球した。 そして谷口は・・・・・吼えた!「ワンアウトや〜!」 2番目のバッターがレフトフライを打ち上げた。サードとレフトの中間ぐらいに飛んだ球をショートの本田が追い、滑り込みながら捕球した。 ヨッシャー!本田が・・・・・吼えた!。 「ツーアウト!あと一人や!」 3番目のバッターが、右中間にヒットを放って一塁を回り、2塁に向かった。 ライトの張本の強肩が呻る。矢のようなボールがセカンドに返った。 ショート本田がセカンドベース上でキャッチするとランナーに素早くタッチ。 「アウト〜!スリーアウト!チェ〜ンジ!」 さあ、ヒーローズの4回裏の攻撃である。 天地は少年達と円陣を組み、アドバイスを送った。 「ええか!バント戦法は間違っていない。雨にぬれたグラウンドはこの戦法には有利や。 あの速い球について行ってないだけや!腰をおとしてバットと目線を平行にして前に立て! 玉に合わそうとするな。上から叩くつもりでバントや。ええか!恐くはない!これからヒーローズの反撃開始や。 行け!思いっきりやれ。後で後悔しないように。ボールに集中しろ!ええな!ヨッシャ!行こう!」 亮介に兄の駿介が近寄る。 「亮ちゃん、とられた分、とり返そう!兄ちゃんまで打順を回せ!玉に食らいついて兄ちゃんに回せ!」 その言葉を胸に本田亮介は打席に立った。 そして、1球目。亮介のバントはサード前に転がった。ぬかるんだグラウンドにその打球は直ぐに止まった。 亮介は俊足を生かし、ファーストに駆け出した。 慌てたサードの選手は足を取られ、ファーストに投げた球は暴投になる。 それを見た亮介はセカンドに向かい、滑り込んだ。 「セーフ!」 ノーアウト2塁。 3番。机 真一がバントする。 ファースト前に転がるのを見た机は頭からベースに飛び込んだ。泥水が跳ねあがり、一塁手はひっくり返る。 「セーフ!」 亮介はサードに進塁した。 そして、4番本田駿介。 進塁した亮介に手を上げながらピッチャーを睨む。「来い!!」 駿介はいきなり初球を叩いた。 その球は3段ロケットのようにグングンと伸び、センターオーバーの3塁打。 2点を返し、5番 安田 浩二。3球目を転がした。ピッチャー前に転がしたバントはスクイズとなり、亮介が返った。・・・・・・3点目。 6番 大川がレフト前にポテンヒット!を放つ。本田 駿介が返り、4点目。ランナー2塁。ノーアウト。 そして・・・・・。7番 谷口! 谷口は不自由な足を摩りながら一人ごちた。 「行くぞ!僕はやるぞ!頼むぜ!僕の足・・・・これで動かなくなってもいいから・・・・・」 7番 谷口はツーストライクまでボールを見送った。天地の教えどおり、インコースの高目を待っていた。 5球目 待っていたインコース高目を谷口は全身全霊を込めて振りぬいた。 その打球はメンバーの思いを乗せて天高く舞い上がり、レフトの頭を超えた。 安田が返り、5点目が入った。谷口は不自由な足を引きずりながらもセカンドに到達した。 その顔は晴れ晴れしく、自分を克服した笑顔で最高の輝きを放っていた。 天地はここで、動いた・・・・。 8番 山崎に変えて、代打!「大野 忠志!」 そう、あの難聴で喋れない忠志を打席に送った。 忠志には、そのコールが聞こえる事は無いが天地に肩を叩かれた事で自分の出番を知る。 観客席から怒涛の拍手と歓声が沸き起こる。 忠志を抱きながら、天地は手話と言葉でささやいた・・・・「思い切りいけ!宇宙の果てまでかっ飛ばしてやれ!」 忠志はゆっくりと打席に立つ。そして、大きくバットを回した。 会場は静まり返り、その鍛えられた身体を見つめていた。 小降りの雨に大きな雷が光り落ちるた時、忠志の顔に笑みが舞い降りた・・・・。 ピッチャーから球が投げられた。 左足を大きく踏み出した忠志は今までの差別や苦しみを忘れ、 天に届けとばかり、無心にバットを振りぬいた。 その打球は天空に飛び立ち、風を切り裂き、レフトの金網を・・・・越した・・・・・・・・!! 「ホームラン!」 大逆転である。7点目が入った。チームも観客もお祭り騒ぎである。 観客席の応援団はみんな抱き合い、泣いていた。相手側の応援団も叫んでいる。 その後、お互い三者凡退を繰り返し、7回表の最後の守りである。この回を守りきれば念願の初勝利である。 トップバッターの打球はセンターオーバーの3塁打。いきなりのピンチである。 次のバッターを亮介は三振で切り抜けた。 次のバッターが、レフトフライを打ち上げた。 レフトの机が追いかけ、飛び込んだ! 「アウト。」 ツーアウト。あと一人。 最後のバッターが左中間奥ににヒットを放った。 万事窮すか!・・・・。 センターの一也が追う。その時、なんと・・・・ライトの張本がセカンドベース上まで来ていた。 ボールは一也から張本に中継された。 張本は弓のようにそらせた身体から谷口が守るホームベースに投げた。 その球は矢のような、糸を引くような球であった。 サードランナーがホームベースに突っ込んだ。 谷口はキャッチャーマスクを放り投げ前傾姿勢で両足を踏ん張り声を張り上げた。 「ヨッシャー!来い!」 谷口とのホームベース上でのクロスプレイになった。 泥水が跳ねあがり悲鳴と歓声の中、一瞬ナニが起きているのかも分からない状態に。 そこにいる人々は固唾を飲み、静寂が訪れた。 そして・・・・・・・・・・・、谷口が握り占めたボールを天につき刺し、叫びながら立ち上がった! 「オオ〜〜〜〜〜ッ!」 その顔は、得意満面のすがすがしくも、自信に溢れた顔であった。 ・・・・・・・「アウト〜ッ。ゲームセット!」 主審の声が場内に響く・・・・。 その瞬間、少年達も観客席も大地を揺るがすような歓声を上げた。 少年たちの親は泣き叫んでいる。全ての観客は泣きながら拍手していた。 相手チームもその応援団も拍手し、会場は一つになっていた。 ボロボロになったヒーローズのメンバーは体を引きずりながら、ベンチ前で円陣を組んだ。 天地の言葉を待つように見つめ合う少年たち・・・・。 天地は泣きながら少年達に話しかけた。 「よう、やったな!凄いな!お前達は最高や!ありがとう。監督もみんなも、いっ〜ぱい!幸せや。 ここにいる全ての人々に感動と勇気を与えた!差別や苦しみを乗り越えたお前達の勇気はみんなの心に残る。お前達も明日への希望や夢が持てたはずや!ヨッシャ!観客席に向かっていくぞ〜。」 観客席に向かって、整列したヒーローズは声を限りに叫んだ! 「ありがとうございました!!」 「それでは皆さん!右手を天に突き出し、声を揃えて!」 「せ〜〜の〜〜〜!!」 「ヨッシャー!行くぞー!」 |
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天は味方した・・・・。 風が舞い小雨がグラウンドにポツリ、ポツリと潤いを与えている。 天地は雨を望んでいた。試合ができる程度の雨を・・・・。 作戦は成功すると確信した。 市長杯予選!、予選会場は、元大手企業の工場跡地である。 少年ソフトボールなら東西南北で4面もとれる広さがあった。 天地達ヒーローズはその南面のグラウンドである。 ヒーローズはレフト側のベンチに集結した。 観客席など無いグラウンドで、天地達の応援団は金網の外で黄色い声を放っていた。 その数は正確には掴めないが、ゆうに100人はいるだろう・・・・。 そこには、天地の公園の仲間・・・・。ヒーローズの親達・・・・。 そして天地が社長を務める会社の社員達が金網を破らんとばかり、ひしめいている。 天地はスターティングメンバー表を読み上げた。 1番 セカンド 山崎 達也 小学校では一番足の速い子供である。母子家庭で一也の兄である。 2番 ピッチャー 本田 亮介 とてもヤンチャで負けず嫌いな小さな男の子。 駿介の弟。 3番 レフト 机 真一 ケンカが強くて、少々わがままではあるが、父親が大好きな父子家庭の子共。 4番 ショート 本田 駿介 チームの中では一番野球がうまく、足も早い。 5番 サード 安田 浩二 双子の兄弟の兄貴。左利き。気が弱く、いつも苛められていた。 6番 ファースト 大川 祥司 バイオリンやピアノが得意で、著名な指揮者の息子。野球は初めての挑戦。 7番 キャッチャー 谷口 雄介 小児麻痺から足を悪くして、いつも足を引きずりながら歩く。 しかし、勉強は学年トップでチームのリーダーである。 8番 センター 山崎 一也 達也の弟でサッカー少年だった。兄貴の強い誘いでチ-ム に。 9番 ライト 張本 光洋 韓国籍で差別を受けながらも、明るく体を鍛え、肩の強さは凄い。 控えは、島本洋平・粕谷忠文・そして・・・あの・・・・大野・・・・忠志・・・・。 総勢 12名の戦士達。そしてコーチは英次と博紀。 一見、ひ弱く、くたびれた15名はプレーボールのコールをベンチ前で整列し、グラウンドを睨んでいた。 天地は最後にチーム全員に声を掛けた。 「行くぞ!弱気になるな。俺達は練習した。あの練習に比べたらこの試合なんか大した事はない。 そして、お前達を見守り、心から応援してくれた人達が此処にいる。これからがお前達のステージや。 思い切りやろう。そしてバカにしていた連中をも仲間にするチャンスや。 行くぞ!行くぞ!この大空に想いを届けるんや!勝つぞ!あきらめないぞ! 俺達は勝って勲章を掴むぞ!ええか〜!」 少年達が意を決したように頷いたその時・・・・。 「宮原ヒーローズ、淀川ボーイズ。集合〜!」・・・・・主審の声が響いた。 天地達ヒーローズはベンチ前で整列すると、腰をかがめ、両手を膝に置いた・・・・・。 そして、ホームベースに向かって吼えた! 「ヨッシャー!行くぞー!」 少年達はホームベースと言う夢に向かって全速力で駆けだした。 「プレイボール!!!!!」 |
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チームの母親達は天地のマンションで明日の準備に追われていた。 明日は、いよいよ大阪市長杯。予選第1戦である。 天地が決めたメンバーの背番号をユニフォームに縫いつけ、 帽子のマークも貼り付ける作業であった。 彼らは「血と汗と涙」を流し続けた。 その結晶の残るユニフォームを母親たちは愛おしく見つめ、思いを込めるように作業を続けていた。 公園では「車座」に座った少年達の真ん中に親方が陣取り、話している。 「ええか!明日はお前らの勝負や!待ちに待った日や!見返す時がきたんや。 お前らより下手なチームは無い。お前らより上手いチームばかりや。・・・・・・・でも、勝てる!勝つんや。 間違いない、きっと勝てる。何でか分かるか?」 「分かりません!。僕らヘタクソやのに勝てるんですか?」 「俺ら、そんなに下手なんか?それやったら、やらんかったらええやんか!」 少年達は不満や不安を隠しもせず、親方に向かっていた・・・・・・・・。 「おおー!そうか、悔しいか?分からんか。そしたら教えたる!もうすぐ天地が・・・・いや、監督が来る。 その時にゼーンブ教えたる。」 天地は母親達と用意したユニフォームと帽子を抱えて公園に着いた。母親達も一緒である。 夜も10時を回り、もう少年達を帰す時間である。公園には天地とその仲間の浮浪者や応援する人々が一人、又、一人と集まって来る。その数や、50人は超していた。 天地は少年達の真ん中に座ると訥々と話し出した。 「みんな!今日までありがとう!よう、頑張ったな。明日はいよいよ、試合や!みんなが待っていた試合や! 辛い事や苦しい事、悲しい事、全て辛抱しながら頑張ってきた。今まで、苛められたり、バカにされたり、 嫌な思いもあった。監督は何も出来なかった。でも、明日の為に今日まで苦しい練習を繰り返してきた。 お前達の想いは、お前達の目的は必ず、絶対に神様に届く。必ず勝つ!恐れるものは何もない。 お前達には心から応援してくれる人達がいる。こんな素晴らしいチームは他に無い。 こんなに弱くて、バカにされているチームでも心を一つにして、ボールに食らいつくんや! そして奇跡を呼ぶんや。それは、ゼーッタイあきらめない。最後までやれることをやりきる事や。 メンバーが打てなくても、メンバーがエラーしても仲間を信じる事や。信じ切ってあきらめるな。 後は監督に任せてくれ!お前らは最高や!一番や!監督の宝物や!ええか〜!」 天地は心の底から、叫んだ! 少年達が一人一人と立ち上がりだした。それと時をあわせる様に天地の仲間達が話し始める。 「明日はお前らの晴れ舞台や!勝っても負けてもお前らが主役や!堂々とやったれ!」 「ありがとう!わしら、ええ夢見さしてもうた。明日は勝ってみんなで喜ぶだけや。イッタレ!根性見せたれや!」 「俺らお前達のお蔭で、明日が見えてきた。天地と泣いた分だけ価値が生まれた。わしらも頑張る。 監督を信じて明日は暴れろよー!」 仲間達の叫びとも応援とも言えぬ、話が終わろうとした時、本田の母親がユニフォームと帽子を胸に抱えながら真ん中に躍り出た。 「みんな!ええか?!今から配るからね。今晩はこのユニフォームを抱いて明日の夢を見るんやで。」 ユニフォームと帽子を受け取った少年達の目に光りが宿り、公園は真昼のように輝き始めた。 天地は鞄からあるものを取り出し、少年達に話し始めた。 その、取り出したものとは、ブルーのお揃いのリストバンドであった。 一人一人と天地の前に来る。 天地は子供達の頭を撫で抱き寄せる。そして、その腕にりストバンドを付けてやりながら言い聞かせた。 「みんな、明日これを腕につけて、心を一つにして頑張ろう!」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ そして・・・・・・試合当日!・・・・少年達と天地は・・・・グラウンドに降り立った。 市長杯予選の会場にはヒーローズ応援団100名以上が集結。 さあ、いよいよ、ヒーローズの試合だ!最高の瞬間だ。光輝くステージに駆け上がるんだ! 天地とヒーローズはベンチに入ると直ぐに円陣を組んだ!。 少年達の目は光り輝き、それは、今から狩をする猛獣のように静かに見つめあった。 天地は、この時点で泣いていた。この時点で感動していた。 観客席には愛する妻、愛おしい娘、そして」天地の仲間達。少年達の応援団。 「行くぞ!やるぞ!勝つぞ!ええな〜!」 「おう〜〜!行くぞ!」 「ヒーローズ!ゴー!」 「ヨッシャー!行くぞー!」 その叫びは、大地を揺るがし、人々の心に突き刺さった。 |
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澄み切った空気を讃えた夜空にはまるで宝石箱をひっくりかえしたような星たちが煌めいていた。 天地のマンション屋上で黙々と素振りをする少年達がいる。 練習が終り、帰宅した少年達が食事や学習塾を終えた後、又、天地のマンション屋上に集まって来るようになっていた。 夜も9時前後の事である。 試合を目前に控えた少年達の集中力と想い、そして体力はピークに達していた。 その中に、忠志がいる。腕は盛り上がり、太ももは競輪選手の足のようで、その素振りは風を切り、 唸りを上げるほどの迫力であった。 あの日・・・・・・・・・。 忠志がマンションにビデオを見に来た時、天地は忠志のその体格と鍛えられた筋肉を見逃さなかった。 谷口や本田そして仲間達の熱い呼びかけに忠志もメンバーに加わっていたのである。 難聴で喋る事も出来ない忠志を聾唖学校に入れず、普通校に入れ、忠志を鍛え、一緒に苦労しながら育ててきた母親が言った。 「ハンディは天が与えてくれた宝物です!。私達は生きる事、毎日が光り輝いている事を実感しています。 毎日を皆さんと同じようには生きれないですが、同じ事を出来るように頑張っている事に、喜びや感動を 肌で感じています。忠志は毎日のようにバットを振り、ボールを投げ、走っています。 たとえ野球が出来なくても忠志にはそれが限りない野球でした。 チームに入れなくても同じようにしていたいのです!。 そして、まっつぐに夢をを見つめ、命に感謝する事が生きる力になっているのです。」 天地は母親の話を聞きながら泣いていた。 大きな感動と胸が張り裂けそうな興奮を覚えていた。 天地は決断した。忠志をチームの選手にすることを。 そして、コミュニケーションを取れるように、少しでも想いを伝えられるように手話を習っていた。 本格的に覚える必要はなく、忠志は口の動きで言葉を理解する。 チームは忠志を迎えた事で完璧に一つになった。 マンション屋上。 夜も9時半になり、天地は少年達に声を掛ける。 「ヨッシャー!終了!早く片付けて、帰る用意して。」 「はい!。分かりました!みんな〜、帰るぞ〜!」 谷口と本田が声を揃えた。 天地は子供会の母親達と少年達の帰るのを見届け、天空に輝く宝石たちを見上げた!。 「いよいよ明後日、少年達の晴れ舞台や。そして仲間と家族の記念する日がやってくる。人生を変える日や。」 天地は今日までの事を思い出しながらも、明後日の試合に・・・・作戦に想いを馳せていた。 と、その時・・・・・・・・!。 「パパ〜お疲れさん!。今日はパパの大好きな星、いっぱいやね〜!」 妻がタオルを持って歩みよる。 天地は微笑み、タオルを受け取ろうと歩み寄った時、妻の背後からマユの顔がのぞいた! 「パパ〜!オチュカレさんデチュ!。はい!。ご褒美でちゅ!。」 小さな手に缶ビールが座っていた。 天地は腰を割り、娘を抱き上げた。 天地はふと、これ以上の幸せがあるのだろうかと思う。 そして、妻を抱き寄せ、3人で光輝く夜空を見上げた。 「ママ!マユちゃん!パパは頑張るぞ。絶対に勝つぞ!そして、人生の再出発を皆で祝おう。」 と、その時、マユが叫んだ!!!! 「パパ〜! あれ〜!! 流れ星〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 煌めく夜空から目を落とすと、娘の瞳は流れ星よりも輝いて見えた・・・・・・。 「ヨッシャー!行くぞー!」 |





