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みなさん、おはようございまちくちくあつい。
気合を一発。
「“現場です。タイの首都バンコクでは、首相府を占拠した市民に対する当局の実力行使が始まる模様です。既にタイ国営テレビ局は一時市民により占拠されており、緊迫した状況は予断を許さなくなっています。あ、只今入りました情報によると、司法当局が市民の行動を非合法とする仮処分決定をしました。市民と公安当局との睨みあいは、暫く続くものと見られます。以上、現場から中継でした”」。「はい、では東京からお伝えします。遠藤荒三郎さん、いまタイでは何が起こっているのでしょうか」。「決して目出タイわけではないですな」。「・・・。あの、東南アジアの状況にお詳しいNGOアジア共助会の沢村さん、こうした不安定要素は以前からあったのでしょうか」。「現政権に対する市民の不満は2006年のクーデターによる軍政が一応今年2008年の民政復帰により沈静化しましたが、反タクシン派とされる一部勢力が市民と言う名で資金提供などの煽動活動を行っているという情報を我々は把握しています」。「東洋思想史がご専門の西岡さん、タイは伝統的に王室の権威が高いと聞いておりますが、今回はプミポン国王の調停乗り出しという局面を迎えることになるのでしょうか」。「司直の任命権者は国王です。その司直が市民を事実上断罪するような判断を下している以上、いま国王が発言するのは如何かと思いますね」。「あの、遠藤さん、タイ市民の感情が今後暴動に発展する可能性についてはどうお考えですか」。「それはタイへんだ」。「では一旦コマーシャルをお送りします」。
人生には、あと一押し、というきっかけが偶然に訪れることがあります。例えば職を変えたいけれど、今の会社に勤めていればそれなりの生活が出来る、でも、昔の夢が忘れられない、という時、なかなか踏ん切りがつきません。旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)のサラリーマン時代、小椋 佳氏はシンガーソングライターの路を歩み始め、暫く二足の草鞋を履いた後支店長の職を棄て自ら退職、ミュージシャンとして専業となりました。故阿久 悠氏は某広告代理店のサラリーマン時代から会社に内緒で放送作家として歩み出し、その後作詞家、著述家として活躍、こちらが本業となりました。また、自暴自棄に陥り、人の道を踏み外しそうになった時、両親でもなく学校教諭でもなく、何気なく近寄ってきた元暴力団組長との出会いによって職人として自立したという人がいます。今のままでいいのか、と常に葛藤に苛まれているとき、現実問題としてこれ以上肉体的・精神的なプレッシャーに耐えられないというとき、何気ない他者からの一言などのきっかけがあれば、人は人生を変えることが出来る場合があります。
状況が停滞膠着し、早急な改善が求められる場合、外部から思い切って一撃を加えるという方法があります。午後の打ち合わせで不意に睡魔に襲われた時、人はいろいろな対応をします。手の甲をつねるなどの痛みの刺激を与えることもありますが、それでも自助努力でダメなら、課長にこの野郎とアタマを叩かれることも一つの手です。ショック療法と言いますと、対象とする相手を敢えて困難な状況に追い込むことにより現状からの立ち直りを促す方法と認識されます。医療現場でのショック療法では、電撃けいれん療法(もしくは電気けいれん療法)があり、うつ病、躁病に効果があるとされています。今回電気ショック療法について調べてみたのですが、限局的かつ特定病症に対する有効性は現在でも認められており、適切な手続きと万全なバックアップ体制の管理下でこうした施術が行われることに異を差し挟む余地はあまりないようです。
最初の一撃が必要なことは他にもあります。“火種”というと、顕在化していない厄介事の意として用いられます。本来、火種は最初に起こした火の元で、通常これを他の可燃物に移して火力を得ます。武器のなかでも小火器に分類される小銃のご先祖は火縄銃でしたが、この場合は火縄という火種を使います。火打石などで火縄に着火すれば火種を保持出来ます。さすがに火縄銃は一部の例外を除き現在では使用されていません。但し、この頃の名残が“火蓋を切る”という言葉に残っています。火蓋とは、火縄銃の銃身に詰めた推進薬(火薬)を保護するための蓋で、射撃直前にこの蓋を切り、火縄により着火します。つまり火蓋を切るということは、これから攻撃を開始するという意味でした。同様の言葉に、“口火を切る”があります。この用法では、議論の最初の方向性をある程度リードする発言になるものを指すことがあり、余程議論が多岐に亘り過ぎて焦点が曖昧になるなどの混乱がない限り、最初に口火を切った人の意見に対する意見が交わされます。
物質の示す様相を変えるためには、様々なきっかけが必要です。通常、物質は3つの相を呈します(液晶のような相を加えて4相とする場合がある)。この相変化は、多くの場合熱エネルギーの変化によりもたらされます。絶対零度付近における物質の分子の挙動はほぼ停止していますが、熱エネルギーが加わるに従い励震が起こり、分子構造は変わりませんが分子間力が弱くなる傾向があります。難しい表現はここまでにして、要するに温まると固体の氷は液体の水になり、そのうち蒸発して気体の水蒸気になるというわけです。この場合のきっかけは熱です。お水であれば、別にどうということはありませんが、物質が活性を有するラジカルな状態になると、他の環境に影響を及ぼす場合があります。これは分子として不安定な状態(高エネルギー状態)に移行している場合に生じやすく、例えば酸素ラジカルはヒトの体内で発がん性を有する場合があり、また、安定しているはずのフロンは地球を紫外線の照射から守ってくれるオゾン層のオゾンを自らが分解する形で破壊してしまいます。オゾンは、酸化活性の高い分子です。勿論、人体に有害です。
オゾン層が破壊されるメカニズムは、荷電子の不安定が連鎖的に広がることによるものです。電荷的には安定していても、その他の要因で不安定な分子が、より安定した状態(低エネルギー状態)に遷移しようとすることは他にもあります。考古学の発掘などで、よく耳にする言葉に“放射性同位体”というものがあります。これは、電気的なバランスは取れているのですが、原子核を構成する陽子のほかに中性子が一個か二個余分にくっ付いているために、原子核自体が不安定になっているものを指します。考古学では動植物に吸収された炭素のラジオアイソトープ(放射性同位体)を測定して、何時頃生成したものかを類推します。ラジオアイソトープは不安定な状態がイヤなので、原子核が自己崩壊して余分なものを外に出そうとします。で、これがどれだけ余分なものを出したのかを検出できれば、物質が生成してから何年くらい経っているのかを知ることが出来るわけです。ラジオアイソトープの崩壊の度合いを図る尺度として、半減期が用いられます。半減期とは、原子核が余分なものを総体として半分放出するのに要する時間で、これは概ね物理化学的に見当がついています。考古学では炭素14のラジオアイソトープが使われます(炭素の原子量は12.011)。炭素14の半減期は5,730年。通常半減期はそれ以後1/2ずつ乗じて得られますので、1億年前のものだな、と考えられる場合は、1/2の17,452.006乗分にラジオアイソトープが減っていることになります。因みに、ユダヤ歴で天地創造の日とされる紀元前3760年は、炭素14の半減期の38年前になります。
これ以外に、連鎖的に状態変化を起こす例があります。ラジオアイソトープの自己崩壊は自然に起きますが、これを人工的に持続して起こし、その際に放出されるエネルギーを回収して熱エネルギーに変換する方法が実用化されています。ご存知のとおり、原子炉です。一般に、ラジオアイソトープが自己崩壊を起こすと、α波、β波、γ波を放出します。これらの実体は殆どが原子核からはじき出された陽子や中性子、電子で、電荷を持たない中性子線だけが直進性を有します。中性子が発生する量と消失する量が管理された閉鎖系で同等連続的に起こる状態を臨界といいます。臨界とは、中性子の絶対量が変わらないバランスの取れた状態を指します。原子炉で使用される放射性元素のなかでも、特に分裂活性の高い物質では、高密度のまま一緒にしておくと、勝手に核分裂が連鎖的に進んでしまい極めて危険ですので、適切に管理されることが重要です。この管理を野放しにするのが、原子爆弾です。中性子が臨界を越えて超臨界になると、人間にはコントロールが出来ません。そのうえ、先ほどの半減期について、原子爆弾に使用されるウラン235は7億年とされています。広島・長崎型原子爆弾はこのウラン235を使っており、米軍爆撃機による原子爆弾投下から現在まで、僅か63年しか経過していません。
原発の場合は核分裂反応を制御棒で管理します。特に原爆のようなプライマー(信管)による一撃を与えることはありません。世の中には、自然にしておいても良好な連鎖反応の循環が生まれない場合が多くあります。これを良好な循環へと誘導するために、俗に言うカンフル剤が使われることがあります。現在医療現場でカンフル(樟脳)が使用されることはあまりないようですが、日常用語としては今でも稀に使用されることがあります。医薬品としてのカンフルには、心悸亢進作用があるとされ、神経にも作用します。ここ一発というときに用いれば、元気ハツラツというわけです。但しカンフル剤には根治療の効果はなく、取り敢えずいま踏ん張ればいいという場合に処方されるところから、持続性の無いその場しのぎの代名詞としてしばしば用いられます。
現在のところ、わたくしどもが知り得た範囲内では“カンフル剤”という言葉が昨今のマスコミで使われた形跡はありません。福田内閣の景気浮揚対策、カンフル剤にも価しないということでしょうか。
「遠藤先生、勘弁して下さいよ。確かに情報は錯綜していますが、視聴者は評論家のあなたのご意見を聞きたいと思っています。現時点での率直なコメントをお願い出来ませんか」。「ああ、判りました」。「本番五秒前。四、三・・・」。「再び東京です。いま新しい情報が入りました。バンコク大学の実施した調査によりますと、国民の7割近くが今回の首相府占拠に対し支持しない意向を表明しているようです。遠藤さん、こうした市民の捉え方をどう考えたらいいのでしょうか」。「首相府占拠だけに、殊勝な心掛けが望まれますな」。「ここで理恵ちゃん、今日の運勢コーナーに行って下さい。遠藤さん、あんたもう帰っていいよ」。
追記)8月31日6時48分配信の産経新聞報道によると、タイ現内閣首班のサマック首相は閣内、議会及び後ろ盾の軍部からの支持を失いつつあり、謁見したプミポン国王からも何らかの示唆があった模様です。
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昨日の関東地方は、朝から陽の光を見ることが出来ました。気象情報では、出掛ける際は傘を持って、でしたが、日中は日傘が欲しいほど。晴れると何をするにもはかどります。関東ではお台場に出掛けて甲羅干しするも好し、溜まった洗濯物や布団干しをするも好し。みなさん、お休みは満喫できたでしょうか、それとも床上浸水の片付けでしたでしょうか。さて月曜日。これをお読みになっている時間帯は恐らく多くの地域で曇り空かと思います。俗に“秋に三日の晴れ無し”と言います。きょうから9月、新たな気持ちで雲なんか吹き飛ばしたいですね。では今日も元気で、いってらっしゃい。
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ここで川柳を一句。どれを出す クリーニングに 悩むシャツ。秋物が欲しい日も、たまにあります。
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