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今回は、JABOTABEK 圏の話題を離れ、インドネシアにおける高速鉄道計画について記したいと思います。インドネシアにはかねてから、ジャワ島のジャカルタ - スラバヤ間に高速列車を運行させる「Supercepat(超特急)」計画があり、「Argo Cahaya号」という将来の列車愛称名まで語られています。ところが最近、運輸省幹部は、インドネシア版新幹線計画について、「事業優先度が低く、未だ十分な予算がつかないため、調査を始められる状況にない」と地元メディアに語ったもようです。
日本政府も、インドネシア版新幹線計画に注目し、その実現性を検討してきました。先般報道されたその建設調査報告によれば、首都ジャカルタと第2の都市スラバヤ間685kmを結ぶ新幹線は、総工費2兆円強、工期9年が見込まれています。営業最高速度を300km/hとすると、2大都市間が3時間以内で結ばれることとなります(現在の最速列車はDL牽引の客車列車 Argo Bromo Anggrek号で、所要時間約10時間30分)。私は一鉄道ファンとして、この新幹線計画に期待しています(*)。それは、以下の通り、計画区間が、日本の太平洋ベルト地帯とよく似た状況にあるからです。<BR> <BR> 第一に、計画区間における人口集中の類似性です。ジャカルタ首都圏が2,300万人、スラバヤ都市圏はジャカルタと比較すると少々小ぶりで278万人ですが、途中のチレボン都市圏が160万人、スマラン139万人、テガル都市圏74万人、プカロンガン26万人、チカンペック15万人、チカラン10万人など、大都市がベルト状に目白押しです。そしてジャワ島全体では、本州の約半分の面積に、日本の人口を上回る1.2億人が暮らし、世界一の人口を有する島となっています。つまり、日本型新幹線のような、フリクエント、大量かつ高速の長距離輸送手段を導入するには最適の地域と考えられます。 第二は、地質状況の類似性です。ジャワ島は日本と同じく島弧 - 海溝系に位置し、軟弱な第四系や火山砕屑物が広く分布し、地盤の弱い地域が多く見られる点で日本と酷似しています。このような地質状況では、フランスTGVのような動力集中型で軸重の大きい機関車牽引方式は、軌道への負担が大きく不適格です。これに対し、日本型新幹線のような動力分散型で軸重の小さい電車方式は、軌道への負荷が小さく理想的です。建設コストを低く抑えられるからです。なお、一般論としては、島弧 - 海溝系では、地震の危険性を考慮しなければなりません。しかし幸いなことに、背弧側に位置する北ルートを選択すれば、そこは、沈み込む海洋プレートの様式が日本の地質状況とやや異なるため、プレート境界型地震および内陸直下型地震の危険性ともに小さくなると考えられます。言い換えれば、地震のリスクは残るものの、ルートの選択次第では、日本ほどの危険性はないと思われます。 ところで、インドネシアの経済レベルは、新幹線導入にふさわしいものとなっているのでしょうか?確かに、近年高速鉄道を発達させた台湾、韓国の経済レベルは、現行のインドネシアのそれよりもかなり上にあると言わざるを得ません。しかし、インドネシアも旺盛な国内消費に支えられて、世界的な金融危機と言われる今日でも比較的堅調な経済状況にあり、成長軌道に乗りつつあります。日本政府の試算では、2029年想定開通時のジャカルタ - スラバヤ間の片道運賃を100万ルピア(約1万円=現行航空運賃は約8,000円)と仮定すると、営業開始後40年間のIRRが10.4%となり、まずまずの経済性を示しています。投資環境も向上しつつあるように思われます。 しかし、何より大切なことは、環境負荷の少ない鉄道利用を今のうちに定着させ、必要以上のモータリゼーションを食い止めることではないでしょうか?ジャワ島1.2億人の住民が、貧弱な公共交通機関の利用を嫌って、必要以上に自家用車を保有する誘惑に駆られると、とてつもない資源の浪費と環境破壊が生じるのではないかと心配されます。 インドネシアは、日本型新幹線を導入すべき、世界の好適地のひとつと考えられます。 |
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