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先日、地元英字紙に、ジャカルタ首都圏の鉄道に関する特集記事が掲載されました。これを読むと、ジャカルタおよびその周辺の鉄道が、地元メディアから厳しい評価を受けていることが分かります。そこで以下に、この特集記事について、要旨をご紹介したいと思います。
(1)はじめに オイルサーディン缶詰のようにぎゅうぎゅうに詰め込まれ、毎日何千という人々が、生活のために都心と郊外の間を列車に揺られて通勤しています。貧弱なシステムにも関わらず、多くの人々が鉄道を利用するのは、その「値ごろ感」からです。もう何年もの間、乗客は大量輸送機関の惨めな状況を訴えてきましたが、インドネシア鉄道は改善のための行動を、ほとんど取ってきませんでした。代わりに鉄道会社は、無賃乗車する乗客が多くの損失を招いていると非難してきたのです。 (2)悩み尽きない、ジャカルタの鉄道 ジャカルタコタからバンテン州ランカスビトゥンへ向かう客車列車、始発のコタ駅で既に満員であるにもかかわらず、途中停車駅である、タナアバン、パルメラ、クバヨランでさらに乗客を拾ってゆきます。全長80kmの同区間は、ジャカルタ近郊でも最も混雑が激しく、首都圏の鉄道の実態が良く表れています。運賃はエコノミークラス1,500ルピア、これは同区間のバス運賃、15,000から20,000ルピアと比べて極めて安く、値ごろ感は十分です。農産物輸送を行う農民を含め、主に低所得者に人気があります。しかし、この低料金にもかかわらず、運賃を支払わない者が後を絶ちません。インドネシア鉄道にもこれを取り締まる気配が見られません。その代わり、乗客の安全など全く顧みられていません。ドアは閉じず、窓ガラスは割れたままです。おかげで車内換気は問題ありませんが...。駅施設、環境も問題です。近代的設備が整っているのはごくわずか、大部分の駅は問題を抱えています。例えばパルンパンジャンは伝統的な市場の裏のゴミ捨て場脇に位置し、夜間には照明もなく、プラットフォームは犯罪者の巣窟となります。夜11時以降のジャティネガラは、売春の客引きの場です。 政府の鉄道再生に対する姿勢は消極的です。2008年になって、ようやく総額19兆ルピアの再生計画が発表されました。しかし、首都圏の鉄道については、そのうちの20%の予算にとどまっています。民間の出資が期待されますが、鉄道事業は制約が多く、誰も実行しようとはしません。首都圏の鉄道利用者は、今年に入って1日40万人、昨年の32.5万人より23%も増加し、2014ないし2015年には100万人を突破するとみられています。運転本数も昨年の1日480本から、今年は569本に増えました。しかし、100万人の乗客を捌くには、10分ヘッドの運転が必要と見られています。鉄道会社は今年、輸送力増強のために日本から中古電車40両を輸入しますが、専門家は、車両だけでなく、信号システムを変えない限り、上記輸送力増強は達成できないと指摘しています。線増、老朽化したディーゼル機関車の置き換えも課題となっています。 (3)乗客の素顔、機関士の憂鬱 ほとんどの乗客は、乗車前に乗車券を買ったりはしないようです。出札口で並ぶのは億劫だし、車掌が検札を行う時だけ支払えばいいと、彼らは考えています。支払いも正規運賃ではなく、より少ない額を払い、それが車掌への袖の下となります。これが、職員の低賃金に対する埋め合わせとなっているのです。その結果、安全は二の次となります、車内にはスリや痴漢などの犯罪が溢れています。沿線からの投石による乗客の怪我も後を絶ちません。2006年には屋根に乗車した乗客の重みで客車の屋根が陥没し、車内の乗客が怪我をしたことがあります。屋根乗車して架線に触れて感電死する乗客も、年間20名ほどいます。 ブカシからタナアバンへ向かう夕方の客車列車、ディーゼル機関車の機関士業務は困難を極めます。客車の室内照明は、スイッチは入れますが実際に点灯するか否かは運次第です。列車の直前横断はひっきりなし、沿線からの投石も多く、安全にはことのほか気を遣います。かつて投石により、運転士が失明したこともあるそうです。51歳、経験年数30年の機関士の月給は手取り220万ルピア、家族を養うには一応十分だと言います。それでも1日40万人の乗客の生命を預かる彼らの苦闘は続きます。 いかがでしたか。ジャカルタ首都圏の鉄道の実態が赤裸々にレポートされていましたね。個人的には、もう少し明るい面が報道されても良かったのではないかと思います。けれども、民主化後、報道の自由が一応保障されたこの国では、このような批判も自由に行えるようになったと考えれば、ある意味健全な社会の姿を映しているのかもしれません。一鉄道ファンとしては、報道をきっかけとして、鉄道がより便利で安全、快適な乗り物となるよう、ただただ願うばかりです。 |
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