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先日、地元英字紙に、政治・法務・治安担当調整相事務所に勤務するN氏(記事では実名)と名乗る人物による、首記に関わる記事が寄稿されました。内容は「個人的見解」とされていますが、事実上、政府上層部が日本製中古電車の導入をどのように考えているか窺い知ることのできる、貴重な資料と考えられます。政治・法務・治安担当調整相は、運輸省など一般省庁の大臣の上位に君臨しており、現在その任にあるジョコ氏は、ユドヨノ大統領と国軍士官学校時代の同期という、側近の一人です。中古電車の導入が政府中枢まで判断が委ねられる課題であったことが想像され、今日まで旧東京メトロ7000系の営業運転が開始されないことと、無関係でないかもしれません。それでは、前置きが長くなりましたが、以下、記事要約をご覧下さい。
********************************************** 「政府の中古ディレンマ」 インドネシア政府は本年、国営のインドネシア鉄道を通して、4月の10両に始まる合計90両の日本製中古電車導入に着手した。これらは80年代に製造された冷房車両で、中央(ボゴール)線、スルポン線に投入され、混雑緩和が期待される。 結果として中古電車を購入することになったが、この導入は政府内部に大きな議論を巻き起こした。「何故、中古なのか」、「何故、最新性能を有する新車でないのか」、「何故、先進国で時代遅れとなったものに、国家予算を使うのか」である。 反対意見は、「スクラップ」の購入は必然的にメインテナンスコストを増大させるというもの、また、真っ黒な排気ガスを吐き出す中古バス、過積載で沈没する中古フェリーのような厄介な問題を引き起こすのではないかとの懸念もある。一方、賛成意見は、低コストの割には質が高いというものである。 答えは、運輸省の限られた予算にあった。2010年の運輸省予算は16兆ルピア、これは国家予算の4.8%にすぎず、かつ70%は人件費で消えてしまう。そのため、施設などへの予算は限られる。最終的に政府が中古電車導入を決定したのは、新車導入よりはるかにコストが低いからである。中古電車の価格は輸送費を含め1両当たり10億ルピアであるのに対し、国営鉄道車両会社で製造される車両のコストは15ないし20億ルピアに達する。限られた予算の中では、中古電車購入を選択せざるを得ない。 しかし、「これでは国内産業が育たない」、「国内で新車を製造すれば、少なくとも国外へ資金流出しない」という反対意見も根強い。最終的に政府が用意した回答のひとつに、「新たな商品開発の時間的余裕を確保すること」が挙げられる。300両の電車が必要であるとして、国内で短期間にどうやって製造するのか。 ところで、どのような理由であれ、購入した製品は安全性とコンプライアンスの面で、Euro II emission standard などの認証を受ける必要がある。また、国内産業を保護する必要もある。例えば、フェリーのように、エンジンは輸入しても船体は国産化するなどの措置が必要である。さらに、中古製品購入には、スペアパーツやメインテナンスのこともあらかじめ考慮すべきである。事故を起こさないため、中古品の寿命について知っておくことも必要であろう。 予算の制約は時に中古品の購入を余儀なくさせるが、市民の安全確保が購入前に最も考慮されるべきことである。 ********************************************* いかがでしたか。多方面から考察された、冷静かつ現実的な意見であると思います。乗客の安全確保を第一に考えていることも、正しい判断と言えましょう。付け加えるとすれば、2000年以来導入されている日本製中古車両の良好な運行実績が挙げられます。メインテナンスの困難さから廃車となった車両は1両もありません。逆に、最新式の車両はメカニズムが複雑すぎ、却ってメインテナンスに支障をきたす可能性があります。かつてVVVFインバータ制御方式による当時最先端の新車導入を行い、後に整備に難儀した歴史が想起されます。現場で何が起きているかをこの目で見ることも、重要だと思います。 |
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