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先日、JABOTABEK RAILNEWSをご覧いただいた、ある日本人の方(仮にO氏とします)から、思いがけないメイルを頂戴しました。O氏は私の「歩き鉄」を記録したフォトギャラリーNo.20をご覧になり、その中の護輪軌条の写真に注目、インドネシアには同様の「古レール」が、他にもまだ色々とありそうなので、折りに触れて紹介して欲しいとのことでした。
私は、「古レール」というものの存在について、薄々は知ってはいました。例えば、電車通学していた少年時代に、京王井の頭線の下北沢駅(あるいは明大前駅だったかもしれない)のホーム支柱に「KRUPP 190X(Xの部分は失念)」と刻まれたものがあり、これがドイツ、クルップ社で190X年に製造されたレールであると何かで読んだことがあったからです。しかし、その支柱は、いつの間にか撤去されたため、すっかり記憶の彼方に消え去り、その後、私が「古レール」を意識することはありませんでした。ところがO氏によれば、日本国内には氏を始め「古レール」に熱心に取り組む愛好家の方々がおられるとのことです。その日本の古レール研究は、昭和54年(1979年)頃から本格的に開始され、既に相当のレベルまで達しているとのことでした。ただ最近ではやや行き詰まりを示しているとのこと、これを打破するには海外の古レールとの比較研究が必要とのご意見です。
ところで、フォトギャラリーで紹介した写真には、「KRUPP 1880」と刻まれており、これを、「ドイツ、クルップ社1880年製ではないか」と記したのですが、研究歴10年のO氏によれば、概ね間違いないようです。さらに、私が撮影した写真が他に何枚かあったため鑑定をお願いしたところ、驚くべきことが分かってきました。例えば、冒頭の写真は「KRUPP 79.10.」と刻まれているように見えますが、これはクルップ社で、1879年10月に製造されたもののようです(西暦の上2桁省略は頻繁に見られるとのこと、10が10月を示すかは議論の余地あり)。そして何と、日本国内で見られるクルップ社製レールの最古の物は1880年製であり、これより古い物は見つかっていないとのことでした。つまり、冒頭写真のレールは非常に貴重なものである可能性があります。
一方、本欄一番下に掲げた「鉄製枕木」写真中の「H-WENDEL 1926」の刻印については、フランスのヴァンデル(ウェンデル)社のもので、日本でも1920年代になってから入ってきたメーカーだそうです。鑑定では他に、ベルギー製の鉄製枕木も確認されました。
思えばインドネシアの鉄道は日本に遡ること5年早い1867年に開業、その後近代化が遅れたことから、相当量の古レールが残されている可能性があります。O氏によれば、インドネシアの鉄道はオランダ主導で建設されたものの、オランダ製のレールというのは聞いたことがなく、イギリスやドイツあたりのレールを導入していたのではないかとのことです。そして、記念すべき初代レールは、開業2年前くらいに製造されたはずと推定、これが正しいとすれば、インドネシアでは1865年製の古レールが発見される可能性があります。
私はO氏の古レールに関する知識に感心するとともに、日本の古レール研究の行き詰まり打開のために、海外の古レールに目をつけるという「発想の転換」に心を打たれました。同時に、インドネシアの鉄道を楽しむための、新たな「ツール」を身につけた嬉しさで、とても満たされた気分になりました。「古レールのどこが楽しいの?」と思う方もおられるかもしれません。しかし、レア物から年代物まで、何かを収集して分類し、その歴史を知ることは、とても楽しいことなんだろうなあと、私は思いました。
鉄道趣味とは、本当に奥の深いものがありますね。
冒頭写真は、ドイツ、クルップ社で1879年に製造されたと推定される「古レール」(現在は護輪軌条)、下の写真は、フランス、ヴァンデル社1926年製造の現役「鉄製枕木」、いずれもボゴール-スカブミ線で撮影
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