JABOTABEK RAILNEWS コラム

ジャカルタの電車を中心に、インドネシアの鉄道をご紹介しています。

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イメージ 2 インドネシア鉄道が保有する特別客車「ヌサンタラ(Nusantara)」については、かつてフォトギャラリー18に乗車記を掲載しました。その後、本年4月に検査入場を実施、外装が一新されているのが確認されましたので、以下にお伝えします。
 
 ヌサンタラは、インドネシア鉄道が保有するKereta Wisata(観光車両)と呼ばれるグループに属する、特別客車中の1両です。別名Kereta Presiden(大統領車両)、その名の通り、長年にわたり大統領専用車両として使用されてきました。そのため、一般に貸し出されるようになった今でも、観光車両よりVIP車両と認識されることが多いようです。
 
イメージ 3 1967年製の車体に、K-5(日本ではNT11)と呼ばれるコイルばね台車を履き、車両番号は I-67501です。I とは、特別(Istimewa)を意味します。インドネシアの数ある客車の中で、I で始まる車両は、このヌサンタラ 1 両のみです。団体専用として希望者に貸し出され、300KVA以上の電源車を併結した長距離列車に、不定期に連結されています。内装は、インドネシア諸島「ヌサンタラ」をイメージ、定員は19名で、2名分の寝室も備えられています。通常は編成の最後尾に連結され、バルコニーから外の景色が眺められる他、バー、トイレ、荷物室、オーディオ・ビデオセット、冷房などが装備されています。
 
イメージ 4 このたびの検査入場では、外装が通常のエクゼクティブクラス客車のカラーリング(灰白色を基調とし、白・黄・灰色の帯などが加わる)から、白を基調とし、インドネシアの伝統的幾何学デザインによる、赤帯が加わるものに変更されました。また、車体側面上部には、インドネシアを代表する鳥の一つ、極楽鳥が描かれました。内装については確認していませんが、出場後に乗車されたジャカルタ在住日本人の U氏によると、一部リニューアルされたものの、基本的にはこれまでの内装がそのまま活かされているようです。
 
イメージ 5 なお、インドネシア鉄道は、このヌサンタラを含め合計3両の特別客車(他に、バリ、トラジャ)を保有していますが、その貸し出しに力を入れており、これを行う子会社、PT KAI Perwisata を設立させたとのことです。
 
 
冒頭写真はヌサンタラ側面、その他の写真は右上から右下に向かって、バルコニー側、ヌサンタラのロゴ、極楽鳥の描画、車両番号表示です。
 
 
 
 
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 JABOTABEK RAILNEWSでは、かつて、「何事につけのんびりしたお国柄のインドネシアにあって、ガンビール駅の『列車捌き』だけは秒刻みの職人芸である」とお伝えしました(コラム2008. 5. 18)。その後、この鉄道を注意深く観察していると、列車捌きには「対向(反対側)本線」も躊躇なく使用するという、驚きの事実が判明しましたので、以下にご紹介いたします。なお、インドネシアでは列車は右側通行であることに注意して、以下の文章をお読みください。
 
(1) パルメラ駅の例
 スルポン線では、電車とディーゼル機関車牽引の中・長距離客車列車が混合されて運行されています。そのスルポン線のパルメラ駅は、私の自宅の最寄り駅です。一見何の変哲もない対面式2面2線のローカル駅ですが、実は渡り線があり、この渡り線を使って、対向(反対側)本線も使った列車捌きが行われているのです。
 
 冒頭写真をご覧ください。この写真では、左側下り線に、ランカスビトゥン行き下り中距離列車(赤いBB304牽引)がまず到着、ところが、遅れている同じく下りのメラック行き長距離列車(白いCC201牽引)を先に通すため、これを写真右側の上り線に進入させています。そのため同方向に機関車が連結された2つの列車が、仲良く肩を並べることとなりました。メラック行きの方が先発と知ったランカスビトゥン行き列車の乗客が大量に乗り換えたため、メラック行きは大混雑、機関車上にも多くの乗客が乗り込んでいますね。この間、もちろん上り列車はストップさせられますが、たまたまダイヤ上運行がない時間帯であったため、無事に列車捌きが行われました。

(2) ガンビール駅の例 
 ここで、列車捌きの「大御所」、ガンビール駅の再登場です。ガンビールは、JABOTABEK 鉄道中央線の駅であるとともに、ジャワ島内各地へ向かう長距離客車列車の始発終着駅でもあります。特に長距離列車は、ジャカルタ市内でも発着回数が一二を争う多さとなっています。長距離列車の発着が、「表玄関」ジャカルタコタ駅より、ガンビール駅の方が多い最大の理由は、駅の構造にあると考えられます。ジャカルタコタ駅は頭端式で機関車の付け替え(機回し)が難しいのに対し、ガンビール駅は島式2面4線のため、これが容易だからです。そして、この機回しが、平均10分間隔で運転されている、電車運転の合間を縫って行われているところが、「職人芸」の所以です。
 
イメージ 2 ところで、この機回し、よく観察していると、上り線、下り線別々に行われているのではなく、何と上下線を総合的に使って行われています。どういうことかというと、例えば下り線ホームに停車中の客車列車の機回しを行う際、機関車を上り本線を使って移動させるという複雑な方法も躊躇なく行われるのです。その間、ダイヤ上、原則的には上り線の列車運行がない時間帯であることが条件ですが、場合によっては、ギリギリの間隙を突いて、上り待避線側に列車を誘導するなどの「超職人芸」も行われています。
 
イメージ 3 右上、右下の写真は、その「超職人芸」の様子です。右上写真では右端の下り待避線に機回しを終え、出発を待つ下り列車の姿が見えます。一方、その隣、すなわち写真中央には、ガンビールを終着駅とする上り列車が到着、その機回しが、渡り線を介して写真左側の上り本線を使って行われています。ちょうど、白いCC203が単機で機回しされているところです。
 
 それではその間、上り列車は、たまたまダイヤ上、運行されない時間帯なのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。右下の写真をご覧ください。何と上り電車(橙色の編成)も運行されており、曲芸的なタイミングで、写真左端の上り待避線に進入させています。そしてその進入が終わるや否や、上り本線を移動中の機関車(写真遠方中央)が今度は渡り線を使って下り本線に戻り、先の客車の下り先頭部に付け替えられるのです。
 
 いやはや何とも、お見事ですね。まさに超職人芸です。日本でもこのような超職人芸が行われる鉄道はあるのでしょうか?例えば、(状況はやや異なるものの)京王本線と相模原線が平面交差する調布駅の過密な列車捌きを見ていると、いつもすごいなと感心します。けれども、上下線を総合的に使う列車捌きまでは行われていませんよね。上り本線・待避線を使って、京王本線新宿行き普通が同じく準特急を退避する。その間、下り本線を使って相模原線からの上り本八幡行き急行が発車してゆく。その間下り電車は、下り待避線へ誘導される ... など考えられないでしょう。このような列車捌きは、西調布・京王多摩川側渡り線を若干改良すれば、理屈としては可能だと思いますが ...。
 
 インドネシア鉄道侮りがたし、あとはくれぐれも事故の無い様、よろしくお願いします
 
 
 

Arek Surokerto 追加情報

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 かつてジャカルタ首都圏で電車(ABB-Hyundai)として活躍、その後電気式気動車(KRDE)に改造されて東ジャワのスラバヤ地区に転出した「Arek Surokerto」については、これまでにも何度かJABOTABEK RAILNEWS でお伝えしてきました(JABOTABEKレポート15フォトギャラリー22)。このたび、地元の鉄道雑誌にArek Surokertoに関わる最新記事が掲載され、追加情報が得られましたので、以下に記します。
 
 (1) 種車ABB-Hyundai に関わる追加情報
 
 ABB-Hyundai 電車は、ドイツABB-Henschel 社と韓国Hyundai 社で製造された車体、部品を、インドネシアの国営鉄道車両製造会社である、INKA社で組み立てたものです。車体、部品供給の内訳は、ABB-Henschel 社が、電気部品、制御システム、誘導電動機、SIVを担当、一方Hyundai 社が、台車、車体、連結器及び内外装を担当しました。しかし、運転開始後は、誘導電動機の故障が絶えず、1994年にはHolec との衝突事故が発生、復旧後も2回の故障に見舞われ、その後営業運転から外されてしまいました。
 
 (2) KRDEへの改造
 KRDEへの改造は、同様に故障が絶えなかったHolecから始まり、その成功を見てABB-Hyundai へも拡大されました。改造に際しては、1編成4両から5両へと増車されたのに伴い、T車は新造されました。その際、台車にはINKA 社製ボルスタレス台車が採用されました。また、新たにディーゼルエンジン、オルタネータ、整流器、インバータ制御装置、誘導電動機が設置されました。
 
 (3) Arek Surokerto に関わる追加情報
 上記のとおり、Arek Surokerto の制御システムにはVVVFインバータが採用されています。ディーゼルエンジンの出力は、別の文献(559KW)と異なり、1基あたり485KWとされています。 TEC車2両にそれぞれ1基ずつ、合計2基が設置されています。 一方、誘導電動機の出力は1基当たり180KWで、M車2両に合計8基が設置されています。
 
 以上、KRDE Arek Surokerto に関する追加情報を中心に記しました。「車両紹介」の項の記述は、後日アップデートする予定です。なお、Arek Surokerto は現在、スラバヤ地区のインドネシア鉄道第8事業部シドトポ機関区に2編成が所属、スラバヤ - モジョケルト間の通勤輸送(1日4往復)に使用されています。
 
 冒頭写真はモジョケルト駅で出発を待つ第1編成、KDE3-09201F
 
 
 
 
 
 

三面時計の謎

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 意外と知られていないことですが、インドネシアに最初の鉄道が開通したのはオランダ植民地時代の1867年、日本のそれよりも実に5年も前のことです。インドネシアの鉄道は、以後今日まで長い歴史を誇り、駅舎や機関車など、多くの鉄道遺産を有することは、これまでにもお伝えしてきたとおりです。けれども、本日紹介するのは、今までご紹介してきたような大規模な鉄道遺産に比べれば、「小物」の類と言ってよろしいかと思います ... それは冒頭写真に掲げた時計です。これはジャカルタコタ駅に備え付けられている物で、1881年製、今年で129歳を迎えたアンティーク時計です。かつてはスカブミ駅にありましたが、後にジャカルタコタ駅へ移設されました。
 
 この時計、製造会社はFM OHLENROTHですが、SOERABAIJAの名で多くの人に知られているそうです。何故なら、時計の文字盤には、FM OHLENROTHと並んで、SOERABAIJA、つまりスラバヤの名が刻まれているからです。文字盤の直径は53cm、「4時」の部分にローマ数字の「IV」ではなく、「IIII」が使われていることが大きな特徴です。
 
 さて、私がこの時計の存在を知ったのは、インドネシア唯一の鉄道雑誌である「Majalah Kereta Api」の2010年8月号にその解説記事が掲載されたためです。ところが、この記事には不思議なことに「三面時計」なるタイトルが記されていました。冒頭の写真を、もう一度良くご覧ください(この写真は、雑誌記事に掲載されたものと同様のアングルで、後に私が撮影したものです)。これが「三面時計」に見えますか。私にはどう見ても、「二面時計」にしか見えません。写真で見えている文字盤の裏側には、もうひとつ同じ大きさの文字盤がありそうですが、それに加えてさらにもう一つ文字盤があるようには見えないのです。何故なら、上記の二面以外は、アーチ型の屋根に続く柱に固定され、文字盤があるようには見えないからです。まさに「三面時計の謎」です。そこで、私はジャカルタコタ駅へ出かけ、実際にこの時計を探してしてみることにしました。ところが...
 
 どこを探しても、この時計が見つかりません。アーチ型の屋根を支える支柱は全部確認しましたが、どこにも時計がないのです。困り果てた私は、駅員さんに尋ねようと思いました。が、それは後回しとし、その前に上記の記事に写真が掲載されていた、「もう一つの時計」のことを思い出し、とりあえず、その写真撮影から試みることにしました。右下の写真が、その「もう一つの時計」です(この写真も、雑誌記事に掲載されたものと同様のアングルで、私が撮影したものです)。
 
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 この時計については、コンコースの目立つ場所に置かれた古そうな時計なので、私は何年も前から知っていました。鉄道雑誌の記事には明確な記述がないのですが、やはりアンティーク時計のようです。そして撮影すること2枚、3枚...私はファインダーの中に不思議な「物体」を発見しました。皆さん、右の写真を良く見てください。文字盤の上にやや細い白い柱が垂直上方に延び、さらにそこに、横長の長方形の白い箱(と言うより板に見えるが)が付いてますよね。その箱の裏側に丸い「物体」が付いているのが見えますか?
 
 もう、お分かりですね。実はこの「物体」こそが、先ほどの「二面」の時計だったのです。つまり、「三面時計」とは冒頭写真の二面と、右写真の一面を併せたものなのです。
 
 「えっ、でも冒頭写真の二面時計は、アーチ型屋根の支柱に固定されているはずだろ。おかしいじゃないか。」と思ったあなたの疑問は、ごもっともです。これ、写真だけ見ると実にわかりにくい... まるで、だまし絵のような錯覚なんです。
 
 よろしいですか。もう一度、よ〜く冒頭の写真を観察してください。「二面時計」の後ろに横長の長方形の箱がありますよね。これが、右上写真の「一面時計」の上位にある横長の長方形の箱なんです。つまり、「二面時計」は、アーチ型屋根の支柱に固定されているのではなく、白い柱時計の裏側に固定されているんです。まさか誰も「二面時計」がそんなところにあるとは思わないですよね。冒頭写真では、遠近感がうまく表現できないため、近くにある時計が、あたかも遠くにあるアーチ型の屋根の支柱に固定されているように見えるのです。
 
 こうして「三面時計」の謎は解けました。分かってしまえば「なあんだ。つまらねえ。」と思われる方もきっと多いことでしょう。けれども、私にとっては、スリルと感動の謎解きでした。こんな他愛もないことで楽しめる私は、存外、精神年齢が幼い(若いと言いたいが)のかもしれません。
 
 以上、ジャカルタコタ駅の「三面時計」の謎でした。
 
 
 
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 去る8月19日からジャカルタ首都圏で運転を開始した旧東京メトロ7000系の車内に、真新しい路線図が掲げられました。それまでのジャカルタの電車イメージを一新する、なかなか斬新なデザインとなっています(上写真)。ところが ...
 
 この路線図には、残念ながら路線名が記されていません。全ての路線が「赤線」で描かれ、どこが何線か判らないのです。同様の状況は、以前に旧東急8500系8604編成の車内に試験的に(?)掲げられた路線図にも認められます(下写真)。全ての路線が「青線」で描かれ、やはりどこが何線か判らないのです。さらに、鉄道会社(KCJ)のホームページ上の路線図運輸省鉄道総局の路線図を見ても、同様に路線名が記されていません。
 
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 それでは、我がJABOTABEK RAILNEWSの路線図では、何を引用して路線名を記述したのでしょう?これまでこのことを明確に記していませんでしたので、これを機に以下に解説します。
 
 当初、私が参照したのは、財団法人運輸政策研究機構が2005年に刊行した、「インドネシアの運輸」という報告書です。この中の「ジャボタベック鉄道網」という資料中に路線略図と路線名が記されていました。例えば、ジャカルタコタ・ボゴール間の路線は、「中央線」とされています。それでは、その出典はどこでしょうか?残念ながら、わかりませんでした。
 
 ところがある日、私はインドネシアの鉄道に関する権威である、Taufik Hidayat氏が、前年(2004年)に著した「岐路に立つインドネシアの鉄道業(Perkeretaapian Indonesia di Persimpangan Jalan)」の中に、同じ線名記載を認めました。この書籍は、標題の通りインドネシアの鉄道業の現状が記されているのですが、ジャカルタ首都圏鉄道路線の電化を解説した項があり、上記と同様の路線名とその区間が記述されていたのです。
 
 それでは、さらにそのTaufik Hidayat氏の書籍における記載は、一体何を参照したのでしょう?同書籍の文献リストを渉猟すると、それが1998年に政府陸運総局(当時)が刊行した「ジャボタベック鉄道における電化資料(Data Elektrifikasi Kereta Api Jabotabek)」であることがわかります。私は、この文献までは遡っていませんが、おそらくこの資料こそが、ジャカルタ首都圏の鉄道路線名を「正式に」記載していると考えています。何故なら、政府の公式文書だからです。その路線名と区間(当時)は、以下の通りです。
 
中央線:ジャカルタコタ・ボゴール、54.7km、複線
西線:ジャカルタコタ・ジャティネガラ、カレット経由、18.2km、複線
タンジュンプリオク線:ジャカルタコタ・タンジュンプリオク、8.1km、複線
東線:ジャカルタコタ・ジャティネガラ、パサ−ルスネン経由、14.5km、複線
ブカシ線:ジャティネガラ・ブカシ、15.1km、複線
スルポン線:タナアバン・スルポン、23.2km
タンゲラン線:ドゥリ・タンゲラン
 
 皆様お気づきの通り、実は現在、中央線という呼称はあまり使われていません。ボゴール線、あるいはジャカルタ・ボゴール線という呼び名の方が一般的と思われます。また、マスコミでは、南線と表現される場合もあります。同様にスルポン線はグリーンライン、西線は東線と併せて環状線、あるいはブルーラインなどとも呼ばれているようです。
 
 明確に定義されるとありがたいのですが、「緩めの決まり」しかないところが、何ともインドネシアらしいですね。それでも実用上何とかなってしまうのが、この国の懐の深いところと言えましょう。案外日本のようなガチガチの「遊び」無き社会の方が、適応力に欠け脆いのかもしれません。
 
 以上、ジャカルタ首都圏の鉄道路線名の話題でした。
 
 
 
 

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