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先日地元メディアに、ジャカルタの線路生活者についてレポートした記事が掲載されました。ジャカルタ首都圏の鉄道に関わる庶民レベルへの取材では、これまでも劣悪な環境の下で乗車を余儀なくされている、エコノミークラス乗客が取り上げられてきました。しかし、線路生活者に焦点が当てられるのは、珍しいことです。
この記事の中で取り上げられたW夫人は、中央ジャカルタの鉄道線路脇に、バラックを建てて住んでいます。その住処は、竹竿で組み立てられ、ダンボールと新聞紙を敷き詰めただけの粗末なものです。夜間、ゴキブリと蚊を寄せつけないために、ケロシンランプだけが彼女の頼りとなります。線路からわずか2m、列車の警笛に一晩中悩まされながら、眠りにつかねばなりません。彼女は、中ジャワ出身の80歳代、Sさんという69歳の男性と、もう何年もこのような過酷な環境に耐えて暮らしてきました。夫、子供とは、とうの昔に死別したとのことです。
この付近一帯には、彼女のような線路生活者が800名ほど、永年にわたり居住しています。ところが最近、インドネシア鉄道は、彼らの排除を積極的に推し進めています。鉄道会社は、故郷までの無料乗車券を提供するとしていますが、W夫人には行き先がありません。故郷には、最早家族、親戚もいないからです。以上が記事のあらましです。
鉄道会社にしてみれば、彼ら線路生活者は非常に困った存在です。列車運行上、危険であるばかりでなく、信号ケーブル火災の原因ともなっています。また、線増計画の障害でもあります。一刻も早く、排除したいにちがいありません。行政もただ手をこまねいて見ていたわけではないようです。しかし、低所得者用住宅は建設が進まず、完成しても、「都心から離れ、職場へ遠い」、「電気、水道もない」ような住宅は、全く人気がありません。
私も何回か、線路生活者の方々と接したことがあります。中でも、ジャカルタコタ – タンジュンプリオク間のウォーキングイベントに参加した際の経験は、強烈なものでした(フォトギャラリーNo.10)。運行休止中の線路上に立ち並ぶ、おびただしい数のバラック、むせ返るようなゴミの匂い・・・とても耐えられるものではありませんでした。とりわけ印象深かったのは、当日やや体調が悪く、現地でトイレをお借りしたことです。当然のことながら、各戸にトイレはありませんでした。線路脇の井戸のある場所に、彼らは共同トイレを設置していました。お借りしていながら、失礼な言い方で恐縮ですが、その不衛生さは日本人の想像を絶するものでした。
しかし、悪いことばかりでもありません。彼らには何と言うか、「悲壮感」がないのです。インドネシア語には、「気にしない」を意味する、「ティダアパアパ」という言葉がありますが、彼らの生活は、まさに「ティダアパアパ」なのです。
にこやかに暮らすこの人たちは、一体何者なのか・・・私は、いまだにそれが分らずにいます。
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2011年03月26日
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