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去る10月2日に中部ジャワのプタルカン駅で発生した列車衝突事故の状況について、インドネシアの鉄道趣味雑誌「Majalah KA」11月号に記事が掲載されましたので、要約してご紹介いたします(本欄最後に見取図掲載)。
事故はジャワ北線のプタルカン駅で、午前2時30分に発生しました。同駅はジャカルタ方面からの複線区間がスマラン方面への単線区間に変わる接続駅であり、構内は3線からなっています。事故当時、同駅3番線には、ジャカルタ・パサ−ルスネン発スマラン・タワン行きセンジャ・ウタマ・スマラン号下りビジネスクラス116列車(以下、スマラン号)が停車中でした。これは、単線区間からやって来る、クディリ発ジャカルタ・パサ−ルスネン行きセンジャ・クディリ号上りビジネスクラス101列車(以下、クディリ号)と2時32分に交換するためです。この時、クディリ号は2番線を通過することになっていました。
一方、複線区間の下り本線では、スマラン号を後続するジャカルタ・ガンビール発スラバヤ・パサ−ル・トゥリ行きアルゴ・ブロモ・アングレック号エクゼクティヴクラス4列車(以下、ブロモ号)が、プタルカン駅に接近、本来であればクディリ号が同駅通過後に1番線に進入すべきところ、場内信号機の停止現示を無視して、3番線に進入、スマラン号に追突しました(別の報道によれば、衝突時の速度は時速52km)。
この事故で、追突されたスマラン号の客車1両(K2-91505)が破損、1両(K2-91547)がスリップ(?)し、1両(K2-91506)が脱線しました。一方、ブロモ号を牽引していたディーゼル機関車(CC20340)も故障しました。この事故で34名が死亡、26名が負傷しました。事故後、1番線のみを用いて、列車運転を再開、2番線には救助用クレーンが設置されました。スマラン号は4時、ブロモ号も7時に(事故車両を切り離して?)運転を再開しました(インドネシアでは、事故車両も現場点検だけで運転再開するんですね)。
ところで、この事故のわずか5分後の午前2時35分、中部ジャワのジャワ南線プルウォサリ駅でも別の列車同士の衝突事故が発生、1名が死亡、4名が負傷しています。まさに、魔の刻としか言いようがありません。双方の事故で亡くなられた、合計35名の方々の冥福をお祈りいたします。
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運輸
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10月26日から始まったジャワ島ムラピ火山の噴火に伴い、中部ジャワでは大きな被害が出ています。11月5日未明には、南斜面で大量の火砕流が集落を襲い新たに64人が死亡、死者は合計122人に達しました。政府は、避難勧告地域を山頂から半径20kmへと拡大、避難民は10万人を超えたとみられています。
この噴火の影響で、ジョクジャカルタのアディスチプト空港は航空機離発着を全面停止、閉鎖に追い込まれました。火山専門家は過去100年間で最大規模の噴火と発表、噴煙は高さ3.5kmに達し、航空機の運航を妨げています。降灰は400km離れた西ジャワ州ボゴール近郊でも観測されるなど被害が広がっており、首都ジャカルタへも接近しています。この影響で6日には、成田発ジャカルタ行の日航機がカリマンタン上空で成田へ引き返しました。7日は欠航となり、週初めからジャカルタ出張を予定していたビジネス客に大きな影響が出ています。航空機が火山噴火に弱いのは、アイスランドの火山噴火で欧州の航空便に欠航が相次ぎ、大混乱に陥ったニュースが記憶に新しいと思います。今回も同様の状況になっているようです。
一方、航空便の相次ぐ欠航をよそに、鉄道輸送へはこれと言った影響は出ていないもようです。このため地元メディアは、旅行客が鉄道に殺到、ジョグジャカルタトゥグ駅では本日(7日)、二カ所しか開いていない出札口に800人の乗客が乗車券購入の長い列を作っていると報じています。センジャウタマ号でジャカルタへ戻るというある乗客は、本日分は売り切れで購入できず、明日に期待すると話していました。インドネシア鉄道では、ジャカルタ-ジョグジャカルタ間の全ての列車を2両増結しています。また、同鉄道第8地域事業部(スラバヤ)は、避難民の移動と救援物資輸送のために、荷物車両1編成を被災地へ派遣すると発表しています。
このように、火山噴火に対しては、航空輸送の弱さと鉄道輸送の強さが対照的な結果となって表れています。同じ地殻変動による災害でも、地震と火山では、運輸業に与える影響は全く逆であることを改めて認識させられました。
冒頭写真は、ボロブドゥール遺跡から見たムラピ山、遺跡から山頂までの距離は、約30kmです。下の写真はアディスチプト空港前(マグウォ)駅を後にする、ジョグジャカルタ発ソロ行のプランバナン急行(KRDE = 電気式気動車)です。ともに2009年撮影
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JABOTABEK 鉄道で、また痛ましい事故が発生しました。2010年10月16日午前7時4分、中央線インドネシア大学駅構内で、ボゴール発ジャカルタコタ行き上りエコノミーの屋根に乗車していた乗客がパンタグラフに触れ感電死、遺体の収容に7時40分まで要したため、朝の通勤ラッシュ時の同線ダイヤは大きく乱れました。地元警察によれば、犠牲者は少年と見られています。
ジャカルタ首都圏では、このようなニュースが後を絶ちません。日本の都市部で鉄道自殺が相次いでいるのと対照的に、インドネシアの首都ジャカルタでは、屋根乗車による感電死が相次いでいるのです。メディアによれば年間の感電死者は20名、「屋根乗車はジャカルタ名物」などと言っていられない状況が、そこにはあります。
インドネシア鉄道、KCJともに、これまで屋根乗車を防止するため、何度も対処してきました。私が記憶している中でも印象的だったのは、2008年2月から行われた、屋根乗車する乗客へのカラースプレー噴射です。この様子は、日本のテレビニュースでも報道されたと聞いています。また、罰金を厳格に適用するなどの措置が取られたり、集中取り締まり期間が設けられたりしました。しかし、いずれも「喉元過ぎれば何とやら」で、長続きした試しがありません。
私は以前、屋根乗車する人に、「何故、屋根に乗るのか」インタビューしたことがあります。彼の答えは単純明快でした。
1.涼しいこと
2.座れること
3.運賃を支払わなくてよいこと(検札が来ないこと)
4.スリなどの犯罪が無いこと
近年、特に深刻なのは、朝ラッシュ時の想像を絶する混雑です。今や日本から導入した中古電車によるエコノミーACも超満員、場合によっては扉を開け放したまま走行しています。輸送力は完全にパンクしており、しかも状況は悪くなるばかりです。屋根乗車を支持することはできませんが、心情的にはその行為を理解できなくもありません。解消には、車両の増備はもちろん、複線あるいは複々線化、マンガライやジャティネガラのような「ボトルネック」駅の立体化、信号システムの改善、駅システムの改良などなど、やるべきことは山積しています。
ジャカルタの電車から、感電事故ゼロの日々が来ることを強く願っています。
下の写真は、「屋根乗車して横たわる人々」 … ご安心ください。タオルを枕代わりに使用していることから、「寝ているだけ」と思われます。通過中のエコノミー電車をガンビール駅ホームより撮影
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レバラン(イスラム教の断食明け大祭)休暇に伴う民族大移動が終了し、インドネシアに日常生活が戻った去る10月2日未明、わずか1時間半の間に中部ジャワで2つの列車衝突事故が発生しました。ひとつはジャワ北線プタルカン駅で発生したもので36名が死亡、もうひとつはジャワ南線プルウォサリ駅で発生したもので、こちらも1名が死亡しています。特に前者は死者数が多く、事故を起こした列車がインドネシアの2大都市を結ぶ、エクゼクティヴクラスの看板列車であったことから、大きく報道されています。そこで今回は前者の事故について、メディア報道を取りまとめてお伝えします。
事故発生は10月2日土曜日、インドネシア西部時間午前2時46分、場所は中部ジャワ州プマラン県のジャワ北線プタルカン駅です。当時、同駅3番線にジャカルタ・パサ−ルスネン発スマラン・タワン行きセンジャ・ウタマ・スマラン号下り10116ビジネスクラス列車(以下、センジャ・ウタマ・スマラン号)が停車中でした。これは下りジャカルタ・ガンビール発スラバヤ・パサ−ル・トゥリ行きアルゴ・ブロモ・アングレック号10004エクゼクティヴクラス列車(以下、アルゴ・ブロモ・アングレック号)を退避、通過待ちを行うためです。
ところが、下りアルゴ・ブロモ・アングレック号は、本来なら1番線に入線すべきところ、ポイントの切り替えを待たずに3番線へ進入、機関車に残された記録によれば、時速52kmで、停車中のセンジャ・ウタマ・スマラン号に衝突しました(信号が正しく表示されていたかについては、今のところ報道されていません)。この衝突で、追突されたセンジャ・ウタマ・スマラン号の後部車両は激しく損傷、一方、追突したアルゴ・ブロモ・アングレック号も先頭部が脱線しました。
なお、これとは別に衝突事故は駅から100m離れた地点で生じたとする報道もあり、であるならば本線上であった可能性もありますが、定かでありません。また、その後詳細な報道は行われていません。
この事故の犠牲者の多くは、追突されたセンジャ・ウタマ・スマラン号最後部車両の乗客で、当時その多くが睡眠中だったそうです。救出作業には駅職員のほか、周辺住民、警察、消防、国軍が加わり、けが人は周辺3病院へ搬送されました。
事故原因については、国家運輸安全委員会がなお調査中ですが、追突したアルゴ・ブロモ・アングレック号の機関士が信号機の停止現示を無視して場内に進入したとする見方が有力で、取り調べを受けています。居眠りをしていたとの報道もあります。これを受けてフレディ運輸相は早くも「ヒューマンエラーである」とコメントしています。一方、インドネシア鉄道側は、イグナシウス社長が、「国家運輸安全委員会の調査を結果を待つ」として、事故原因についてはコメントしていません。
ところで、この事故には、直接の原因では無いにせよ、以下の2つの背景が考えられます。
1.保安装置の未設置
日本では常識となっているATSなどの保安装置は、インドネシアでは全く整備されていません。メディアなどでも、この点を指摘するものは、ほとんどありません。2009年8月のジャカルタ首都圏ボゴール・チレブット駅間の電車衝突事故(運転助手1名が死亡)でも、わずかにKCJの技術担当取締役が「保安装置は高額、その設置は親会社であるインドネシア鉄道の仕事」などと後ろ向きな発言をしているだけです。今こそ日本が技術援助を申し出る時ではないでしょうか?いきなり首都圏に大規模導入するのではなく、今回の事故区間を含む地方幹線に試験導入すれば、比較的低コストで効果が確認できる上に、一旦その方式が採用されれば、将来多くのビジネス上の波及効果もあるものと思われます。
2.ダイヤ乱れ
今回衝突した2つの列車は本来運行中に「出会う」ことはなく、センジャ・ウタマ・スマラン号が終着駅スマラン・タワンまで「逃げ切った」後に、アルゴ・ブロモ・アングレック号が運行されるダイヤとなっています。ところが、当日は、事故発生駅で退避通過待ちとなったことから、ダイヤが相当乱れていたものと思われます。インドシアの鉄道事情に詳しいジャカルタ在住日本人のU氏によると、ジャワ島では長距離列車の遅れは日常的なことで、しかも下り列車の遅延のかなりの部分は、出発地であるジャカルタ首都圏の過密ダイヤによるダイヤ乱れが原因だそうです。つまり、始発駅から遅延していることが多いのです。事故当日の状況は判りませんが、同様の状況が生じていた可能性があります。これが事故発生駅での臨時の通過待ちとなり、機関士もそのことを頭の片隅に想定することができなかったのかもしれません。
以上、プタルカン駅の列車衝突事故について、お伝えしました。繰り返しますが、この事故ではインドネシアを代表する列車であり富裕層の利用も多い、アルゴ・ブロモ・アングレック号(日本でいえば、新幹線のぞみ号に相当)が起こした大事故であり、このことが報道をより大きくしているものと思われます。これにより、インドネシア鉄道は大きく威信を傷つけられ、「ジャカルタ・スラバヤの2大都市間の移動は航空機利用に変える」とのインターネット上の書き込みも見られます。
ところで、このアルゴ・ブロモ・アングレック号の災難は、実は今に始まったことではありません。2010年に入ってから、別の問題にも遭遇しています。そのもうひとつの問題については、次回、稿を改めて述べることとします。
最後になりますが、二つの事故の犠牲者の冥福をお祈りいたします。
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JABOTABEK RAILNEWSでは、かつて、「何事につけのんびりしたお国柄のインドネシアにあって、ガンビール駅の『列車捌き』だけは秒刻みの職人芸である」とお伝えしました(コラム2008. 5. 18)。その後、この鉄道を注意深く観察していると、列車捌きには「対向(反対側)本線」も躊躇なく使用するという、驚きの事実が判明しましたので、以下にご紹介いたします。なお、インドネシアでは列車は右側通行であることに注意して、以下の文章をお読みください。
(1) パルメラ駅の例
スルポン線では、電車とディーゼル機関車牽引の中・長距離客車列車が混合されて運行されています。そのスルポン線のパルメラ駅は、私の自宅の最寄り駅です。一見何の変哲もない対面式2面2線のローカル駅ですが、実は渡り線があり、この渡り線を使って、対向(反対側)本線も使った列車捌きが行われているのです。
冒頭写真をご覧ください。この写真では、左側下り線に、ランカスビトゥン行き下り中距離列車(赤いBB304牽引)がまず到着、ところが、遅れている同じく下りのメラック行き長距離列車(白いCC201牽引)を先に通すため、これを写真右側の上り線に進入させています。そのため同方向に機関車が連結された2つの列車が、仲良く肩を並べることとなりました。メラック行きの方が先発と知ったランカスビトゥン行き列車の乗客が大量に乗り換えたため、メラック行きは大混雑、機関車上にも多くの乗客が乗り込んでいますね。この間、もちろん上り列車はストップさせられますが、たまたまダイヤ上運行がない時間帯であったため、無事に列車捌きが行われました。
(2) ガンビール駅の例
ここで、列車捌きの「大御所」、ガンビール駅の再登場です。ガンビールは、JABOTABEK 鉄道中央線の駅であるとともに、ジャワ島内各地へ向かう長距離客車列車の始発終着駅でもあります。特に長距離列車は、ジャカルタ市内でも発着回数が一二を争う多さとなっています。長距離列車の発着が、「表玄関」ジャカルタコタ駅より、ガンビール駅の方が多い最大の理由は、駅の構造にあると考えられます。ジャカルタコタ駅は頭端式で機関車の付け替え(機回し)が難しいのに対し、ガンビール駅は島式2面4線のため、これが容易だからです。そして、この機回しが、平均10分間隔で運転されている、電車運転の合間を縫って行われているところが、「職人芸」の所以です。
それではその間、上り列車は、たまたまダイヤ上、運行されない時間帯なのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。右下の写真をご覧ください。何と上り電車(橙色の編成)も運行されており、曲芸的なタイミングで、写真左端の上り待避線に進入させています。そしてその進入が終わるや否や、上り本線を移動中の機関車(写真遠方中央)が今度は渡り線を使って下り本線に戻り、先の客車の下り先頭部に付け替えられるのです。
いやはや何とも、お見事ですね。まさに超職人芸です。日本でもこのような超職人芸が行われる鉄道はあるのでしょうか?例えば、(状況はやや異なるものの)京王本線と相模原線が平面交差する調布駅の過密な列車捌きを見ていると、いつもすごいなと感心します。けれども、上下線を総合的に使う列車捌きまでは行われていませんよね。上り本線・待避線を使って、京王本線新宿行き普通が同じく準特急を退避する。その間、下り本線を使って相模原線からの上り本八幡行き急行が発車してゆく。その間下り電車は、下り待避線へ誘導される ... など考えられないでしょう。このような列車捌きは、西調布・京王多摩川側渡り線を若干改良すれば、理屈としては可能だと思いますが ...。
インドネシア鉄道侮りがたし、あとはくれぐれも事故の無い様、よろしくお願いします。
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