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8月22日現在、女性専用車のステッカーが貼付されているのは、旧東京メトロ7000系の他に、旧東急8000系、8500系、旧都営地下鉄三田線6000形の一部などとなっています。いずれも冷房付き6両および8両編成が対象となっているもようで、4両編成については不明です。その他の冷房付き8両編成である、旧東京メトロ5000系、旧東葉高速1000形についても、近日中にステッカーが貼付されるものと思われますが、旧JR東日本103系のように4両編成2本を併結している8両編成の扱いも不明です。なお、非冷房エコノミー車は、対象外のようです。
続いて、「女性専用」の定義ですが、右上写真のように、女性単独、あるいは男子を含む子供づれの女性が対象となっており、当然のことながら男女カップルは、対象から外されています。
以上、ジャカルタの電車に登場した「女性専用車」について、2回に分けてご紹介しました。今後、この制度が定着するか否か、JABOTABEK RAILNEWSでは、引き続き注意深く見守ってゆきたいと思います。
冒頭写真は、女性専用車となった旧東急8000系8003Fの8号車、8004
(2010. 9. 29 加筆修正)
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運輸
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2010年8月19日、ジャカルタ首都圏の電車に女性専用車がデビューしました。これは、旧東京メトロ有楽町線7000系の導入に合わせて運用を開始したものです。8両編成のうち、先頭車と最後尾の計2両が、女性専用車とされています。以下に2回シリーズで、「デビューの背景と市民の評価」、「運転状況」についてお伝えします(第1回は社会性が強い内容、第2回は一転してマニア向きとなります)。
現地マスコミは、「女性専用車デビュー」を華々しく報じていますが、実はそれが「日本から導入された中古電車のデビュー」であることは、ほとんど報じられていません。政府高官の口からも「女性専用車」との言葉は盛んに聞かれても、「日本からの輸入車両である」とはほとんど聞かれないのです。わずかに、鉄道会社(KCJ)社長のみが、「運行を開始した車両は旧東京メトロ7000系であり、引き続き日本から中古電車の導入計画が進められている」ことを明らかにしただけです。
そこに、中古電車導入をめぐって政府内部にあった議論(2010年8月15日付コラム)に対する配慮を感じるのは、私だけでしょうか。つまり、日本製中古電車のデビューは、女性専用車デビューに付随するものでなければならないのでしょう。鉄道車両の運転開始式典には、運輸相の出席が通例ですが、今回は運輸相に加えて、女性問題–児童保護担当国務相のリンダ女史も列席する、異例の展開となりました。女性専用車デビューのタイミングは、決して偶然でないと思われます。
さて、複雑な背景の下で誕生したように見える女性専用車ですが、その必要性は多くのマスコミ、市民が認めており、おおむね好意的に受け取られています。
早速デポック駅からジャカルタ市内へ女性専用車を利用した36歳の銀行員は、素晴らしい経験だったとし、「男性乗客が誤って乗車してきたので、私たち女性乗客は、彼らに向かって叫んだの。彼らは当惑していたわ。」と語りました。そして、混雑した車内での男性乗客との「押し合い」がないので、快適だと述べています。ボジョングデから女性専用車に乗車した乗客は、「過去にも似たような企画があったが、長続きしなかった」と指摘し、十分にプロモーションを行って、女性専用車が定着して欲しいと語りました。一方、チレブットから鉄道を利用している52歳の男性乗客も、「男女共用車両の乗客が減ったのはいいことだ。女性に席を譲らなくて済むし」と、こちらも歓迎の意見を述べました。
最後になりますが、「イスラム圏における女性専用車」という観点からも眺めたいと思います。一般にイスラム諸国では、公的な場所における男女の隔離が行われています。モスクはもとより、学校、交通機関そして喫茶店等々です。国民の77%がイスラム教徒からなるインドネシアでも、女性専用車導入に宗教的背景があるのでしょうか。
答えはノーです。今のところ、現地報道、あるいはインターネット上への書き込みを見る限り、そのような意図、あるいは宗教観に基づいた議論は行われていません。その意味では、インドネシアはイスラム人口の優勢な国家とは言え、女性問題に関しては、日本や欧米の考え方に近いのかもしれません。その証拠に女性問題専門家からの発言が相次いでいます。「対女性暴力に関する国家委員会」副委員長であるマスルチャー女史の意見はその代表的なもので、「これは問題を単純化し(て回答し)ただけで、そもそも女性の尊厳に対する公的教育がもっと行われるべきである」と批判的な発言をしています。もっとも一般市民の意見には、ここまで勇ましいものは、そう多くありません。「短期的には女性専用車の設置は良いこと、ただし長期的には女性に対するハラスメントをなくすための社会教育が必要」とするジャカルタ在住女性によるインターネットへの書き込みは、概ね市民の意見を代表するものと言えましょう。
以上、「女性専用車デビューの背景と、市民の評価」について述べました。次回は一転して、マニア向きの「女性専用車の運転状況」についてお伝えします。
冒頭写真は、女性専用車の設定が拡大され、旧都営地下鉄6000形にも貼付された、「女性専用車ステッカー」
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ジャカルタ首都圏の電車ダイヤが、正規のダイヤ改定以外にも予告なく頻繁に修正されていることは、たびたびお伝えしているとおりです。良く言えばフレキシブル、悪く言えば利用者泣かせのわがままダイヤです。鉄道ファンにとっても、これを正確にwatchするのは、なかなかの重労働です(趣味の世界に「労働」という言葉はそぐわないかと思いますが)。以下に、2008年7月1日に改定されたダイヤの、その後の最新修正状況についてお伝えします。
(1)中央線(Bogor 線)系統 急行電車の増発と停車駅追加がありました。増発はJakarta Kota - Bogor 間の1往復(AL/57-1およびAL/57-2)で、平日のみの運転となっています。停車駅追加は、Tanjung Barat、Depok Baru、Depok、Cilebut で実施されています。なお、中央線では、列車ごと(一部列車は運転曜日ごと)に停車パターンが異なり、全ての急行電車が上記駅に停車するわけではありません。 エコノミーACの増発と、エコノミーからエコノミーACへの置き換えも進んでいます。増発はJakarta Kota - Bogor 間で1往復(AL/97およびAL/97-A)、Jakarta Kota - Bojonggedeh 間で臨時扱いの上り1列車(KLB4)、Jakarta Kota - Depok 間で臨時扱い含む下り2列車?(KLB5など)となっています。大部分が平日のみの運転です。一方、エコノミーからエコノミーACへの置き換えは、Jakarta Kota - Bogor 間で上り6本、下り5本、Jakarta Kota - Bojonggedeh 間で上り1本、Angke- Bogor 間で下り1本、Tanah Abang - Bogorで上り3本、下り1本、Depok - Bogor 間で上り1本、Angke - Depok 間で上り1本です。さらに、平日はエコノミーながら、土曜日、日曜日、祝日にエコノミーACで運転される列車がTanah Abang - Bogor 間で上り2本、下り1本設定されました。 (2)Bekasi 線系統 同線でも、エコノミーACの増発と、エコノミーからエコノミーACへの置き換えが進んでいます。増発はJakarta Kota - Bekasi 間で2往復(412など)、Manggarai - Bekasi 間で1往復(116L-7および116L-8列車)、Kemayoran - Bekasi 間で1往復(116L-3および116L-4)となっています。大部分が平日のみの運転です。なお、Kemayoran 始発終着列車は、初登場と思われます。一方、エコノミーからエコノミーACへの置き換えは、Jakarta Kota - Bekasi 間で上下2往復です。 (3)環状線系統 コラムNo.53で記したとおり、外回り(反時計回り)電車の運転が、2009年6月から休止されました。乗客の伸び悩みが原因と思われます。 (4)Tanjung Priok 線系統 コラムNo.48でも記したとおり、同線は2009年4月23日に8年ぶりに運転が再開されたばかりであるにもかかわらず、たびたび微修正が行われています。最近では、土曜日の電車運転が休止されたもようです(インターネット時刻表に矛盾点があり、最終確認に至っていない)。これに伴い、運転は月曜日から金曜日までの平日のみとなったもようで、列車番号も例えば、AL75-4が118L-6に変更されました。1日上下2往復の運転には変更ありません。 (5)Tangerang 線系統 同線には1日1往復のみエコノミーAC電車が運転されていますが、最近、月曜日から金曜日までの平日のみ運転から、土曜日も運転されるようになりました。これに伴い列車番号が、上りがAL21-1から116-1へ、下りがAL21-2から116L-12へと、それぞれ変更になりました。 (6)Serpong 線系統 2009年9月12日、Serpong - Parungpanjang 間の電化工事が完成し、1日1往復のエコノミーAC電車が、Serpong 以遠へも延長運転されるようになりました。一方、1日1往復のエコノミーAC増発が行われ、上りAL/69 (Serpong 発 Manggarai 行)、下りAL/68 (Angke 発 Serpong 行)としてダイヤ設定されています。上記、Angke 始発のSerpong 線系統電車は、初登場と思われます。 以上まとめると、最近のダイヤ修正の傾向として、以下の顕著な特徴が挙げられます。 ① エコノミーACの増発 ② エコノミーからエコノミーACへの置き換え また、上記ほど目立ちませんが、以下の措置も認められます。 ③ 乗車率の低い系統の運転休止、あるいは運転曜日削減 ④ ダイヤのわずかな隙間時間帯を利用した、区間運転列車の増発 ⑤ 急行電車の増発と停車駅の追加 限られたインフラの中で、苦労しながらも輸送力増強と利便性、サービス拡大が図られていることが、良くわかります。一方、乗車率の低い電車を、容赦なく運行休止にするドライな一面も見受けられます。迷う前に、まずは実行してみて、不都合があればすぐに修正あるいは休止してしまうという、「スクラップアンドビルド」の思想が徹底しているのでしょうか。 |
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イスラム教の断食明け大祭(レバラン)に伴う、インドネシアの「民族大移動」が今年も行われ、大きな混乱なく終了しました。そこで今回は、JABOTABEK 圏の話題を離れ、インドネシアのレバラン鉄道輸送について述べたいと思います。そこには、インドネシアにおける鉄道輸送の課題が、凝縮されています。
2億4000万の人口を抱え、そのうちの76%をイスラム教徒が占めるインドネシアでは、断食明けを祝うレバランは、日本の正月に匹敵する国民最大の年中行事です。それはまた、地方から都会へと働きに、あるいは勉学に出てきた人々が、一斉に帰省する季節でもあります。その数は2700万人と推定されており、中国の旧正月には及ばないものの、世界最大級の民族大移動の一つと言われています。このうち、鉄道利用者は325万人です。この数字自体は、日本の正月帰省客と比べて、決して多いものではありません。例えば、日本の年末年始輸送では、JR東日本の新幹線・特急利用客だけでも、インドネシアのそれを上回るからです。しかし、その激しい混雑ぶりは、日本人の想像を絶するものがあり、まさに「命がけの帰省」と言っても過言ではありません。それでは一体、何が問題なのでしょうか? 最大の問題は、輸送力にあります。例えば2004年のレバラン鉄道輸送では、1日当たり12万8000人の輸送力に対し、13万4000人の乗客が押し寄せたために、1日平均6000人の積み残しが出たと推定されています。インドネシア鉄道では、輸送力不足を補うため、涙ぐましい努力をしており、座席のない貨物車両の増結は、解決策のひとつとなっています。この「超エコノミー車両」は、地元メディアから「強制収容所行き」と揶揄される始末ですが、それでも座席なし車両に乗車できればまだましで、実際には多くの乗客が屋根に上ったり、扉にしがみついて帰省しています。 第二の問題は、車両の稼働率です。例えば2003年のレバラン輸送では、5両のディーゼル機関車を新規投入したものの、故障などで稼働できなくなった機関車が前年より19両も増えたため、結果的に輸送力の低下を招きました。客車についても、5両を新規投入したものの、稼働できなくなったものが前年より9両も増えています。このように、最大需要期であるレバランに向けた機関車と客車の整備は、重要な課題となっています。 第三の問題は、列車の遅延です。2006年、2007年のレバラン輸送では、始発駅の平均遅延時間が13分および12分、終着駅のそれは76分および74分でした。遅延の理由は様々ですが、例えば2008年のレバラン輸送では、踏切事故が10件、脱線および滑走事故が52件、機関車の故障は59件も発生しています。これらの対策も、大きな課題となっています。 それでは、一体何故、激しい混雑にもかかわらず、人々はこの時期に帰省するのでしょうか?都会でメイドや単純労働などの職に就いている人々の賃金は高くなく、繁忙期のため値上がりしている交通費負担は決して小さくありません。それでも帰省する理由をインドネシア人の友人は、「お金には代えられない、幸福感を得るため」と説明しています。貯金をはたいて交通費を負担しても、混雑した列車に乗っても、断食最後のつらい毎日であっても、この特別な時期に故郷に戻り、家族、友人と断食明けを共に祝う幸福感は、何物にも代えがたいことなのだそうです。 このように、レバラン輸送はインドネシアの鉄道にとって特別な意味があります。政府、インドネシア鉄道もそのことは十分認識しており、毎年この時期には運輸相がターミナル駅を訪れ、辛抱強く列車を待つ帰省客を慰問しています。今年はPasar Senen 駅を訪問し、大臣自ら歌を披露して乗客を和ませたと報道されました(大臣の歌声で、乗客の心が和んだかは謎ですが)。 ともあれ、今年も汗と涙と笑いのレバラン輸送が、終了したのでした。 参考文献 Taufik Hidayat 2004 Perkeretaapian Indonesia di persimpangan jalan, Yayasan Lembaga Konsumen Indonesia, pp 81-86 Taufik Hidayat 2009 Jalan panjang, menuju kebangkitan perkeretaapian Indonesia, PT Ilalang Sakti Komunikasi / Majalah Kereta api, pp 124-129 |
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8月4日、中央線(Bogor 線)Bogor - Cilebut 間で電車同士の衝突事故が発生しました。事故は同日10時28分、上り本線上に停車していたボゴール発ジャカルタコタ行きエコノミー549列車(Holec)に、後続の同じくジャカルタコタ行きPakuan 急行221列車(旧都営三田線6000形 6151F)が追突したものです。この事故で、追突した急行電車の運転助手が亡くなり、乗客64名も負傷ました。ジャカルタ首都圏では、昨年10月31日にも、Kampung Bandan 駅構内へ進入のため信号待ちをしていたBekasi 急行(旧都営三田線6000形 6181F)に、後続のディーゼル機関車牽引の貨物列車が衝突する事故が発生し、7名の負傷者が出ています。そこで、今回はインドネシアの列車衝突事故(*)について記します。
まず、事故件数について調べてみました。検索できたデータは多くありませんが、死傷者を伴う列車衝突事故発生件数は、1995年2件、1997件6件、1998年8件、データが跳んで2008年3件、そして2009年が8月5日まで4件です。死者は、2008年に15名、2009年にも既に4名出しています。これに対し、日本の同様事故件数は、2002年1件、2003年から2004年0件、2005年1件、2006年1件、そして2007年から2009年の今日まで0件と、インドネシアのそれを大きく下回っています。この間、死者はなく、最後に死者が出たのは、2000年12月の京福電鉄越前本線事故と思われます。ご存知のとおり、列車衝突は重大事故につながる可能性が大きい事故です。1991年の信楽高原鉄道事故では42名、2000年3月の地下鉄日比谷線事故(この事故は脱線+衝突)では5名の方が亡くなっています。列車衝突事故を無くすことは、鉄道事業者にとって極めて重要な使命と考えられます。 それでは、日イの差はどうして生じているのでしょうか?おそらく主要な理由は、保安装置の有無と思われます。日本では、ATS、ATCなどの自動列車保安装置の設置が標準的ですが、インドネシアでは全く設置されていません。しかし、報道ではこの点に触れているメディアは、ほとんどありません。わずかに一紙だけが、KCJ 技術担当取締役の発言を掲載していましたが、「ATSはコストが高い」、「信号、保安装置などの設置は、(親会社である)インドネシア鉄道の仕事」など、後ろ向きなものでした。鉄道の普及には、列車の増発、車両の冷房化もさることながら、安全が一番の宣伝広告になると思うのですが...。一日も早い、保安装置の導入を望みます。 最後に、私が計算した日本の列車衝突事故の安全性を記しておきます。日本では2006年6月13日の都電荒川線事故(**)以来、負傷者を伴う列車衝突事故は発生していないようです。この期間に日本で列車が走行した距離は、おそらく43億km に達するものと思われます。これは何と、地球、太陽間距離の29倍に相当し、日本人として誇りにしたい驚異的な数字だと思います。が、なおも、踏切事故なども含めた事故、災害ゼロを目指し、関係者には頑張っていただきたいと思います。 (*) 列車が他の列車又は車両と衝突し、又は接触した事故のこと、日本では、死傷者が発生した場合だけではなく、物が損傷した場合や、列車が運転阻害された場合も「事故」と定義される。上記では、死傷者が発生したケースのみを扱っている。 (**) 都電は定義上は軌道だが、鉄道に準ずると考え、「列車」衝突事故に加えた。 参考文献、資料 Taufik Hidayat 2004 Perkeretaapian Indonesia di persimpangan jalan, Yayasan Lembaga Konsumen Indonesia, pp 127-133 運輸安全委員会、国土交通省ホームページなど |





