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E線の解放弦を弾く時に「ヒュー」という口笛を吹くような高い音が出てしまうことがあります。これを"whistling"(日本では「裏返り」)と呼んでいます。
バッハのイ短調ソロソナタのフーガの三重音、四重音にはE線を解放で弾かなければならないところが沢山あります。最初の関門は第7小節のGHEの三重音、私の楽器は必ずと言ってよいほどE線が正常に鳴らずwhistleします。この曲にはこのようなE線解放弦を含む三・四重音が実に18箇所もあります
今年初め、この曲に取り組み始めて以来、whistlingに悩まされ続けています。弾き始めてすぐに望む音が出ないというのはストレスが溜まります。調子の悪いときは何度弾き直してもwhistleので始末が悪い。
この夏、N子先生のレッスンを受ける 機会 がありました。N子先生はバッハのソロソナタ・パルティータのコンサートを100回以上されていてCDやDVDも出されています。N子先生のバッハは何度も聴いていますがwhistlingを聴いたことは一度もありません。レッスンでは弓の持ち方、腕の使いかた、角度等あらゆる面から診断を受け、whistlingを避けるためのヒントが得られました。しかし、不注意に弾くとwhistlingが起こり、完全回避には至っておりません。
今回、文献・映像を調べてみました。whistlingのメカニズムとその回避方法が議論されています。以下に詳述します。
whistlingの実例と回避策を示す動画
掲示板での議論(whistlingを回避する技術がテーマです)
whistlingに関する学術論文(正常振動と異常振動の物理的解説)
ダ・ダリオ社 カプランnon-whistling e のプロモヴィデオ
ダ・ダリオ社 カプランnon-whistling E の解説
著者は ベニントンでご一緒 したFan Taoさんです)
whistlingは異常振動whistlingはある条件下で生じる弦の異常振動(捻じれ振動)と説明されています。E線の正常振動(ヘルムホルツ振動)の周波数は約660Hzですが、異常振動時は4800Hzです。E線解放弦で生じやすくA,D,G線では殆ど生じません。
whistleし易い弾き方、whistleし難い奏法whistling・・・弦の異常振動の原因は色々あります。弓の角度・圧力・速度が不適切、弓のスライド、松脂の過多・過少、古い弦(不均一な太さ)、汗で錆びた弦、メッキがはげ落ちた弦、解放弦に指や手がかすかに触れている等々。
一般的に弓の速度が速く弓圧が小さいとwhistleし易くなります。弓が静止からスタートするとwhistlingは起こりません。即ち、弓を空で弾きながら弦に接触させるとwhistleしやすく、弓を止めて弦に当ててから弾くとwhistleしません。A線からE線解放へスラーで移弦するときや、三重音D/A/EをD/AとA/Eに分けて弾く時にwhistleし易いのです。弓毛が三本の弦をしっかり掴んでから、ある程度の弓圧で弾き始めるとwhistleしにくいですが、硬い鋭い音に成り勝ちです。
whistleしにくい弾き方が音楽的要求(例えば柔らかく、pで弾きたいとき)と相反することがありため、高度な運弓技術が必要になります。また、whistling回避に気をとられ音楽的表現への注意が疎かになることもあります。
whistleし難い弦、whistleし易い弦whistleし易い弦はテンションの高い弦、ゲージの太い弦、金メッキ線です。バロックヴァイオリンはピッチが低くテンションが低いので基本的にはwhistleし難いのです。バッハと同時代の人はwhistlingを気にすることなく弾けたことが容易に想像できます。現代のE線は強靭な音を求めて太く、テンションが高くなっており、whistleし易いのです。
基本的にA,D,G線はwhistleし難いです。これはテンションが低いことに加え、弦が巻き線構造となっているからです。従って細いゲージでテンションの低いアルミ巻きE線はwhistleし難いことになります。
複数のサイトでwhistlingし難いスチールE線として紹介されているのは次の弦です。
・ピラストロ・ゴールド(ワンダートーン)・・・ゲージが細い
・ドミナント#132・・・アルミ巻き線
・カプラン・ソリューションnon-whistling e ・・・アルミ巻き線
私はエヴァピラッツイを使ってきましたが、とてもよくwhistleしてくれます(笑)。先日、試しにピラストロ・ゴールドに張り替えたところ、かなり改善しました。でも音楽要求に反する箇所が幾つかあります。次にカプランnon-whistlingを試しました。whistlingは皆無です。どんな弾き方をしてもwhistleしません。これには驚きました。
カプランnon-whistling KS311W 4/4M。ダ・ダリオ社より販売
パッケージ裏は透明です。
ループエンドは技術的に製造出来ないようで、ボールエンドのみの販売です。ループエンド・アジャスター用のアダプターが付属しています。
A,D,Gはエヴァピラッツイ・ゴールドです。音色が柔らかでカプランとの相性はとても良いです。但しエヴァ独特の強靭さはありません。E線が軽い弓圧でも発音してくれるので、全体的に弓圧のバランスが揃い、弾きやすくなった感じがします。
バッハを弾く時はカプランnon-whistlingがおススメです。ストレスフリーで音楽に集中できます。E線の音色が鋭くなく柔らかなので室内楽にも向いていると思います。
(追記)
カプランnon-whistlingはここ↓で買いました。
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楽器、弓、弦、試奏、メンテ、小物
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この音には僕も随分悩まされてきました〜
E線解放を含むAやEの和音を弾くと必ずと言って良い程E線が裏返ります。
(アップで弾くとあまり鳴らないのは不思議ですが…)
ビオラだとこの音は全く鳴りません。
どんな和音を弾いても安心です^^
しかしNon-whistlingという弦があるとは知りませんでした!
僕も試してみます〜♫
2013/10/31(木) 午後 8:02 [ ビオラブーケ ]
レッスンで、弓の毛を弦にしっかりグリップさせてから弓を動かせば裏返らないのよ。と何度もアドバイスを受けてきましたが…どうしても裏返る場所ってあります。
現在はピラストロゴールドを使っていますがカプラン、試してみます。
そう、エヴァピラッチは裏返りますよね。
大変に参考になりました。ありがとうございます。
2013/10/31(木) 午後 9:07
ビオラブーケさん、アップボウでは弓圧が増す方向なので正常振動になりやすいのでは?ビオラは5度低く弦のテンションが低いのでwhistlingし難いと思います。販売サイトを記事に追加しました。
2013/11/1(金) 午前 6:18 [ jack_violin ]
おやゆび媛さん、裏返らない方法はあるのですが、音楽的要求と矛盾する場合が困りますね。ピラストロゴールドでもだめならカプランです。販売サイトを記事に追加しました。
2013/11/1(金) 午前 6:19 [ jack_violin ]
FugaではなくパルティータIIのSarabandaですが、2つ目の和音で必ずEが裏返るのに困ってたどり着きました。
Non-WhistlinGが欲しくなり検索しましたが中々見つからず・・・
どうやら(現在は?)Kaplan Solutionsという銘柄になっているようですね。その二つをつなぐ記事はまだ見つけていませんが、パッケージの型番(KS311W)が同じなので同じなのでしょう。
早速試してみたいと思います。
2015/5/21(木) 午後 5:54 [ Shige ]
> Shigeさん
Kaplan Solutionsという銘柄で間違いありません。パッケージの型番も(KS311W)です。ご参考までに通販ショップi-love-stringsの購入ページのスクリーンショットを本文に追記しました。
2015/5/22(金) 午前 4:53 [ jack_violin ]