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Simon Fischerというヴァイオリニストが書いたスケールブックに重音をテーマにした"Double Stops"があります。その本の表紙には重音(Double Stop)で生じる結合音(差音)がデザインされています。結合音は重音を弾いた時に生ずる第3の音(the Third Tone)で、Tartiniが発見したのでTartini Toneとも呼ばれいます。結合音はレオポルド・モーツァルトもその教科書で言及しており、重音の正しい音程を取る際の指針になるとしています。レオポルドは3度、4度、増4度、6度、10度の結合音を楽譜に示していますが、減5度については文献が無かったので、以前私が算出しこの ブログ記事 で「下の音の長3度下」と書きました。 この本の表紙をよく見ると減5度が示されていました。この図の出典は明らかではありませんが。 CisとGの結合音をAとしています。私がかって計算した通り、下の音Cisの長3度下です。ニ長調の7-limit 純正律では属7和音A,Cis,E,は振動数4:5:6:7となることを根拠にしています。属7は7度という不協和音を含むものの振動数が単純な整数比になるので響きがとてもよいのですが、Gは旋律で用いるGよりもかなり低くとる必要があるので、Gだけ単独に聴くと音程がはずれているように聞こえます。従って弦楽器の教育現場では指導が難しくあまり用いられないようです。しかし管楽器、特に吹奏楽の分野ではド・ミ・ソのミを低く5-limit純正律に近づけるのと同様、属7でソ・シ・レ・ファのファを低くして7-limit 純正律に近づけるよう求める指導者もいるようです Simon Fischerも Violinist.comのインタヴュー記事 でこれら結合音の適用は楽曲のコンテクストによると述べています。 バッハのソロソナタ・パルティータや弦楽合奏においてハーモニーを重視する場合は重音・和音を純正律に取ることもありますが、横の旋律の流れとして耳に聞こえる場合・・・即ち速いフレーズや響かない環境・・または音楽の緊張を強調する場合においては、むしろ平均律やピタゴラス律で表現すべきこともあるということを示唆しています。フレーズによって旋律と和声のどちらを重視するのか、どのように妥協を図るかが演奏者の個性でもあります。 Simon Fischerはジュリアードで教育を受けており、インタヴュー記事には同門の私の師I先生の教えと共通する有用なコメントもあります。 「重音スケール練習によって単音も容易に弾けるようになる。特に3度重音と8度重音は2弦にわたるフィンガリングにおける手の良好な位置決めに役立つ。」
「練習は筋トレではなく脳トレである。すべては脳の指示が筋肉に送られるから。」
大人の学習者にとって大いに励みになるコメントもありました。 「これらの技術の習得はいつから始めても良い。大人のほうが子供より習得が速いことすらある。技術習得に大事なことは、それを身につけたいという意思と、技術に関する明確で豊富な情報と、専念できる練習時間であり、年齢には依存しない」
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弦楽器の音律・物理
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