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俺の誕生日。
たぶん物心ついて以来、初めて心待ちにしていたといってもいいであろうその日、
向かいのソファーに牧野を座らせ、俺は腕組みしてカウチに座っていた。
牧野の横には半分夢うつつで、あさっての方向を向いてる類が座ってる。
一応、責任者の一人だから・・・としれっとして座るこいつをどかせるのも、
まだ少しぼんやりしている今はめんどくさい。
類の反対側には牧野を気づかうように、優紀ちゃんがそっと寄り添っている。
司がふてくされて「しつけーぞ、総二郎!」って叫んでるのを、あきらと滋が
二人かかりで押さえつけ。
桜子がそ知らぬ顔をしつつも、内心ではこの成り行きをおもしろがっているのは
わかっていたが。
何で俺が薬をかがされて意識を失い、あきらの屋敷に運び込まれる羽目になったのか、
そのいきさつをはっきりさせないと気がすまなかった。
「だ、だから・・・西門さんのプレゼント、何がいいか想像もつかなくって。
花沢類に相談したんだよ。だいぶ前に、西門さん、手作りのものなんてぞっとするって
言ってたし・・・。でも、あたしは貧乏で、そんな立派なもの用意できるお金なんて
ないしっ。」
たしかに昔、そんなことを言ってたが。
そんなの、遊びの女から手作りのものもらったってうれしくないだけで、お前から
なら大歓迎だってことぐらいわかれよ。
でも、そんなことはこいつらの前で言えるはずもなく。
「そしたら花沢類が一緒に考えてくれて、後に残らないものならいいだろうってことに
なって・・・内緒でみんなでサプライズのお誕生日会しようってなったんだよねー。」
ねーってなんで、ここでお前と類が一緒に顔を見合わすんだ!?
そもそも、類のヤロー、俺が牧野からのプレゼントを嫌がることなんてあるはずが
ないこと、先刻承知だろうに。
わざわざこんなまどろっこしいことするなんて、ぜったい嫌がらせだ。
「牧野に詳しいことを教えると、すぐに総二郎にばれると思ったから、お膳立ては
俺たちに任せてもらった。場所はあきらが提供してくれて、三条や大河原や牧野の友達は
部屋の飾りつけして。で、肝心の総二郎にばれないようにここに連れてくるには
どうしたらいいかな・・・て悩んでたら、司がいい考えがあるって言うから。」
俺も忙しくて、どうやって連れてくるのか司にまかせっきりにしちゃったから・・・
なんて類は言ってるが。
うそくせー。
だいたい今だに暇さえあれば寝てるお前が忙しいなんて、ありえねぇ。
「総二郎がだまってうちのSPについてくりゃ、こんな誘拐みたいなことにはならな
かったんだよ!ったく、大げさなヤローだぜ。」
「司・・!」
あきらがあわてて司の口を押さえようとしたが、しっかり聞こえたぞ、その暴言。
あの状況でノコノコついてく奴がいたらお目にかかりてーよ。
もう一本俺の青筋が増えそうになったそのとき。
「ごめん、西門さん。ほんとにこんなことになっちゃって・・・。」
そういいながら、牧野が半泣きになってる。
こいつは、ほんとにこんなことになることなんて想像もしてなかったんだろう。
まんまと類に乗せられただけで。
だいたい本人にばれないように会場につれてくるのに、SP使って力ずくでって
考える奴なんか、世界広しといえどあそこにいる道明寺司サマぐらいだろうしな。
「だからさぁ、そろそろお祝いしようよ。ニッシーの生まれた年のとびっきりの
ワイン、ちゃんと用意してるよ。」
「それに、つくし、西門さんのためにケーキ作ったんですよ。」
「西門さん、ご覧になります?」
そういいながら桜子が持ってきたのは、年の数だけろうそくが立てられたイチゴと
生クリームのケーキで。
チョコレートで「Happy Birthday, Sojiro」って書いてある。
「美作さんのお母様に手伝ってもらったから、きっとおいしいと思う。」
こんなの、ほんと小学校低学年以来で・・・思わず赤くなりそうになりつつも、
不安そうに俺を見つめている牧野と目があって、毒気が抜けた。
「ありがとう。」
まだ少し釈然としない気持ちで言ったその一言で、太陽の光がさしたかのように牧野の
顔がぱあーっと明るくなったから、なんだか怒ってるのも馬鹿馬鹿しくなった。
「じゃあ、ろうそくに火をつけるから、ニッシー、思いっきりふーってするんだよ!
滋ちゃん、カメラマンするからね〜」
げっ・・・マジかよ。
本格的に、ガキのお誕生日会みたいじゃねーか・・・。
やる気満々の滋は無視できたとしても、期待に目を輝かしている牧野をがっかり
させるのは忍びなく・・・悪友たちと性悪女の揶揄する視線を感じつつ、俺は道化に
徹することを心に決めた。
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