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今日はクリスマスイブ。
いろいろと不景気な話ばかりが聞こえてくるけれど、一歩町にでればやっぱり
きれいなイルミネーションと仲の良さそうなカップルが目につく。
あちこちで流れるクリスマスソングも心を華やかにする、特別な日。
・・・それなのに。
滋さんお気に入りのお店の個室で集うのは、いつもの4人組。
飛び切りの美女から親しみやすい庶民派ガールまで・・・けっしてモテなくはない
年頃の女の子たち。
私はとても楽しいの。
楽しいけれど・・・何ゆえに・・・この面子?
そしてなぜに中華料理?
北京ダックから冷菜盛り合わせ、点心、チャーハン、フカひれのスープに
マーボー豆腐などなど・・・たんとご馳走の盛られた真っ白い中華円卓を無意味に
くるくる回しながら、つくしは喜んでいるけれど。
「つくし・・・今日、よかったの・・・?」
思わず聞いてしまったのは、道明寺さんとつきあっているはずのつくしがこんな
ところにいてもいいのかと心配になったから。
「いーの、あんな馬鹿男!花沢類と仲良くするなとか、なんだかわかんない言いがかり
つけて喧嘩を吹っかけてくるんだもん。」
急にプンプンと怒りだしたつくしは、携帯をポンッと机に放りだした。
「先輩、ここ、圏外ですけど。」
いつも以上に容赦ない指摘を繰り出す桜子さんは、どうやらかなりご機嫌斜めみたい。
「桜子ぉ、そんなにカリカリしない。元はといえば、4股かけてた桜子が悪いんだからさぁ」
ホットワインを片手にゲラゲラと朗らかに笑う滋さんの一言は、見事に桜子さんの
地雷を踏んだみたいだった。
「だいたい、付き合ってる相手に興信所つけて身辺調査なんてします!?
結婚するわけでもないのに。そ・の・う・え!」
そこで桜子さんは手にした中華箸をへし折りそうな勢いでダンッと机を叩いた。
「残りの3人に、その事実をばらしたりします!?人権侵害もいいとこですよ、
あの陰険マザコン男!」
「だから桜子、ここに来たんだね。だってちょっと前までクリスマスイブに女で
集まるなんてありえません・・・なんて言ってたじゃん。」
つ、つくし。
桜子さんの顔が般若化してるからっ。
なんとなく不穏な空気をはらむクリスマスパーティーの雰囲気を一掃したくて、
私は必死にネタをひねり出した。
「ま、まあまあ。来年こそはみんな、がんばりましょうね。そうそう、ほら、
クリスマス、誰と過ごしたいですか・・・!?」
いつぞやもよく似たような話をしたことがあるような気もするけれど、なんとか
しなきゃと、この中で一番くったくのなさそうな滋さんに話をふる。
私の必死の願いが通じたのか、滋さんはから揚げをつかんだまま元気いっぱいに
答えてくれた。
「えー、やっぱり、司とカナダあたりでオールナイトスキー大会かな〜!」
いや〜ん、滋さん!
それ、ちょっとつくしの前で言うのは・・・ほら、つくしの顔がビミョウに
ひきつってます。
「今カノを前に堂々と浮気宣言ですか?」
それで少し気分が上向いたらしい桜子さんがネコ目を光らせながら話に参加してきた。
「桜子、うがった考えしすぎ。文字どおり夜通しナイトスキーで滑りまくって、
朝日を見たいだけだって。別に他に参加したい人がいたら、誰でもウェルカム。」
ウィンクしてみんなを見ている滋さんだけど、だれも参加の意思表明をしていないみたい。
そんな恐怖の体育会合宿みたいなのは私もちょっと・・・。
「まあ、好きにしてください。どうせ優紀さんは西門さんとクリスマスディナー&
イルミネーション三昧なんでしょう?もういいですから。」
クリスマス前に一挙に4人の彼氏を失くした桜子さんの鬱屈はすさまじく、私は
口をはさむことすら許してもらえそうになかった。
まあ・・・そのとおりなので、言い返せないのが悔しいところでもあるんだけど。
「西門さんのことだから、きっとデートはかけもちだよ。1日に5人とか。
やめといたほうがいいって、優紀。」
何気に毒舌のつくし。
「そんなこと望んでないから。そういうつくしはどうなの?」
そう、本来なら、あなたこそ道明寺さんと過ごしてるはず・・・。
「クリスマスかぁ・・・。やっぱ、クリスマスといえば花沢類だよね。」
「「「へっ!?」」」
予想外の回答に、その場にいた全員が絶句する。
「やっぱりさ、クリスマスの雰囲気と花沢類の天使の容貌ってぴったりだもん。
どこかに出かけたりしなくても、クリスマスツリーの横で暖炉にあたりながら、
ミルクティー飲むだけでも幸せかも・・・。」
「つまりは、花沢邸でお家でまったりクリスマスをしたいってわけですね・・・。」
誰もが『あなた、本当は花沢さんに恋しちゃってるでしょう・・・!?』と
心の中でつっこみつつ、うっとりとその光景を想像しているらしいつくしを凝視した。
「さ・・・桜子はさあ、どうしたいわけ?」
彼女なりにいろいろ考えて暗澹たる気分に陥ったらしい滋さんが慌てて話の矛先を
変えた。
けれど、その時。
私たちは、たしかに桜子さんの背後に黒い影を見た気がした・・・。
「ふふふ・・・。」
そんな不穏な微笑みとともに桜子さんが指名したのは、意外な人物。
「もちろん、美作さんですわ。」
「「「・・・?」」」
花沢さんとのほのぼのクリスマスを想像していたに違いないつくしまでもが
我に帰り、桜子さんの次の言葉をじっと待つ。
「お財布(=美作さん)をお供に、めくるめくハッピーショッピングクリスマス!
○ャネルもグッ○もブル○リもこの桜子様の前にひれ伏すのよ!
しかもポーター(=美作さん)つき!
なんて素敵なクリスマスでしょう!」
ほーほーほーっと高笑いをする桜子さんの様子は、まさに現代のマリーアントワネット。
私の頭の中では、なぜかあのユー○ンの名曲が、ビミョウに歌詞を変えてエンドレスで
まわっていました・・・。
いつになく疲れきって女子会を終えたとき、私は二度とクリスマスに集まるのは
やめよう・・・と心に誓ったの。
【Merry Xmas!】
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