Green W.

遅くなったけれど類、お誕生日おめでとう!(しかしいまだに話は総つく。しかも季節は12月・・・)

3.短編集【いろいろ】

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 今日はクリスマスイブ。

 いろいろと不景気な話ばかりが聞こえてくるけれど、一歩町にでればやっぱり

きれいなイルミネーションと仲の良さそうなカップルが目につく。

 あちこちで流れるクリスマスソングも心を華やかにする、特別な日。

 ・・・それなのに。

 滋さんお気に入りのお店の個室で集うのは、いつもの4人組。

 飛び切りの美女から親しみやすい庶民派ガールまで・・・けっしてモテなくはない

年頃の女の子たち。

 私はとても楽しいの。

 楽しいけれど・・・何ゆえに・・・この面子?

 そしてなぜに中華料理?

 北京ダックから冷菜盛り合わせ、点心、チャーハン、フカひれのスープに

マーボー豆腐などなど・・・たんとご馳走の盛られた真っ白い中華円卓を無意味に

くるくる回しながら、つくしは喜んでいるけれど。

「つくし・・・今日、よかったの・・・?」

 思わず聞いてしまったのは、道明寺さんとつきあっているはずのつくしがこんな

ところにいてもいいのかと心配になったから。

「いーの、あんな馬鹿男!花沢類と仲良くするなとか、なんだかわかんない言いがかり

つけて喧嘩を吹っかけてくるんだもん。」

 急にプンプンと怒りだしたつくしは、携帯をポンッと机に放りだした。

「先輩、ここ、圏外ですけど。」

 いつも以上に容赦ない指摘を繰り出す桜子さんは、どうやらかなりご機嫌斜めみたい。

「桜子ぉ、そんなにカリカリしない。元はといえば、4股かけてた桜子が悪いんだからさぁ」

 ホットワインを片手にゲラゲラと朗らかに笑う滋さんの一言は、見事に桜子さんの

地雷を踏んだみたいだった。

「だいたい、付き合ってる相手に興信所つけて身辺調査なんてします!?

結婚するわけでもないのに。そ・の・う・え!」

 そこで桜子さんは手にした中華箸をへし折りそうな勢いでダンッと机を叩いた。

「残りの3人に、その事実をばらしたりします!?人権侵害もいいとこですよ、

あの陰険マザコン男!」

「だから桜子、ここに来たんだね。だってちょっと前までクリスマスイブに女で

集まるなんてありえません・・・なんて言ってたじゃん。」

 つ、つくし。

 桜子さんの顔が般若化してるからっ。

 なんとなく不穏な空気をはらむクリスマスパーティーの雰囲気を一掃したくて、

私は必死にネタをひねり出した。

 「ま、まあまあ。来年こそはみんな、がんばりましょうね。そうそう、ほら、

クリスマス、誰と過ごしたいですか・・・!?」

 いつぞやもよく似たような話をしたことがあるような気もするけれど、なんとか

しなきゃと、この中で一番くったくのなさそうな滋さんに話をふる。

 私の必死の願いが通じたのか、滋さんはから揚げをつかんだまま元気いっぱいに

答えてくれた。

「えー、やっぱり、司とカナダあたりでオールナイトスキー大会かな〜!」

 いや〜ん、滋さん!

 それ、ちょっとつくしの前で言うのは・・・ほら、つくしの顔がビミョウに

ひきつってます。

「今カノを前に堂々と浮気宣言ですか?」

 それで少し気分が上向いたらしい桜子さんがネコ目を光らせながら話に参加してきた。

「桜子、うがった考えしすぎ。文字どおり夜通しナイトスキーで滑りまくって、

朝日を見たいだけだって。別に他に参加したい人がいたら、誰でもウェルカム。」

 ウィンクしてみんなを見ている滋さんだけど、だれも参加の意思表明をしていないみたい。

 そんな恐怖の体育会合宿みたいなのは私もちょっと・・・。

「まあ、好きにしてください。どうせ優紀さんは西門さんとクリスマスディナー&

イルミネーション三昧なんでしょう?もういいですから。」

 クリスマス前に一挙に4人の彼氏を失くした桜子さんの鬱屈はすさまじく、私は

口をはさむことすら許してもらえそうになかった。

 まあ・・・そのとおりなので、言い返せないのが悔しいところでもあるんだけど。

「西門さんのことだから、きっとデートはかけもちだよ。1日に5人とか。

やめといたほうがいいって、優紀。」

 何気に毒舌のつくし。

「そんなこと望んでないから。そういうつくしはどうなの?」

 そう、本来なら、あなたこそ道明寺さんと過ごしてるはず・・・。

「クリスマスかぁ・・・。やっぱ、クリスマスといえば花沢類だよね。」

「「「へっ!?」」」

 予想外の回答に、その場にいた全員が絶句する。

「やっぱりさ、クリスマスの雰囲気と花沢類の天使の容貌ってぴったりだもん。

どこかに出かけたりしなくても、クリスマスツリーの横で暖炉にあたりながら、

ミルクティー飲むだけでも幸せかも・・・。」

「つまりは、花沢邸でお家でまったりクリスマスをしたいってわけですね・・・。」

 誰もが『あなた、本当は花沢さんに恋しちゃってるでしょう・・・!?』と

心の中でつっこみつつ、うっとりとその光景を想像しているらしいつくしを凝視した。

「さ・・・桜子はさあ、どうしたいわけ?」

 彼女なりにいろいろ考えて暗澹たる気分に陥ったらしい滋さんが慌てて話の矛先を

変えた。

 
 けれど、その時。

 私たちは、たしかに桜子さんの背後に黒い影を見た気がした・・・。

「ふふふ・・・。」

 そんな不穏な微笑みとともに桜子さんが指名したのは、意外な人物。

「もちろん、美作さんですわ。」

「「「・・・?」」」

 花沢さんとのほのぼのクリスマスを想像していたに違いないつくしまでもが

我に帰り、桜子さんの次の言葉をじっと待つ。

「お財布(=美作さん)をお供に、めくるめくハッピーショッピングクリスマス!

○ャネルもグッ○もブル○リもこの桜子様の前にひれ伏すのよ!

しかもポーター(=美作さん)つき!

なんて素敵なクリスマスでしょう!」

 ほーほーほーっと高笑いをする桜子さんの様子は、まさに現代のマリーアントワネット。

 私の頭の中では、なぜかあのユー○ンの名曲が、ビミョウに歌詞を変えてエンドレスで

まわっていました・・・。



 いつになく疲れきって女子会を終えたとき、私は二度とクリスマスに集まるのは

やめよう・・・と心に誓ったの。


【Merry Xmas!】

3-9.重すぎる愛【後編】

「花沢物産が芸術振興支援事業として、劇団をお持ちなの、ご存じですよね?

私、たまたまその劇団の舞台を先日見に行ったんですけれど・・・。

たしかこの方とそっくりな方が出演されていたような気がします。」

 桜子が確信をもって言う。

「・・・でも・・・花沢さんはどうやってつくしがお遍路に出たことを知ったんでしょう?」

 優紀が今までの話を総合したところ、つくしが直接類に知らせていなければ、滋に

徳島から連絡を入れたのを聞いていない限り、彼がつくしの動向を知りえるはずがない。

「そういえば、ちょっと前つくしが司からもらった携帯を水没させて壊しちゃって、

類君が代わりを用意したって聞いたよ。もちろん代金はつくしが払ったらしいけど。」


 ・・・沈黙に包まれる一同。
 
 全員の頭の中に『もしかして盗聴器・・・?』などという不穏な単語がめぐっている。

「そういや、あのばあさんにしたって不自然だよな。なんであんな人気のないとこを

一人で普通に歩いていて、しかも都合よく握り飯を持ち歩いてるんだ・・・?」

「確かにいくら牧野が強運の持ち主だといっても、いろいろタイミングよすぎる。」

 まさか劇団員とコスプレセット・炊飯用具一式もろもろをつくし防衛対策として

四国まで送り込んだりしてないよな(ですよね)、と誰もが思いながらも、

なんとなく口にすることはできない。

 
 そうこうしているうちに一時停止されていた画面が生中継画像に切り替わり、

再び画像が動き出した。

 あいかわらず黙々とお遍路道を歩き続けるつくしと花沢物産劇団員(仮名)。

 やがて画面から携帯の呼び出し音「カノン」が流れてくる。

 発信者を確認して、機嫌よく電話に出るつくし。

『もしもし〜、花沢類?久しぶり。あたし、今、四国にいるんだ。』

 まさか自分の行動がばれているとも知らず、のんきな顔で道ばたに立ち止まっている。

 道中でおこったエピソードを機嫌良く話すその様子に、

『そんなことは相手はそっこく承知だぞ(です)。』

となんとなく知ってはならないことを知った気分で画面をみつめる一同。

 しかし次の瞬間、つくしの顔がさあっと変わった。

 『えっ!山田教授の経済原論が集中講義に変わった!?明後日からって!?

でも、もともと後期の開講で10月から始まる授業のはずだけどっ!

なんで夏休みに急に変更になるの!?困るよ!』


 つくしの言動から察するに、彼女が履修登録している授業が急遽あさってから

開講されることになったという連絡らしかった。

 その授業、必修科目だから落とせない〜、とかお遍路の途中なのに〜、と

ワアワア騒いでいたつくしだが、やがてあきらめたようにしおらしくこくりこくりと

受話口に耳をあてたまま、うなずいている。


 そして次に彼女の口から出た言葉は。

『わかった。しかたないよね。今から東京に帰る。・・・きっと高速バスに乗れば

間に合うと思う。わざわざ知らせてくれてありがとう、花沢類。東京に着いたら

連絡するから。』
 
 そして電話を切って、花沢物産劇団員(仮名)に別れを告げるつくし。

『残念だけど、のっぴきならないことが起きちゃったから、帰らないといけないの。

続きのお遍路はまた別の機会に挑戦するから・・・。このみちゃん、あたし、東京に

帰るけど、気をつけてね。変な人とかについていったらだめだよ。』

 それはお前だろ!と画面前で全員が突っ込んでいたことを知る由もないつくしは、

菅笠をとり、疑惑の女の子ににこやかに別れの挨拶をしてもと来た道を引き返していった。


 その間、微妙な静けさに包まれた美作邸、巨大モニター前。

「あの・・・素朴な疑問なんですけど、必修科目って卒業するのに絶対に単位を

とっておかないといけない授業ですよね・・?それが急にスケジュールを変えて

夏休み期間に開講されたりするんですか・・?」

 まさか花沢さんて、つくしの履修状況まで把握してるのかな・・・と若干

ひき気味の優紀の疑問はもっともだ。

 もともと10月から始まるはずの、卒業に必要不可欠な科目が、かってに予定を

変更されて夏休みに実施されたのでは学生としてはたまらない。

「普通はないな。・・・けど、経済的事情で留年するわけにはいかない牧野を

呼び戻すには一番効果的な方法だと言える。」

 考えたくない想像をしながら、あきらが重々しく宣言した。

「じゃあ、類君が嘘をついたわけ・・?」

 意外と人のいい滋の想像よりも、桜子そして総二郎の予想は上をいっていた。

「・・・だったら良いですけどね。・・・山田教授ってゲイじゃないかと、とかく

いろいろ噂のある方ですよね。」

「ちなみに類のことをえらく気に入っていて、所属する学部の専門は違うのに、

ちょこちょこ連絡が来るって言ってたぞ。普段つれない類が手の一つでも握らせて

やったらそのくらいのことはしそうな勢いだったな」

 嫌そうな顔をしていた幼なじみの顔を思い起こしていた総二郎の頭の中には、

なぜか類が担当教員にキケンな取引を申し出ている光景がありありと浮かんでいた。

「まさか類君・・。わざわざつくしを呼び戻すために授業予定を変更させた、とか。」

 ははははは・・・・と乾いた笑いが滋の口からこぼれる。

 ありえない、とつぶやく優紀の声はうつろに室内にこだました。

「たぶん、類は怒り心頭ってとこだな。滋・・・おまえ、覚悟しといたほうがいいぞ。」
 
 これ以上係わりたくないとばかりに総二郎は立ち上がった。
 
 優紀も気の毒そうに黙礼だけ残し、彼の後に続いた。

「安心してください。骨は拾って差し上げますわ。」

 力強くそう言い放ち、席をたったのは桜子。

 そんな薄情な友たちを責めるでもなく、

「怒った類君、司とどっちが怖いんだろ・・・・。」

 とつぶやき、滋もよろよろと玄関にむかった。


 そして。

「なんでもいいからこのバカデカイ画面、持って帰れって!」

 あとに残されたあきら様のむなしい叫びだけが響き渡りましたとさ。


【おそまつさまでした】

3-8.重すぎる愛【中編】

「なるほど、それで類はウチによばなかったわけだ。」

「たしかに。牧野に並々ならない『友情』を注いでる類がこのことを知ったら、あいつを

危険にさらしたってことで、どんな報復を受けるかわかったもんじゃないからな。」

 幼なじみの性格を知り尽くした二人の言葉に、ブンブンと滋が力強く頭を上下に振る。

「でもつくしが素直に帰ってくるかどうか・・・。」

 なぜか類に関する感想にだけは同調できた優紀は心もとなそうだ。

「帰ってこないと困るよ〜!とにかく、この録画VTR見て!」

 そう言うなり、滋は手元のリモコンを操作して画面を切り替える。

 画面右下に 2008年×月20日 の表示。

 いったい誰がつけたのか左上にはご丁寧にタイトルも表示されている。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

その1 怪しい男編

 灼熱の日差しの中、つくしは黙々と歩いていた。

 撮影者の絶妙なカメラワークでつくしの顔がアップで映し出される。
 
 汗が滝のように頬を伝い、かなり疲れた様子だった。
 
 その時、後方から見るからに怪しい、スモークをはったワゴン車を運転する男が

車を横付けし、乗っていかないかとつくしに声をかける。

 一瞬迷うそぶりをみせたものの暑さには勝てなかったらしく、彼女がこくりと

うなずきそうになったそのとき、タイミング良く自転車に乗った婦人警官が通りかかった。

 ワゴン車を不審げに注視する婦人警官に気付いた男は、挨拶もせずにつくしを

残して走り去る・・・

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「・・・たしかにお接待っていう習慣は今なお残っているようですけど・・・。

普通は乗りませんよね、この状況なら・・・。」

 桜子は顔を引きつらせている。

「まだまだ序の口だから。」

 さらに滋は別のVTRをまわす。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

その2 拾い食い編

 ブツブツと言いながらひたすら歩き続けるつくし。

 よくよく聞くとその声は「お腹がすいた・・・。お腹がすいた・・・」と意識朦朧と

つぶやいているように聞こえる。

「ちなみにこのときのつくしは昨日の晩から何も食べてないから。」

 と滋の解説。

 やがて歩き続けるつくしの前に、お地蔵様の前に供えられたミカンが二つ・・・。

 魅入られたようにその前で足を止め、ミカンをじっと凝視するつくし。

 10数秒あまりその状態がつづき、やがて何かを捨てさったらしい彼女がミカンに

手を伸ばそうとしたその時。

「何をしてるんじゃ。」

 後ろから叱責する年配女性の声。

 はっと我に返ったつくしは、赤面しながら

「昨晩から何も食べてなくて途中にお店もなくてつい出来心で・・・もう二度としません」

などと三文刑事ドラマの犯人ばりのセリフを口にしている。

 お供え物に手を出したらだめだと、こんこんと諭した老婆は、どこからとりだしたのか、

おにぎりを二つ彼女に差し出した。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「・・・知らない人間の差し出すものを食べるのも俺的にはNGだけど・・・。

いつ置かれたかもしれないお供えものを食べようとするなんて、人のすることとは

思えない・・・。」 

 おいしいおいしいと食べるつくしを見て、神経質なあきらは気分の悪そうな顔を

して口元を押さえている。

「まだまだあるけど、とりあえずあとこれも見てみて。」と滋は次の録画を映し出した。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

その3 怪しいバイト編

 田舎の地方都市にいるつくし。

 しかしその様子は、慌てふためいていてあちこち何かを探し回っている。

 やがて一言。

「お財布落とした・・・。」

 青ざめてとぼとぼと歩いているつくしの目にとまったのは、電信柱に張られた

桃色の求人広告。

『完全日払い制 時給2500円。送迎つき。18歳以上の明るく元気な女の子募集。

 ルンルンくらぶ 0×××-××-××19』

 吸い寄せられるようにその広告の前で立ち尽くす。


「おいおい、やばいだろー、それは明らかに。」
 
 あんぐりと口をあけてつくしの言動を見守る総二郎。

 そんな驚愕の一同の思いを知るはずもなく、今まさにつくしがその電話番号を

メモしようとしたその時。

「すいません。さっき道でこれを落としませんでした?」

 同じくお遍路姿の若い女性がつくしに財布を差し出した。

「あ・・・ありがとうございます!これ、あたしのです!!」

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 涙を流さんばかりに喜ぶつくしを見て、はあ・・・と画面の前で全員脱力した。

「結局、この女の子と一緒にしばらくまわることになったらしいんだ。まあそれで、

ちょっとは安心してるんだけど。」

 たしかに再度切り替えられたLIVE映像を見ると、遠景で捉えられた画像には

その女性がつくしの後ろについて歩いている姿が映し出されている。

「こんな危なっかしい先輩を一人で野放しにしておくわけにはいきませんね。

そっこく連れ帰りましょう。」

 心なしか握りしめた拳をふるわせながら桜子が静かに言い放った。

「さすがに無茶はしないと思うんですけど・・。でもやっぱりつくしは常識で

測れないところがあるから・・・。」

 善良な市民たちがうーんとうなってつくしの説得方法に頭を悩ませ、

桜子が『強制送還ですね』などと不穏なことまで考えている中、一人まったく

関係のないことを考えていたとしか思えない冷静な男が口を開いた。

「おいちょっと待て。・・・一番最初に出てきた婦人警官と、いま牧野と一緒に

まわってる女、服装や化粧は変えてあるけど同一人物じゃないか?」

 女性に関しては百戦錬磨の総二郎が、漏らしたその一言。

 それを受けて女遊びでは人後に落ちないあきらも同調する。

「言われてみれば・・そうかもな。滋、もう一回一番目のVTR回してみろよ。」

 あわてて滋が再度一番初めの録画を映し出し、ついでに最新機能を駆使して、

ここぞと思われるシーンで婦人警官の表情のアップを一時停止する。

 さらにどんな機能をつかったのか、今現在、つくしの同行者であるお遍路姿の

女性の顔のアップと並べて表示してみた。


 果たしてその結果は。

「間違いないな。」

「ああ、格好と化粧でかなりごまかされてるけど、鼻と耳たぶの形、それに顔の

輪郭が一緒だ。」

『その道のプロ』二人が太鼓判を押し、これはいったいどういうことかとみなで頭を

ひねる中、桜子が「あっ」と声をあげた。

3-7.重すぎる愛【前編】

『ちょっと相談したいことがあるから、明日の10時、あきら君ちに大集合〜!』

 そんなふざけた滋からのメールで、なぜか美作邸に集まる総二郎、あきら、桜子、

優紀の面々。

 巨大モニターの設置された応接室で思い思いの場所に陣取り、今回の呼び出し人で

ある滋が何を言い出すか待っていた。

 ちなみに家主であるあきらだけは、モニターを苦々しく眺めている。

 珍しく不機嫌な顔をしている彼が思い出していたのは、昨日の夜の出来事。

 
 家主の承諾をとらずに送信された突然の滋の集合メール。

 いくらなんでもそれはないだろうと抗議の電話をしたところ

『そろそろそっちに荷物が届くからよろしくー!』

と彼が反論する間もなく、有無を言わさず返り打ちにされたのだ。

 あぜんとしてプツリと切られた電話を見ていたのもつかの間。

 よく教育された使用人が日ごろの慎み深さを忘れたかのように、あわてふためいて

あきらのところに駆け込んできた。

「あきら様!なにか大河原さまからたいそう大きなお荷物と、それを設置するための

業者の方がこられておりますが・・・!」

 いやーな予感を覚えながらあきらが玄関に向かうと、間違いなく美作邸ほどの豪邸で

なければ運びこむことすら不可能であったであろう巨大なブツが鎮座していたのだった。

 呆然としつつもかろうじて正気を取り戻したあきらが謹んで引き取りを断ろうと

したところ、

『何が何でもお受け取りいただかないと、うちの会社はつぶれるんです・・・!』

 と涙ながらに業者に訴えられ、拒否することができなかったおひとよしの彼だった。


「なんなんだよ、滋。これでも俺ら、忙しいんだぜ。」

 最初はかたくなに出席を拒んでいたのに、度重なる滋の呼び出し電話&メールに

音をあげてデートを1つキャンセルして強制参加させられた総二郎がソファーに

行儀悪く寝転びながら、不機嫌そうに言った。

「それにニューヨークにいる道明寺さんはともかく、なんで花沢さんと先輩が

いらっしゃらないんです?」

 不審そうな表情を隠そうともしない桜子の指摘はいつも的確かつ容赦ない。

「・・類くんは、ほら・・なんか、あんまりこういうの好きそうじゃないし・・・。」

 歯切れの悪い滋の言葉に俄然興味をそそられたのか、むっくりと起き上がる総二郎。

 彼は自分の関わりのないところで起こるトラブルは大歓迎なのだ。

 彼の中の公式「無数に代わりのきくデート<馬鹿馬鹿しいお祭り騒ぎ」は

たとえ機嫌の悪いときでも決して揺るがない。

「牧野は?」

「そう!そう!それそれ!」

 待ってましたとばかり『まずはこれをみて』と、巨大モニターのスイッチを入れる滋。

 迫力満点・画質ばっちりの巨大な液晶画面に映し出された映像に、一同は唖然とした。

 全身白づくめの衣装に、菅笠をかぶって杖を持ちながら険しい山道を歩く

見覚えのあるその姿・・・。

「・・・これって、つくし・・・!?」

 ぶつぶつと口を動かしているのは、けっしていつもの独り言ではない。

「なあ・・・これって・・・・。」

「お遍路さん・・・ですね。」

 そう、つくしのそのいでたちはどこをどう見ても四国八十八ヶ所をめぐるお遍路さん

そのものだった・・・。

「なにやってんだ、こいつ。」

 驚きつつもおもしろがっている様子を隠そうともいない総二郎。

「ちなみに、これはLIVE映像。うちのSPを動員して、こっそりボディーガードがてら

隠し撮りしたのを中継で送らせてるんだけど。」

 こんなことに大金つぎ込むなんて、この人たちって・・・と、秘かに優紀が

金持ちの道楽の馬鹿さ加減にこめかみを押さえていたことはこの際、おいておく。

「なんで滋さんがそんなことをご存知で、隠れてSPまでつけてるんです?」

 桜子の口調は若干冷たい。

 それは大好きなつくしが勝手にお遍路に出かけていて、それを滋だけが知っている

のが気に入らないという、きわめて女子的な感情から発した言動だ。

「実はさぁ・・・。つくし、なんかいろいろ悩んでたみたいで・・・。」

 そのことに関してはここにいる全員が認識している事実だった。

 遠距離恋愛をすると宣言した司との関係は、つくしが大学に入学した後もいちおう

続いている。

 しかしNYと東京という離れた土地に暮らす二人が会えることはほとんどなく・・・

双方ともに不器用なこのカップルが折に触れ衝突しているらしいことは、周囲も

うすうす察していた。

「で、なにげなーく、うちのおばあさんがおじいさんの浮気とかひいおばあさんとの

嫁姑問題ですごく悩んでたとき、お遍路したらけっこうすっきりしたらしいっていう話を

しちゃったんだよね。そしたらなんか、つくし、急にやる気になっちゃったみたいで。

次の日、突然、旅立っちゃったんだ・・・。」

 折悪しく、大学は夏休み。

 確かにお遍路を決行するには絶好の時期とも言えた。

 まさか貧乏で現実的なつくしが、そんな行動に出るとは思わないじゃん・・・と

言い訳のように小さく付け加える滋。

「しかもつくしからお遍路さんにいってるって連絡もらったときは、つくしはすでに

徳島にいってて。ガイドブック一冊もって、着のみ着のまま、10万円だけもって

出てきたっていってたからびっくりしてさ!うちのおばあさんのときは運転手付きの

車でまわって、コックとか執事とか、いろいろ引き連れていってたから、まさか無謀にも

一人で旅立つなんて思わないじゃん・・・。」

 滋はパニックで半べそをかきかけている。

 ちなみにコック付きの自家用車でまわるお遍路さんなんて普通はないじゃ・・・

と思ったのは、やはり悲しいかな優紀だけだった。

「あわててSPを派遣して、何かあったらすぐに知らせるようにって手配したんだけど。

つくし、警戒心なさすぎで、もう見てられないんだ・・・。」

 心底疲れきった様子で、滋がつぶやいた。

 つくしがお遍路に旅立ってもう5日。

 その間、次々とSPから緊急連絡が入ったらしい。

 もしものときは滋の連絡を待つことなく危険を回避する手段を講じるように指示は

していたが、今のところSP出動までにはいたらず、持ち前の強運さでなんとか事なきを

えているらしい。

 とはいうものの、このまま次から次へとトラブルの種が発生していたら滋の

神経がもちそうに無い。

 なんとか穏便につくしを呼び返すための知恵を拝借したいということで、今回の集合に

相成ったというわけだった。

「じゃあさ、4月にウチで花見の席を用意するから、その時にF4に女装して

もらおーよ。衣装はウチにばっちりあるからさ。」

「・・・かなり強引な理由付けだけど、ちょっとみたいです・・・。」

 優紀ちゃんのために、ちゃーんとニッシーの隣の席をキープしとくからね。

 心ゆくまで女装したニッシーを堪能してちょーだい。


 せっかくみんな酔っ払ってきて調子が出てきたのに、珍しくつくしが冷静な意見を

言い出した。

 つくしは甘酒しか飲んでないもんねぇ。

「基本的にみんな嫌がると思うけどさ・・少なくとも花沢類はぜったいに無理だと思うよ。」

「そんなの、先輩が上目遣いでお願いしたら、一発ですよ。」

 ふふーんと胸を張って桜子は言うけど。

 そうかなぁ・・・・。

 ノリで何とかなりそうなニッシーとあきら君はともかく、意外と類君は手ごわそう。

「どうしても嫌がられたら、寝てる間に着付けて、そのまま運んだらいいんですよ。

役柄はもちろん、眠れる森の美女、オーロラ姫で。」

「間違いなく最初から最後まで寝続けてそうだけどね。」

 あーあ、なんでつくし、そんなにノリが悪いかなあ。

 金髪に青いドレスの類君、綺麗だと思うけどな・・・。


「お姫様つながりでいくと、ニッシーはやっぱりかぐや姫がぴったりじゃない?」

「え〜、それって茶道=和風っていう発想で安直〜」

 やっぱりノリの悪いつくしがここぞとばかりに反対したけど、桜子が意地の悪い笑顔を

うかべながら援護射撃をしてくれた。

「わかってないですね、先輩。かぐや姫ってのは、とんでもなくゴーマンな

お姫様なんです。言い寄る男たちに過剰な期待を持たせた挙句、無茶な条件を

出すだけ出して人生狂わせた後、結局、誰のものにもならず涼しい顔して月に帰った

究極の小悪魔ですよ。」

 おおー、まるでどっかの誰かみたいだ。

「そうだよ、つくし。蓬莱山の玉の枝とか仏の御石の鉢とかわかったような

わかんないような無理難題押し付けて、みーんなダメダシだもんね。」

「そっかぁ。言われてみれば、西門さんにぴったりかも。」

 優紀ちゃんは何かいいたそうだけど、もうこれは揺るがしがたい決定事項。

 大丈夫、十二単着たニッシーも、とっても綺麗だと思うよ。

 ついでに、お茶をたててもらおーっと。

「でも、やっぱりお姫様っていったら、金髪・ふわふわっていうイメージがあるから、

美作さんだよね。シンデレラとか、人魚姫とか、白鳥の湖のオディット姫とか。」

 つくしがその姿を想像しているのか、うっとりしたようにつぶやく

「お似合いになりそうですけど、なぜかどの姫もみんな幸薄かったり、

いじめられたりする、不幸モードがぬぐいきれない感じですが・・・。」

「でも、この集まりで、美作さんが肯定的に評価されるのって珍しいし、とりあえず

よかったですよね。せっかくなんで、シンデレラやってもらいませんか?」

 ノリノリの優紀ちゃんには悪いけど、なんで変身前のほうきを持ってツギのあたった

ドレスを着たBeforeシンデレラしか思い浮かばないんだろう・・・。

 まあ、いっか。


 その時、つくしが深刻な顔で切り出した。

「あのさあ、道明寺、どうする・・・?なんたって、あの道明寺だよ。本人がドレスを

着る着ないの問題以前に、あいつに似合う姫なんてこの世に存在しないよ!」

「・・・黒髪つながりで・・・白雪姫とか?」

 優紀ちゃん、気持ちはわかるけど、それ強引すぎだから。

「ありえないですね。衣装は似合いそうですけど、きっと七人の小人、全員、

蹴散らしそうですよ。百歩ゆずっても女ボスとして君臨して小人をあごで

こき使ってるでしょうね。」

「そもそも、乱暴で暴れん坊の姫君なんて、いないって。」

 つくしの顔はより深刻さを増してる。

 その深刻さに無言のプレッシャーを受けたのか、優紀ちゃんがまたおそるおそる口を開いた。

「じゃあ・・・アラジンのジャスミン・・?」

 優紀ちゃん、残念だけど、やっぱりそれもどうかと・・・。

「それこそほんとに髪の毛の色とあのはっきりした顔立ちしか道明寺さんと共通点

ないですよね。」

「大体、あたし、あんな半分ビキニみたいな服を着た道明寺なんて見たくないよ・・」
 
 つくしは半泣きだ。

「ええっと・・・つ、つる姫とか!?」

「それって意味わかりませんから!」



 さらにみんなで考えること約10分。

 最後に答えを出したのは、何気にお姫様ネタに詳しい乙女な桜子だった。

「グリム童話にでてくる無名の姫なんですけど、自分とかけっこをして、勝った相手と

結婚するなんて条件を出してた姫なんてどうですか・・・?」

「ちなみに、負けちゃった人はどうなったの・・・・?」

「もちろん、死刑です。」

「・・・・。」

 なんだろう、このビミョウな雰囲気。

 とりあえず、場をなごまさなきゃ。

「まあまあ、それぞれ役柄決まってよかったじゃん!司はさー、とりあえずそれらしい

かっこうさせとこうよ。ほら、ブルマはいてティアラつけたらそれらしいじゃん!」

 せっかく私が盛り上げたのに、桜子が脱退宣言する。

「私は嫌ですよ。それこそ、私たちが道明寺さんに打ち首にされそうですから。

第一、みなさん、大事なこと忘れてません・・?」

 桜子がため息をつきながら言った。

「なによ〜、なんか問題ある?」

「問題も何も、まちがいなく女装したF4のほうが、みなさんよりぜったい美人ですよ。」

「!!!」

 ま、私はいい線いくと思いますけど・・・なんて桜子は付け加えていたけど。

 そんなことより、私たちより美人なF4・・・

 あり得る。

 っていうか、確実にそうなる気がする・・・!

 
 「だめじゃん!」



 こうしてこの壮大かつユニークな計画は、永遠に葬られたのでした。

 めでたし、めでたし。

 

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