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今日、牧野と総二郎の婚約を内輪で祝うパーティーが俺の家で開かれた。
桜子が妊娠していて、外に出るのもなんだから・・・という理由でウチが会場になった
わけだが、それで正解だったかもしれない。
滋や優紀ちゃんはもちろん、はるばるNYから司が、パリから類がやってきて散々飲んでわめいた。
(そう、あくまで わめいた、 だ。)
おおよその事情を知っていた優紀ちゃんは、素直に二人を祝って涙ぐんでいて、
その様は長年の女同士の友情を麗しく体現し、心温まる光景だった。
しかし。
あいかわらず滋は終始泣き通しで、「よかったねー」と叫びながら牧野を絞め殺さんばかりの
勢いで抱きついている。
最初は鷹揚に構えていて、さすがに大人になったな・・・と見直しかけてた司も、酔っ払ってくると
「なんで総二郎なんだ!?牧野、目を覚ませ!」と
これまた男泣きで牧野にまとわりついて総二郎に引き剥がされていた。
かとおもえば、類は類でおとなしく二人を祝っているような顔をしながら
「総二郎が浮気したら、俺がいつでも相談に乗るからね。嫌になったらいつでも俺のところにおいで。」
と相変わらず神々しいまでの笑顔で牧野にささやいている。
いくつになっても類の笑顔に弱い牧野がぽっと頬を赤らめたりしてるから、横で総二郎が思いっきり
嫌な顔をしていた。
そんな様子を見ながら、桜子は「ほんと、みなさん相変わらず先輩オタクなんだから。」
とあきれ半分、嬉しそう眺めている。
俺としては、さんざん二人の関係に気をもませられただけに、どうせこうなるなら
もっと早くどうにかしとけよ・・・という気がしないでもなかったけど。
結局、この二人がまとまるためには、きっと嫌になるぐらいまどろっこしいプロセスが必要だったんだろう。
水色のドレスを着て(ブルー系が二人のラッキーカラーらしい。バカップルか、お前ら。)、
総二郎に寄り添う牧野は体中から光を放っているようにまぶしい。
そんな牧野を眺めている総二郎は必死にクールさを装っているけど、どうしても
緩んでしまう顔は隠しようがないらしい。
でもまあ。
今でこそ、こんな風に笑っている二人だけど、ここまでの道のりは並の苦労じゃなかったはずだ。
総二郎も牧野もそんなことはおくびにも出さなかったけど。
二人の幸せそうな顔を見れて、ほんとによかったと思ってる。
阿鼻叫喚の(?)宴が終わって、なんとなく会場となった広間で一人ぼんやりしていると、ワインの
ボトルを手にした類が現れた。
「ねえ、あきら。ちょっと付き合ってよ。」
すでに目が据わってるだろ〜と心の中で突っ込みつつ、こいつがこんな風に酔った姿を見せるのが珍しくて、
一緒にソファーに座った。
桜子は一足先に部屋に戻っていたし、俺たちの中でも一番忙しい司はそのまま仕事にとんぼ返り。
優紀ちゃんは滋と二人で帰っていった。
今日の主役の二人は・・・言うだけ野暮ってもんだろう。
押し付けられたボトルを自分でついで飲みながら、横に座った男の様子を眺めると
不機嫌な猫のようにソファーに横たわっている。
「類、おまえ飲みすぎだって。」
何だって俺の役目はいっつもこうなんだろうな、と思いながら、ため息をついた。
「いいじゃん。だって、俺の10年にわたる片思いの失恋確定記念なんだから。」
その様子のかわいくないことといったら。
牧野に見せる100分の1でいいから、俺にもちょっとぐらい愛想よくしてみろよ。
俺の嘆きを知るはずもなく、あふれるぐらいドボドボとグラスにワインをついで、がぶがぶ飲む類。
そいつは俺のコレクションの中でも極上品なんだから、せめてもうちょっと味わって飲んでくれ・・・
とむなしく願う。
「まあそう言うなよ。総二郎も牧野も嫌になるぐらい我慢した上で、やっとここまできたんだ。
っていうか、お前のそのしつこさにはびっくりだけどな。」
ちょっとぐらい酔っ払いに嫌味を言うのはこの際、許されるだろう。
「わかってるよ、そのくらい。なんたって俺は牧野の一部なんだから。」
どういうわけか、胸をはって威張る類に頭を抱えた。
もうこの我が儘野郎をどうこうしようとするのはあきらめた。
徹底的に飲ませてつぶしてやる。
確かに類の気持ちもわからないわけじゃない。
10年以上思い続けた相手が、親友(しかも「元」遊び人)と結婚するんだもんな。
こいつは一途に牧野を思い続けたっていうのに。
わかっちゃいても、いざ現実になると愚痴の一つでもいいたくなるっていうところだろう。
こんな風にごねている類だけど、実はこいつがこの二年間、そっと牧野を支えていたのを知ってる。
「お前と牧野のつながりは恋人とか肉親のつながり以上で、ある意味、お前はやっぱり牧野にとっちゃ
総二郎とは違った意味で大事な男だと思うぜ。それは二人ともよくわかってて、総二郎なんか隠してる
つもりでいるみたいだけど、いまだにお前に妬いてるもんな。」
「だいたい、さんざん女遊びしてた二人がとっとと結婚するなんて、理不尽だ。」
類のとばっちりがこっちまで飛んできて、苦笑した。
「悪かったな。悔しかったらお前も早くいい女見つけろよ。」
「牧野以外、興味ない。」
そう言って類はそっぽを向いた。
おまえはガキか・・・とあきれつつ、珍しい親友の様子がちょっとほほえましい。
しばらくして、そのままおとなしくなった類がやっと眠ったのかと、隣の部屋からブランケットを
持ってくる。
そのままそれを丸くなってる類の体にかけてやった。
こりゃ、二人の結婚式の日にはどうなるんだろうな・・・と今から頭が痛い。
ため息をついて、部屋を出ようとしたとき。
「あーあ・・・。いい人なんてつまんない。」
類の独り言のような呟きが聞こえた。
おいおい、一体、誰が、いつ、どこでいい人だったんだよ、と苦笑しながら。
俺にとっては、司も、総二郎も、おまえもかけがえのない幼馴染で親友だから。
どこまでも見守ってるからな。
そう心の中でつぶやいた。
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