Green W.

遅くなったけれど類、お誕生日おめでとう!(しかしいまだに話は総つく。しかも季節は12月・・・)

9.Tale of Flower

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 いつものことながら、これでもかっというほど引っ張ってしまいすいませんっ!

 そして最後までお付き合いいただきました皆様、どうもありがとうございました☆

 このお話、実はラブラブ馬鹿ップル編も考えているのですが、予定外に長引いたので、

後日、別建てで書くつもりです。

 ブログだとこういうとき不便・・・。
 
 なお、ブログは9月末辺りまで、更新ストップいたします。
 
 再開後は黒い総ちゃんの総つく話をUP予定です。

 (あ、あくまで予定ですが・・・。)

 しかし、そんなの書いた後、ほのぼのラブラブ話が書けるのだろうか、と若干不安も覚えつつ・・・。

 いずれにしましても、少し間が空きますが、よろしければまたお付き合いくださいませ。


 じゃみ

 お礼参りが終わるまで、特に会話らしい会話はしなかった。

 ただ花沢類からもらった合格祈願のお守りを返すかどうか迷った時、

「もう少し持っててよ。来年の今頃、一緒に返しに来よう。」と言われて、うんと頷いた。

 あたしたちの、小さな約束。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 車に戻って、助手席に乗り込む。

 時間的にはまだ4時限目の途中で、これからどうするのかな・・・?と思っていたら、

シートベルトを締めながら、ドライブしようと彼が唐突に言った。

 そしてあたしの返事を聞くことなしに車を動かし始める。

「どこへ行くの?」

「・・・箱根。」

 その単語で思い起こされるのは、当然のことながら道明寺と別れてすぐに行ったあの温泉旅館のことで。

 まさか泊まるとか言わないよね・・・!?と内心パニックに陥って横を見ると、花沢類が彼らしくも

なく人の悪い笑みを浮かべていた。

「だったらよかったんだけどね。冗談だよ。どっか適当に車を飛ばしたいだけ。・・・期待した?」

 どうやら完璧にからかわれたらしいと気づいて、あたしの中の何かが切れた。

「ちょっと、花沢類!さっきから、ほんとに行動に脈絡がないんだけど!あたしで遊んでるだけなら、

もう帰るから!」

 だってどう考えたって、彼の行動は意味不明。

 ここ数日のめまぐるしい状況変化に対する戸惑いもピークに達し、八つ当たり気味になじった。

 すると。

「・・・ごめん。俺、まだ信じられないから・・・。」

「・・・花沢類・・・」

 今までの様子がうそみたいに途方に暮れた子供のようにぽつりと言葉少なに謝罪する彼を見て、

あたしはやっと気づいた。

 あたしが戸惑っているように、花沢類もどうしていいのか分からないのかなって。

 そう思うと、隣で必死に平静を装っていたに違いない彼のことが妙に可愛く思えた。

「あのさ、花沢類なんだから、もっと自信を持ってよ。」

「なにそれ。」

「花沢類は、ほんとにあたしなんかにはもったいないくらい素敵なんだから。」

「・・・牧野はずっと俺のことなんとも思ってなかったくせに。」

「そんなことないよ!だって、は、初恋は花沢類だったんだからね!」

 言いながら真っ赤になった。

 そうだよ。

 そもそもあたしが最初に彼のことを好きになって、それなのに花沢類があたしをふって静さんを

追っかけて行ったんじゃない。

 そう反論すると。

「でも牧野、すぐに司のことを好きになって、そのあと、ずっと俺のことなんか目に入ってなかったでしょ?」

 言われてみて、振り返る。

 たしかに道明寺のことでいっぱいいっぱいだった時期はあるけれど・・・。

 でもいつだって花沢類のことは心のどこかにあった気がする。

 ずっと彼に見守られていることを感じてたからこそ、いろいろがんばれたんだって。

 それに、NYで彼に助けられてからは確かに「友情」以上の感情が生まれて、知らないうちに

惹かれてたに違いないんだから。

「・・・いつだって、花沢類は特別だったよ。」

 それを聞いた花沢類がすごく照れたような表情をしたから、あたしまで恥ずかしくなった。

「そ、そういう花沢類こそ、静さんみたいなゴージャス美人が好きなくせに。ミス英徳と仲いいんでしょ!?」

「どうかな。」

 その時の花沢類は憎たらしいくらいにうれしそうで、あたしはそれ以上この話題に触れる事をやめた。

 だってなんか悔しいじゃない!?



 しばらく高速を走った後、たどりついたのは海だった。
 
 車を止めて、砂浜に降り、どちらからともなく打ち上げられた流木に腰掛けた。

 花沢類と海ってなんとなく結びつかなくて、意外だったけれど、秋も深まったこの時期に人気は

あまりなくて、たまに犬を散歩する人が通る程度。

 その静けさと目の前に広がる水平線がここ数日間の鬱屈を晴らすようで、心地よかった。

「なんかこういうの、久しぶりかも。」

 思いっきり伸びをして、胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込む。

 本当に、本当にいろいろなことがあって、ジェットコースターみたいだったこの1年。

 まさかこんな風に花沢類とならんで海を眺めることになるなんて、想像もしてなかった。

「牧野はいつも忙しそうだからね。」

「そうかな。反対に花沢類って、いつも寝てるイメージなんだよね・・・。最近はけっこう忙しそうなのに、

なんかそんな感じ。」

 まとう雰囲気のせいかな・・・と思いながら隣を見ると、久々に穏やかな表情をした花沢類の顔が目に映る。

 ・・・やっぱり、好きだな。

 今日何度目かの感想を心の中でそっと呟いて、じっと眺めてると困ったような顔をして花沢類が

こっちを向いた。

「そんなにじっと見られると、穴があいちゃいそうなんだけど。」

「み、み、見てないって!」

「うん。」

 そう言いつつもこっちが面映ゆくなるほどうれしそうな顔をしてるから、そっぽを向いてそろそろ日の

落ち始めた空を見るフリをした。

 少しずつ赤く染まる海岸線がとてもきれいで、なんだか夢みたいだ。

「あのさ。」

 景色を見続けるふりをしていると、彼はそのまま続ける。

「俺、けっこう独占欲強いみたいだし、総二郎やあきらみたいに器用じゃないからつまんないかも

しれないけど・・・。でも世界中の誰よりも俺がいちばん牧野のことを好きだから。」

 あまりにも直球すぎる告白にどぎまぎして固まっていると、頬にそっと手が添えられた。

 びくりと震えると、花沢類のきれいな顔がゆっくりと近づいてきて、やわらかな感触が唇に触れた。

 ああ、キスされてるんだ・・・と思いながら反射的に目をつむる。

 口付けはなかなか終わることはなく、反対に最初は触れるだけだったそれが、次第に深まっていく。
 
 あたしはいつの間にか縋るように花沢類の肩に手を回していて、彼の腕の中にすっぽりと囲い込まれていた。

 飽くことなく舌を絡めあわせながら、これまでの空白を埋め合わせるようにさらに互いを求める。

 「・・・大好きだよ、牧野。」

 口付けの合間にそうささやかれ、泣きそうになった。

 その時、閉じた瞼を染めるほど燃える夕日の中で、あたしは確かに幸せだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 翌日。

 幸福な気分を引きずったまま学校に登校すると、とんでもない一行が待ち受けていた。

「よう、牧野。」

 にやりとしながら機嫌よく片手をあげてあいさつする西門総二郎。

 その傍らで気の毒そうな顔をしてあたしを見る美作さんはともかく、いつも以上に凶悪そうな顔をして

ほほ笑む桜子・・・。

 そして、なぜか遠巻きにあたしたちを注視しているギャラリー・・・。

 危険を察知し、くるりと引き返そうとしたその首根っこをすかさず押えられた。

「せーんぱい。どうでした?愛の逃避行。」

「あ・・・あい!?」

「・・・学校中の評判になってるぞ。総二郎と類がお前を取り合った挙句、逆上した類がお前をつれて

逃げてったって。」

「な・・・な・・・なんだってそんな話に!?」

 ため息をつく美作さんをよそに、わくわくしているのを隠す気もなく西門さんがくいっと顔を近づけてきた。

「ほかならぬ親友のためなら多少のゴシップのネタになるのは構わねえよ。

で、めでたく鉄のパンツは脱げたのか?」

「ぎゃっ、このエロ門っ!」

 思わず目の前の顔を殴りそうになった時、西門さんから引き離すようにすごい力でひっぱられた。

 それと同時にすっかり覚えてしまったフレグランスにふわりと包まれる。

「総二郎、変なちょっかいかけないでよね。」

 機嫌の悪そうな花沢類の声が頭上からふってきて、そのままぎゅっと抱きしめられた。

 きゃあーっとそこかしこで上がる悲鳴のような外野の叫び・・・。

 あの・・・みなさん、ここ、学園の敷地内なんですけど・・・。

 倒れそうなあたしをよそに、獲物をみつけた猫のような目をして

「朝っぱらから仲のよろしいこと。」

 と含み笑いをしながら言う桜子を見て、がっくりと肩を落とした。

 当分、あたしの人生に平穏が訪れることはなさそう・・・。


 <Fin>

 天満宮に向かう車の中で、司のことを考えていた。

 
 そもそも俺が結構真面目に会社にかかわり始めたのは、プロムの時にあいつに会ったからだ。
 
 要領のいいあきらや総二郎と違って感情の赴くままに無茶をしていた司が、すっかり落ち着いて

威厳すら漂わせて目の前に現れたのを見て、負けたと思った。

 牧野を守りたいって言ったところで、ただそばにいることしかできない俺に一体何ができるのか。

 ひとりだけ心地よい自分の世界にこもっているうちに、どんどん周りは成長していって、俺だけが

取り残されているんじゃないかと。

 それは俺が生まれて初めて感じた危機感っていうものだった。
 

 そこからは無駄だと思ってた学校にも真面目に行くようにしたし、それまで必要性さえ感じてなかった

人間づきあいだってしなけりゃ、と考えを改めた。

 あいかわらず興味の中心は牧野だけだったけど、俺なりに少しでも司に追いつこうと必死だったんだ。

 もちろん今でもあいつに大きく水をあけられていることは自覚してる。

 だからといって、宝物みたいに大切な牧野にしょっちゅう会っていて、あれ以上そしらぬ顔で

先輩のふりをつづけるのも限界だった。

 気持ちを受け入れてもらえるか自信はなかったけど、牧野が合格したら自分の気持ちを伝えようと決めて。

 でもその前に司にはどうしても会っておきたかった。
 
 許可をもらうとか、そういうことじゃない。
 
 司が許そうが許すまいが、俺はあきらめるつもりなんてなかったから。

 ただ、言わなきゃと思った。

 牧野にとって司はいまだ忘れられない存在であるに違いないんだろうけど、俺にとってもあいつは

特別な存在だから。

 特殊な環境で生まれ育ちほとんど誰にも心を許すことができない俺の、数少ない仲間でライバル。

 同じ女を好きになって、時に傷つけあったりしたけど、総二郎やあきらと同じように失えばもう二度とは

得ることのできない大切な幼馴染み。

 そしてきっと司は、まだ牧野を想っている。

 それをわかっていてもなお、俺は牧野が欲しかったから。

 だからこそいい加減なことはしたくなかった。


 
 牧野の合格発表の直前に司の秘書に連絡したら、俺のヨーロッパ出張とほぼ同時期にあいつがミラノに

いることを知った。

 無理を承知で出張にイタリアを組みこんで、司にも面会を申し入れた。
 
 タイミング的にとてもラッキーだったけど、でもきっとその時、司が地球の裏側にいたとしても、

俺は会いに行ってただろう。


 多忙な司との面会時間として割り当てられたのは、わずかに10分少々。

 ミラノのホテルの一室に通されて久しぶりに再会したあいつは、殺人的なスケジュールにも関わらず、

ますます精悍さを増していた。

 まだまだかなわないなと思いつつ、いつか絶対に追いつくからと心に誓う。

 そして、当の司は。

 俺の用件をうすうす察していたんじゃないかと思う。

 勧められた椅子にもすわらずに緊張気味にただつっ立ってる俺に苦笑してみせた。

「なんだよ、わざわざミラノくんだりまで来て。」

 ことさらぶっきらぼうに言って、デスクからタバコを取り出す。

「タバコいいの?そもそも、アメリカじゃ喫煙うるさいでしょ?」

「外じゃ吸ってねーよ。人の数少ないストレス解消法にぐちゃぐちゃ言うんじゃねぇ。」

 乱暴に言ってタバコに火をつけながら、司はまぶたをふせた。


「司。」

 彼はタバコにともった火を見るふりをして視線を下に向けたままだ。

 その様子は俺が口にしようとしていることを拒んでいるように見えた。

 それでも言わなきゃいけないから。

「俺、牧野に告白しようと思ってる。」

 しばらく答えはなかった。

 そしてふうーっと白い煙を吐き出しながら、司はただ「そうか。」といって、さみしそうに笑った。


 それ以上一言も会話を交わすことなく時間だけが過ぎ、彼の秘書が新たな来客を告げて、

俺たちの再会はあっけなく終わりをむかえた。

 司がどう思っているのかわからぬまま、「じゃあ」といとまを告げて背を向けた時。

「ま、あの馬鹿女を扱えるの、おまえぐらいだろうしな。」

「司。」

「せいぜいがんばれよ。」

 司らしからぬ声音に、俺はなぜか振り向けなくて、ただ「うん。」と短く答えた。


 それが牧野の合格発表の前日のことだ。

 花沢類がうつむいた姿を見て、あたしはなぜかとてもせつなくなった。
 
 今まで本当にごめんね・・・。
 
 あいかわらずあたしの手は握られたままだったけどそれを振り払う気にならず、しばらくそうしていた。

 やがて昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り、他の生徒たちが教室に走る気配がする。

 それでも彼は手を放してくれなかった。

「ひとつだけ、わがまま聞いてもらっていい?」

「・・・何?」

「今日このまま、俺と一緒に来て。」

 相変わらずあたしと視線を合わそうとしない花沢類の言葉に、あたしは戸惑った。

「行きたい所があるから。・・・俺にこれが夢じゃないって信じさせて。」

「!?」

「へ、変な意味じゃないから!」
 
 思わず得意の妄想癖を発揮してとんでもないことを考えかけていたあたしの思考を察知したみたいに、

彼にしては珍しく赤くなってあわてて否定した。

 うう、なんか調子狂うわ。

 でも・・・よくわからないけど、花沢類がこんな風にちょっと変なのは、

もしかしたらあたしのせいでもあるのかもしれない。

 どっちにしたってもう今日は授業に出席する気分じゃなかった。

「・・・いいよ。でもほんとに変なことしないでね。」

「しないよ。総二郎じゃあるまいし。」

 どこかトゲを感じる言い方をして、あたしの手をつかんだまま花沢類はすたすたを歩き始めた。
 
 そういえばあたしだってミス英徳のこと、ちゃんと聞いてないんだからね。

 どたばたですっかり頭から抜け落ちていたその事実を思い出し、先を歩く花沢類をじろっと睨んで、

あとを追いかけた。


 見慣れているはずなのにずいぶん久しぶりな感じがする彼の車に乗り込んでシートに体を預けると、

自分でも肩の力が抜けるのがわかった。

 やっぱりどんな時だってあたしにとって彼の隣はいちばん安心できる場所なんだろうな。

 少し冷静になれたから行き先を尋ねると、「天満宮。」と短い答えが返ってきた。

 意外に思っていると、お礼しないとね、と彼が呟くように付け加える。

 そうか、お礼参りってやつだよね。

 そう思いながらぼんやりと花沢類がギアを操作するのをながめていたのだけど、その動作が妙に

男っぽく見えて唐突にどぎまぎしてしまった。

 こんなの、いつも見てたのに、なんで!?

 あたし何か変!?

「そ、そういえば!ミス英徳!・・・結局、何にも答えてもらってないんだけどっ。」

 自分の中のパニックをごまかそうとふったネタは、よく考えればタイミング的にも言いだし方としても、

最悪だったかも。

 花沢類がクスッと笑った。

「何がおかしいのよ!?」

「ううん、嬉しいんだよ。司に会うためにミラノに立ち寄ったぶん帰国がずれて学校を余計に休むことに

なったけど、それだけの価値はあったなって。」

「ちょっと待って!道明寺に会ったの!?」

 最初の質問の内容すら忘れるほど驚いて聞き返したのに、花沢類は相変わらずマイペースな返答を

よこしてきた。

「うん。そのぶん成田には休んでた間の授業やらゼミのフォローしてもらってたから。

総二郎はあてになんないしね。合格発表の日、俺も家でじっと我慢してられなくて、発表を見に行こうと

したらほんとにたまたま会っただけ。彼女の弟も推薦入試受けてたみたいで。でもそれ見て牧野が

やきもち焼いてくれるなんて、ほんと嬉しい誤算だったな。」

 あたしが聞きたいのは、そういうことじゃなくって!

 もどかしくて思わず花沢類にもう一度聞き返そうとしたその時、まっすぐに前をみて運転したまま、

彼は表情を硬く引き締めた。

「牧野が合格したら、告白しようって決めてたから。司には言っておきたかったんだ。」

 そしてそれっきり彼はそれ以上何も言わなかった。

 ひょっとしたら道明寺と会った時のことを思い出していたのかもしれない。

9-27.困惑【9】

 目の前で真剣に思い返している様子の花沢類は嘘をついているようには見えず、ひょっとして

勘違いだったのかな?

 でも花沢類を見間違えることなんてありえないと、半ばやけ気味に言い返した。

「合格発表の日!大学で、会ってたでしょ!?・・・ミス英徳と。」

「・・・誰、それ?」

 心底不思議そうな花沢類を見て、あたしはワナワナとこぶしを握りしめた。

 しらばっくれるつもり・・・?

「誰って、花沢類と同じゼミの、長い髪の、し・・・静さんに似てるミス英徳よ!」

 あたしの剣幕に恐れをなしたからかは定かでないけど、もう一度記憶をさるぐような顔をした花沢類。

「・・・成田のこと?静には似てないよ。」

 突っ込むところはそこ!?

 この男はどれだけ静さんのことが好きなのっ、と思ってこめかみを押さえた。

 でも花沢類が女の人の名前を覚えてるなんて、やっぱり・・・。

 あたしの心がずきっと痛んだその時。

「・・・あ。」

 それまでの不機嫌さが嘘みたいに、花沢類がびっくりしたようにあたしを見た。

 じっときれいなビー玉の目で見られて、居心地が悪くなる。

「なに!?」

「・・・。」

「だから、何!?」

「・・・牧野、やきもち焼いてる?」

「はぁぁぁ・・・!?」

 あまりのことに言葉を失うあたしに構わず、花沢類は口を覆うようにして心持ち赤くなってる。

「だって、俺が女と居たから電話に出ないとかって、そういうことだよね?」

「そ・・・そんなこと!」

「だって、さっき、牧野、めちゃくちゃ怒ってた。」

 容赦なく人の弱みをついてくる花沢類に耐え切れず、とうとうあたしは叫んじゃった。

「そうよ!せっかく花沢類にあって直接報告しようとしてたのに、わざわざ合格発表の日に大学で

いちゃいちゃしたりして!腹も立つっ・・て!?」

 言葉の途中でふわっといい香りのする腕の中に包まれた。

「ちょっと!?花沢類!?」

 慌てふためくあたしもなんのその。

 さらにぎゅっと抱きしめられて。

「・・・どうしよ、ムカついてるのにすっげー嬉しいかも。」

「み、みんな見るから放してよ・・・!」

 いくら人目につきにくいベンチとはいえ、西門さんに引き続き花沢類が現れたことは

みんな気づいているに決まってる。

 こんなところを見られたら・・・と思って、こっちは冷や汗さえかいてるというのに。

「イヤ。」

「花沢類!?」

「これで牧野は俺のだってみんなが思ったらいいんだ。」

「!」

 あまりの言い草にカチンときて、全身の力を込めて花沢類の体を押し返した。

 あたしの抵抗を受け入れたのか、案外素直に彼は離れてくれたけど。

「あたし、モノじゃないから!」

 思わず言い放った言葉に、ぞっとするほど真剣な顔で彼があたしを見返した。

「知ってる、そんなこと。でも、ずっと牧野のことが好きで。牧野の気持ちがどうなのかわかるまで

待つつもりでいたけど、もう限界。他の奴にちょっかいかけられてるのなんて見てられない。」

 彼には珍しいほど一気にそう言い切って、どこか苦しげな顔をした。

「牧野の気持ちがちょっとでも俺にあるなら・・・それが100%じゃなくても、もういい。

俺とつきあって。」

 そうして、花沢類は左手をあたしの前に差し出した。

 ・・・この手を取ったら、花沢類とつきあうってこと・・・?

 そんな・・・急に決められないよ。

 そう思って、でも次の瞬間、あたしは彼の言葉を思い出した。

 ずっとあたしのことが好きだと言ってた。

 自分でもそうじゃないかと引っかかりを感じながらも打ち消し続け、無神経に彼にずっと甘えていた

あたしは、どれだけこの人を傷つけてきたんだろう?

 その気がないなら、もうけじめをつけなきゃいけないのかもしれない・・・。

 ・・・あたしは、花沢類が好き?

 緊張にこわばってしまってる花沢類の顔を見つめる。

 そんな表情をしてさえ、とてもきれい。

 感情表現の乏しい人だけど時折見せる笑顔がとても優しくて、いつだって見守ってくれてた。

 この人がいなくなって、あたしは大丈夫?

 彼が他の女の人と話していたあの合格発表の日の光景が脳裏に浮かび、あたしは頭をふった。

 
 それは、嫌だ。

 あたしだって、花沢類が他の女の人を見るのはイヤ。

 ・・・あたしだけを、見ていてほしい。


 そう思った瞬間、自然とあたしは彼の手を両手で握り締めていた。

 花沢類はびっくりしたように合わさった手を見つめ、そしてうつむいて、

ただ「ありがとう。」と小さく言った。

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