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ビジネス月歩という雑誌がある。

昭和三十六年に「ビジネス日進月歩」として創刊された歴史ある由緒正しきビジネス誌であり、今日まで悩める多くのビジネスマンたちに天啓を与え続けてきた。最も多い時には五十三万部というベストセラーを記録したこの雑誌も、昨今ではインターネットコンテンツの怒涛の進撃の前に売り上げが低下していると聞く。売り上げ増加のために編集者たちはビジネスだけでなく、ビジネスマンに関わる様々なことを記事にし、広範な興味関心を集めることにした。先行きの怪しい会社がリスクヘッジのために多角的経営に乗り出すようなものである。ビジネスマンに関わる様々なことというのはつまるところオッサン趣味のごった煮であり、この雑誌の中身も鵺だかキメラのような訳の分からないものになるかと思われた。この手の挑戦は概ね失敗するが、その広く浅い情報に、同じくらい底の浅いビジネスマンたちが釣られたのか雑誌の売り上げはやや向上したらしい。

そのビジネス月歩に「日曜楽音友の會」というコラムがある。忙しいビジネスマンが限られた余暇をどう音楽に充てるのか、というハウツーが書かれたコーナーである。私の音楽活動へのおざなりな態度が「活動は短時間ながら、まるでどっぷりと音楽に浸かっているように見える」と高く評価され、今回インタビュー対象として白羽の矢が立った。
非常に残念なことに、大人の事情でそのインタビュー記事はお蔵入りになってしまったが、その代わりに当ブログにてインタビュー内容を一部使用してもよいという許可が下りたのでネタとして書かせてもらうこととする。

(以下本文)
今回はエフェクター自作家(通称:ジサッカー)として余暇を音楽と共に過ごす、はし氏にお話しを伺った。氏はたいした時間をエフェクター自作に費やさないにも関わらず、最も物欲を煽られるものは自分の自作物である、と公言してはばからないその道のプロフェッショナルである。自らの限られた知識をもってして自信ありげにふるまうことは、我々ビジネスマンの命題である顧客の信頼獲得の1つの手法ではなかろうか。氏からはそのエッセンスを拝借したい。
文/岡崎洞衛門 取材/2013年5月14日

---初めての自作とそのきっかけについて教えてください
今から6年前ですね。ピチピチ(死語)の大学生でした。きっかけはありきたりですが、高いものを安く手に入れたいということでした。

---初めての自作は失敗される方が多いと聞きますが、結果はいかがでしたか
なんだかAVのインタビューみたいですね(笑)。初めては失敗しました。エフェクトスルー音すら出ませんでした。

---初期投資に半田ごて等の道具が必要ですし、材料費もかかりますよね?結局のところ自作って安くつくのですか
既製品ならお金出したらちゃんと物が手に入ります。しかし自作はそうはいかない。投資してもかならず返ってくるとは限りません。理想と現実の違いに打ちのめされて、私もこの時は自作をやめようかと思いました。

---ではなぜそこで続けようという気になったのですか
当時の私には、買いそろえた工具、といっても高価なものではありませんが、を捨て置くということはできなかったからです。失敗したプロジェクトとして放棄するには大きすぎる出費でした。そこで計画を練り直しました。最初はもっと簡単なものでいい、ということでCOT50を作りました。どんなに不格好な出来でも音が出ると嬉しいんですよ。あそこでCOT50の作成に失敗していたら私は自作をやめていたと思います。

---コピー品を作るということから脱却してオリジナルの回路を考えるに至った変遷をお聞きしてもよろしいですか
コピー品を作っても、元ネタのものと同じリセールバリューがあるわけではないですし、同じ音が出ているのかも本当のところよく分からない。コピー品の作成って面白くないんですよ。だから私は少しでも自分色を足して作りたい。オリジナルといっても、基本的には色んなものをコピペしただけで、オリジナリティなんかどこにもないんですよ。だってオペアンプとトランジスタの増幅のパターンなんて限られていますから。既存の素子を使う限りはどんな回路もほぼ似たり寄ったりと言えるでしょう。特に歪み物に関しては。

---いいものを作るコツ、のようなものはありますか
いいものというのがどういうものか分かりかねますが、私は単純に「弾いていて気持ちいいもの」をいいものを考えています。人の好みは十人十色なので正直に申しまして誰にでもいいものなんてものは作れないです。

ではあなたにとっていいものを作るコツを教えてください
音域のバランスが全てだと思っています。どの音域をどの程度出して、どの程度歪ませるかという目標は設計時にはっきり決めますね。

---具体的にはどのようにして設計をなさるのですか
私は色々なエフェクターを弾く際に、どのような回路がこの音を生み出すのかを考えています。細かくブロック分けした回路の重ね合わせがこの出音であるということを意識すると、回路と音の関係が掴めてきます。そうすれば欲しい音のイメージに近い出音の回路を設計することができると考えています。

---使用するパーツのこだわりなどについても教えてください
私はパーツにはそこまでこだわっていません。抵抗もコンデンサも個体によって誤差がありますので、パーツの銘柄違いによる音の変化より、個体差による音の変化の方が大きいのではないかと。もちろん、材質によって特性が違っているということは知っていますが。そういったパーツの銘柄違いや許容範囲の誤差を内包しても出音が変わらないものを設計する、というのがエフェクター回路のあるべき姿だと思っています。取り回しのしやすさとか納めやすさ、というのは気にしますけどね。WEの耐久性の低い線材なんかは最悪ですね。線材が太い方がいい音がする、とか言う人はおっぱいも大きい方がいい、とか思っているのではないでしょうか。大きければいいというもんでもないでしょうに。

---新作はどのようなものをお考えですか
音の中に色を感じるようなものができれば、と思っています。色というかキャラクターというか。こればかりは言葉で説明しにくいですのでまた今度工房に遊びに来てください。出音でご説明しますよ。それじゃインタビューにならない?そうですよね(笑)。少し抽象的な言い方になりますが、弾いた人が製作欲を刺激されるようなインスパイアーザネクストな日立を作っていきたいですね。

氏は今後も今と変わらず音楽とつかず離れ気味な余暇を続けるつもりらしい。それでいて上記の大言壮語には恐れ入る。氏が今後も活躍しないことに期待したい。

(本文ここまで)


ということで、久しぶりの更新でした。次の更新は2年後くらいだと思います。








※注意
今回のインタビューはフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。もとよりビジネス月歩なる雑誌は存在しません。全部嘘です。

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