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ドローンという悪魔の出現
目良浩一
アメリカ人がアメリカ政府によってイェーメンで暗殺された。9月30日のことであった。アメリカ国内から操縦されていた無人航空機からのミサイルによって殺害されたのである。この事実は、少なくとも二つのことを意味する。第一は、現在のアメリカ政府は、テロリストを退治するためにドローン(ミサイル装着の無人航空機)を頻繁に使用している。これらはアメリカ国内から操作されているが、精密に操作され、正確に目的地を爆破できる。アフガニスタンで最初は使われていたが、最近では、パキスタンやイェーメンでも頻繁に使われている。オバマ大統領の好みの武器である。もうひとつは、アメリカ人であろうとも、テロリストと判定されれば、裁判など一切なしで、殺害指令が出される。イェーメンのように戦地でなくとも暗殺が実施される。非常に恐ろしいアメリカの動きである。9・11の事件で、正気を失ったアメリカが益々、恐怖政治体制になりつつあると解釈することもっできる。三権分立などという、贅沢な体制を守る余裕がないと指導者は考えているようだ。
しかし、この現象は単にアメリカだけの出来事と考えてはいけない。ドローンの技術はアメリカの独占ではない。中国でも、ロシアでも、北朝鮮でも、イランでも、簡単に入手できる技術である。しかも、超小型の無人航空機は米国内の会社から市販されていて、それを使えば、敵地をビデオ撮影することもできるし、爆弾の搭載もできる。どの国でも、その気になれば使用できる技術であり、おそらくかなりの国が開発し、ひそかに使用しているかもしれない。
アメリカは、9・11事件の後に、甚大な被害をこうむったので、事前に防衛する必要性とその正当性を主張して、ブッシュは先制攻撃をする権利を主張した。現在のアメリカのドローン攻撃は、その主張の延長線上にあって、テロリストと判定された者を先制して、殺害できる体制になっている。現在のアメリカは、世界のどこでも、十分に危険であると判定したものは、暗殺するのである。しかし、その判定は米国政府だけによる判定で、他の国の判定と合致するとは限らない。そこで問題が起こりうる。テロリストの近くにいたために殺害される無実の人々についても問題は深刻であるが、テロリストであるかどうかの判定も問題である。アメリカ人にとってのテロリストは、ほかの国にとっては、貴重な人材であるかもしれない。ここに国際紛争の種がある。
米国政府がドローンを好むのは、米国人を戦争の危険にさらさずにすむことである。手を汚さずに、敵を消すのである。この手法は、敵にとっては脅威である。それだけに、敵の人々の敵愾心を鼓舞する。特に、ドローンの誤認によって結婚式を台無しにされた人々は、一生涯米国を許さないであろう。ドローンを使えば、使うほど反米に固まった人々が増大してくる。
そしてこの道具は、アメリカの歴史で固められた三権分立の精神を棄却し、行政府の独裁を導く危険性をはらんでいる。行政府にテロリストと判定されれば、すべての終わりである。司法に救いを求めることができない。米国の民主主義体制の根底からの破壊を導く危険性がある。
世界は危険な方向に動いている。それをアメリカが主導している。ほかの国もそれを傍観するわけには行かない。アメリカのドローンに対して、それぞれが、近いうちに同じ技術を磨いて対抗するであろう。アメリカの内部でアメリカ人が、ほかの国のドローンによって暗殺されることが起こる可能性もある。そのような中で、日本だけは傍観していてよいものであろうか。近隣諸国の艦船が近海を巡遊し、ドローンを使って特定人物を殺害したり、目的物を破壊したり、秘密を盗んだりする可能性は十分にあると思われる。日本は真剣にドローン対策を検討する必要がある。
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