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この「アット・スラグス・サルーン」というアルバム名はどう訳していいかわかりませんが,「ぐい飲み酒場にて」とでも解釈されるのでしょうか。
まあ,ガンガンと酒を飲んで,この狂ったような,狂気の天才,アルバート・アイラーのライブを聴くといったところですかね。
1966年の録音ですから,この頃は,コルトレーンもフリー・ジャズに一歩踏み入れた時期で,フリー・ジャズ旋風吹き荒れる凄まじい時期だったのではないかと思います。
因みに,コルトレーンはアルバート・アイラーの何かの演奏を聴いて,俺もこのようにやりたいと言ったそうです。
コルトレーンはバップといった伝統的なジャズから,コード〜モードといった演奏スタイルの変遷を経て,最後は万人向けとはいいがたいフリー・ジャズの世界に行き着いたという,いわば,革新的ミュージシャンであったのに対して,アルバート・アイラーは最初からこのようなフリー系の人だったといわれています。
まあ,60年代フリー・ジャズの最右翼的存在といったところですかね。この演奏ではトランペットにドナルド・アイラーがいますが,これはアイラーの弟だそうです。
アイラーの弟もトランペットでフリーにやってますが,60年代フリー・ジャズを牽引していたのはサックス奏者やドラマーだそうで,調性の内外を瞬時に往復できるとされているサックスの自由度には及ばないといったところです。また,バイオリンも入ってますが,この異様な雰囲気に一役買っています。
1曲目は行進曲ということは曲名でわかりますけど,2曲目はブラス・バンド的,3曲目は儀式的という印象のテーマで,アンサンブルというのか,インター・プレイというのか,よくわかりませんが,各楽器が入り乱れて,騒々しくやっています。
アルバート・アイラーはアメリカのベトナム戦争への徴兵に対する恐怖心というものをもっていたといわれており,演奏にその内面を表現しようとしたためか,サックスの特質をふんだんに使った,フリーキーな音でかましております。
本人にしてみれば,恐怖心を表現し,また,表現することによって,それから逃れたいという心情の発散をマジでやってるのでしょうが,対岸の火事を見るという立場からすると,誠にクレージーな演奏で,たいへん面白いというか,滑稽でさえあります。
全般的にはアンサンブル的に表現しているところは,アメリカの国家とか富裕層とかいうものを象徴し,アイラーはアメリカ黒人の一人として怯え,どうにもやるせない気分を表現しているという印象をもちました。
まあ,「マイ・ネーム・イズ・アルバート・アイラー」のサマー・タイムのような絶唱,美しさとは,程遠い演奏ですが,意外に難解という感じはなく,結構,血が騒ぐというか,興奮してきます。
この特異なサウンドに痺れるところは,ジャズがもっている毒で,わかっちゃいるけどやめられないという感じがしますね。
これはライブ演奏ではありますが,こういうのって,聴衆に聴かせるのが目的なのか,自分のフラストレーションの解消が目的なのかよくわかりません。
曲目
1.Truth Is Marching In(Albert Ayler:10:08)
2.Our Prayer(Donald Ayler:12:18)
3.Bells(Albert Ayler:18:02)
メンバー
Albert Ayler(ts)
Donald Ayler(tp)
Michel Sampson(vin)
Lewis Worrell(b)
Ron Jackson(per)
録音 1966年5月1日 ESP盤
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